夜もふけ皆が眠りについた中カオルは一人ベットの中で眠れずにいた。
ベルは「家族になる」とルナに告白した。
その告白になぜこんなに動揺し、いやな気持ちになるのか。そればかりを考えていた。
もしかしたら俺はルナを好きなのかもしれない。
しかしそれを認められない自分がいる。
そして何よりルナがベルのことを「好き」と言っていたのに醜く嫉妬している自分がいた。
このままベルとルナが−−−
・・いや、もう考えるのはやめよう。
今から寝ても4時間くらいしか寝れないだろうが明日に備えて体力を回復しなくては。
そう自分に言い聞かせカオルは目を閉じ眠りについた。
皆が起き、それぞれの持ち場に着いて3時間ほどたった。
カオルは操縦席に座ったまま偶然にも一緒になったベルをちらりと見る。
「お疲れ様ー。ご飯だよ〜!」
ルナが昼飯を持って入ってきた。干した魚に果物を少々。
いつものメニューだ。
「ありがとう。ルナ。」
ベルが答える。
カオルは不快な気分を覚えたが気がつかないフリをした。
「カオル?・・顔色が悪いけど・・大丈夫?」
「いや・・気のせいだろう。」
ルナは少し眉をひそめた。
「・・そう、無理はしないでね。」
「ああ。」
どうしてこんなに冷たい返事しか返せないのか。
ルナが心配してくれたと言うのに・・
確かに自分は今調子が悪い。
寝不足と・・イライラとした何かによるものだろう。
「ルナは調子悪くないかい?ルナはいつも無理するから、
ちょっとでも気分が悪くなったりしたら俺に言うんだよ。」
ベルがルナに話しかける。
いつにもなくベルはルナにかまう。
ルナ、ルナと朝から10回はベルが言ったのをカオルは覚えている。
なぜそんなに名前を言う必要があるのか。
ハワード達もそんなベルに気がついていたが、ベルがルナを好きなのを知って
いるからか何も言わない。
自分だけがもやもやとしている。
あぁ、考えすぎて頭が痛い。
遠くでルナが何か言っているが聞き取れない。
そのままカオルは真っ暗な世界に身をゆだねた。
「・・オル・・カオル!」
ルナの声が聞こえた。
目を覚ましてみると自分のベットにいる。
部屋にはルナとカオルだけだ。
「良かった・・。目が覚めたのね。」
ルナはホッと息を吐きカオルの頬に手を当てる。
その手がひんやりして気持ちがいい。
「俺はどれくらい寝ていた。」
「そうね、2時間かしら?今は陸に着陸してる。
今日はこのままここで休んで明日また進みましょう。」
どうやら自分が倒れてすぐに着陸したらしい。
「自動操縦じゃないのか?」
「この先は入り組んでて自動操縦じゃ危険なんですって。
チャコとシンゴが言ってたわ。」
どうやら自分が倒れたせいで進めなかったらしい。
「・・・そうか、俺のせいですまなかったな。」
「ちがうでしょ。そんなことで怒ってないわよ・・。
どうして体調悪かったこと言わなかったのよ。」
カオルはバツが悪そうな顔をして黙り込んだ。
「・・悩みがあるなら一人で悩んでないでね。
皆がいるじゃない。」
「悩みは・・・ない。寝不足だ。」
「そう。ならほら、寝て寝て。晩ご飯の時はこっちに持ってくるわね。」
そういうとルナの手が離れていく。
その手が名残惜しく反射的にその手を掴む。
「・・もう少しこのままでいてくれ。」
ルナは驚いた顔をしていたが、クスっと笑う。
「カオルが寝るまで手繋いでてあげるよ。
だから安心して寝なさい。」
ルナが微笑んだのを見てカオルはその手をしっかり握ってまた眠りに着いた。
「カ・・オル!・・カオル!」
また誰かが呼んでいる。
さっきルナが俺を寝かしつけたのは覚えている。
よく考えると恥ずかしい。
ルナが夕飯の時は持ってくると言っていた。
ルナだろうか?気分は随分良くなったので
飯も食えるだろう。
ゆっくりと目を覚ます。
そこにルナがいるだろうと考えながら。
・・・・メノリ。
そこにいたのはルナではなくメノリ。
「・・メノリ、か?どうした。」
「目が覚めたか・・。体調はどうだ?」
メノリが俺を気遣うのは数えるほどしかない。
珍しいと考えながらも、大丈夫だと返事を返す。
「・・そうか。無茶はするな。」
「ああ。迷惑をかけたな。」
「・・・お前だって普通の人間なんだからな。倒れぐらいする。」
メノリは俺を何だと思っていたのか。
まあいい。とにかくコクピットに一度戻ろう。
「・・・。で?それだけか?俺もそろそろコクピットに、」
「あっあの。その。つっ、つまりだな。すっ、好きだ!」
・・・俺はメノリが言った言葉をすぐには理解できなかった。