すぐ脇を地下水道が流れる通路を、ハワードとシャアラの  
二人は数体のドローンに包囲されて歩いていた。  
 
「うぅ…、俺たち死ぬのかなぁ…」  
「大丈夫よ、ハワード」  
「シャアラ…」  
 
しゃがみかけていたハワードが見上げると、  
シャアラは力を込め、微笑んで言った。  
 
「一緒に帰るのよ。そうでしょう?」  
 
「わからない…?」  
 
「ええ、ルナの力のことはルナにだってわからないの」  
「だから俺たちに聞いたって無駄だぜ!」  
ドローンに連行され、エレベーターで運ばれてきた広間には  
人語を話す発光体、メインコンピューター・サヴァイヴが浮かんでいた。  
サヴァイヴはしきりにルナの不思議な力について話してくるのだが、  
噛み合わない会話にうんざりしてハワードは投げやりになっていた。  
 
「そうか…、ではこれ以上の話し合いは無用だ」  
 
ピンク色の光が現れてハワードを捕らえ、空中に持ち上げた。  
「あわわわ…」  
「ハワード!ハワード! …やめてサヴァイヴ!殺さないで!」  
 
「話し合いは無用だが、おまえたちにはまだ利用価値がある。  
 殺しはしない」  
 
「うわあああああああ!」  
ハワードのつま先から頭の先まで、ゆっくりとピンクの光が移動する。  
「やめて!やめて!」  
 
「ただスキャンしているだけだ」  
 
「あああああああ…」  
ピンクの光が消えるとハワードは床に投げ出された。  
「ハワード!大丈夫?」シャアラが駆け寄ると、ハワードは強がった。  
「ああ、なんてことないさ、シャアラ」  
 
「この星の人間とほとんど変わらない。必要のない普通の人間だ。  
 念のためおまえもスキャンする」  
 
「え? …きゃっ!」  
ピンクの光が唐突にシャアラの四肢を捕らえて空中に持ち上げる。  
続いて全身を舐め回すような感覚に襲われ、シャアラは悲鳴を上げた。  
「いやあああああああ!」  
「シャアラ!」  
 
足の裏、ふくらはぎ、ふともも、そして下着の中。  
「ひっ、やめてやめて!いやあ!」  
「シャアラ!どうした!」  
「うあっ、いや、いやあ、んん〜っ!」  
光はじりじりと上に向かい、シャアラは身をよじって泣いた。  
「くっ!やめろサヴァイヴ!僕の時と違うぞ!」  
 
「ああ…あっ、あっ、ああっ!!」  
シャアラが四肢をこわばらせ体を弓なりにすると、  
やはり唐突にピンクの光は消え、シャアラは床に投げ出された。  
 
「やはりおまえも普通の人間だ」  
 
「シャアラ!大丈夫か!」  
ぐったりと動かないシャアラにハワードが駆け寄ると  
シャアラは顔を背けるようにして言った。  
「うん…」  
「顔が赤いし呼吸も速いぞ、やっぱりなにかされたんじゃ?」  
「平気よ、ハワード」  
 
「これからドローンに人間用居住区に案内させる。  
 おまえたちに関するデータの解析が終わるまでそこで待て」  
 
ハワードとシャアラは言われるままに移動し、言葉少なに過ごした。  
死刑宣告を待つようなもので、励まし合う言葉さえ浮かんでこない。  
次に二人が呼ばれたのは2時間ほど経ってからだった。  
 
「おまえにこれを返そう」  
 
ふわふわと空中をただよってきたものがシャアラの手のひらに収まる。  
「あっ、シャアラの眼鏡だ!」  
「まあ…、壊れてないの?」  
 
「おまえの目はこの助けなしにはよく見えないようだ。  
 地下水道から探させ、直しておいた」  
 
「あ、ありがとう…」  
そそくさと眼鏡をかけると、シャアラは礼を言った。  
 
「礼には及ばない。やってもらいたい仕事がある。  
 不思議な力の持ち主ルナを見張り、どのような時に  
 どのように力が発揮されるかの詳細なデータがほしいのだ。  
 これから人間の元に戻り、ルナの様子を探れ」  
 
