ちょっとしたクエストをソロで攻略し、第二十二層のホームに戻ってくると、意外な客が俺を待っていた。  
 
 ログハウスをイメージしたこのホームらしい、木製の扉を押し開ける。  
 いつもならこの時間、誰かしら詰めていて、のんびりしているはずなのに、今日はいつもと違っていた。  
 小柄なインプの少女が一人ちょこん、とソファに座っている。  
 俺を見つけると素朴な笑顔を向けながら彼女――ユウキが小さく手を振った。  
   
「こんばんは、キリトさん」  
「あれ、ユウキ……だけ? 他のみんなは?」  
 
 手を振り返しながら、言う。  
 うん、ボクだけ〜と調度品のソファで裸足の脚をぶらぶらさせながらユウキが言った。  
 いつものブレストアーマーや彼女愛用の片手直剣はみあたらない。  
 防具の類が装備されていないから、紫紺の短衣にロングスカートというラフな格好になっている。  
 
 まあ、こんな日もあるさ、うん。  
 
「あと、俺の事はキリトでいいから。堅苦しいしさ」  
「うん。了解」  
「コーヒー飲む?」  
「はい、いただきますっ!」  
   
 元気よく言った。  
 でもあんまりに邪気がなかったせいで俺は完全に返事をするタイミングをのがし、「う、うん。了解」としどろもどろの返事をかえしてしまった。  
 
 ユウキは実体化したコーヒーカップを両手で抱えながら、ふぅ、ふぅやっている。俺はユウキの向かい側に腰かけた。  
 
「……」  
「……」  
 
 会話がなくなってしまった。  
 おもしろい話ひとつ浮かばない上に、ソードスキル関係の話題についてもこの間エギルの店でさんざん語り尽くしたばかりだ。  
 対人関係の真理はSAOで見つけることができたものの、じゃあ女の子とおもしろ可笑しい話ができるかと言うと、やっぱりそんなことはないのだ。  
 
「ああ、そうそう!」  
 
 ユウキはコーヒーをテーブルに戻すと、手元にスクリーンを展開して、こっちに向ける。  
 いくつかの入力項目と外部サイトのスキルシミュレータ。  
 
「キリトさ――キリト、スキルビルド、手伝ってくれる?」  
「え?」  
   
 そこで俺はちょっと首を傾げる。  
 アバターとして<<絶剣>>ユウキはほぼ完成しているし、スキル関係の調整をいまさら相談しにくるとは思えない。  
 
「えっと……実はボクじゃなくて、いや、ボクなんだけど。セカンドつくろうかなぁ、って思って。」  
「セカンド?」  
「うん、セカンドキャラクタ。アスナのエリカみたいに。たまには一から鍛え直すのもいいかなぁ、と」  
「そういうことか」  
 
 それなら納得できる。別アカウントで別のアバターを一から作成するのであれば、一応相談には乗れるかもしれない。  
 
 あくまで脳筋型のスキルビルドしか教えることができないけど。  
 もしも、それ以外の――魔法スキルのビルドには少し自信がない。  
 おそるおそる聞いてみる。  
 
「じゃ、ちょっとやってみますか。使用武器は?」  
「ん――」  
 
 ユウキはすこし考え込むような仕草をしてから、  
 
「――斧?」  
「お、斧って……戦闘スタイルぜんぜん違うじゃないか。ノームにするの?」  
「うん。だってあんまり盾役ってやったことないから」  
「ガチ盾やるのか。まあ、詰めはエギルにも参加してもらうとして」  
 
 スクリーンから閲覧ソフトを開いて、斧関係のスキル構成サイトをのぞき、  
 
「じゃあ、はじめるか。斧メインのスキルビルド・シミュレーション」  
「うん、よろしくっ!」  
 
 まるで新しいおもちゃを見る子供のような笑顔でうなずいた。  
 
――――  
   
 いまさらながら、ユウキの飲み込みの早さに舌を巻く。  
 吸収力と直感力が半端じゃない。こちらの説明を受け止めつつ、理解した上で再度質問を投げてくる。  
 
 まあ、今日の今日、セカンドキャラを作る予定はないようなので、ある程度の方針を決めただけ。  
 あとは実践で斧を使ってる人間に尋ねるのが一番だ。  
 乗りかかった船なので、エギルあたりを捕まえてみるとユウキに約束する。  
 
