カオルは身動きがとれなかった。あの後…自ら囮となったカオルは脱獄囚に捕まり、拷問を受けていた。  
 
一方、潜伏先に戻ったアダム達も選択を迫られていた。姿勢制御ユニットを渡すべきか…。  
 
「さっさと仲間の居場所を教えな」ジルバが詰め寄る。  
「教えないなら、お仕置きするしかないねぇ」  
ムチを振り上げたその時  
「待ちなさい!姿勢制御ユニットを持ってきたわ」  
ルナの声だ。  
「カオルと引き替えよ」  
じりじりとルナに近付く脱獄囚。そして「取引成立ね」と、ルナの腕からユニットを取り上げ、カオルを乱暴に釈放した。  
 
「なぜあのユニットを渡した!?」  
カオルがルナに向かって怒鳴った。  
「俺のことなんかどうでもよかったんだ、みんなが帰れなくなるくらいなら俺一人やられ…」  
(パシッ!!)  
「何言ってるのよ!?一人でカッコつけないで!それで帰って、私たちが喜べるとでも思った?」  
口調は厳しいが、目には涙が浮かんでいる。  
「私だって、カオルがいてくれたから今までこの星で…」  
(ガクッ)  
そう言いかけたとき、ルナがカオルに向かって倒れ込んだ。  
「危ない!」  
カオルがルナを抱きかかえた。  
 
その時、カオルはとっさにルナ胸を掴んでしまっていた。  
 
彼女の柔らかい胸の感触が指先から伝わる。と同時に、何かルナの胸の奥から温かいものが伝わってくるのがわかった。  
ルナの生への強い意思、カオルへの思い、辛かったこと、しまっておいた秘密…  
全てが自分の内に広がるのが感じられる。  
そして、カオルは「最も重要なこと」に気付いてしまった…。  
 
見かねたシャアラたちが集まってきた。  
「大変!?早くルナを!」  
ルナは洞窟に運ばれた。  
 
洞窟に戻るや否やハワードが叫んだ。  
「お前のせいで帰れなくなったんだからな!どうしてくれるんだ。」  
目からいつもの幼稚さが消えている。  
 
「カオルのせいじゃないわ。カオルは私たちのために…」  
シャアラが弁解する。  
「責めてはいけないよ。でもこれでもう帰れないな」  
ベルが呟いた。  
カオルはそれらの言葉には反応しない。  
 
カオルは外に出て、海岸ぞいの岩場に座って海を眺めた。  
実は投げ出される直前、宇宙船が傾いたとき寄りかかったルナの胸を掴んでしまったことがあった。  
その時のルナの胸はたいそう貧弱なものだったのを覚えている。  
しかしさっき触ったルナの胸は大きく膨らんでいた。まだあれから三ヶ月ほどしか経っていないというのに。  
 

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