ほんの数分前まで、竹刀同士がぶつかる乾いた音を響かせていた桐ヶ谷家の剣道場は、
いまは淫らな水音ばかりを板張りの壁に響かせていた。
ちゅ、じゅる、ちゅ……ちゃぷ……
「はぐ……んっ……ちゅる……」
「ぐ……スグ。もうちょっと舌、使ってくれよ」
「んぐ……ちゅ、んっ……もう! お兄ちゃんエッチな要求しすぎ……」
と、口では言いつつ、直葉はしっかりと和人の言いつけを守ろうとする。口に含んでい
た和人のものを一度口から出し、舌先でゆっくりと和人を舐めあげる。
頬をリンゴのように染めた直葉の、舌が和人の尿道のあたりを這いあがり先端をつっつ
き、筋の入った尿口を舐め回す。
そして和人を見上げて視線で聞く。これでいい? と。
小動物然とした妹の仕草と奉仕の快感に魅せられ、和人は直葉の頭をなでた。
「スグ……気持ちいいよ」
瞳をとろんと蕩けさせながら、直葉はうれしそうに微笑むと兄への奉仕を続けた。
「ちゅ……んっ……お兄ちゃんの気持ちいいところ、んっ……全部知ってるもん……ちゅ
……」
直葉は顔の前にかかってきてしまう髪を片手で抑え、もう片方の手で和人の根本を握り
しめ、上下させる。
「ちゅ、んっ、ぢゅる……ちゅっ……んんっ……」
ときおり直葉の唇が亀頭を飲み込むようにして動き、ちゅぷ、ちゅぷと道場に水音を響
かせた。
和人は道場の壁に背中をあずけて緩いあぐらをかき、直葉は和人の下半身に乗り上げる
ようにして口戯をしている。黒袴に包まれた脚は道場の板の間にほうりだされ、男根に寄
り添うように上半身をあげている。袴の色と対比する白い裸足が裾からまろびでる。
直葉は慣れた手つきと口つきで、和人の男根に快感を与え続けていた。
「ちゅ、ぢゅるぢゅる……んっ……苦いの出てきたよ、お兄ちゃん」
「もうちょっとかな……なあ、スグ。本当にどこかで練習してたりしない?」
「ぢゅる、んっ……。お兄ちゃんのしか、しらないもん……えい」
あまりにもデリカシーのないことをいう和人への報復に、直葉は鈴口の部分を唇でじゅ
る、と吸った。和人が腰を浮かせる。
「うぐっ!」
「ふふ……お兄ちゃん、ここ弱いもんねー。あんまりひどいこと言うなら、噛んじゃう
よー」
「ぐ……あとで覚えとけよ、スグ……」
「お、覚えとくもん……ちゃんと……」
直葉は男根を一舐めし、一気に口の中に和人を含んだ。内頬を肉茎にそわせ舌を尿道に
這わせて、空気のかわりに亀頭を吸いあげる。
じゅる、じゅる、じゅる――
「うあぁっ!」
和人が歓喜の悲鳴をあげながら、男根をびくつかせる。どとめ、とばかり直葉は頭を上
下にうごかした。片手を地面につけて、空いた手で和人の性器の根本をしごく。
じゅるっ! じゅるっ! じゅるっ!
弱点を知り尽くした直葉の口戯れに和人はあっという間に上り詰めた。
「が……スグ――っ!」
「むぐ――っ!」
どぷっ、どぷっ、どぷっ!
