「知らなかった。メノリってえっちだったんだねぇ〜」  
とか執拗にアダムの指テクでぐりぐり。  
「や、やめろ、やめるんだっ……ああっ、うそぉっ……も、もっとしてェっ、アダムぅっ……!」  
とノリノリのメノリ様。  
 
 
その時、秘書室の扉が開く。  
宇宙連邦軍人であるメノリの父は固まった。  
 
 
メノリ父「この宇宙人め、なにをしている!  
     そそそその汚らわしい触手を娘から離せ!」(猟銃を構えながら  
 
メノリ「触手?」  
アダム「触手?」  
メノリ「角じゃないのか?それ。触角?」  
アダム「あ、これ?これのことかぁ…///」  
 
アダム「いやだなぁお父さん、これは生殖器ですよ」  
 
 
メノリ「ちょ、アダム。それが生殖器だと?」  
アダム「そんなにはっきり言わないでよ、恥ずかしいよメノリ」  
メノリ「待て。その角から出てきた数本の細い管が生殖器?」  
 
アダム「だったら、何?メノリは嫌なの?」  
 
メノリ「いや、素敵だ!」  
 
メノリの父「ふぅー…」(猟銃を下ろす  
メノリ「お父様…?」  
メノリの父「仕方ない、真の愛を見てしまってはな。娘との仲を認めよう。  
      ゆっくりしていきたまえ、宇宙人…いや、アダモ君」  
 
 
メノリ「はぁ、はぁ…、終わったのか?」  
アダム「まさか。まだこっちを満足させてもらってないよ」  
 
全身タイツの胸元のチャックをおもむろに下まで下ろすアダム。  
 
メノリ「それは…っ!」  
アダム「見たことあるくせに。僕が子供の時にさ」  
メノリ「あ…、それで男の子だとわかったのだったな。てっきり…」  
アダム「さあメノリ、してよ。ハワードにしてたみたいに、足で…」  
メノリ「!」  
アダム「僕が見てなかったとでも?」  
 
メノリのタイツに手を伸ばす。  
 
メノリ「い、いつ…」  
アダム「いつ?いつでもさ。最初は、ヴァイオリンのことで…」  
 
大人になっても愛用している白いタイツが脱がされる。  
 
メノリ「くっ!」  
アダム「僕にヴァイオリンを触らせたおしおきだって言ってた。  
    僕は見ていたんだ。メノリが、ハワードにこうして…」  
 
白い足首を青い手がつかみ、チャックからこぼれた物に導く。  
 
メノリ「やめ…て…」  
アダム「あの頃はただ怖かっただけだけど、今はもうわかるよ。  
    あれは…、おしおきなんかじゃない…!さあ、僕にムゴォ!」  
 
メノリはタイツをひったくってアダムの口に詰めた。  
 
メノリ「生意気を言うのはこの口かァ!」  
 
驚くアダムのとがった顎に指をそえ、上を向かせる。  
 
メノリ「そんな風に育てた覚えはないぞ。…お望み通り」  
アダム「!!!」  
 
白い足の細い指が、青い陰茎を捉えた。  
言葉とは裏腹にメノリの頬は赤らみ、指は優しく蠢き始めた。  
 
メノリ「おしおきしてやる…!」  
      
 
秘書室の扉を閉め《ゴホンッ》と咳払いをする父。  
ヴィスコンティ議員。  
―娘のあんな姿を見たのだから無理もない。  
 
ピーピー・・・  
ふと通信を知らせる音がなると、モニターにオペレーターの姿が映る。  
「どうした?」  
「あ!これはヴィスコンティ議員☆」  
 
「メノリ様に、衛星センターからお電話が入っております」  
(ふむ・・・)  
「メノリは今取り込み中だ。こちらから連絡すると伝えてくれ」  
「かしこまりました」  
父親の胸中は複雑だった。  
 
(母さん、これでよかったのか…?)  
机上の写真立てをみつめる。  
 
「私たちの孫は、一体何色になるんだろうな?」  
 
声が震えた。  
ヴィスコンティ議員はしばらくうつむいて座っていたが、  
やがてふたたび猟銃に手を伸ばし、手入れを始めるのだった。  
 
 
「ですから…」  
宇宙船、ファーストクラスの機内電話。  
そのモニターに映ったオペレーターが笑顔で繰り返す。  
「メノリ・ヴィスコンティは執務中です。折り返しご連絡します」  
?「この僕が直々に電話してるんだぞ?あ、コラ、切るな!」  
 
?「ちぇ…、アカデミー俳優をなんだと思ってるんだ。もう着いちゃうよ…  
  でも、急に訪ねてあいつの驚く顔を見るのも一興かもしれないな」  
 
 
アダム「ングゥ…」  
メノリ「どうした、そんなに涙を溜めて。やめてほしいのか?」  
アダム「ウウッ」  
すっかり屹立した青い陰茎を白い足が弄ぶ。  
アダムは頬を赤らめ、目を潤ませながらも、必死で首を振った。  
メノリ「いい子だ。見てみたいな。お前のカウパー線液が何色なのか…」  
 
 
メノリもすっかり悪乗りに酔いしれていた。  
「は・・・ウグゥ・・フェホォ・・(メノリィ・・)フィ・・・」  
(アダム・・・)  
 
メノリがそう思ったとき、頭の中にアダムの声が響いた。  
(メノリのお父さんて怒ってたの・・・?)  
 
