「か、書けない…」  
シャアラはキーボードの上に突っ伏した。  
執筆中の恋愛小説は佳境に入っているのに、さっぱり筆が進まない。  
(ルナの顔を見たら、気分が落ち着くかと思ったのにな…)  
机の上に飾ってある、サヴァイヴでの記念写真に目をやる。  
視線はハワードを通り過ぎてメノリで止まった。  
 
はじめて人前に出した作品のヒーローはメノリだった。  
凛々しい彼女を花園の妖精に、というアイデアが浮かんだ途端、  
シャアラの頭の中で、瞬く間にストーリーが出来上がった。  
可憐な少女、気高い妖精、花園を守る戦い…  
 
あの頃のシャアラは自分の想像した世界が形になっていくのを、  
物語の外に立って、とても幸せな気分で眺めていた。  
自分が強い力で物語に引きずり込まれた、あの砂漠に行くまでは。  
 
ピンポーン  
 
「こんな時間に…誰かしら?」  
モニターには誰も映っていない。  
チェーンをかけたままビクビクとドアを開けると、  
廊下に見慣れた金髪が座っているのが見えた。  
 
シャアラが一人暮らしを始めた部屋の前に  
ハワードが花束を持って立って居た。  
「あ・・・こらっ閉めるな!」  
 
こんな時に会いたくない頭痛の元凶がそこにいる。  
「仕事はどうしたのよぉ・・・」  
シャアラがチェーンの隙間からおそるおそる話しかける。  
 
「終わった」  
「本当に・・?」  
「信じないのか?」  
疑う必要がないなら、こんなに悩む必要も無い。  
 
「貴方っていつも調子がいいんだもの」  
ハワードは辺りを見回すと  
「とにかく中入れてくれよ、寒いから」  
冷えた外気がドア越しに入ってくる。  
 
「私だって〆切が迫ってるの、帰って・・」  
「シャアラぁ・・・」  
しょんぼりと男の呟きが聞こえる。  
<わかってる・・・ハワードだって仕事の空いた時間に来たのだから  
 この機会を逃せば次はいつ会えるか判らない・・・>  
 
「怒ってるのか?」  
「お・・・怒ってなんかいないわ」  
「なぁシャアラ、いいかげんに・・・・あっ誰か来た!」  
「えっ!!」  
同じ階の住人だろうか。  
人の気配を感じ慌ててシャアラはドアのチェーンを外した。  
 
「はーー寒かった!!」  
ドアを開けた途端シャアラは強い力に抱きしめられた。  
「ハワード苦し・・っ」  
 
(はぁはぁ・・・)  
振ほどきシャアラは再びチェーンを閉めなおすと  
そそくさとキッチンへと進んでいった。  
しっかり客人にスリッパを用意して――  
 
「お姫様、機嫌を直して下さいな」  
スリッパを履いてキッチンへ後を追うと  
ハワードは手にしていた花束をシャアラへ手渡す。  
「ハワード・・・」  
「あん?」  
「これファンの人から貰ったんじゃないわよね」  
「当たり前だろ;」  
 
「ありがとう・・・」  
「/////・・」  
 
「仕事してたのか?」  
隣室の机の上にあるパソコンに目をやる。  
「読まないで・・・!まだラストが纏まってな・・・!」  
慌ててパソコンをしまおうと振り向いた時、  
手にしていたティーカップを落としてしまった。  
――ガチャン☆  
 
「大丈夫かよ!」  
「うん」  
「片付けてやるよ、掃除ロボないのか?」  
「そこの棚に・・・」  
<だめだ・・・ひどく動揺してる・・・>  
 
「上着羽織って来いよ」  
「え?」  
「煮詰まってるなら出かけた方がいいだろ、行こうぜ」  
 
(さっきは廊下で寒がっていたのに…)  
シャアラは肩をすくめる。  
「ちょっと待って、お茶が入るの」  
ハワードを座らせておいて、手早く紅茶を入れる。  
少し体を温めてあげよう。  
「ミルクティーでいい?」  
「ああ」  
手渡すときに触れた指は冷たかった。  
それでも、シャアラの煮詰まった様子を見抜いたら、  
自分のことなんか忘れて息抜きに外に行こうと本気で言い出す。  
 