和人の性器が性を勢いよくはきだした。
「むぐ……ん……」
口の中を暴れ回りながら、苦い液体をまき散らす男根を、直葉はくわえ続ける。
和人の性器は、どくん、どくん、と脈動し直葉の口内を余すところなく、精液で犯して
いく。
「んっ……ふっ……んっ……」
五度、六度と繰り返された射精を、腰をわずかに揺らしながら、すべて口で受け止めた
直葉は満足ぞうにほほえみ、そして、
「コクッ……んっ」
直喉をならして口内の精液をすべて飲み干した。
直葉はやっと兄の性器から唇を離した。直葉の唾液と性液で汚れた男根が、桃色の唇か
らちゅるん、と解放される。
「ふ、うっ……」
直葉は一度大きく息をはきだし、和人に抱きついた。
和人は荒い息をあげながら、道着に包まれた直葉の肩を抱く。
「またスグの口に……」
「……いいよ。お兄ちゃんのだし、それより……」
いいながら、直葉はわずかに自分の脚と脚をすりつける仕草をした。
黒袴の一点が濡れて色濃くなっている。奉仕で興奮し、性への刺激をうけたのは和人だ
けではなかった。直葉は和人の精液を飲み込んだ、その瞬間に、小さく達してしまった。
それを見てとった和人は直葉に向かって頷いた。
「……ああ。覚悟しろよ、スグ」
「――うん!」
直葉が目に涙をためながらうなずいた。
――――――
兄妹の秘めごとは、和人がSAOから帰還したあとすぐにはじめられた。最初は和人の
入院していた病室で。それから桐ケ谷家のキッチンで。あるいはお互いのベッドで。とき
には風呂場で。
目覚めてからの和人を一番献身的に支えたのは直葉だった。仕事で忙しい両親の代わり
に和人のリハビリにつきあい、剣道部の部活でどれだけいそがしくなっても、二日と開け
ず和人を見舞う。
――まるでなにかを覆い隠すかのように、直葉の献身は続いた。それは和人が桐ヶ谷家
に帰還したあとも、なんら変わりなく行われている。
――――――
「体のほう、だいじょうぶなの……? 無茶しないほうが……」
「ふふん、毎日ジムでリハビリしまくってる成果を見せてやるさ」
和人はおろされていたズボンとトランクスを直してから、直葉と体を入れ替えた。壁を
背もたれ代わりに座る直葉の、脚と脚の間に陣取る。
道場の窓から差してくる日差しが、脚を投げ出して座る直葉の姿を照らし出す。これか
ら行われる行為に期待して頬を赤く染め、道着でも隠しきれない豊かな乳房を荒い呼吸で
上下させる直葉の姿は可憐で、艶やかだった。
なにかを期待して向けられる潤んだ瞳にさそわれ、和人は直葉の頭をなでた。
「ん……」
くすぐったそうに、身をよじり、片目をつむる直葉。
さらさらとコシの強い、絹糸めいた髪のの感触をあじわいながら、和人は直葉にそって
指を落としていく。
「ひゃ……う……」
耳、ほほ、くびすじと下がっていった指は、ついに胸元の胴着の袷までいたった。
「さわるぞ……」
返事を待たずに和人は指でつん、と直葉の乳房を押した。
「んくっ……」
刹那の刺激にもかかわらず、直葉は小さくあえぐ。
つつかれた乳房はすぐに弾力をとりもどし、元の位置に戻った。
和人はそのまま手のひらを乳房に当てる。
年不相応に育った乳房が、和人の指に確かな重量をつたえてきた。そのまま持ち上げる
ように乳房全体を刺激する。
ひと揉みごとに直葉は愛らしい吐息をはきだした。
「はう……んっ……ひっ……うぅ……んっ……」
「道着、内側がすれていたくないか? 胴着の内側って、生地が荒いからさ」
「んっ……大丈夫……ちょっとすれるのが、気持ちいいかも……」
「ほんと……えっちになったな、スグは」
「させたのっ……んっ……はぅ……お兄ちゃんでしょ……」