それがテレパシーだと、すぐ分かる。  
なぜ自分にそんな事ができるのかわからないが・・・  
 
(安心しろ。あぁ見えて寛大な父だ。お前を怒ってなど居ない。)  
 
(ボク・・・今日はそんなつもりじゃなかったんだよ。  
メノリに会えたのが嬉しくて・・・!)  
(あぁ分かっている・・・)  
 
思い返せば数時間前―――  
アダムがやって来た。  
数年ぶりの再会。  
秘書としての勤務中ではあったが、珍しく父が  
「積もる話もあるだろうから、秘書室でゆっくりするといい。」と  
時間をくれた。  
 
少し話が弾んだ後、立ち上がったアダムを見て  
「ずいぶん背も伸びたものだなぁ」  
――何気に頭を撫でた時、アダムの顔が紅潮した。  
みるみる内に髪の毛が硬くなり、あの角(らしきもの)から細い管が――  
 
(それから突然、椅子に押し倒されて・・・)  
(メノリがいきなりボクにエッチな事するから・・・!)  
 
☆私かっ?!!!!☆★  
事の発端を再確認し、思わずメノリは指先に力を籠めてしまった!  
その途端に青い陰茎からカウパー線液が溢れ出す。  
 
ぬるっ…  
「あ、ああ、これで滑らかに…って、え?」  
 
蛍光の…緑!?  
眼下で身もだえるアダムの頬はうっすら肌色に染まり、  
その陰茎もサイズを変えるごとにほんのり暖色に染まりつつあった。  
しかし、その先端から漏れ出した汁は、なんか光っていた。  
 
(あ…、あ…、メノリ…激しすぎるよ…っ!)  
「…あっ、すまない。私としたことが」  
 
ぎゅむぅ、と押しつけていた足の力を緩め、慣れた仕草で亀頭を弄ぶ。  
その動きの巧みさに、アダムは背中を反らした。  
「むぐぅ、むぐぅ」  
(メノリ、メノリ、ぼく…もう…)  
 
涙ににじむ視界に映ったのは、薄く桜色に染まった白い顔。  
少しとまどいながらも徐々に淫蕩になっていく、美しい女性の姿だった。  
 
「綺麗だ・・こんな綺麗な色は見たことがない・・・」  
睫毛の長い美しいその顔をアダムはじっと見つめていた。  
 
「アダム・・・その・・・・良かったら・・・」  
(メノリ?)  
 
「口でしてもいいか・・・」  
目前の美しい女性の顔はひどく紅潮していた。  
 
「お前の顔を見ていたら・・・私も堪らない・・・・」  
嬉しい申し出に断る理由などない。  
 
(ハワードにしてたみたいに?)  
「あんなのと一緒にするな。」  
 
(あの時とは違う。お前を見ているとなぜだろう・・・  
なんとも言えない欲情が音をたてて押し寄せて来る。  
この想いは・・・堪らなくいとおしい・・・・)  
「私もまだ満足させてもらっていないぞ・・・」  
 
火照る顔で微笑むと、メノリは着ていたジャケットを置き  
椅子から下りてアダムの前に膝をついた。  
(メノリ・・・ボク嬉しいよ・・・)  
 
 
宇宙連邦の本社ビルは、シャトルポートからエアタクシーを  
使っても10分の距離だ。  
先ほどの電話の主が、連邦本社ビル1階の受付嬢に声を掛けていた。  
「あー、(コホン)こちらで秘書をしているメノリ・ヴィスコンティさんに  
お会いしたいんだが。」  
仕切りの机に肘を立てて、どこかソワソワしている。  
 
「お約束はございますでしょうか?」  
赤い制服に胸元の黒いリボンが似合う可愛らしい受付嬢は  
いつも通りの営業スマイルでイヤミのない笑顔で答えた。  
 
「元ソリア学園の旧友が訪ねてきたと言えばわかるさ」  
「かしこまりました。秘書課に連絡いたしますので  
そちらでお待ち下さい。」  
「・・・あ!あぁ」  
 
男が場から離れると、すぐ隣の受付嬢が声をかけてきた。  
「ねぇ・・・あの人って似てない?」  
「誰に?」  
「ほら!アカデミー俳優の・・・・」  
「まさかぁ・・・本物はもっと格好良いわよ☆」  
そんな会話が交わされる中、再び48階秘書室のモニター音が鳴る・・・  
 
ピーピー…  
その音にハッとして顔を上げると、再びオペレーターの顔が映された。  
「今度はなんだ?」  
「あ、ヴィスコンティ議員」  
 
「メノリ様にご来客です。ソリア学園の同窓生でいらっしゃるとか」  
(なに? さっきの連絡はそれか! ソリア学園? 誰だ?  
 女友達といえば小説家だが、地球にいる開発技師でも来たか?)  
「メノリは手が離せない。…うむ、しばらく私が相手をしよう」  
「ただいまロビーでお待ちいただいております」  
「すぐに行く」  
 
