ピロートーク
「ね、カオル」
「…ん」
「もう寝ちゃった?」
「いや、起きてる。…どうした?」
「うん…」
腕枕で寝ていたルナが、甘えるように体を寄せた。
カオルは軽くなった腕でルナの肩を抱き、顔を覗き込む。
ルナはカオルの胸に頬をよせ、はにかんだ。
「あのね、結婚したら…」
言いかけて躊躇う。どうやら新婚生活への注文らしい。
一体なんだろう。カオルの脳裏に様々な単語が浮かんだ。
庭付き一戸ドーム、マイ宇宙船、うん、たぶん買える。
「ルナ、なんでも言ってみろ」
クールで格好いい二枚目、かつてそう評されたカオル。
その包容力溢れる男前な口調に、ルナの顔は明るくなった。
肘で上体を起こし、蒼い瞳でカオルの顔を見つめる。
「結婚したら、赤ちゃんができるじゃない?」
「…え」
「そのことなんだけど…」
いやいや、すでに出来てないのがおかしいぐらいだけどな…
心の中でつぶやきながら、カオルはルナの髪を撫でた。
俺は、ルナにそっくりな女の子が欲しいよ。そして嫁にはやらん。
「わたしね、カオルにそっくりな男の子が欲しいの」
「…え」
「それも、たくさん!」
目つきが悪く無口無表情で動きの早い少年達と囲む食卓。
そんな情景を思い浮かべ、カオルは軽く戦慄した。
ルナはパッと目を輝かせ、いかにも大事なことのように付け加えた。
「あ、でもね、カオルにそっくりなら、女の子でも可愛いと思うの」
「…え」
ルナの脳裏には、黒髪に黒い瞳、細面の美少女が浮かんでいた。
カオルの、強く正しい心と内に秘めた優しさを受け継いでほしい。
男の子でも女の子でも、カオルによく似た子供がほしい。
「中身もカオルに似れば、言うことないわ」
皆、まっすぐ空を見上げ、旅立ってしまうかもしれないけれど。
ルナはカオルを見つめ、少し切なげに微笑んだ。
自分の女性版を想像させられたカオルは、複雑な表情をする。
「カオル…」
ルナはカオルに抱きついてため息をついた。
そして耳元で囁く。
「早くカオルの子供が欲しい…」
「ルナ」
ねだるようなルナの口調が愛らしい。
カオルは彼女に覆い被さった。
遺伝のことはさておき、ルナの望みはすべてかなえてやりたい。
「あ…」
やがてルナの口から甘い声が漏れ、カオルの呼吸が速くなる。
衝動に駆られたのでも、快楽をむさぼり合うのでもなく、
カオルは初めて、その行為本来の目的に向き合っていた。
「ハァ、ハァ、ハァ、…カオルッ」
ルナは苦しげに目を閉じ、甘い声でカオルを呼ぶ。
月光の下で、少し汗ばんだ白い肌がなまめかしく動く。
その奥に、自分の命を宿らせたい。
「ルナ…ッ」
その瞬間、カオルはルナを強く抱きしめた。
もっと奥へ、奥へ。この種が実るように。
「あっ、あっ」
ルナは気が遠くなりそうな快感の中にいた。
体は強く抱かれ、性器は痛いほどに押し込まれている。
固く脈打つそれから熱い塊が噴出しては貼り付いていく。
「カオル、熱っ、熱いよ…」
その晩、カオルは妙に興奮してルナを抱いた。
ルナは自分の何が火をつけたのかわからないながら、
何度となくカオルの熱い熱い精を体の奥で受け取っていた。
「ハア、ハア、ハア…」
もうこれ以上はという状態で、カオルはルナを見下ろしていた。
ルナはすでに意識を失い、月の光に安らかな寝顔を晒している。
カオルはその頬にそっとキスをした。
「子連れの結婚式も、いいかもな」
カオル君とピロートーク 完