直葉は和人をにらみつけた。だが瞳にはまったく力がなく、ただただ、快感にとろけて
いる。
和人は苦笑しながら、乳房の片方から手のひらをはずして、直葉の右わき腹のあたりで
道着をとめている結び目に手をかけた。蝶々結びにされている結び目を、しゅる、と手早
く解いた。
「でもこんなに感度がいいと、防具とかつけた時まずいよな」
「……もう、手遅れだもん……」
「……ごめん」
太股のあたりまである道着は、袴の帯に止められている。道着は結びが解かれた分だけ、
はらりとはだけるが、それだけだった。
かまわず、和人ははだけた袷の間に手をいれた。適度に鍛えられた腹部の感覚を味わい
つつ、指を直葉の左わきばらへ。指先がふたたび、今度は左の結び目に触れた。
「あ……んっ……くすぐったい……」
手探りでほどいていると、直葉が言った。
「仕方ないだろ、見えなかったんだから」
和人はいいながら結び目をほどいた。これで道着を脱がすことができる。
乳房から与えられる快感に酔う妹に向かって、和人はつぶやいた。
「スグ……上、脱がすよ?」
ふに、と変化をつけて乳房を持ち上げる。
「あ、んっ……いいよ……はぅっ……んっ……またあの、半分まで……?」
「いやか?」
直葉はふるふると頭を横にふるった。火照った顔を和人に向けて、言う。
「お兄ちゃん、えっちな顔になるから、いいよ」
「……俺そんなにわかりやすい?」
「うん。だって、目の色がちがうもん……。だから、いいよ。ちょっとはずかしいけど」
やや照れくさそうにいう直葉の頬を両手でなでてから、和人は道着の奥襟のあたりに指
をかけた。ずる、と両手で道着を引き上げる。
「はう……」
「どうした?」
まだそれほど力を入れていないのに、直葉がうめく。
和人の目をちらちらと見ながら、直葉が言った。
「あの……その、道着に、こすれて……」
「ああ……ほんとにえっちだな、直葉は」
「それはおにいちゃ――むぐっ」
会話がループになるのを防ぐように和人は直葉の唇をふさいだ。まだ精液の苦みが残る
が、そのまま直葉の舌を絡めとる。
「んちゅ……んっ、ちゅ……んっ……んっ……」
和人はキスを続けながら、道着を引き上げ続ける。
「んふっ……んっ……」
ときおり、直葉が乳房を刺激されてあえぐのを感じつつ、和人は襟を開いていった。直
葉の華奢な首もとから襟を下におとしていく。
「ちゅ……はぅ……んっ……んっ……」
時折、和人は絡めている直葉の舌がふるえるのを感じた。じょじょに脱げていく感覚に
あえいでいるのだろうと、和人は結論づけてさらに指を進めた。
道着の袷がそれぞれ、肩を通過したところで、和人はずる、と道着の襟をおろした。
「あっ――」
直葉が短く悲鳴をあげた。
和人は唇をはなして「成果」を確認する。
白い道着に包まれていた鎖骨や胸元があらわになっていた。
やっと道着の圧力から解放された乳房が、直葉の呼吸に併せて上下に揺れる。
どちらかといえば小柄な直葉には不釣り合いな大きく育った二つの果実は丸い。みずみ
ずしく張った小山の上には、先端をわずかにくぼませた、血色の良い乳首がある。なんど
か和人ととのむつみあいを経験しただけの乳首は、道着の上からの刺激で十分に勃起して
いた。
直葉がきゅっ、と自分を抱きしめた。まだ二の腕あたりに絡まる道着がずる、と衣擦れ
の音をたてる。
「じろじろみちゃ……やだよ……」
そんなかわいらしい言葉も、情事に当たっては異性を興奮させる材料でしかない。
和人はわかったよ、と一声かけてがら空きになった鎖骨のあたりにキスを落としていく。