「なんだって!?」  
「スパイしろっていうの?」  
「ふざけるな!」  
「絶対いやよ!」  
 
「おまえたちに拒否する権利はない。これを」  
 
目の前に赤っぽく発光する液体が運ばれてきた。  
「なんだ…これ…」  
「気持ち悪い…」  
 
「ナノマシンだ。これで私と通信できる。粘膜から吸収するので  
 好きなように飲むといい」  
 
ガシャーン  
赤い液体がどろりとこぼれる。  
 
「ハワード…」  
シャアラの前にハワードの背中があった。  
たったいまナノマシンの入った容器を振り払った手は微かに震えている。  
 
「なるほど、ではこうしよう。データを見ると、そこの女は  
 水分が不足している。男の方は摂取カロリーが足りないようだ。  
 幸い、わずかだが人間用の非常用食料が用意できる。  
 今からおまえたちに与える飲み物と食品にナノマシンを入れよう。  
 生命を維持するためには口に入れざるをえないはずだ」  
 
「なんだって…」  
「そんな…」  
シャアラの背中にどっと冷や汗が噴き出した。  
 
 
ハワードは一日しか持たなかった。  
それでも、予想より辛抱した、とシャアラは思う。  
居住空間に次々運び込まれる肉や野菜の料理。  
水、ジュース、湯気の立ったスープ。  
ここだけ切り取ってみたら夢のような光景だ。  
ハワードはほほを赤らめて「うわあ…」と歓声を上げていた。  
ただ、このなかにはたっぷりとナノマシンが入れられているのだ。  
 
地下水道に落ちたときに多少飲んだかもしれないが、  
それまでの生活で水を切り詰めてきた二人にとって  
一番つらかったのが水も飲めないということだった。  
空調の利いた部屋の中で、肌も唇もかさかさに乾いていく。  
 
全部に入っているとは限らない、これには入っていないかも、  
ちょっとだけなら大丈夫、そうハワードは繰り返した。  
そして、シャアラが見ていないときに、ひとくち水を飲んだ。  
それからスープを、肉を、もう止められなかった。  
 
それから二日経ち、すっかり人の変わったハワードは  
今度はサヴァイヴに代わってシャアラに飲食を勧めている。  
最も嫌なのは、時折無表情になりサヴァイヴと通信することだった。  
いっそ部屋を変えてほしいが、そんなことを言い出す元気もない。  
シャアラは昨日からベッドに横たわったまま動けなかった。  
(わたし、死ぬかも。ルナ、役に立てなくてごめんね…)  
 
シャアラが涙を流したそのとき、部屋のドアが開いて  
ハワードが顔を出した。すっかり眼光の鋭くなったハワードは、  
なぜかシャアラを監視していたドローンに部屋を出て行くよう  
合図し、廊下を用心深く見回してからシャアラの元に駆け寄ってきた。  
「シャアラ、これを飲め」  
その手にはペットボトルのような容器がある。  
 
「いやよ、ハワード。ナノマシンは飲まないわ」  
「よく見ろ、シャアラ」  
いつもとは違う感じに、シャアラは顔を上げた。  
「ほら、封が切っていないだろ、何も入ってない」  
「でも…」  
「これに入れられるなら、君にもむりやり入れてる。  
 倉庫の場所を突き止めたんだ。これしか持ってこられなかったけど…」  
 
「ハワード、あなた…」  
ハワードは声を潜めた。  
「心までのっとられるわけじゃない。操られてるふりをしただけだ。  
 とにかく飲んでくれ。君が死んだら、僕は…、みんなだって悲しむ」  
「わかった、飲むわ。そうね、死んではだめね」  
封を開け、目をつぶってシャアラは一気に飲んだ。  
「おいしいわ…」  
 
