(Sword Art Online 二巻 『心の温度』、リズベットとキリトが手を繋ぐシーンからのIF)
「ね……手、握って」
体を左に向け、ベッドロールから自分の右手を出して、隣に差し伸ばす。キリトはわずかに黒い瞳を見張ったが、やがて小声で「うん」と答え、おずおずと左手を出してきた。指先が触れ、二人ともぴくっと引っ込めてから、再び絡めあう。
思い切ってぎゅっと強く握ったキリトの手は、さっき飲んだスープのカップよりもずっと温かかった。手の下側は氷の地面に触れているのに、その冷気をあたしは全然意識しなかった。
人間の温かさだ、と思った。この世界に来てから、常にあたしの心の一部に居座り続けていた心の渇きの正体が、今ようやく解かったような気がしていた。
しっかりと手を繋いだまま、あたしは微笑み――勇気を出してキリトに言った。
「して……いいよ」
この世界で初めて知った温もりを……もっと感じたい。
女のあたしから誘うのは躊躇いがあったけれど、キリトの性格じゃ絶対に手をだしてくれないだろう。だから自分から行かなきゃ。
「え?」
聞こえなかったのか、不思議そうな顔をするキリト。その惚けた表情に愛おしさを感じると共に猛烈な恥ずかしさも襲ってくる。
「だ、だから、シテいいんだってば!」
「だから、何がいいんだ??」
この状况で本気で解ってない?!そう理解した瞬間。
……かち――――ん、と来た。
「だから!エッチしてもいいって言ってるの!」
頭に血が上ったせいか、あたしはとんでもない事を大声で叫んでいた。
「え……エッチ?!」
キリトの顔がみるみる内に赤くなってゆく。
それ以上に赤くなっているであろうあたしは、彼を睨みつけたままそれでも小さく頷く。
滅茶苦茶――恥ずかしい。
お互い赤くなったまま、数秒。
「……で、できる……の?SAOで」
キリトのギクシャクしたその言葉で、彼が本当に何もかも知らず、あの雰囲気でさえ"そういうこと"を思い浮かべられなかった事が解かる。
途端、あたしから怒りがすぅぅっと引いてゆく。代わりに羞恥が更に体温を上昇させる。
「知らなかったんだ……」
「知りません……」
少し、呆れてしまう。戦闘に明け暮れている攻略組はそんなものなのだろうか?……いや、と頭に浮かんだ攻略組みの親友を思い出して心の中で苦笑する。
あんな真面目な子でさえ、真っ赤になりながら倫理コード解除設定について質問してきたのだ。キリトだけが特にこういう情報に疎いのだろう。
「オプションメニューのふかーいところに、倫理コード解除設定があるの……まったく」
「その……経験がおありで……のわぁぁぁ!」
最後まで言わせず、体を起こしてキリトの顔面へパンチ。当然、避けられたけど。
「あ、危ないって。ここ圏外だから、オレンジになるだろっ」
「あんたが失礼なこと言うからでしょ!こ、このうら若き乙女にむかって!」
ベットロールから上半身を上げた状態のキリトへ今度は軽くタックル。――その胸に顔を埋める。
「リズ……」
キリトの腕があたしの背中に回る。温かい。
「もっと……強く、抱いて……」
ぎゅっ、と腕に力が込められ、体の芯がびりびりと?れた。
「はぁっ……」
堪えきれず、深い吐息を漏らす。
「キス――したい、からさ」
「うん」
お互い倫理コードを解除してゆく。なんだか服を脱ぐより……恥ずかしい。
ぴとっと頬をくっつけても、唇でなぞっても無粋な警告は出なくなった。感覚が微妙にリアルになっている。
初めて同士。そう思うとゾクゾクと多幸感が身体中を走る。
ちゅ。
軽く、あたしとキリトの唇が重なる。
温かさが、唇から……キリトと触れている全てから伝わってくる。
ちゅぴ、ちゅぷ。
唇を開くと舌が入って来た。おずおずと舌を差し出してキリトに味わってもらう。
うっとりとするような痺れが舌先から流れ込んできてキモチイイ。
身体の奥が燃えるように熱くて、じんわりと足の間が……。