ひゃ、と身を引く直葉だが、彼女の後ろには壁があり容易には逃げられない。
「ひゃう!……はぅ……んっ……」
和人は舌で鎖骨の上をのぼってくだり、くぼみのあたりを這ったあと胸元にたどりつい
た。そのまま一気に乳首のあたりに顔を寄せて、桜色の乳首に口づける。
乳輪の縁を口にふくみながら、舌先で乳首をこねまわす。口の中にあっても、ぷっくり
充血した乳首はグミのような感触を和人に与える。
和人の舌が上下するたびに直葉は体を震わせた。
「やっ……んっ……んっ……おっぱい……」
「……大きくなったよな」
和人はSAOにとらわれる前の直葉を思い出す。日々の剣道部の部活で体つきこそたく
ましかったものの、乳房はここまで大きくなかった。
二年間という歳月で予想外に成長していた直葉に和人が感動していると、直葉が言った。
「おおきいの、んっ……きらい?」
「スグのなら、大きくても小さくてもいいよ」
「うーん……あんまり大きくなっちゃうと、んっ……防具つけるのに、じゃまになっちゃ
うよ……」
年頃の乙女にしては若干ピントがずれた悩み、を口にする直葉の言葉の節々に嬌声がまじる。
和人は吸いついていないほうの乳房に手を当てた。
汗でしっとりと濡れた乳房が、和人の手のひらに吸いつくように収まる。和人は円を描
くように乳房を刺激しつつ、舌先でも直葉に刺激を続けた。
「はう……んっ……うぅ……」
刺激の度に反応する直葉の乳房を、和人は前歯でやさしく噛んだ。
「はぅっ! んっ……噛んじゃ、やだ――っ」
直葉は顔を左右に振りながら、言う。ただ具体的にいやがる行動はいっさい起こさない。
和人にされるがまま、乳房をむさぼられている。
和人は舌で乳首をなぶりながら、時折きゅっ、と甘噛みを行う。
「や、やだ……んっ……おっぱいで……」
直葉が甘噛みされる度に高まるのを感じ、さらに容赦なく直葉を責め立てはじめた。
緩やかに上下させていただけの片手の親指と人差し指で乳首をきゅっ、とつまみ上げた。
同時に、乳首の甘噛みを再開する。
その瞬間――。
「は、うぅ――!!」
直葉が背中を大きくそらした。
「お兄ちゃん、それ、だめっ――! やだっ、やだよぉ……いや――!」
乳房への刺激に、直葉は背をしならせながら、達してしまった。
悲鳴が道場いっぱいに響きわたる。
「はぁ……はぁ……あ……あ……んっ……」
絶頂の余韻に荒い息を吐きながら、直葉はこわばらせた体を今度は逆に、弛緩させてい
く。
「おっと」
寄りかかってきた直葉を和人は優しく支える。
和人から解放された乳房はふるん、と揺れて、唾液のあとを陽の光で反射した。
「はぁ……はぁ……んっ……いっちゃった……」
すがるような目つきで直葉がいい、和人は再び頭をなでる。
「よく頑張ったな」
「はぁ……はぁ……うん……だから……」
ご褒美ちょうだい、と直葉は消え入りそうな声で和人に言った。
和人は直葉の下腹部をしめつける袴の留めを解く。前の結びを解いたあと直葉を抱きし
めるようにしながら後ろの帯どめを解きにかかった。
んっ……、という直葉の甘い吐息を間近で聞きながら、行為をすすめる。
たっぷりと時間をかけながら、和人は直葉の袴の留めをはずし終えた。
最後に和人は直葉にお尻をあげさせた。
日ごろの練習の成果か、贅肉一つなく、おわんのようになめらかな曲線を描くお尻から
袴を引き抜く。
すると腿の部分まで裾がある道着の袷と袷の間から、黒く茂った秘丘がのぞいた。
部活動のとき以外、直葉は祖父の言いつけを素直にまもって下着をつけない。
秘部を露出した羞恥心にしばらく固まっていた直葉がゆるゆるとお尻を床におろした。
ぺたん。
「ぴゃっ!」