「じゃあ、今度はエギル込みで会議だね」  
「うん。今日はありがとっ!」  
 
 うお……と思わず上半身を引いてしまった。  
 思ったよりもユウキの顔が近くにあった。そりゃ、一枚のスクリーンを二人でみていたのだから、それくらい距離が近づいていても、別におかしくない。  
 むしろ今更気がついた俺がどうかしていた。  
 正直なところ、SAOでは結婚をし、現実ではつき合っているアスナ以外の異性とここまで接近した覚えは何度もない。内心の動揺を悟られまいとユウキから目をそらすと――。  
 
「キリト……お礼、するよ」  
 
 と、ユウキが耳元で言った。  
 
「お礼? い、いや、いいよ!」  
 
 正直、話題を振ってくれただけでありがたかったので、丁重に事態しようとした時だった。  
 
 至近にあった、ユウキの顔が回り込んできて――。  
 
 ちょん、と唇と唇が触れ合った。  
 
 本当に短い時間。瞬き一つする間もないくらい。柔らかい感触が唇に当たった。  
 
 思考がラグる。頭真っ白。たっぷり二、三秒。  
 頭が回りだした瞬間、  
 
「ぶへら――っ?」  
 
 なんだかマンガのように吹き出しながら、ソファーの端まで飛び退いてしまった。  
 
「な、な、なっ?」  
「もう、キリトってば。いつもアスナとはコウイウことしてるんでしょ。いまさら……あれ?」  
     
 あれ、なんか思ってたのと違う、みたいな顔をしながらユウキが唇をとがらせる。  
 
「アスナとはいいのに、ボクじゃだめなんだ」  
「そういうわけじゃないけどさ……いや、いきなりだったし」  
 
 アスナ以外と経験ないし。  
 
「……? シリカさんやリーファさんやリズさんとはしないの?」  
「断じてしてないっ――!」  
 
 誤解されるようなことをしている自覚はあるけど、顔を見合わせた状態で言われたのは初めてだ。  
 そんなことしていたら、クラインあたりに股間のオブジェクトを刈り取られる。  
 
「じゃあ、その、エッチは?」  
「……へ?」  
 
 なにかさっきから間抜けな受け答えばかりしてしまっているような気がする。  
 
 ――エッチ? エッチって、なんだっけ?  
 いや、エッチのことだよなあ? テッチさんのことじゃないよなあ。  
 
 当のユウキと言えば、こちらを真剣に見つめている。無垢で好奇心にあふれた表情。  
 
「あ、アスナ以外とはしてないよ……」  
 
 視線に耐えきれず、言ってしまう。  
 ここで一言、内緒だよ。とか言えればいいのに。  
 
「あ、あれ? そうなの? ボクてっきり……」  
「一体どういう目で俺を見てたんだ」  
「だってさぁ……あれだけみんなアタックしてるし、もうとっくにエッチしてるのかと思ってたんだよ」  
 
 そしてユウキは難しそうな顔をして、うーんと、うなり。それから――爆弾を投げつけた。  
 
「そっか……うん、やっぱり決めた。じゃあ……キリト。エッチなこと、これからしようよ」  
「……」  
 
 爆弾じゃなかった。麻痺毒だった。ほら、頭に作用するやつ。  
 
「なんでいきなりそんな話に……?」  
「……キリトのがほしい……じゃ、だめかな? アスナにやっているみたいなこと……ボクにも教えて――ほしい、じゃ理由にならない?」  
「……」  
 
 潤むユウキの瞳を見て、そこで俺は初めて気がついた。  
 もしかしたら彼女は、ユウキはそもそもそれが目的で――。ここで待っていたのではないのかと。   
 
 ユウキの病状の経過についてはアスナから順調だ、と聞いていた。  
 
 俺やユウキも参加するALO統一デュエルトーナメントの予選も、あと数日で開始予定だし、三月になれば、アスナ、リズ、シリカにユイとリーファを加えたメンツで京都旅行に行くらしい。それにあわせてプローブの調整も行ったばかりだ。ユウキと彼らの仲間のために。  
 
