「ルナ、寝るな」  
「ん…」  
 
重いまぶたを上げると、炎のゆらめきが見えた。  
たきぎのはぜる音と風の音が耳に入ってくる。  
体が鉛のように重い。  
 
「ルナ、寝ると体温が下がる」  
 
目を開けると、カオルの怒ったような横顔が間近にあった。  
 
「あっ!」  
 
いつのまにかカオルの肩にもたれかかって寝ていたのだ。  
すっかり眠りこんで体重を預けているのに気付き、  
ルナは赤くなってピョンと体を起こした。  
 
「ごめんっ!」  
「いや」  
「わたし、どれくらい寝てた?」  
「一瞬だ」  
「…カオルのほうが疲れてるのに、ごめんね」  
 
「いや…」  
 
カオルはたき火に向き直った。  
黒い瞳の中で炎がゆらめいている。  
泣き腫らした目は潤み、頬と鼻はまだ赤い。  
口に出すことで心の傷は開く。  
そして、そう簡単に痛みは消えないのだ。  
 
「吹雪、止みそうにないね」  
「ああ」  
 
会話はすぐにとだえた。  
黙っていては気詰まりなので、ルナは  
当たり障りのない話をすることにした。  
 
「カオル、聞き流していいからね」  
 
「ん?」という顔でルナを見る。  
 
「たいした話じゃないけど、黙ってると  
 また寝ちゃうかもしれないから話させて」  
 
ひとつうなずいて、カオルは視線をたき火に戻した。  
ついでに脇にあったたきぎを一本つかむ。  
 
「この間、二人で留守番してたときにベルが言ったんだけど、  
 凄く寒い時は服を脱いで裸で温め合うのが一番いいんだって」  
 
ボスッ  
カオルが投げたたきぎは、たき火を通り越して岩に当たった。  
 
「不思議でしょう?でも、ミツバチは体を寄せあって  
 出した熱でスズメバチに対抗するんだー、なんて熱弁するの」  
 
ルナはさも可笑しそうに笑った。  
カオルは立ち上がり、外れたたきぎを火にくべる。  
 
「ふふっ。ベルって、自然のことに詳しいよね」  
「……」  
「カオルやベルがいてくれて、本当に良かったって思う」  
「……」  
「火って綺麗だねぇ」  
「で?」  
「え?」  
「で、それは試したのか?」  
「ミツバチ?」  
「いや、その前の…」  
 
「ふふっ、まさか。ベルは寒い寒いって言ってたけど…」  
 
「…試すか?」  
 
「え?」  
 
「冗談だ。間に受けるな」  
 
パチッとたき火のはぜる音がした。  
カオルの顔は髪で隠れてよく見えない。  
そういえば、こんなふうに誰もいないところで  
カオルと二人だけになるのは初めてだったと気付く。  
 
急に自分の心臓の鼓動が聞こえた。  
 
「ねえ、カオル」  
「……」  
「試そうか」  
 
(わたし、何言ってるんだろう!)  
顔に血が昇る。  
「冗談よ」と笑いとばしたいのに声が出ない。  
 
「訓練校にいたとき聞いたことがある。  
 昔の地球で行われていた方法ではあるらしい」  
 
いたく真面目にカオルが話す。  
ドキンドキンと心臓が跳ねた。  
 
「服を脱いだついでに濡れた服を乾かすと一石二鳥だ。  
 たしかに、理にかなったやり方かもしれないな」  
 
ルナは目をぎゅっと閉じ、そして開いた。  
 
かすかな衣擦れを聞いてカオルが左を見ると、  
たき火の薄暗い灯りのなかでルナが動いている。  
 
「ルナ?」  
 
ルナの背中にマントがわだかまっているのが見える。  
上着に手をかけて一気に脱ぎ、タイツを脱ぎ、  
ミニスカートに手をかけるのをカオルは呆然と見つめた。  
あっと言う間に下着を残して全部脱ぎ去ると  
ルナは自分の体を抱くようにして言った。  
 
「早く来て、カオル」  
 
カオルは慌てて目を逸らした。  
 
「間に受けるなと言ったろう」  
 
「間に、受けてみたかったの」  
 
こうなったら仕方がない。  
カオルはベストと黒い上下を脱いだ。  
肌を温めるには密着させるほかないのだ。  
カオルは意を決するとルナに手を回してきつく抱いた。  
初めて抱く少女の体は冷たく、華奢で柔らかい。  
カオルはぎゅっと目を閉じて衝動に耐えた。  
 
「無茶なやつだ」  
 
「ごめん、でも…」  
 
「…?」  
 
「あったかい。カオル」  
 
ルナもカオルの背中に手を回す。  
 
(もう、どうにかなりそう)  
カオルのしなやかな腕が自分を抱きしめている。  
少し汗ばんだ手のひらがぴったりと肌に触れている。  
目を開けると浅黒くて細いうなじと肩がある。  
胸が高鳴り、呼吸が震える。  
 
首筋に少女の吐息がかかっていた。  
それは規則的ではなく、乱れ、弱まったり強くなったりして  
少女の心が動揺していることをカオルに知らせる。  
自分を怖れているのか?男を怖れているのか?  
「こわいのか?」  
 
耳もとで低音でささやかれると、震えが来た。  
こわい?  
そう、こわい。自分がこわい。  
こんな気持ちは知らない。言葉にできない。  
 
ルナの唇がカオルのうなじにそっと触れた。  
それから遠慮がちに頬にも触れる。  
カオルの前にルナの不安げな顔がある。  
碧い瞳に吸い込まれるように、カオルは顔を近付けた。  
 