「よかった」  
ハワードはシャアラの横に腰掛け、彼女を抱きしめた。  
 
「ハ、ハワード?」  
その強い力に驚いていると、ハワードは一度体を離して  
シャアラの顔をのぞき込む。改めて見るハワードの淡い碧眼は  
ひどく美しくて、シャアラは顔を赤らめた。  
「船にしがみつく君を見てわかったんだ。僕は君が好きだ」  
「え…」  
ハワードはそっとシャアラの額にキスをし、  
それからまた強く抱きしめた。今度は体重をかけて。  
ベッドに腰掛けていたシャアラは、背中からシーツに沈んだ。  
 
「ハワード?」  
ハワードの唇がほほに触れ、首筋に触れる。  
「あ…」  
シャアラが思わず身をすくめると、ハワードがそのあごを指で上に向かせた。  
「お姫様、キスしてもよろしいですか?」  
「あ、は、はい…」  
うっすらとベルに恋心を抱いていたはずなのに、シャアラは  
自分が描いた王子様が目の前に現れたような状況にめまいがした。  
 
ハワードのキスはあくまで紳士的で、シャアラは陶然とその甘さを味わった。  
ハワードはゆっくりと顔を離すと、シャアラの眼鏡に手をかける。  
「ちょっと邪魔だね」  
「うん」  
「シャアラ、とてもきれいだよ」  
今度のキスは少し激しく、シャアラもハワードの舌を懸命に受け止めた。  
ハワードが左手でシャアラの髪をかきまわし、右手でシャアラの腰を  
抱きしめると、シャアラもハワードの背中に手を回して答える。  
ハワードの手が上着の裾から侵入したときも、シャアラは抵抗しなかった。  
 
「やせちゃって…貧弱だし、恥ずかしいわ」  
 
一糸まとわぬシャアラをベッドに横たわらせ、  
やはり衣服を脱いだハワードは、その足下に跪いていた。  
「素敵だ」  
「なんだかハワード、ハワードじゃないみたい」  
「じゃあ、なに?」  
「わたしだけの王子様みたい」  
シャアラはうっとり言って手をさしのべる。  
「そう、あなたの王子ですよ、お姫様」  
その手に軽くキスをすると、ハワードはシャアラに覆い被さった。  
首筋から胸にかけてキスの跡をたっぷりとつける。  
固くなっていたシャアラが吐息を漏らしたのをみて  
ハワードはかすかにふくらんだシャアラの胸を攻め始めた。  
 
「はあっ、ああん…」  
舌の上で転がされたり、舌先でつつかれたり。  
手のひらでやさしく揉まれたり、吸われたり。  
初めての刺激にシャアラは乱れきっていた。  
ハワードの背中に手を回し、なでさするうちに  
手が下に下にとさがって熱く脈打つ塊に触れる。  
「きゃっ」  
「シャアラ…」  
「どうしたの?これ…」  
「シャアラを見てたらこうなっちゃったんだよ」  
 
色白なハワードらしく、内からうっすらピンクに染まった  
怒張をシャアラはまじまじと見つめた。  
「シャアラ、どうしたの?」  
「今度はわたしが気持ちよくさせてあげたいの」  
言うと先端に滲んだ涙のような汁をちゅっと吸う。  
「うっ」  
「かわいい。あなたの名前は今日からグレート・エクスカリバーよ」  
腰を捕まえて、そのまま口で深くくわえていく。  
「うぐ…」  
「う…大丈夫?」  
「う、うぐっ、らいひょうう゛」  
 
「ああ、シャアラ…気持ちいいよ」  
ハワードが徐々に腰を使い始め、二人のリズムが合うと  
先端が喉の奥に当たるようになり苦しくなってきた。  
「うぐっ、うぐっ、んっ、ぐっ、んんっ…」  
「シャアラ、イッちゃうよ!」  
唐突に悲鳴を上げると、ハワードがシャアラの頭をつかんだ。  
何を思ったのか、ぐっと腰に押しつけられてシャアラは息が詰まった。  
次の瞬間、ハワードのペニスが跳ねたかと思うと  
口の中に熱くどろっとしたものが噴出したのだった。  
「ぐふっ、ぐっ、コホッコホッコホッ…」  
それが気管に入ってしまい思わず咳き込むと  
グレート・エクスカリバーははじき出されてしまい  
シャアラの顔には大量のミルキーウェイがかかってしまった。  
 