 そんなユウキが切なく笑う。なんだか見ているとこっちが泣きたくなるような、儚い笑み。  
    
「アスナには言っちゃだめだよ……? 最近ぼーっとする時があるんだ」  
 
 そこでいったん言葉を切る。  
 
「アスナやシウネー達と一緒にいるときもね、時々みんなが何をはなしているのかわからなくなるときがあるんだ。耳はちゃんとみんなの話をきいているのに、頭がぼーってして、なにも覚えてなくて……おかしいよね?」  
 
 俺はうん、ともいや、とも言えなかった。  
 口調こそ明るいものの。言葉の語尾が震えている。そして震えは短衣からむき出しの淡い肩に伝わっていった。  
 
「……」  
 
 彼女が立ち向かわなければならないものの大きさを、俺は改めて思い知った気がした。  
 SAOでは、剣と鎧と知識で俺たちは自分の命をまもっていた。逆に――それらで命を奪うことさえできていた。  
 でも、ユウキは何も持たずに立ち向かわなければならない。  
   
「だから、ね? いっぱいいっぱい思い出を作りたい。もちろんみんなにはたくさん思い出をもらってるし、満足してる……でも、なにも感じなくなって、眠っちゃう前に……教えてほしいんだ」  
「お、俺が相手――でいいの?」  
   
 一生に一度の思い出に、その相手に俺を選んでくれたことは素直にうれしいが、俺は自分のことをそこまで立派な人間だとは思ってない。だから素直に理由を聞きたかった。  
 
「ん? だってアスナが好きになった人だもん。ボクだってキリトのこと好きになれるよ、たぶん」  
 
 想像以上に、あっけらかんと言われてしまった。  
 あのね、とユウキが言う。  
 
「一度だけ、姉ちゃんがテッチとエッチしてるところ見ちゃったんだ。だから二人はつき合ってたのかもしれない。結局、聞けずじまいだったな……でもそのときの姉ちゃんはすごい幸せそうでね……」  
 
 いったん息を大きく吸って、  
 
「ボクだって……女の子だもん。一度くらいは、そういうのしたい。したいとは思ってたけど……キリトがいいんだ。だって、アスナの大好きな人だもん」  
 
 ユウキは一息にそういった。  
 
「だめ、かな?」  
 
 ……女の子にここまでいわせてしまった手前、断れない。ここまで俺に寄りかかって来てくれる女の子をほっとくわけにはいかない。決断にはわずかな下心もなかったはず――だ。  
 
「――了解」  
「……うん。ありがと、キリト。じゃあ、頑張っていこっ!」  
 
 なにかのクエストに挑戦しにいくような声音におもわずあきれてしまう。  
 
「緊張感ないなぁ……」  
「……?」  
 
 きょとん、と首を傾げるユウキに苦笑しながら、ユウキに近づいてみる。  
 ここまで密着してもハラスメント警告がポップされない。ということは、ユウキは元から倫理解除コードを解除してきた、ということになる。  
 いまさらながら、ユウキの覚悟に身が引き締まった。  
 
 そのまま、触れたら崩れてしまうのではないかと思うほどやわらかそうな唇に唇を重ねる。  
 
「んっ――っ!」  
 
 唇が触れた瞬間、ひくりと反応するユウキ。  
 俺はコシのある髪に指を埋めながら、ユウキの口内を味わうべく――。  
 
「んん――っ!」  
 
 唇を舌でこじ開けた。  
 とはいえ、俺の経験は全部アスナから与えられてるモノで、正直このやり方でいいのかどうか、まったく自信がない。  
 初めてアスナを抱いた時だって、緊張で頭がくらくらしていたし、別段経験値があるわけじゃないので――。  
 
 唇を離すと、ユウキがぼうっとしていた。  
 
「はう……生まれて初めてだよ……口のなかに舌がはいってくるの……」  
「気持ち悪かったか?」  
「ううん。キリトの舌、ちょっとコーヒーの味がする……。もういっかい」  
 
 いつの間にか、俺の首に回っていたユウキの腕に誘われるように、もう一度唇が接触する。  
 
「んっ――!」  
 
 そしておもわず、悲鳴を上げそうになった。ユウキが積極的に舌を絡めてきた。  
 舌をそのまま、ごっそりと持って行かれそうな、勢いでまさぐられる。  
 おもわず身を引こうとして、だめだった。  
 ユウキの腕ががっちりと俺をホールドしている。  
 面目丸つぶれ……を何とかするために、俺は気を取り直してユウキと文字通りの舌戦をくりひろげた。  
 