 
アダムの脚の間にかがみこんだメノリが小さく舌を出す。  
落ちてくる髪をかき上げながらゆっくりと近づき、舐めあげた。  
「んっ、んぐっ!」  
 
その声に顔を上げ、笑って手を伸ばす。  
口に詰め込まれていた白いタイツは、唾液ですっかり濡れていた。  
「…ほら、今度は声を聞かせてくれ」  
「ぷはぁっ、はぁっ、はぁっ、…あぅっ」  
 
「ええ!?なんで親父さんが来るんだよ〜、メノリに会いに来たのに!」  
「議員はすぐに参りますので、ソファーでお待ちください☆」  
受付嬢は問答無用の笑顔で言い切った。  
 
「ちょっと、落ち着きのない人ねぇ」  
隣の受付嬢が声をひそめる。  
「さっきからひっきりなしに物を壊したり子供を泣かせたり…」  
「…でも、落とし物を見つけたり迷子の親を見つけたりしてるわ」  
「あれは偶然じゃない?…ねぇ、あの人…」  
隣の受付嬢が耳打ちした。受付嬢の顔色が変わる。  
「ストーカー?」  
「しっ、声大きいって…、あら?」  
「え?…あ!いない!」  
男はロビーから姿を消していた。  
 
 
「はぁっ、はぁっ、アダム、こんなに大きくなって…」  
メノリは白く細い指を巧みに動かしながら、うっとりと舐め回した。  
「わたしが…どんなにお前に会いたかったか…わかるか?」  
じゅっ…と音を立てて先端を吸い上げる。  
 
「うあっ!」  
「素敵だアダム、お前のすべてが欲しい。…わたしにくれるか?」  
言うなり、メノリは口を開いてぱくっとほおばった。  
そのまま頭を上下に動かす。眉根がくるしげに寄った。  
「あっ、あぅっ、…メノリ、全部あげるよ!奪って、ぼくを、全部!あぁ…」  
 
「アダムはいい子だな」  
フッ、と笑うとメノリは膝立ちになりスカートを脱いだ。  
下着はとうの昔にアダムが脱がしている。  
アダムの腰のあたりにまたがって、メノリは優しく言った。  
「アダム、やっと一緒になれる」  
「うん…」  
手探りでいきりたった青い肉棒をあてがい、体重をかけた。  
ぬるっと亀頭が飲み込まれる。  
「ん…」  
「メノリ…」  
「あ…、あ…」  
メノリは呻きながら、徐々に腰を落としていく。  
ややあって内股とアダムの腰が密着し、動きが止まった。  
 
「メノリの中、あったかいよ…」  
「…アダム、お前…よく、ここまで…立派に…ああっ!」  
アダムに突き上げられてメノリは悲鳴を上げた。  
秘書室に、淫靡な音と声が充満する。  
 
「ハァ・・・!ん・・・!あっ・・・アァ・・ッダァムッッ!!」  
メノリの腰が激しく動く。  
「ハァァ・・・ッッ」  
青い異星人と地球人の女の交尾は、いよいよ火がついてしまった。  
 
先ほどの理性など、とっくに吹き飛んでいる。  
メノリは青く美しい髪を乱しながらアダムの頭にしがみつく。  
「はふ・・!っ(ふ・・メノ・・)苦し・・っ」  
 
地球人と生態の違うところ、頭を強く捕まれ  
アダムの頭にある無数の触手は再び刺激された。  
シュル・・・シュルルルル------!!!  
今度はメノリの白いブラウスへと侵入する。  
「・・・っっアダム・・っ?」  
 
ボタンの隙をきれいにぬって、発光する触手は  
柔らかい女の身体を確実に辿る。  
下着の中へ触手を伸ばしバストの膨らみを握りこむと  
ピンッと桃色に染まる乳首を刺激しだす。  
 
「ぁっ・・・っんん・・・っ」  
「メノリ・・・ボク・・止まらない・・・!!」  
無数の触手の動きに、着ていた白いブラウスのボタンが  
また一つ、また一つ弾ける。  
 
ブラウスは柔らかな音をたててスル・・・と肩からずり落ちた。  
メノリの美しい胸が、捲し上げられたブラジャーの下から露わになる。  
 
「あ・・はぁ・・はぁ・・は・・・」  
上は無数の触手で丁寧に弄ばれ、下はグチャリと勃起を飲み込み  
メノリは恍惚に意識が遠のいていた。  
 
父の傍で働く真面目な女秘書――であるはずの自分に  
こんな一面があるなんて・・・理解が出来ない。  
 
「くっ、くはっ、…あっ」  
「メノリ、我慢、…しないで!イッて、いいよっ!うっ!」  
「あっ、ああっ、あぅっ」  
「ぼく、もう、…もう、出、…ちゃう!」  
「あああああっ!」  
 