(悪い人じゃないのよね)  
大仰な身振りで味の批評をしているハワードを見ながら思う。  
「それより、茶葉の保存状態が悪いんじゃないか?僕の家では…」  
(悪気はない、と言ったほうが正しいのかしら)  
ティーカップがソーサーに置かれたのを見て、シャアラは立ち上がった。  
「上着を取ってくるわね」  
 
 
「よ、夜の公園って…結構人が多いのね…」  
「あ、ああ、思ったより賑やかだな…」  
ほとんどのベンチは濃厚に愛を交わす男女で埋まっていた。  
噴水の前をぐるぐる回ってようやく空いたベンチを見つけ、座る。  
シャアラは目のやり場に困って上を向いた。  
ドーム越しの夜空はぼんやり街の明かりを反射し、月も星も見えない。  
「あーあ、サヴァイヴが懐かしいなぁ」  
シャアラはマジマジとハワードの顔を見た。  
「なんだよ」  
「い、いえ、意外だったから。あなたがそんなこと言うなんて」  
「ちぇ。僕だって本物の夜空の良さはわかるんだぞ」  
 
「ルナがね」  
沈黙の後、シャアラは口を開いた。  
「地球の空もきれいになってきたって」  
「あー、いいなあ。そうだ!行こうぜ、地球に」  
「え?」  
「シンゴやメノリにも声をかけて、みんなでさ」  
「あ…」  
 
メノリの名前を聞いて、胸に痛みが走る。  
「どうした?」  
「いえ、あの…、メノリ、元気だった?」  
口に出してしまってすぐに後悔したが、ハワードはあっけらかんと答えた。  
「うーん、絶好調だったな。下半身裸で仁王立ちしてたよ」  
「え…?」  
 
となりのベンチでは、キスに飽いたカップルが板を軋ませ始めていた。  
 
〜下半身裸デ、仁王立チシテタヨ  
「え…?;」  
 
〜下半身裸デ、仁王立チシテタヨ  
「え…?;;」  
一瞬固まってしまった。意味が判らないほど子供ではない。  
 
「だからさぁ、つまり最中・・・」  
「い・・言わないでっ」  
慌てたシャアラが眼鏡を押さえる。  
「なんて時に行ったのよぉ;」  
「僕のせいじゃないぞ☆普通昼間の秘書室でヤルか?」  
作家の悲しい性か、その状景が在り在りと頭に浮かぶ。  
(メノリ・・・?;)  
でもホッした。ハワードとずっと居た訳じゃないんだ。  
(ごめんね、メノリ)なんとなく友人に対して罪悪感を感じ  
シャアラは心で謝った。  
 
「メノリの相手は誰だと思うv」  
ハワードはまだ話題を続ける気だ。  
「だぁれ?」  
遂、聞いてしまった。  
「アダムだったんだぜ」  
「アダム!?」  
 
星の瞬きや月明かりのないドームの中で唯一  
甘いムードを演出する噴水のイルミネーションが  
静かに点滅していた。  
 
夜の公園はカップル達が愛を確かめあう。  
噴水のイルミネーションが青色・・・赤色・・・黄色・・・と  
交互に輝いている。  
その前でY談をする私達・・・。  
 
アダムは確かにメノリの事が大好きだったけど・・・  
大人になったアダムはやっぱり両親に似てるのかしら?  
そもそもアダムとセックスってどうやってヤルの??  
 