「コホッ …ごめんね、飲んであげられなくて」  
「飲めなかったの?」  
「う、うん…」  
問いただされてシャアラは赤くなった。  
(普通飲むものなのかしら…?」  
「いいよ、じゃあ今度は僕の番だ」  
ハワードはゆっくりと押し倒すと、シャアラの股間に手を押し当てた。  
そのまま指でゆっくりとこじ開けていく。  
 
「ひゃうっ」  
「シャアラ、すごく濡れてるよ」  
「ああん…」  
「太股まで濡れてる。ほらね」  
ピチャピチャと音を立ててからハワードはべっとり濡れた  
三本の指をシャアラのほほにこすりつけた。  
精液と愛液の匂いがまざりあってシャアラはくらくらした。  
「指、入れるよ」  
「うん…」  
 
ハワードの指がずぶずぶと沈んでいくのがわかる。  
異物が入った感じはあるが、痛くはない。  
ゆっくりと抜き、ゆっくりと入れる。  
そのたびにぞくぞくと甘い感覚が湧き出してくる。  
「あ…、ひ…」  
シャアラはシーツをつかんで腰を浮かした。  
「シャアラって感じやすいんだね」  
 
ハワードはおもむろに指を抜き、シャアラの太股を押し広げた。  
「いいね?」  
「う…、え?」  
ぐっと熱いものが押し当てられ、押しつけられるのがわかる。  
「ハ、ハワード?」  
まだせまい骨を押し開くようにして、めりこんでくるもの。  
「うあっ、あっ、痛っ!」  
「よく濡れてるから入れやすいよ」  
ハワードはシャアラの太股を持ち上げて股間を上に向かせ  
自分は上から体重をかけるようにして押し込んだ。  
「ああああっ、嫌、嫌あ!」  
望んだはずなのに、いざとなると怖かった。  
 
「シャアラ…、僕のこと嫌いなんだ…」  
シュンとしたハワードに悪くて、シャアラは思わず首を振った。  
「いいえ、好きよ。大好きよ。でも…」  
「でも、何?」  
「わたし…その、初めてだから…」  
心の準備が、そう言いかけて口ごもった。  
「そうか。でも心配しないで。大丈夫だよお姫様」  
言葉とは裏腹に、ハワードは強引にコトを進める。  
「あぐぅ!つっ!痛っ!」  
「んっ、なかなか入らないね」  
ハワードは出したり入れたりを繰り返しながら奥を目指し、  
シャアラは性行為の現実に青ざめていた。  
「ぐうっ、やめてハワード、痛いの…」  
「ああほら、根元まで入った」  
 
ごらん、と言われてシャアラはひじを使って上半身を持ち上げた。  
そして声もなくグロテスクなその光景を見る。  
自分の産毛のような陰毛とハワードの淡い毛が混じりあい、  
腰と腰がぴったりくっついて自分の愛液でびしょびしょに濡れている。  
この奥にはハワードの性器があって、自分の中にすっかり埋まって…  
「いやぁ…」  
破瓜の痛みよりも、心が痛んでシャアラは泣いた。  
(こんなはずじゃなかった。  
 わたしの初めてはもっとロマンティックで…)  
 
「これはエクスカリバーだから、王子でないと抜けないのさ」  
言いながらハワードは少し抜いてみせた。  
充血でほとんど赤く見えるそれはシャアラの蜜でてらてら光っている。  
「中は凄く熱いんだ。それでぐちゅぐちゅなんだよ」  
ハワードが再び押し込んだとき、シャアラにも湿った音が聞こえた。  
くちゅ…  
「ああ…もう抜いて…」  
「じゃあ少し抜くよ」  
ずる…  
「また入れるけどね」  
くちゅ…  
目の前で赤らんで血管の膨らんだハワードの陰茎が見えかくれする。  
ハワードが抜いてみせるたびに、シャアラの愛液が溢れ出す。  
体の奥に異物感と痛みと、認めたくない快感があった。  
 
