オリオン号の見張り台でルナは眠い目を擦った。  
空は晴れ渡り、海はどこまでも青い。  
「ふわぁ、夜の見張りと午前の見張りが重なるとキツいわ」  
シフトを見直さないと、などと考えているうちにメノリが顔を出した。  
「すまないルナ、遅くなった。昼の準備は出来ているから、  
 少しでも口になにか入れて、夕食までゆっくり休むといい」  
「ありがと、メノリ。じゃあお願いね」  
 
梯子を降りたルナは、とにもかくにも寝室に急いだ。  
甲板ではシャアラとアダムが食事の支度をしていたが、ひたすら眠い。  
「食べ物はいいから、まず寝ましょう」  
 
日中の寝室は人気が少ない。  
シフトで夜間起きていた者以外は、仕事がなくても上にいるからだ。  
「私だけかな…」  
なにげなく見回して、ルナは立ち止まった。  
男子用ベッドの下の段で寝息を立てているのはカオルだ。  
「あ、そういえば昨日の夜はカオルが操縦だったっけ」  
朝食の後からずっと眠っているに違いない。  
ルナは近づいて、カオルの毛布を肩まで引き上げてやった。  
「疲れてるのね」  
手動のときは最も頼りになるため、シフトも多めに入っているし、  
海が荒れればすぐに呼び出されて操縦桿を握っている。  
 
「がんばってるね、カオル」  
ルナは目元にかかった黒い髪を払い、少し考えて、額にキスを落とした。  
端正な寝顔を見つめ、小首をかしげる。  
「私もがんばるから…」  
そっと身を乗り出して、顔を近づける。  
「がんばるから…元気、もらっていいかな?」  
囁いて、唇に触れた。  
 
ルナは頬を抑え、タタッと走ってベッドに潜り込む。  
「ありがと、カオル」  
毛布を引き上げた途端、疲れた体は簡単に眠りに引き込まれていった。  
「いい夢が…みられそう…」  
 
ルナが寝息をたてはじめた頃。  
カオルは顔を耳まで赤くして寝返りを打ったのだった。  
 

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