無数の触手に抱きしめられたと感じた瞬間、メノリは白い波に飲み込まれた。  
アダムに跨ったまま、背中を反らせて硬直する。  
胎内に熱い体液の放出を感じながら、メノリは気を失った。  
(アダムの…、一体何色、だったんだろう…)  
 
アダムはゆっくりと起きあがり、両手をメノリに差し延べる。  
力の抜けた彼女をそっと抱えて、子供のように微笑んだ。  
 
 
「へっへへー、おとなしく待ってる俺様じゃないっての。  
 えーと、メノリの秘書室はどこだったっけな〜」  
以前無理矢理交換した名刺を確かめる。  
「48階、第一秘書室か。ハイ、48階っと」  
エレベーターは男の夢を乗せて軽やかに上昇していった。  
 
 
「なに?いなくなった?」  
「はいっ。それで、あの、エレベーターに乗り込むのを目撃した人が…」  
(そんな、メノリは今アダモ君と!)  
「も、申し訳ございません!」  
「いや…、それより、その客はどんな方かね」  
「それが、若い男性で…」  
言葉に詰まった受付嬢をもう一人の受付嬢がつついた。  
「あっ、そう、映画俳優にちょっと似ていました。なんと言ったか…」  
 
ヴィスコンティ議員の顔色がみるみる変わる。  
(そ、それは多分本人だ…っ!)  
「あっ、議員、どちらへ!」  
 
ツー…ツー…ツー…ツー  
 
<おかけになったナンバーは、現在---->  
(なんで出ないんですかぁぁ…)  
それほど歳をとっている訳でもないが  
頭の毛の薄いマネージャーは、フルフルと手にした携帯シーバーを握り締めた。  
 
――ケビン・ミュータント  
マネージャー歴12年、ベテランと呼ばれる彼の仕事は  
今年度アカデミー賞を受賞した  
イケメン俳優・ハワードJrの付き人である。  
 
奴はよく脱走する。  
仕事の空き時間、ほんの3時間もあれば  
となりの星圏へひょっこりと遊びに行ってしまう。  
 
行動は目茶苦茶だし、態度はデカイし――  
それでも世間で認められるのは  
奴の愛くるしい人柄のせいだろうか。  
ケビンは、それほど嫌いではなかった。  
 
だが、それとこれとは話が別だ。  
あと一時間で捕まえなければ仕事に支障がでる―!  
 
彼は意を決意し部屋を飛び出した。  
 
 
当事者――ハワードは、高速エレベーターの中が  
星(圏)外である事など知るよしもなかった。  
まもなくエレベーターは48階をさす。  
 
扉が開くと、一面の絨毯がハワードを迎えた。  
辺りは人影がなくシーンとしている。  
 
「へぇぇ・・・さすがは上層部の秘書ともなると  
個室がもらえちゃうわけね♪」  
鼻唄まじりで呟き少し歩くと渡り廊下へ出た。  
無数の扉の数。  
 
「第一秘書室・・・どこだよぉっ!!!」  
――迷っていた。  
 
その頃アダムとメノリは・・・?  
 
「ん…」  
「起きた?」  
「アダム?あれ?わたしは…」  
 
上半身を起こし、メノリは自分が応接用のソファに寝かされていたことに気づいた。  
アダムはソファの横に膝をついて、メノリを見守っていたらしい。  
「メノリ、気を失っちゃったんだよ」  
「ああ、そうか…。お前が運んでくれたんだな」  
あの小さかったアダムが自分を抱き上げるようになるとは…  
 
「気持ち、よかった?」  
「え?…あ、ああ」  
「あ、もう。ちゃんと言ってよ。  
 ぼく、メノリのこと、ちゃんと気持ちよくできたのかなぁ?」  
甘えるようなアダムの要求に、メノリはたじたじとなる。  
ややあって、「気持ちよかった、すごく」と小声で言った。  
「うわぁ」  
アダムはメノリの首にしがみついた。  
そのあどけない笑顔が、大人のメノリには少しまぶしい。  
 
メノリはアダムの手をそっと外し、立ち上がった。  
「どうしたの?メノリ」  
「いや、そろそろ仕事に戻…、つっ!」  
机に歩み寄ろうとしてよろめき、そのまま両手を机上に置く。  
(くっ、さっきの腰にきているのか…トシかな?)  
手をついたまま、腰を突き出すような形で息を整えようとした。  
 
アダムの前にむき出しの白い腰があった。  
あくまで細い腰、小降りだが柔らかそうな尻。  
それは十代の少年に再び火をつけるのには、十分な光景だった。  
欲望のままにアダムは青い手を伸ばし、メノリの尻を掴む。  
「あ、おい、アダム!」  
「メノリ、ぼく、もうこんなになっちゃったよ」  
十分に膨張したそれが、後ろから押しつけられる。  
その復活の早さに、メノリはアダムの若さを感じた。  
(やりたい盛り、か…。私たちもあの頃は…)  
 
ふと、ある男の顔が浮かび、あわてて頭を振る。  
と同時に、後ろからもどかしげに怒張が押し込まれた。  
 
「だ・・だめだっ・・・!まだ・・・っ」  
「まだ?」  
 
(まださっきの精液が残って・・・!)  
押し広げられた太ももから、透明の  
(よく見ると青緑色の)温かい汁が滴り落ちてくる。  
 
「メノリ、気持ち良いって言った」  
アダムの逸物がさらに深くに入り込む。  
「あぁ・・っ!!」  
 
「メノリは、ぼくのものだ・・・!」  
ズブリと勃起を突き立てられメノリの身体が弓なりに反る。  
「あぁ・・っ!!」  
 
 
ガチャガチャ☆  
「ここもハズレか!」  
ハワードは使われていない部屋は  
鍵が掛かっている為開かない事に気が付いた。  
「よし!次」  
既に26個目のドアノブに手を掛けている。  
(部屋の名前くらい書いとけよ〜!)  
 