メルヘン少女の豊かな想像力は際限なく溢れる。  
これでは妄想少女だ。  
「おい、何想像してんだ?」  
「・・・あ」  
 
ふと我に帰るシャアラ。  
「ごめんなさい・・・すごく意外だったから」  
あえて周りは見ない様に答える。  
「だよな〜あのアダムがだぜ」  
 
「それでハワードはどうしたの」  
「お邪魔虫は退散〜って事で警備員に追い出されたよ」  
「何よそれぇ♪」  
 
思わず笑いが吹き出す。  
気付いたら、さっきまでの緊張が解けて心が暖まってくる。  
「シャアラ・・・」  
ハワードの(ちょっと)真面目な視線に気付いたのはそのスグ後。  
 
 
ハワードの手が伸びてきて、シャアラは反射的に身をすくませた。  
が、その手はシャアラの肩も頬も素通りして後頭部を触る。  
「え?なに?」  
「動くなよ」  
ハワードは両手を使い、シャアラが髪をまとめていたゴムを取った。  
ポニーテールにしていた豊かな髪が肩に流れ落ちる。  
つづいてハワードはシャアラの眼鏡を取った。  
 
「そ、そんなにじろじろ見ないで」  
「なんで?」  
「…恥ずかしいのよ」  
「なんだそれ、普通逆だろ?…っと、逃げるなって」  
ベンチから腰を浮かそうとしたシャアラの肩を、ハワードが押さえた。  
「シャアラの顔がよく見たいんだ。最近見てなかったから」  
顔を赤らめてうつむくシャアラのあごに手をかけて上向ける。  
薄緑の無垢な瞳に街灯が映って揺れた。  
 
「きゃー、ちょっとあれ、ハワードJr.じゃない☆」  
「えー、あのいまにもキスしそうな人?」  
「うそうそ、こんなとこにいないって」  
「でも万が一ってこともあるし☆」  
「一応撮っとく?」  
二人はフラッシュが焚かれる前に走り出した。  
 
「逃げたわ!」  
「本物よ☆」  
 
「ど、どうする?ハワード!」  
「こっちだ!」  
「え?うちはあっち…」  
「僕がとったホテルの方が近い!」  
「そ、そうなの?」  
「それに…」  
 
「「ハァ、ハァ…」」  
数分後、高級ホテルの絨毯の上で二人はへばっていた。  
すぐにコンシェルジェが現れ、苦笑しながら二人をスウィートに案内する。  
 
「わあ!」  
「いい見晴らしだろ?地上の星さ」  
「…ねえ、ハワード。さっき、『それに…』って言ったの、なに?」  
「ああ、もういいよ」  
「気になるわ」  
「あー…、家までつけられたら、シャアラに迷惑がかかるだろ?  
 その点このホテルならセキュリティーもバッチリだからさ」  
(そんなことを、考えられるようになったのね…)  
 
シャアラは、あの頃よりも高い位置にある、広い背中を見上げた。  
 
「ハワード」  
シャアラは、夜景に興奮しているハワードを後ろから抱きしめた。  
赤いシルクのシャツに頬を寄せる。  
「メノリが好きだったのね…」  
「そ、そんなんじゃないぞ!…とも言い切れないんだよなぁ。ごめん」  
「昔、色々あったのよね…」  
「うん」  
 
窓ガラスに手をついて黙り込むハワードの表情は読めない。  
しかし、シャアラは不思議と穏やかな気分になっていた。  
「わたし、それでもいいと、思えるようになったみたい」  
「シャアラ?」  
「考えてみれば、最初からそうだったわ」  
「どういうこと?」  
「あなたは無神経でわがままでいい加減な人だけど、わたし、  
 そういうところも全部ひっくるめて、あなたが好きみたい」  
 
振り向いたハワードは、服も顔もズルッと崩れていた。  
「…それは、喜ぶべきなのか?」  
「もちろんよ」  
情けない顔ににっこり笑いかけて、シャアラはつま先立った。  
ハワードはあわてて少し背をかがめる。  
唇が触れ、シャアラは両腕をハワードの首に回した。  
ハワードの手はシャアラの背中に回り、強く引き寄せる。  
二人は数ヶ月ぶりに、深い深いキスを交わした。  
 
