眠れない。  
何度も何度も寝返りをうつ。ずっと瞼を閉じてみるも、眠気がやってこない。疲れているはずなのに、と彼女はとうとう身を起こした。  
「…どうかしたの、メノリ」  
突然聞こえて来た声に、メノリは振り返った。シャアラだ。悪い事をした。起こしてしまったか。声を掛ける前に、シャアラまで身を起こしてしまった。  
「すまない、起こしたかシャアラ」  
「ううん、私も眠れなかったの」  
「そうか、早く寝た方が良いぞ。明日に響くと悪い」  
「お互い様、でしょ?」  
「それもそうだ」  
顔をあわせ、ついクスクスと笑いあった。何を思いついたかメノリは立ち上がると、シャアラの枕元に腰を下ろした。  
「横になってみろ」  
「…?わかったわ」  
言われた通りシャアラがベットに横になる。上からシーツを被せてやると、そのままメノリはシャアラの頭へ手を乗せた。  
「よく眠れるおまじないだ」  
優しく頭を撫でてやる。ふわふわしている髪は撫で心地がいい。シャアラもにっこり笑ってみせると、そのまま撫でている手を掴んだ。  
 
「メノリ、一緒に寝よう?なんだか寒くって」  
「別に構わないが」  
「ありがとうっ」  
シャアラは満面の笑顔につられ、ふっとメノリも微笑む。シャアラのベットに入り込むと、今度は代わりにシャアラがメノリの頭を撫で始めた。温かい手の温もりに再度微笑む。やるのもいいが、やってもらう方が気持ちいい。  
「メノリにも、おまじないしてあげるね。…効きそう?」  
「…効くかも、な」  
「よかった」  
シャアラは私の髪を撫で終えると、私の手を握りそのまま目を閉じた。学校では目立たない存在だったため気付かなかったが、とても可愛い顔立ちをしている。  
シャアラの顔をぼーっと眺めているうちに、今日は収穫が少なかった事を思い出す。  
明日はどの辺を探せば果物がとれるだろうか。地図によればここ周辺はほとんど探し尽くした筈だ。そこまで色々と考えて、はぁ、と大きくため息をついた。こんな考え事なんてしてるから眠れないんだ。  
思わず握っている手に力を込めてしまったらしく、シャアラがせっかく閉じた瞳を開き、大丈夫?と再度おまじないをしてくれる。  
どうしても考え事をしてしまうんだ、と言葉を漏らす。シャアラはくすりと笑って、  
「メノリはとっても可愛いのね」  
と、今度はにっこり笑ってみせた。一瞬のうちに顔が紅くなる事を感じ、シーツに顔を埋めた。  
「な、何を言うんだ、いきなり。」  
美人、とは何度か言われた事があったが、可愛いなんて言われたのは小さい時以来だ。  
「わかんないけど、可愛いなって。」  
「・・・な・・」  
「でもね。一人で考えこんじゃ駄目よ。私もいるわ」  
「・・・うん」  
「今度は私が知ってる、おまじないしてあげる」  
シャアラが私に近づいたと思うと、私の前髪の上に唇を落とした。ほんの挨拶のような軽いキスだ。  
 
 

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