 
「ああ、ハワードなら連邦議会でしょう」  
衛星回線のモニターに映ったたくましい青年は、汗を拭きながら笑った。  
「今日はもう上がりだから、メノリに会いに行くと言ってましたよ」  
「あ、上がりと言ってましたか…」  
 
マネージャーは肩を落とし、青年に礼を言って電話を切った。  
学生時代からの親友という彼は、マネージャーよりも彼の動向を把握している。  
なんのことはない、行動に移す前に誰かに自慢せずにはいられない  
彼の性癖、そして黙って聞いてくれるのがこの青年だけということだが…  
「連邦議会か…、幼なじみでもビルで働いているのか?」  
時計を見る。迷ってはいられない。  
彼がなぜそんなところに行ったかはともかく、連れ戻さなければ…  
 
 
「ちっ、ハワード君め、どこに消えた…!」  
秘書室前の廊下では、猟銃を手にしたヴィスコンティ議員が苛立っていた。  
 
「やめろ・・・アダムっ・・はっんんっ」  
机上に身体を押し付けられメノリは叫んだ。  
 
どうして男と言うのは、こうセーブが利かないのだ・・・!  
あいつもそうだった!  
メノリの脳裏にあの日の事が克明によみがえる――  
 
 
「なぜ私がそんな事をさせなければなない!」  
「そんな事だと〜!僕の大事なもの弄っておきながら」  
ヴァイオリン事件の翌日  
皆が食料探しに出るのに、皮肉にも留守当番になるハワードとメノリ。  
 
「僕が嫌いなら、ルナ達と食料探しに出ればいいだろ!」  
「お前を一人にすれば、また何をしでかすか判らんからな。  
お前こそ食料探しに出たらどうだ!」  
「い〜や〜だ〜ね!」  
 
空はどんより曇ってきた。  
「あれは・・・お前がヴァイオリンを触らせたから、  
罰を与えたまでだ・・・!」  
俯いて口を濁らす。  
 
「へぇ〜・・・それで昨夜トイレから出てきた僕を待ち伏せしてたのか」  
言われて、メノリのこめかみがピクピクと反応する。  
 
「・・・一番効果的な罰だ・・・」  
バツの悪そうな顔をする。  
「変態」  
ハワードが口を尖らせた。  
 
「は!?」  
「だってそうだろ。普通じゃないよな!みんなが帰ってきたら言ってやるよ。  
この委員長様はゆうべ僕の大事な○○○を足で○○○しましたーーってな!!」  
「まっ待て!!」  
 
「なんだよ」  
 
リーダーを降格になって以来、ろくなことがなかった。  
これ以上の屈辱は耐えられない。  
皆の失望した顔が浮かび、メノリは唇を噛んだ。  
 
「な、なんだよ。そ、そんな顔したって怖くないぞ!」  
「一度、だけだぞ」  
「それって…、させてくれるの!?ヒャッホーウ!!」  
「いっ、一度だけだからな。だから…」  
「だから? なんだよ」  
「みんなには…、言わないでくれ」  
頬を赤らめ、消え入るように言った。  
「オッケーオッケー、口が裂けても言わないって」  
「それと、初めてなんだから、…やさしくしてくれ」  
 
「わあ、これが女の中か、すげーよ!」  
「ぐ…」  
メノリは女子部屋のベッドに仰向けになり、ハワードを受け入れた。  
細い脚は大きくM字型に開かれ、結合部には破瓜の血が滲んでいた。  
「ウヒョー、きっもちいい!」  
「ちょ、ハワード…、痛…」  
思った通りハワードは一切空気を読まず、自分勝手に腰を使った。  
メノリは、軽蔑する男に胎内を蹂躙されるのに耐えた。  
(一度だけ、これで終わりだから…)  
 
「うわっ」  
あっけなかった。  
童貞のハワードが射精するのに、たぶん1分とかからなかったろう。  
ハワードは呆然とメノリの腹に飛び散った精液を眺め、  
メノリはほっと安堵して立ち上がり、さっさと後片付けを始めた。  
(やれやれ、今度から罰も考えてやらないとな…)  
フッとニヒルに笑ったメノリの腰に、ハワードがしがみついた。  
 
そう、悪夢はこれで終わったわけではなかった。  
 
「も〜う一回・・・♪」  
「は!?」  
メノリの腰にがしがみつき、ハワードはニンマリと笑った。  
「馬鹿を言うな!一度だけと言ったはずだ!」  
「知らないのかぁメノリ。こういうのは一回って言うんだぜ♪」  
 
「メノリが言う一度の中に回数は入ってないよなぁ〜♪♪」  
いつになく理屈っぽい。  
こいつは悪徳商法か?  
 