ぐちゅ…ぐちゅ…ぴちゃ…  
「はぁっ、んっ、んんっ、ハワード…」  
「ん…なに…?お姫様?」  
「キ…キスしてほしいわ…あ、ん…」  
言い終わるか終わらないうちにハワードの顔が近づいて唇が塞がれた。  
(ハワードは本当の王子のように紳士的で、  
 どんなロマンティックな要求にも答えてくれる。  
 初めての私をいたわってゆっくりしてくれているし、  
 ちょっと最初はショックだったけど、幸せな気分だわ)  
 
「ごめ…シャアラ、僕そろそろ限界だ…」  
しばらくして、ハワードが耳もとでささやいた。  
シャアラはハワードのほほを両手で挟むと微笑んだ。  
「ハワード、好きにしていいわ」  
許しを得てハワードの動きが早まる。  
「あっ!ぐっ!うぐぅ!んあっ!」  
胎内を回される衝撃にシャアラは呻いたが、  
これでハワードが気持ちいいならと思うと逆にうれしかった。  
「ハワード…気持ちいいのね…?」  
「ああっ、シャアラ、もう出るっ!」  
 
「えっ?ちょ、中はダメよ!?」  
焦るシャアラにおかまいなく、ハワードはシャアラの腰を  
引き寄せてより激しく打ち付けた。  
「えっ?うあっ!あっ!だめぇ…ああっ!」  
「出るよっ!くっ!うあっ!」  
ハワードはシャアラの腰を強く抱き締めるとブルッと震えた。  
そして残りを絞り出すように、ぐっぐっと奥に押し付ける。  
熱い何かが体の奥でじわっと広がるのをシャアラは感じ、茫然とした。  
ハワードが腰を引き寄せたため対面座位のようになっていたが、  
射精したハワードはそのまま腕の中で脱力してしまった。  
 
「済んだか?」  
 
聞き覚えのある声がして、シャアラは我に返った。  
見回すといつのまにか監視ドローンがベッドのそばに戻っていた。  
「ひっ!」  
 
「思わぬ時間がかかった。やはり人間は非合理的だ」  
 
「ど、どういうこと!?」  
どうやら通信機能がついているらしいドローンに向けて  
シャアラは叫んだ。  
「どういうこと?ハワード?」  
ハワードはぐったりして答えない。  
 
「ナノマシンは粘膜から吸収すると言ったはずだ。  
 経口で摂取しないので、このような手段を取った」  
 
「手段って、それじゃハワードは…」  
 
「おまえをスキャンしたときにわかった性癖に従い、  
 この男におまえが理想とする性行為のプログラムを与えたのだ」  
 
「そんな…」  
(私が理想とする?)  
目の前がクラクラしはじめた。  
 
「その男の体液にあったナノマシンが、いまおまえの粘膜から  
 体内に吸収されている。2、3時間したら通信のできる体になるだろう」  
 
絶望で目の前が暗くなった。  
「嘘でしょう、ハワード」  
腕の中のハワードがぴくりと動いた。  
はずみでずるりと陰茎が抜け、蓋をされていた精液が溢れだす。  
破瓜の血が混ざってピンク色になった、泡立った精液。  
(このなかにナノマシンが…なんてこと…)  
「済んだんだな」  
冷えた声がしてハワードがドローンの方を向いた。  
顔をゆがめて見たこともないような笑みを浮かべる。  
 
「済んだ。次に呼び出すまで好きにするといい」  
 
ドローンはふいっと方向を変えると廊下に出ていった。  
残されたのは茫然自失のシャアラと、目つきのすわったハワード。  
「さて」  
ハワードは立ち上がると、まっすぐロッカーの一つに歩み寄り  
中からロープを取り出した。  
そして嫌な笑いを浮かべたままシャアラをねめつけた。  
 
「始めようか、お ひ め さ ま 」  
 
 
 

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