「んっ、ちゅるっ、ちゅ、んちゅ……」  
 
 どちらの物とは知れず、部屋に舌と舌の絡みつく水音が部屋中に響く。  
 
 ぷはっ、とほぼ同時に息を吹き出した俺達は肩で呼吸しなきゃいけないほど酸欠状態におちいっていた。  
 
 想像以上に遣り手だったユウキに釣られてしまったというのもちろん、ある。  
 けどあたりにも気持ちよすぎて、夢中になってしまった。脳髄を刺激する、ちりちりとしびれる感覚はどうにも離しがたくて。  
 
 まるで舌を根本から引っこ抜かれそうな、感覚とでも言えばいいのか。  
もっともっと味わっていたいような、お互いの感じる動きを理解しあっている動きというか。癖になりそうなディープキスだった。  
 
「……キリト、最初からとばしすぎ」  
 
 俺の思いとは裏腹にユウキはぷくっと、頬を膨らませる。  
 
「それ俺の台詞だから……」  
 
 VR空間の申し子の多彩な才能に文字どおり舌を巻く。  
   
「ねえ……もういっかい」  
 
 甘すぎる誘惑を口にするユウキに、俺は全く抵抗できなかった。  
 
――――――  
 
 しばらくお互いにお互いをついばみ続けた後、俺はユウキをともなって普段仮眠室として使っている寝室にいざなった。  
 
 アスナのお気に入りソファは二人で寝ても十分な広さがあるものの、さすがにいつもみんなで集まる場所では致したくなかったので――誰が来るとも限らないので――普段仮眠室としている部屋にユウキと二人で引っ込んだ。  
 
 すでに倫理コード解除設定はお互い実行しているので、二人で示し合わせて服を脱ぐ。というよりも装備ステータスから衣服をはぎ取る。  
 
 いいよ、と言う声に反応して、俺は振り向いた。  
 
 ユウキが裸でベッドに座っていた。  
 
 カチューシャが外されているせいか、髪の一部が前の方に落ちてきている。真っ白な肌とそこのコントラストが本当にきれいだった。  
 腰のあたりまである髪は、乳房の上をながれていて、ユウキの身体半分を隠している。  
 なんともいえない情感をかもしだしている。そして黒髪は彼女の膨らみは想像以上にふくよかな様子で……。  
 
 ふらふらと手を伸ばしてしまう。  
 華奢な鎖骨のあたりに指をおいてみる。さわる前までは冷たい陶器のような感触を想像していたのに、実際に触れてみると人間の体温を確かに感じた。  
 
「はう……」  
 
 熱っぽい吐息を聞きながら指を下におろしていく。一度、ユウキの髪を彼女の背中に流した後、露わになった乳房に触れる。  
 わずかに汗でしめった肌が、手のひらに吸いついてくるようだった。  
 
 そのまま上に持ち上げてみる。アスナほど(失礼な話だと分かってはいるものの、今現在、比較対照がアスナしかないため、どうしても比べてしまう……)大きくはないものの、そこの質感というか、重みは見た目の通りだ。たっぷりとした感覚が指の一本一本に伝わってくる。  
 
「んひゃ……ぅ……」  
 
 そのままふにふに、と弄んでみる。特に痛そうな様子はないので、今度は少し強めに。  
 そして指と指の間にツン、と尖った桜色の突起を挟んでほぐすように指先を動かす。  
 
「んっ……ひゃ……ぅぅ……んっ、んっ……」  
 
 ユウキの唇は、胸を刺激される度にいちいち悩ましい呼気を吐き出し、何かに耐えるようにシーツを握りしめる。  
 普段どちらかといえば色気から縁遠いところにいるユウキが、乳房をなぶられて感じてる仕草はとてつもない色気があった。乳白色の肌に赤みがさしていく。  
 
「はうっ……ううっ……んっ……キリト……やさしい……」  
「もっと強いほうがいい?」  
「ううん……しばらくこのまま……んっ……」  
 
 オーダー通りにそのまま、なるべく優しく、おっぱいを揉み続ける。  
 でもそのうち、揉んでいるだけだは満足できなくなってきた。小さな刺激にもちゃんと答えてくるユウキに、もっとかわいい声を上げてほしい、と考えて――。  
 いったん胸から手を離して、聞いてみる。  
 