「あ…」  
上着が絨毯の上に落ちた。  
続いてブラウスのボタンが外されていく。  
空調は完璧だから全く寒くはないが、窓際での行為には抵抗があった。  
「ま、待って」  
「シャアラ」  
逃げようとするシャアラを後ろから抱き留め、下着に手を入れる。  
「きゃっ!」  
「一番高いビルだぜ? 誰からも見えないさ」  
首筋に吐息と、それから唇を感じる。  
シャアラは強化ガラスに両手をついて、愛撫に耐えた。  
「あっ、ん…っ」  
「相変わらず、脱がせにくい服が好きなんだな」  
ハワードの右手がキュロットのボタンを外すと、落ちて足下にわだかまった。  
 
シャアラの眼前に広大な夜景が広がる。  
あの日サヴァイヴを後に皆で見た宇宙の星屑を思い出した。  
「あっハ・・ハワードっ・・・私・・お風呂に入りたい・・」  
「じゃ、後で一緒に入ろうぜ」  
 
「あ・・・あん・・っっ」  
下着の奥の一番敏感な蜜に手を入れられ、シャアラの足が  
バランスを崩しそうになる。  
それをすかさずハワードは抱きとめる。  
「ベット行くか」  
「・・・うん・・・」  
 
シャアラを柔らかなシーツに沈めるとハワードは上半身を脱いで  
上になった。  
 
横たわるシャアラの首筋を素早く愛撫する。  
耳たぶを軽く噛んで頬へと唇をやる。  
 
(は・・・んん・・・あ・・・)  
白いシーツの上に重なった二人の足が滑る。  
「は・・・ハワードぉ・・・」  
甘い吐息に混じり息づかいが荒い。  
「シャアラぁ・・・っ・・・ん」  
会えなかった時間を埋めるかの様な深いキス――  
抱きしめられた強い背中を辿り、柔らかな金髪へと指を伸ばす。  
 
身体が熱を帯びている。  
ハワードはシャアラのパンティを剥ぎ取るとほんのりと開くピンク色の  
粘膜へと指を押し入れた。  
くちゅ・・・  
「はア・・・ァ」  
「待ってろ・・・」  
ハワードは身体をずらすと、今にも滴りそうな愛液へと舌を滑らせる。  
「あぁっあ・・」  
ぺちゃ・・・ぺちゃ・・・  
ゆっくりと舌がシャアラの秘部を掻き回す。  
「は・・・あぁァ」  
唾液をたっぷりと流し籠められシャアラはシーツをギュッと握りしめた。  
 
すっかり潤ったのを見はかり、膝立ちになるとハワードは  
自らのズボンへと手をやりジッパーをはずした。  
太くて大きな男の象徴が顔を出す。  
シャアラの両足を左右に開くとゆっくりと押し入れた。  
 
何度も愛したその身体を今度はシャアラが強く強く抱きしめる。  
ハワードの唇がシャアラの顎をつたい、伸びた長い指で乳房を攻めた。  
先の尖った乳首へと舌を這わせ何度も吸い上げる。  
 
「あぁぁ・・・はぁ・・・」  
快感が徐々に身体を支配する。  
「あぁ・・・あぁ・・・」  
密着した腰の動きが激しく上下するとやがて  
最初の絶頂が二人を迎えた――  
 
男性の重みを全身に感じながら、シャアラは昔を思い出していた。  
14歳のハワードは、ルナやメノリとたいして背の違わない、華奢な少年だった。  
あの砂漠の地下で、お互いが生きている喜びに何度も交わったとき、  
胸にぐったり押しつけられた彼の金髪を、そっと抱きしめたのを覚えている。  
 
「ハワード、お風呂を入れてくるわね」  
さっき走ったのと、いまのですっかり汗をかいてしまった。  
これ以上汗臭くなるのは、ちょっと恥ずかしい。  
「…ん」  
ハワードはまだ息を荒くして、汗ばんだ体を横たえている。  
シャアラは少し微笑むと、シーツを胸に巻いて立ち上がった。  
 