「ファースト、キスなんだからね」
つぅっと糸を引いて唇が離れると、あたしはそう言ってキリトを甘く睨んだ。
もう"経験がおあり……"なんて言わせないぞ、と。
「ごめんってば」
誤魔化すように、またキス。今度はキリトのベッドロールに引き寄せられてサれた。強引なそのキスにまた、あたしの心と身体は熱く火照る。
キリトの舌とあたしの舌がエッチな動きで絡まっている。
唾液が交換されて味が脳内に再生される。――オイシイ。
「ねぇ、キリト。……ねぇ」
甘い声が出てしまった。もう、あたしの頭の中はキリトともっと深く繋がりたいという思いでいっぱいだった。
キリトに抱かれたまま身体を密着させる。
唇を重ねながら舌を絡め続けていると、我慢できないというようにキリトの手があたしの胸をまさぐり始めた。
はっきりと故意と解かるその指の動きは、倫理コードが解除されていなければ何も感じない上に、キリトを一発で黒鉄宮の監獄へ転送する為のボタンが表示されていただろう。
けれど、今は――。
「ふぁ……ぁ」
キリトの指が動く度にエッチな声が出てしまう。
今まで開放されることが無かったあたしの……性感が、身体中を敏感にさせていた。きっとキリトもそうなんだろう、瞳が熱に浮かされたようにぼやけている。あたしに、欲情してくれている。
「リズ……」
「ぁっ、ぁ、そこ、だ……め」
服の間から胸の先端を擦られただけで、甘い痺れが全身を走ってゆく。とろとろとエッチな液体がショーツを濡らし始めてるのが解かる。
キリトの硬いモノが、あたしの足に当たって自己主張している。
「ね、熱い……から、その――脱が……」
「お、倫理コード解除すると服も脱がせるようになるんだ」
「ちょっ、こらぁ!ヘンな脱がし方……ぁぅぅ」
乱暴な脱がし方なのに、スルスルと脱がされてしまう。装備扱いの服は倫理コードが解除されると、脱がす方向に力を入れると簡単に脱げてしまうらしい。妙なところで親切設計だった。
そのお陰で、あたしは簡単に裸にされてしまう。……なのにスカートとソックスだけ残しているのはキリトの趣味?
ぐっと足が割り開かれると、冷気があたしの大切なトコロに触れて、ゾクリと身体が震える。熱いのに寒い。
キリトの喉がコクリと唾を飲み込んだ。一瞬でさっきの余裕がなくなっていた。
「リズ、俺……その……」
興奮のあまりかすれた声が聞こえる。そのキリトの瞳はあたしの一番恥ずかしい場所を凝視している。
「あ、あまりみない……で」
それでも足は閉じることが出来ない。羞恥と同時に"キリトに見られている"というだけで身体が動かないから。もう、あたしのソコは小さく収縮してトクトクとえっちな液体を染み出させ続けている。
「あ……ああ」
キリトが慌てて自分の服を消してゆく。あたしのは脱がせたのにずるい、と心の隅で思いながら、ピンク色に染まった頭で"その時"を待った。
「――リズ」
キリトの優しい声と同時に、熱いモノがあたしの秘所に当たる。
キリトがあたしの中に入ってくる……。
そう思うと、入り口に触れられただけなのに、奥から溢れてくる蜜が止まらない。
「リズ……」
「うん、つながろう……もっと深く」
ずぷ。ずぶずぶ……ぐちゅ。じゅぷ……。
キリトのがあたしの中に少しづつ沈んで行く度に、口でした時以上のイヤラシイ音が聞こえてくる。でも、あたしはその音に恥ずかしがるどころじゃなかった。
「ふぁぁ……ぁ」
キリトと繋がってる箇所から、これまでとは比べ物にならない程、強く甘い痺れが湧き上がって頭と身体が溶けそうになる。
無意識にキリトにしがみ付き、もっと深く感じようとしている自分の動きで、ソレが快感だと気づいた。
「うそ……やだ……やぁぁ、あたし、初めてなのに……気持ちよくなってる……」
初めては痛いもの。雑誌やマンガで得た知識がぐるぐる回る。
あたしは初めてでこんなに感じてしまう、えっちな子だったのだろうか?