と、床とお尻が接触した瞬間、かわいらしい悲鳴をあげる直葉に和人は噴き出した。
「床、直接座ると結構冷たいだろ? 実は俺もさっき冷たくて、参ってた」
道場は板の間。いまは一月の早朝だ。足先をつけるのもはばかられるほど、木目の床板
は冷たくなっていた。
にやにやしながら言う和人を直葉はにらみつけた。
「ひど……あ。もしかして、自分のときはわざと黙ってたんじゃ――」
「ま、そうかな。スグがお尻つけるのをまってたから」
「……お兄ちゃん、変なところで意地悪だよね……」
ぷいっと横を向く直葉に苦笑いしながら和人は、直葉の両膝に手を置き左右に広げてい
く。
「あ……」
拗ねて横を向いていたせいか、直葉は和人の行動に反応できなかった。
緩く広げられた直葉の脚と脚の付け根には、鮮紅色の可憐な肉扉があった。
兄に数度突かれただけの使いこまれていない清楚な肉裂は、和人を誘うようにぬらぬら
と濡れて輝いている。
数度の絶頂で黒袴を濡らしてしまうほどの愛液を流してしまった、直葉は恥ずかしそう
にうつむいた。
和人は頬を緩ませながら言う。
「もうこんなに……濡れてるよ、スグ」
「やだ……そんなこと、いっちゃやだぁ……」
触れられてもないのに濡らしてしまったことが恥ずかしいのか、直葉は両手で自分の口
元を覆いかくしてしまった。
和人はため息をついたあと、人差し指を一本、直葉のスリットに這わせた。べちゃべち
ゃになっている肉ひらを指先でなぞる。
「んっ……はぅ……」
直葉が甘くすすり泣きするのを聞きながら、和人は指を溝のあたりまで進めた。直葉の
愛液でぬれそぼったそこは和人の指をすんなりと受け入れる。
「ぅう……んっ……指はいってる……」
第一関節のあたりまで指を進めていると、直葉が泣き出しそうな声で言った。
そのままかき混ぜるように刺激しつつ、指を一本、増やして入れ内壁をこそぐように動
かした。
「ひゃ、んっ……あう……んっ……んぁっ……」
指が内壁を刺激するたびに直葉は可愛く鳴く。体格に比べて少し狭いくらいの膣道は、
すでに和人を受け入れる準備を終えていた。
「はぁ……はぁ……お兄ちゃん……ご褒美……」
快楽にただただ耐えるだけだった直葉の潤んだ瞳が、何かを期待するように和人に向け
られた。
和人は指を肉壁に当てながら素早く引いて抜き去った。
「んっ――!」
激しく抜かれた勢いで直葉が体を硬直させた。
新たに分泌された愛液が勢いよく抜かれた和人の指によって飛び散り、板張りの床に散
らばる。
「お兄ちゃん……お兄ちゃんの……そこ……」
和人は直葉の言葉に頷きつつ、直葉の腰の位置を調整した。形としては正常位だが、肩
甲骨のあたりまでは壁にもたれかかっている。
散々痴態を見せつけられ、屹立してしまった性器を和人はズボンを下ろして露出させた。
一度直葉に吸ってもらったのにも関わらず、まるで竹刀のグリップのように太く、たくま
しい性器を直葉の秘処におしつける。亀頭が肉ひらをかき分け、肉扉の入り口をノックす
る。
「うぅ……んっ……かたい……お兄ちゃんの元気すぎるよ……」
直葉は視線をおろして、和人の亀頭と自分の秘処が接触しているのを確認した。
その瞬間、直葉の肉扉がわずかにわななき、まだ接触しかしていない和人の亀頭をなで
まわす。とたん、刺激に飢えていた和人の性器はひくっ、と浅く反応した。
「っ……もう締めつけてくるのかよ……スグ。気が早すぎるだろ」
「だって……お兄ちゃんが焦らすから……」
直葉がわずかに腰をずりおろすと、ちゅく、とさきほどよりほんの数ミリほど挿入がす
すむ。そしてまた、和人の先端をすすりあげるかのように浅く締めつける。