黄金色の蛇口をひねると、大理石とおぼしき丸いバスタブに湯がたまっていく。  
ふと思い立って、バブルバスの液体を注いだ。  
「いい香り」  
先に入ってしまおう、と、シャアラはシーツを脱衣所に落とした。  
 
ふかふかの泡から飛び出した手足をまじまじと眺める。  
白い胸に淡い跡が転々とつき、乳首は吸われすぎて紅く染まっている。  
脚を開き、指でそっと秘所に触れる。  
「あ」  
たった今注がれたばかりの体液が溢れた気がした。  
 
「シャアラ、何してんだよ?」  
「ハワード!」  
耳の後ろから声が聞こえ、シャアラは赤くなって泡の中で飛び跳ねた。  
「お、お湯が入ったわ。さあどうぞ」  
「おい…」  
ハワードは飛び散った泡で、顔面泡まみれになっていた。  
 
「あのさ…」  
「なによ」  
「もっとこっち来いよ」  
ジャグジーの反対側に座っていると、ハワードがあきれたような声を出した。  
「うん…」  
シャアラは顔を赤らめながら10センチほど寄った。  
そのとたん、手首をつかまれ引き寄せられる。  
 
「きゃ・・・っ」  
勢いでバスタブの湯がザブンッと零れた。  
シャアラは広い胸にすっぽりと埋まってしまった。  
 
「こんな明るいところで一緒に入るのって・・・恥ずかしい・・・」  
「そういえば初めてだったか」  
温まって血行の良くなった掌をプニプニと揉まれると  
まるで指先から全身が性感帯の様だった。  
湯気の舞うバスルームに再び甘い吐息が漏れる・・・  
 
深い碧の瞳がうっとり見上げている。  
頬と唇に血が通い、髪を上げてむき出しになったうなじが艶やかだ。  
ハワードは吸い寄せられるようにシャアラに口づけた。  
口に侵入する舌に、シャアラが小さな舌を懸命に絡ませる。  
 
「なあ、洗いっこしようぜ」  
ハワードは息の上がってきたシャアラの耳元で囁いた。  
左手でシャアラを横抱きにし、右手を伸ばして石鹸を取る。  
「え、ここで?」  
「おいおい、バブルバスってのはそのためのものだろ?」  
泡だらけの大きな手が、シャアラの乳房を弄びはじめた。  
「きゃっ!」  
感じすぎて慌てたシャアラが水しぶきをあげる。  
「ほらお姫様、もっと力を抜いてくださいよっと」  
「あん、もう…」  
 
頬を染めて身を任せたシャアラの脚に、ハワードの右手が割って入る。  
「あっ、なに?」  
「さあ、さっきの続きをしてあげよう」  
「え?さっき?」  
「一人でここを洗っていただろ?手伝うよ」  
ハワードは熱に浮かされたような調子で囁き、指を潜り込ませた。  
「ち、ちがうわ…、そんなこと、してないわ…」  
「いいからいいから。もっと足を開けよ」  
ハワードの左手は休みなく乳房を愛撫する。  
シャアラは明るい中で自分だけ痴態を見せることにとまどいながらも  
すなおに足を開いてハワードの指を受け入れた。  
 
「ん…、んぁっ、あ…」  
二本の指が出入りを繰り返すたび、シャアラは腰を浮かせた。  
ハワードは雰囲気に酔ったように、耳元で恥ずかしいことを囁く。  
指を引き出し、愛液をシャアラの頬になすりつけ、  
あごに添えて上を向かせ、唇をむさぼるようにしてまた秘所を弄ぶ。  
「んむっ、んっ、んんっ…!」  
「そろそろか?」  
ハワードは笑い、巧みにシャアラを絶頂に誘った。  
陰核を執拗に刺激されて、シャアラは体を反らせる。  
「あっ、ああっ、ああ…っ!」  
 