SAOと現実が違うことすら今の私には思い至らなかった。
そんな不安を抱えたまま、でもキリトのモノを深く咥えこもうと、腰だけははしたなく動いてしまう。
「リズ、うぁっ……だっ、め、だって、動いたら俺……」
「はぁ……んっ、ゴメン、止まらないの……キリトの気持ちいいよぉ……」
ぐちゅ、ちゅぷ、ちゅぽ。ずぷぅ。
あたしの中にキリトのものが押し入り、引かれる度に、強烈な打撃のような感覚が走る。
それに浚われないよう、耐えるため肩にしがみつく。
ふと、キリトとあたしの結合部を見ると、無毛の性器同士が繋がっているのがはっきりわかる。
あたしの……快感で大きくなってしまった肉の芽の下にある割れ目を貫いて、トロトロの液体が絡んだままぐちゅぐちゅ音を立ててる。
「ぁぁ……ヤラシイ……で、でも……気持ちよくって、キリトぉ、ホントにあたし初めてなんだからね。キリトだから、キリトのせいで、こんなにえっちになってるんだから!」
「解ってるって……リズ」
宥めるようにキリトがキスをしてくれる。キリトの優しい瞳、言葉……大好き、愛してる。
もう、あたしの思考はとろとろに溶けていた。それでもキリトを感じるために動かしている腰はとまらない。
……恥ずかしい、でも幸せ。
「俺もう……っ」
キリトの切羽詰った声。あたしで感じてくれてる。そう思うだけで、幸福感と快感で身体が震える。
「いいよ、キリト。あたしの中に」
キリトの突き上げが強くなる。突かれる度にまだ成長途中のおっぱいも少しだけ跳ね回る。時々、先端がキリトの胸板に当って、頭の中に火花が散る。
「リズっ!」
「あっ……ふぁ……溶けちゃう……溶けちゃうぅーーー!!」
キリトが熱い液体をあたしの中に注ぎこんだ瞬間……あたしもキリトを抱きしめながら絶頂を迎えた。
◇ ◇ ◇
エピローグ
……朝。
眩い朝日を感じ、あたしはゆっくりと瞼を開いた。見渡すと既に周囲には白い光が満ちている。
「ゆ……め?」
段々、意識がはっきりしてくると……昨夜のコトを思い出して全身が一気に赤くなる。夢なんかじゃ、ないことはぐちゃぐちゃになったキリトのベットロールが証明していた。まだ、ベットリと濡れてる。
「……!!」
感情表現が豊かなSAOのシステムだから、頭から湯気くらい出ているかもしれない。
慌ててキリトを探すと、彼はランタンの炎でお茶を沸かしている処だった。そして、あたしと視線が合うとほんの少し赤らんだ顔で微笑んだ。
「……おはよ」
「おはよう」
我ながら恥ずかしそうな小さな言葉に、キリトも照れたような朝の挨拶を返す。
湯気が立ち上るお茶を啜りながらあたしはキリトを見つめる。
「ねぇ……」
「ん?」
「……このまま、ここから出られなかったらどうする?」
「毎日、リズとエッチして暮らす」
「――なっ!?ば、ばかっ!えっち!!」
くつくつと笑っているキリトの腕を肘でつつく。
「……でも、それも悪くないね……」
言って、頭をキリトの肩にもたれかける。途端、キリトの顔が近づいた。
あたしは素直に目を瞑り、キリトに唇を委ねる。
今日はずっと、倫理コードを解除したまま過ごしてしまいそうだ、なんて思いながら。