思わず目を閉じた瞬間、カオルの唇が触れた。  
ルナの全身に痺れが走り、カオルの理性が消え去る。  
浅いキスを何度も交わしてから、  
カオルはルナの下着を脱がせてひざに手をかけ、太ももを押し開く。  
溢れた蜜が光った。  
 
自分のすべてをカオルに見られている。  
ルナは泣きたいような気持ちがした。  
 
「んっ!」  
熱いものを押し当てられてルナは声を上げた。  
ためらうような動きがルナを翻弄する。  
「ん…んあっ…んん…」  
上に滑った拍子に陰核を刺激した。  
「ああっ」  
 
ルナが14歳とは思えぬ淫らな声を上げて体を反らした。  
その姿にカオルのペニスはますます膨張するが  
童貞のカオルには入り口の見当がつかない。  
訓練校で習った殺伐とした人体図と  
目の前にあるルナのエロチシズムとの狭間で混乱していた。  
 
(カオル、初めてなのかな?)  
もてそうなのにな。  
自分も初めての癖に、ルナはうれしくなる。  
思わず手を伸ばし、びっしょり濡れた陰茎に触れた。  
「こっちよ」  
 
ルナの指に導かれ、カオルはようやく膣口に達する。  
すこし触れただけで、それは別の生き物のように先端を飲み込んだ。  
(うわっ)  
危うく声を飲み込んで踏み止まる。  
それから歯を食いしばり、一呼吸置いて腰を入れた。  
 
「あうっ!」  
ルナは異物が力強く膣内を駆け上がるのを感じた。  
カオルの強い足腰は処女膜をものともしなかったようだ。  
一拍遅れて、腰に衝撃が走った。  
(ああ、処女喪失しちゃった…)  
 
「うっ…」  
根元まで押し込んでしまって、カオルは呻いた。  
熱い。濡れている。絞める。吸い込む。  
じっとしているだけでもざわざわと動いている。  
(漏れてしまう…)  
ルナの顔の横に手をつき、懸命に射精の衝動に耐えた。  
 
カオルが完全に沈黙したのを見て、  
ルナは両肘をついて首を起こし、腰を引いた。  
ずる…  
引き締まった腹の下に、ペニスが少しだけ引き出されたのが見える。  
それは濡れて、炎で赤く照らされていた。  
「あ…」  
そのいらやしさに体がうずき、  
ルナは腰を浮かしてゆっくりと出し入れしてみた。  
 
「うあっ…」  
カオルは思わず声を上げた。  
暴発寸前のペニスがルナに弄ばれている。  
目を開けると、細い首が、華奢な肩が、微かな胸が、  
なめらかな腹が、細い腰が、汗ばんでうねるのが順に視界に入る。  
視覚と触覚に翻弄されながらも、カオルは抽送を再開した。  
「あ…、あんっ、あっ、あっ、ん…」  
ルナの口から甘い嬌声が漏れはじめる。  
 
ずりゅっずりゅっずりゅっ…  
押し込まれ、引き出されるたびに、カオルの形を感じる。  
カオルのペニスは固く引き締まり、ゴツゴツと膣内を摩擦した。  
カオルはルナの上で喘いでいて、多分ルナも喘いでいる。  
ルナの膣内をカオルのペニスがこすると産まれる快感が  
体の中心からじわじわと全身に広がってくる。  
ルナはそれを貪欲に味わった。  
 
もう腰を止められなかった。  
出てしまう、出てしまう、と頭の中で繰り返しながら  
足腰が狂ったように動くのをカオルは止められなかった。  
「ああっ、ああんっ!、あっ、あうっ、んあっ!」  
ルナの声に艶がある。  
くちゅっ、ぴちゃっ、ちゅっ、ぴちゃっ  
二人の体液が立てる音が耳に入ってくる。  
それらすべてがカオルには淫靡すぎた。  
 
「カオル…、わたし…、もうすぐ…」  
ルナは霞む目で、堪えるカオルの顔を見つめた。  
カオルを見ると胸がチリチリと痛む。  
それが快感と連動して、快感を増幅させる。  
「カオル…」  
もう一度つぶやくと、指先がふっと波に飲み込まれた。  
 
突然ルナが背中を反らせ、次いで絞り出すように膣内が収縮した。  
「ああああああああああ!!!」  
かつてない締めつけに、とうとうカオルにも限界が来た。  
(出る!)  
「ルナーーー!」  
本能の赴くまま、子宮に打ちつけるようにして射精した。  
 
びくんびくんと跳ねている。  
びゅるっびゅるっと熱い何かが注入されている。  
ホワイトアウトの中で、ルナはうっとりとそれを感じた。  
跳ねている。熱いもので満たされていく。  
やがてたき火のはぜる音が聞こえ、吹雪の気配が戻り、  
洞窟の岩壁が見え、カオルの息遣いと重さを感じた。  
カオルはしばらく動かなかったが、やがて起き上がった。  
 
蓋をしたように嵌まっているペニスを抜いてみると、  
破瓜の血が混じった精液が一気に溢れだした。  
少女らしく淡い色の膣口から、血の混じった白い体液がどろりと流れる。  
 
ぱっちりとした大きな碧い目で自分を見ているルナと、  
その体に残った自分の痕跡を見比べてカオルは愕然とした。  
自分が最も敬愛する聖少女を、自分はこの手で穢したのか。  
光の中に出て行けない罪深い自分が、  
光に満ちた青空のようなこの少女を犯したのか。  
 
「ルナ、すまなかった」  
カオルは打ちのめされて言った。  
ルナはその言葉を聞いて何故か悲しそうな顔をし、  
それから困ったような笑顔を浮かべて言った。  
「いいよ、カオル」  
 
 
 
 
      おわり。  
 

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