「待って」  
立ち上がるよう促されたシャアラがけだるげに口を開いた。  
頬は紅く染まり、目は潤んでいる。  
「今度はわたしの番でしょ?」  
ハワードの脚の間にぺたんと座り、両手で石鹸を泡立てる。  
「そこに腰掛けて」  
バスタブの縁を指さす。人が腰掛けられるほどの幅はあった。  
「きれいにしてあげるね…」  
金髪の陰毛から屹立したピンクの陰茎をそっと泡で包む。  
丹念に洗う間、ハワードはシャアラの髪を撫でていた。  
「きれいになったわ」  
シャワーに手を伸ばし、湯で泡を流す。  
「待って、仕上げをするわね」  
そう言うと、舌先を尖らせて先端を舐め始めた。  
 
雁首の裏から根元まで丹念に舌を這わせる。  
ハワードはシャアラの髪に指を潜り込ませた。  
やや大きさを増した陰茎を、シャアラは躊躇わずに口に含む。  
喉に当たるまで飲み込み、指も使って刺激を与えた。  
「ん…っ」  
ハワードの息が上がっているのがわかる。  
髪に触れていた指に力がこもる。  
 
(かわいい人…)  
この子供のような青年への愛しさでいっぱいになりながら、  
シャアラは彼の分身を、とても美味しいもののようにしゃぶり続けた。  
やがて陰茎が震え、痙攣し、熱い塊をシャアラの喉に吹き出す。  
ビクビクと動いて口から飛び出し、顔に精液を浴びせた。  
 
「はあっ、はあっ、はあっ…」  
「ケホッ、ケホッ」  
「…だ、大丈夫か?シャアラ」  
「ケホッ、うん、ハワードのだから、平気。あ…」  
「どうした?」  
シャアラは半勃ちの陰茎を手に取り、先端を舐めた。  
ハワードの腰がびくっと引ける。  
「またきれいにしなくちゃ」  
ハワードはシャアラの豹変ぶりに呆然としていたが、  
堅さを取り戻すとすぐに、シャアラに後ろを向かせた。  
そのまま足を開かせ、尻に手を当て、ぐっと腰を入れる。  
奥まで入った衝撃で、シャアラは慌てて浴槽の縁にしがみついた。  
「ハワード…ハワード…ハワードォ…」  
 
浴室の大理石に、シャアラの甘い声が反響する。  
 
「くっ・・・シャアラ――・・・っっ」  
ハワードの強い衝撃が勢いを増す。  
「八・・・ぁっ・・・だ・・・ダメよ・・・っ  
あっ・・・そんなに強く・・・っぁんん!!・・」  
ザバザバと浴槽の泡が揺れる。  
激しく衝かれシャアラの胸がぴっちりと浴槽の縁に押し付けられた。  
 
「ぁぁあ・・・気持ちイ―・・・っ」  
ハワードの男根がグニグニと入り込みピストンがくり返される。  
肉璧を掻き回され乙女の快感は限界が近かった。  
「アぁぁ・・・っっイくっ・・・ィイっちゃうっっ」  
先ほど自分が行っていた行為が比較にならないほど  
甘い興奮が全身を駆け巡る。  
「ぁあぁぁぁ・・・ッッ―――」  
快楽の絶叫とともに一瞬意識がそこで途絶えた・・・  
 
 
――・・・ラ・・・  
―・・・ャアラ・・・  
「シャアラ?」  
「ぁ・・・・ハワード」  
泡の中で目覚めるとシャアラはハワードに抱きしめられていた。  
 
黄金色の蛇口からは絶えずドボドボとお湯が溢れている。  
「気持ち良かったか・・・」  
頬に唇をやり耳元で囁く。  
どれくらい気を失っていたのだろうか・・・。  
――5分?―――10分?  
 