「一度も二度もかわらねぇだろ♪」  
再びベットへ押し倒されるメノリ。  
「いやだ・・・っ」  
もがくが、一応ハワードも男だった。  
本気の力に敵うはずもなく・・・。  
 
「だ・・・だれかあっ・・・!」  
さっき結合した部分がヒリヒリする。  
耳元に荒い息がかかる。  
「はぁ!はぁ!メノリ!」  
ハワードは、また強引にメノリの足を打ち開く。  
生々しい怒張が太腿にピタピタとあたる。  
――入れられる・・・・っ  
そう思った時だった。  
 
 
「メノリ・・・?」  
その声に二人はピタッと止まる――  
小さなアダムが女子部屋の壁から二人を覗き込んでいた。  
(そ・・・そういえばアダムも留守番だったな・・・;)  
いけない、こんな状況を小さなアダムに見せては・・・!!  
追い返さなければ――!  
 
せっかくの助け船をメノリはパニックのあまり  
自ら放棄しようとしていた・・・。  
 
「アダム!いい子だから畑に行って手伝ってくるんだ!」  
「メノリ、どうしたの?…おしおき、なの?」  
「ん〜?そうだよ〜、メノリが僕にイケナイことしたからね〜☆」  
「ん?あ、そうだ。何でもいいから早く!」  
小さくなる足音を聞いて安堵する間もなく、貫かれて背中を反らせた。  
思えば、少年の性欲というものをあの日、体で知ったのだった。  
 
 
(おしおき…か。そういえば、妙なことを言うと思っていた。  
 そうか、アダムには見られていたんだな。アレも、アレも…)  
秘書室の机に上半身を乗せるようにして、メノリは眉根を寄せた。  
正確な年齢はわからないものの、アダムはまだ十代半ばのはずだ。  
しかし、すでに男の部分は完成されているらしく、長く固い。  
立ったまま後ろから突かれると立っていられないほどの衝撃がある。  
「くっ、はぁっ、あっ、あんっ」  
 
しかも、だんだん甘い感覚が押し寄せてくるから始末に悪い。  
(もうこれ以上は…、だって…ここは仕事場で…仕事中で…)  
頭ではわかっているが、体が言うことを聞かない。  
そのとき、視界の端に秘書室のドアが映った。  
ぼんやりとした藍の瞳に光が戻る。ドアの鍵が開いている!  
しかも、ほんの少しではあるが、開いてさえいる。  
(お父様、ちゃんと閉めて…いかなかっ…)  
メノリが喘ぎ、アダムを制止しようとした時だった。  
激しく腰を打ち付けながら、アダムが口を開いた。  
 
「偶然だね。僕もいま、そのときのことを思い出していたよ。  
 小さかったから、ハワードが何をしているかわからなかった」  
「え?…あぅっ、あっ」  
「懐かしい思い出だね。ハワードは僕も好きだったよ。  
 でも、僕に抱かれながら他の男のことを思い出すのは…どうかな?」「アダム?…ハッ、まさか心を?…ぐっ」  
奥まで押し込んだ勢いで、アダムは青い腕をメノリに回した。  
胸を強く掴み、指で唇を撫でる。  
「『おしおき』が、必要みたいだね」  
「ま、待て、アダム!…ああっ!」  
 
 
恐るべき強運で警備員を回避しながら第一秘書室を探していたハワードは、  
少し離れた廊下に、見知った人物が猟銃を持って座っているのを見た。  
「うわっ、メノリの親父さんだ!逃げ…」  
逆方向に走りかけて止まる。  
「待てよ?メノリの親父さんがいるってことは、あそこが秘書室か…」  
 
 
番外〜関係者の証言〜  
 
Kさん(14)「ああ、知っていますよ。  
 妙なことを口走りながら腰を振るアダムを取り押さえたのは俺ですから。  
 え?いや俺としてはハワードがメノリとまとまってくれたのは歓迎です」  
 
Bさん(16)「朝からハワードの様子がおかしかったので、なにかするとは思ってました。 だからアダムの腰つきを見てピンときましたね。  
 はは、俺のほうが年上なのに先を越されちゃったなあ」  
 
 
以上、畑からわたくしルナがお伝えしました。  
 
 
「ヴィスコンティ議員!」  
愛娘メノリを守らんが為、常日ごろから念入りに手入れをしている  
猟銃を握りしめていたヴィスコンティの胸ポケットから  
けたたましい声がする。  
「どうした?」  
 