「はぁ……はぁ……はぁ……ちょっと、はいったよ……」
浅い呼吸を繰り返しながら、同じ要領でずるずると和人のものを自分から受け入れてい
く。
が、移動するたびに一々先端を刺激され、背筋にはしる快感に和人は耐えきれなかった。
「え? や――!」
和人は直葉の膝を曲げ脚を抱えながら、ちょうど直葉が腰を進めようとしたタイミング
で腰を大きく突きだした。
じゅるん――
「あ、あああ――――!」
膣道をいきなら割られて、貫かれた直葉は悲鳴をあげる。
すでに準備ができていた直葉は和人を簡単に受け入れ、奥まで導く。
奥をつついた瞬間、和人は腰を引き男根を引き抜くと再度腰をたたきつける。
ぱぁんと、乾いた音が道場に響き渡った。
「うぐ――っ!?」
二度目の挿入を難なく受け止めた、直葉の表情に驚きの色が浮かぶ。
自分がもたれかかっている壁をちらりと見たあと、戦慄のまなざしで和人を見た。
「に、逃げられない……いやっ、んっ、あうっ!」
再びはじまった挿入に、わずかに腰を引く動作がをしたのだがその動きは背中の壁に阻
まれた。直葉の背中と板張りの壁に空間がないので挿入の圧力が逃げないのだ
和人は直葉のスリットから与えられる快楽に耐えつつ、笑みを浮かべた。
「スグのえっちなところ、見たいからな」
「え、えっちな、ところ……? んっ、んっ、んっ、ひぐっ、ぅう……」
「ああ……おっぱいとかすごい事になってるぞ……」
和人の激しい突きにあわせて、道着からまろびでたままの双丘をゆさゆさと揺らしてい
る。脚はひざを曲げて抱えあげられているため、和人の挿入は普通に交わるよりも数段深
い。
「あう……んっ……くぅ……お兄ちゃんのばかぁ……」
前には和人が、後ろには壁が。身動きができない状態で直葉は和人を受け入れ始める。
二人の結合部で、和人が出入りするたびに直葉の愛液が飛び散った。
「ぐっ……んっ、んっ……ふかっ、いよぉ……」
和人の性器はやや強引に狭めの直葉の中をえぐり、最後に亀頭で子宮口を突きあげる。
和人から与えられる刺激に直葉は全身を身震いさせていった。
いつもは凛々しく竹刀を握る直葉が快感におぼれて、喘いでいく。整った眉をゆがませ、
目尻に涙をうかべて、首筋から胸元まで真っ赤に紅潮させ交合の快楽を享受する。
「ふぁ……んっ、んっ、あっ、んっ――っ!」
突きあげるたび悲鳴のボルテージを上げる直葉は、そのたびに和人を強く締めつける。
柔肉が性器を舐めるように締めあげた。和人はもたらされる快楽に一気に高ぶった。
「スグ、俺、もう――!!」
直葉の体の奥深くを小突きつつ、和人は止めとばかりに腰を大きく押しつけて動いた。
和人の性器の熱と直葉の肉壁の熱が絡みあい、お互いにお互いの弱点を刺激しあう。
「あうっ、んっ、いいよっ――! お兄ちゃんのいっぱいちょうだい――!」
ずる、と直葉の体が和人に向かって落ちてきた。汗でぬめりを帯びたおしりが滑ったの
だ。
「ああああぁ――!!」
意図せず深く貫かれた直葉は悲鳴を上げた。背をあらん限りにそらした直葉は、和人の
性器を締めつけた。
「ぐっ……スグっ――!」
「ああああっ! ひゃぅっ!」
強く包まれた和人は頭に火花がちるのを感じつつ、直葉の最奥に精液をそそぎ込んだ。
「ふぁ……あつい……あついっ……あかちゃんできちゃう……」
和人の背筋を凍り付かせるような一言をはなちながら、直葉は和人の精液を受け止めて
いく。
「はぁ……はぁ……お兄ちゃんの……」
夢遊病者のようにつぶやきながら直葉は和人の性器を強く包む。一滴の精液も逃すまい
と、ぎゅう、ぎゅうと締め付けする。