「・・・すごく・・・」  
何も考えられないほど、こんなに乱れたのは久しぶりだった。  
心なしか喉も痛い。  
湯船の中で重い下半身を感じながら全体重を委ねていた。  
 
「ほんと・・・見てると飽きないな」  
濡れた手でシャアラの前髪を撫でる。  
小さな身体で頑張って一生懸命に生きてる。  
無神経でわがままでいい加減な自分を心から好きだと言ってくれる  
この女性が、愛おしい。  
 
「シャアラ」  
「なに?ハワード」  
「一緒に…」  
シャアラはハワードを見上げて小首を傾げる。  
ハワードはその顔をじっと見つめて真剣に言った。  
 
「一緒にいてくれないか。僕のそばにずっと」  
 
シャアラの頬にさっと赤味がさした。  
「それって、結婚するってこと?」  
「い、いや、形はどうでもいいんだ。何でもいいから  
 そばにいて欲しいってだけで…、いつもこうしていれば  
 僕はフラフラしないで済む…じゃなくて、とにかく、  
 今すぐ決めろって言ってるわけじゃないんだ。えーと…」  
 
ハワードは口早に言うと、立ち上がった。  
浴槽から泡と湯が音を立てて溢れ出る。  
「僕は先に出るから、ちょっと考えてろ」  
言い捨ててシャワーから勢いよく湯を出し、頭から浴びる。  
期待しすぎる割に、肝心なときにネガティブになるのが悪い癖だ。  
ハワードは早くも言ったことを後悔し始めていた。  
 
「ほんと、臆病なんだから」  
振り向く間もなく後ろから抱きしめられる。  
二人分の泡が、大理石の上に流れていく。  
「ハワード、こっち向いて」  
ハワードは言われるままにシャアラと向き合った。  
「もう一度言って、ちゃんと」  
 
ハワードは砂漠の時のようにシャアラをしっかりと抱いた。  
「一緒にいよう、ずっと。シャアラ」  
シャアラは真剣な目をしてうなずいた。  
「うん」  
 
 
「で、シャアラと暮らすことにしたんだ」  
ひとしきりノロケを聞いた後で、ベルが言った。  
「まあね」  
ハワードはなぜかポーズをつけ、ニヒルに笑って答える。  
「でも、ハワードはロケで転々としてるから大変だね」  
「ハネムーンみたいなものさ。あいつの仕事はどこでもできるしな」  
「ん?…ってことは、結婚するの?」  
その質問には言葉を濁す。結局うやむやになっていた。  
「うーん、それは、ちゃんと付き合ってからと…」  
「そっか、まあいいや、頑張れよ」  
ベルは爽やかに笑った。  
 
「なんだよ、メノリに会いに行くって言ったときと同じ台詞じゃん」  
「ハハハ」  
「お前、ほんっとルナ以外どうでもいいんだな」  
「ハハハ」  
「そういえば、地球に配属されそうなんだって?お前も頑張れよ」  
「うん、ありがとう。頑張るよ」  
ガッツポーズのベルにフッと笑いかけ、ハワードは衛星回線を切った。  
胸のポケットから櫛を取り出し、ベッドルームに行く前に鏡の前で髪を整える。  
 
朝の光が降り注ぐベッドの上では、シャアラがしどけなく眠っていた。  
仕事柄、美しい女性はたくさん見ている。  
でも、シャアラは他の女性達とは全く質が違う美点を持っている。  
相手の全てを受け入れる強さ、優しさ。  
頭の中がメルヘン妄想でいっぱいなことを差し引いても、  
ハワードのような人間にとっては得がたい素晴らしい女性だ。  
 
「お前に出会えて良かったよ」  
小声でつぶやき、覆い被さるようにして唇にそっと触れる。  
「う…ん」  
亜麻色の睫毛が微かに動き、パッチリとした碧の瞳がハワードを見上げた。  
「おはよう、眠り姫」  
 
シャアラは一瞬呆然とハワードの顔を見つめ、それから極上の微笑みをうかべた。  
「おはよう、わたしの王子さま」  
 
それから二人はゆっくりと口づけをかわし、  
おとぎ話の主人公達がしないようなことを色々しましたとさ。  
 
 

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