携帯シーバーの向こうから警備員の男が話す。  
「騒々しいぞ、何事だ?」  
「はい!連邦議会の裏口から侵入しようとしていた  
怪しい男を取り押さえまして」  
 
ヴィスコンティは(やれやれ)と溜息をついた。  
「私に直接知らせる事もないだろ。警察へつきだしたらどうだ」  
「それが、公にされるとマズイという事で」  
 
「なんでも・・俳優ハワードJrのマネージャーだと  
本人は言っています」  
(なんと!!)  
ヴィスコンティの予想は確定した。  
「連邦議会へハワードJrが来ているか、内密に調べさせてくれと  
言っていますが、如何いたしましょうか」  
 
ヴィスコンティは一息いれると  
「48階、第一秘書室だ。部屋の配置は受付モニターで確認するよう  
伝えてくれ」  
「かしこまりました!」  
 
(ハワード君め、娘の事は諦めたと思っていたのに・・・まだ!?  
あの星での一連の話を娘から聞いた時・・・・  
私は真っ青になったよ。  
それでも本気で娘を愛しているならまだしも・・・  
<メノリは拒絶していたが>  
君は女小説家とも良い仲だそうではないか・・・!!  
ましては、アクターなどと信用の出来ない職に就いている君を  
許す事など出来ぬ・・・!!)  
 
ふと頭に異星人アダムの事となると、まるで嬉しそうに話す  
メノリの姿がよぎる。  
(親として娘が幸せなら、それで良いのだよ・・・)  
 
<それは勘違いかもしれないが>  
 
 
ヴィスコンティは警戒するように辺りを見渡す。  
そして念には念を――とその場を立ち上がり周辺の見回りに出た。  
 
そのわずか数メートルの先。  
廊下に置かれた観葉植物に身を隠し、じっと見張っていた  
ハワードは胸を撫で下ろした。  
「ふひぃ〜・・やっと行ってくれたなぁ」  
 
このまま動かなければ思わず、付けているサングラスはそのままで  
首に巻いたスカーフを頭に巻いて女装でもしようかと思った。  
「これでやっと、ご対めぇ〜ん♪♪」  
 
ぐひっひっひっ・・・と不気味な笑いを浮かべ  
遂にハワードは秘書室へと侵入した。  
「メノリの奴、アレちゃんと覚えてるだろうな?」  
 
秘書室の更にその奥の部屋では――  
「いいかげんにしろ!!!アダム!!!!」  
 
パチーーーンッ  
体勢を翻したメノリのビンタがみごとにヒットしていた。  
「好きなら、ちゃんとその相手の事を考えろ!」  
さすがのアダムも今度ばかりはたじろいでしまった。  
 
「メノリ・・・っ、怒ったの?」  
メノリの目から大粒の涙があふれる。  
「いいかアダム・・・好きなら何をしても良い訳じゃない。  
いや・・好きじゃないなら余計始末に悪いが・・・とにかくだ!」  
 
ビンタされ床に尻餅をついたアダムの前に  
ほとんど全裸のメノリが語る。  
「自分の欲望の為だけに、女を抱く男にはなるな・・・っ」  
「メノリ・・・」  
アダムがその大きな瞳を見開く。  
 
「後ろのハワードみたいに・・・?」  
「そうだ、後ろの・・・は?」  
鍵の開いていた秘書室のドアに、サングラスをずり落とした  
ハワードが立っていた。  
 
「なんだぁ?」  
自分の情けない声を、ハワードは遠くで聞いた。  
 
連邦議員の第一秘書室。  
見晴らしの良い窓、広々とした部屋、上質な調度品。  
毛足の長い絨毯に裸足で仁王立ちしているのはこの部屋の主だ。  
むき出しの下半身が、白い尻がハワードの目を射る。  
内股のあたりがこころなしか蛍光緑っぽいのは気のせいか?  
一体どんなプレイをしていたんだ?とハワードは棒立ちになった。  
 
メノリはブラウスの前を慌ててかき合わせながら叫んだ。  
「おおおお前…っ、ここでなにをしている!」  
「ちょ、それはこっちのセリフ…」  
「何をしに来たと聞いている!」  
「えーっと、昔のことをネタに脅…じゃなくて、昔話、昔話を…  
 そう、今夜はエスコートするよ、一晩中昔話でもしないか?」  
 
ハワードはメノリの尻に視線を釘付けにしたまま言った。  
床に倒れている男が何故殴られたかはよくわからなかったが、  
とにかく別れ話の最中に出くわしたのは我ながら運がいい。  
今夜は思いっきり慰めてやるぜ、へっへっへ〜☆などと考えた。  
 
メノリはハワードを横目で牽制しながらスカートを拾い、履いた。  
「そうか…。だが、残念だったな。先約がある」  
「へ?」  
「え?」  
まだ変声中とおぼしき少年の声。メノリが殴っていた相手だ。  
メノリは優しい視線を下に落とした。  
「素敵な紳士と、今夜は約束しているんだ」  
メノリが微笑みかけた先には、四肢のよく伸びた少年が倒れていた。  
男の裸など見たくもなかったが、つられて視線を移す。  
青い全身タイツのチャックからこぼれた陰茎が青い。  
髪も青い。白目がない。角がある…  
 