「はぁ……はぁ……んっ……」
「スグ……」
「む、ぐっ……」
射精後も与えられる快感に耐えながら、和人は顔を前につきだして、あえぐ直葉の口を
ふさぎじゅるっと吸った。
「はぐ……んっ……お兄ちゃん……」
直葉は喜々として兄の舌を受け止める。お互いにお互いの口腔を犯しながら、直葉と和
人はつながり続けた。
――――
大きなタオルで汗や体液をごしごし拭きながら、二人は勝手口から家にはいった。母親
の緑はいつも昼近くまで寝ているので、朝食の用意は直葉と、最近は和人も交互にやって
いる。
「……あたしシャワー浴びてくるね」
「あ……俺、今日は……病院に……」
「……」
何気なく口にした質問の答えを聞いて、直葉のうき立った気分は少しだけ沈んだ。
「そっか。あの人のお見舞い、行くんだね」
「ああ……それくらいしか俺にできることないしな……」
「今度、あたしも会いに行っても……いいかな?」
「……」
直葉の言葉に和人は即答をしなかった。できなかった、のかもしれない。
その無言の意味に直葉は激しく心をかき乱される。まるで胸の中をかきむしられるよう
な感覚に耐えつつ、直葉は――痛々しく、儚い――笑顔を向けた。
「もう……お兄ちゃんとえっちしたいっていったの、あたしだよ? えっちに興味あった
けど、相手もいなかったし……お兄ちゃんはそのための相手なんだからね?」
「スグ……」
「だから、ね……」
直葉は和人の頬にあわく口づける。ちゅっ、と触れる幼いキス。
和人はいろいろな感情をない交ぜにしたあいまいな笑みで直葉に言った。
ああ、きっとアスナも喜ぶよ、と――。
――――
シャワーを浴びて自室にもどり、兄が隣の部屋にいないのを壁越しに確認してから、直
葉はぼふっと自分のベットに寝ころんだ。
「んっ……お兄ちゃん……」
さきほどまで貫かれていた膣が、しんしんと快感の余韻を伝えてくる。直葉は余韻にぶ
るりと体をふるわせながら静かに涙を流した。
透明なしずく直葉の頬をつたって、ベッドのシーツにしみこんでいく。
「おにいちゃん……っく……大好き……愛してる……えっちだけなんて……やだよぉ…
…」
和人に淡い恋心を隠すための嘘はいつしか、直葉の心を鋭利な刃物のように傷つけてい
た。
あくまで性交の相手として――などと兄に思われたくなどなかった。
相手は和人でなければいやだったし、身も心も全部、和人に捧げたかった。いつも一緒にいてほしかった。
まだ会ったことのない「アスナ」の顔が脳裏に浮かんで消える。彼女がいなければ、き
っと兄はもどってこなかったはずだ。だから彼女を恨むことなんて直葉にはできない。
そして彼女が目覚める前に和人に思いを伝えるなど、直葉にはできなかった。
しかし兄の悲しそうな顔をみるたびに、一瞬でもいいからその感情を消してあげたくな
る。だから、あんな嘘をつかなくてはならなかった。
SAOにとらえられている間、わずかな反応を求めて和人に口戯を行っていた直葉は、
その行為が兄妹で行われるスキンシップの域をはるかに超えていることを、かなり早く自
覚していた。
最初に和人と交わった時、和人は過酷なリハビリとアスナが目覚めないことへのストレ
スで精神的にも肉体的にも追いつめられていた。
見舞いに行くたびに無理に笑う和人を直葉は放っておくことができず、半ば強引に交わ
ってしまったのだ。
それから直葉と和人はお互いを求めて、性交を行っている。
「っく……お兄ちゃん……愛してる……大好き……」
枕に口を押さえつけながら、つぶやく。兄とこうなったことには後悔はない。でも、そ
のためについてしまった嘘は、まだ十代半ばの直葉には重すぎた――。