何故か、気が落ち着かない。
何があったわけでもないが、ただ心が落ち着かなかった。心を落ち着けるためには、バイオリンでも弾けばいい。幸運にも今は自由時間だ。この時間なら、弾いてても文句は言われない。
そう思い、メノリはベットの下をあさぐった。片手でバイオリンケースを探すが、なかなかバイオリンが手にあたらない。不思議に思い屈みこむと、そこにはバイオリンケースの姿は見当たらなかった。
どこにおいたのだろう。ひっしに記憶を探りながら、ベットの中や机の上を探しまわる。ルナやシャアラに手伝おうかと聞かれたが、いい、と断った。
(どこに、置き忘れたんだ・・?)
下まで降りて、フェアリーレイクの周辺も探してみる。どこにもバイオリンは見つからない。悪いが、ルナやシャアラにも手伝ってもらおうと、戻ろうと後ろを振り向いたら壁にぶつかった。・・そんなまさか。
目を開けるとそこには壁ではなくハワードが突っ立っていて、危ないじゃねぇか、とこちらを睨みつけた。その態度にむっときて、私もハワードに睨み返す。
「お前がそんな所に突っ立っているから悪いのだろう?なんですぐ後ろにお前がいるんだ」
「へー、そんな態度とるんだ?」
「・・・どういう意味だ?」
ハワードはどこか意地悪い笑みを浮かべている。何かまた企んでいるのかと、私は眉をつり上げた。
「バイオリン、壊してもいいのかな」
「・・・!?」
「分かったか?あんまり僕に逆らうなよ、痛い目に合わせるからな」
「ふざけるな。バイオリンを返せ!どこに隠した」
「言うわけないだろ。僕は本気だぞ」
「いい加減にしろ!」
ぱしん、とハワードを叩く。しまったと思ったのは、叩いてしまった後だった。バイオリンが壊されてしまうかもしれないというのに、今の立場ではハワードの方が軍配は上だというのに。
ハワードは無言で私の手をひいた。突然の事で抵抗もできず、私の身体はハワードの胸に収まる。
「・・・何をする・・っ」
「バイオリン壊されるの嫌だろ」
「・・・・ああ」
「だったらそのかわりに、お前を壊してやろうかってな」
「・・・・!?」
ハワードの手がシャツの上から私の胸をまさぐる。頭が混乱して、何が起こっているかも最初はわからなかった。怖くて声すら出せないし、身体は動かなくて、ハワードを突き飛ばす事さえできなかった。
「・・・・っや、やめてくれ・・!」
ようやく絞り出した声は弱々しい上に小声で、ハワードに聞こえるかも分からなかった。ハワードの手が、シャツの下に入ってくる。ブラジャーの上から胸を揉まれ、身体の中に電気が流れたような感覚に、分けも分からず声をあげた。
「っ・・や、やだぁっ、やめ、んふぅ・・・」
「しっかり感じてんじゃねぇか」
「な、なんでこんな、ことぉ・・っん・・はぁ、ふあ、ぅんっ」
「・・・下の方も濡れてるんだろうな」
「?!い、いやだ!やめてくれっ」
ハワードの手が、ゆっくり下の方に下がって行く。徐々にスカートの中に手を入れると、ハワードはタイツの上から私のそこをなぞった。
さっきの電気のような感覚とは比較できないくらいの快感に、私はみっともなく声をあげ続ける。
それでもハワードはやめてはくれなかった。しらずのうちにハワードに手を回していたらしく、かなり力を入れていたようだった。それでもハワードの服をぎゅっと握り締めて、ただ快感に耐えようとした。
タイツを下げられると、今度は少し濡れているショーツの上からハワードが敏感なそこを擦る。さっきよりも早さと快感が増して、私の奥から何かが溢れてくるのを感じた。
保健の授業で習っていたものの、オナニーすら体験していなかった自分にとって未知の感覚に、私はどうにかなってしまいそうだった。むしろ、どうにかなってしまいたかった。
「あ、謝るっ!あやまるからっ!もう、やめて、くれ・・!」
「やーだよっ」
「許してくれぇっ・・お、おかしく、なって・・!、んあ、あぁ」
意外と大きいハワードの手が、私のそこを擦りつづける。なにか限界がきてしまうような気がして、私は腰をよじらせた。
「やだ、だめだぁっ・・あっ、あ、ああああああっ!!!」
そこがびくびくと痙攣して、身体が大きくびくりと跳ね、濡れたショーツをさらにびしょびしょにさせた。
まださっきの感覚が頭にぼーっとのっこているみたいで、ただ訳が分からず泣いていた。
数日後、ハワードがバツの悪そうな顔で謝って来た。バイオリンはもちろん、あの後すぐに返してもらっていたが、謝罪の言葉はまだ述べられてはいなかった。
しばらくお互い無視しあったような感じが続いたが、あの事は誰にも言わなかった(といっても、言えなかったのだけど)ので、ただ周りからは喧嘩しただけ、という理由で納得させた。
ただ、あの時ハワード自身を私に入れなかったのは、彼の少ない優しさと、やはり少し罪悪感を感じていたからなのだろうと、私はそう思っている。