「アダム!?」  
「そうだ、アダムだ。立ちなさい、アダム」  
立ち上がったアダムはメノリより背が高いが、顔に昔の面影がある。  
「メノリ…、僕を怒ってないの?」  
メノリはうつむいて首を振った。  
「いや、私が悪かった。お前とこの馬鹿を引き比べるなど…。  
 お前はお前だ。私はお前が好きだ。こいつに嫉妬する必要はない」  
「ぼく…ぼく…」  
「アダム、大切なことはわかったな。守れるか?」  
アダムは「わかった、わかった」と繰り返しながらしゃくりあげた。  
 
「ちょっと待てよ〜。黙って聞いてりゃ言いたい放題だが、  
 メノリ、わかってるんだろうな〜。例のアレのこと…」  
「言いたければ言うがいい。だが、スキャンダルで困るのは  
 人気商売のお前の方なんじゃないか?人気俳優さん?」  
「ちぇ〜」  
 
1,2分も経たないうちに警備員とマネージャーと名乗る男が来て、  
ハワードは連れ去られていった。去り際にこう言い残して。  
「メノリ、ごめんな! 本当はお前の顔が見たかっただけなんだ!  
 …アダム、メノリを頼むよ。こいつ、不器用だからさ」  
「なんだあいつ、失礼な」  
 
「不器用なのは、ハワードの方かもしれないね」  
アダムのつぶやきは、メノリの耳には届かなかった。  
   
 
照明を落とした執務室で、議員は一人たたずんでいた。  
「母さん」  
写真の中で、亡き妻が優しく微笑む。  
「これで私も、サヴァイヴに本腰をいれなければならなくなったよ」  
娘メノリが主張する、サヴァイヴとの友好関係の構築など、  
あまりにも難しすぎて、どこか夢物語のように聞いていたのに。  
「しかし…」  
フッと自嘲気味に笑う。  
「娘に恋人ができるというのは、たまらない気分だ。  
 これを味わわないで逝った君が、少しうらやましいよ」  
 
連邦議会ビルの警備責任者に怒られ、メノリの親父さんに怒られ、  
仕事に遅刻して監督に怒られ、その後でマネージャーに怒られ…  
「あーあ、こんなに他人に怒られたのはサヴァイヴにいた頃以来だよ」  
ハワードJr.は濡れた髪をタオルでぬぐいながら冷蔵庫を開けた。  
ミネラルウォーターと化粧水パックを取り出す。  
「っていうか、いつもメノリに怒られてたんだよな…」  
叱られた光景が走馬燈のように駆けめぐり、ヴァイオリン事件に落ち着いた。  
冷たい脱脂綿のパックを熱を帯びた目の上に広げ、ソファに寝ころぶ。  
「ちぇ、今度はアダムに嫉妬か…」  
 
「メノリ、もう寝た?」  
「いや、まだだ」  
「ぼくね…」  
アダムが身を起こし、メノリの顔を覗き込んだ。  
「メノリのこと、お母さんみたいに思ってた」  
「そうなのか」  
それは少しショックだった。  
「僕を真剣に怒ってくれるの、メノリだけだったから。  
 生きるために大事なことはみんなメノリが教えてくれた」  
「そ、そうか」  
「でも、ぼくもうメノリをお母さんみたいに思えないんだ」  
「そうなのか…」  
それはそれで少し残念だった。  
「メノリは、僕の一番大切な女の人。とっても大好き。  
 えーと…こういうときなんて言えばいいんだろう。  
 確か、『家族になるよ』だっけ?」  
 
「そういうときはな、アダム」  
メノリも起きあがって、アダムの頬に触れた。  
「『愛してる』って言えばいいんだ」  
「『愛してる』?」  
「そうだ」  
 
「愛してる、メノリ。愛してる…」  
「わたしもだ、アダム」  
 
 
 
 
「ねぇルナ、この前のニュース見たぁ?vv」  
モニターの向こうで眼鏡の似合う可愛らしい女性が話しかける。  
 
「ハワードJr.撮影現場に遅刻!でしょ?シャアラ♪」  
続けてルナも笑いかける。  
 
地球で仕事をする様になって早半年。  
今日は週に一度のオフday――  
いつも都合が付かず留守番メッセージの確認が当たり前に  
なっていたから、直接笑って話せるのは嬉しい。  
 
「ハワード・・・メノリに会いに行ってたみたい」  
「え?」  
初めて聞く言葉にルナはやや驚いた。  
テレビじゃそんな事言ってなかった。  
 
[ハワードJr.撮影現場にド遅刻]と題したニュースに  
記者会見でマネージャーと共に謝罪するハワードを  
見た様な気がした。  
(そのおかげで、かえってこの映画が話題になり降板の心配なく  
撮影が続くとも・・・)  
 
「ハワードとは会ってるの?シャアラ」  
「ううん・・・向こうも仕事が忙しくて・・・  
今回も本人が電話で謝ってきたから」  
 
<まったく・・・!どこまではっきりしない男だろう>  
「男の人って一人に搾れないのかしら・・・」  
いや違う!少なくともカオルやベルやシンゴなら・・・!  
モニターで溜息をつくシャアラを見て、不憫な親友を気使うルナの姿がありましたとさ。  
 
 

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