「ユウキ……おっぱい、吸ってもいい?」  
「……いいよ。キリトの好きにして……」  
「わかった」  
 
 俺は正座のまま一歩近づき、まず鎖骨のあたりから舌を這わせていく。  
 そして、彼女の右の胸のそこを、思い切って含んでみる。  
 
「ひ、んっ!」  
 
 ユウキが短く悲鳴を上げる。そのまま俺は乳輪とその先端を舌で刺激してみる。  
 意図せず、ちゅる、ちゅると音が漏れてしまう。  
 
「んっ、んあ……ひゃんっ……んっ……きもちいい……」  
 
 緩く頭が抱きしめられる感覚。目の前にユウキの身体があるせいで、想像しかできないけれど、頭を――抱き締めてくれているのがわかる。  
 
「んっ――んっ、はう……。キリト……赤ちゃんみたい……」  
「んちゅ……その赤ちゃんにおっぱい吸われて気持ちよくなってるのは……?」  
 
 おっぱいから口をはなして、わざと聞いてみる。  
 すでに涙目なユウキがおずおず言う。  
 
「……ボク、だけど……あんっ……いま、舌が――」  
「舌がどうかした?」  
「……キリトいじわるだよね……いろいろ……。キリトのっ……舌がぁ……おっぱいに当たって……っぅ……ざらざらして気持ちいい――!」  
「んごっ!?」  
 
 興奮したユウキが俺の頭を抱きしめ、息苦しくてつい、喘いでしまった。そのせいでちょん、と歯が乳首に触れる。  
 
「えっ? いやぁ――っ!」  
 
 歯先がユウキのそこを直撃したとたん、ユウキが腰をそらして、悲鳴をあげた。そのまま身体を細かく痙攣させたあと身体から力を抜いて、ぼんやりした目で俺を見つめるユウキ。  
 自分になにが起こったのかわからないようだったが、しばらくすると目の焦点が合ってきた。  
 そのまま、ふうっ、と一息つくと、  
 
「――いまのなに……? お腹のなかがぎゅーってしたんだけど……」  
「えっと……たぶん、気持ちよくなりすぎるとそうなる、らしい」  
 
 こればかりは経験したことがないのでよくわからない。  
 
「そっか。ずるいなぁ……アスナも、シウネーも、姉ちゃんも、こんな気持ちいいことしてたんだ……」  
 
 ぽつり、とつぶやいたユウキの声はどこかもの悲しかったけれど……。  
 
 そろそろこっちも限界だった。  
 さんざんユウキの痴態を間近で見せられて、自分でもあきれるほど股間のそれが大きくなっている。  
 
 
――――――  
 
 ユウキが落ち着いたのを見計らって、再び唇をあわせながら、華奢な身体をシーツの上に横たえる。  
 すこし脚を開いてもらい、緩いM字開脚のような格好になってもらう。  
 
 ちょうど窓から月明かりが差し込んで、ユウキのそこを照らし出す。まじまじ見る必要もなく、ぐっちょりと濡れていた。流れでた分泌液は内太股やお尻のあたりまで汚している。  
 思わずユウキの顔を見る。  
 
「ユウキ……ここ、すごいことになってるよ」  
「き、キリトのせいだよ……」  
「俺がどうしたの?」  
「うう……キリトが……その、おっぱい揉んだり……舐めたり……するから……」  
 
 こっちが恥ずかしくなりそうな告白だった。そのうえ、ユウキ自身も自分で言ってしまったことの恥ずかしさに今更気がついた様子で赤くなる。  
 俺を受け入れようと懸命な姿が愛おしい。今すぐ抱きしめたい衝動に刈られたものの、さすがに理性で押さえつける。  
 そのかわり、ユウキの髪をなでる。んっ、と目をつむりながらそれを受け入れるユウキの髪は、俺の指にからまるまることなく梳かれていく。  
 するすると指の間を抜けていく、髪の感触が心地よくて、夢中で頭を撫でてみる。  
 
 そうしているとユウキが猫のように身体をすりつけてきた。  
 
 皮膚と皮膚がぶつかり合ってそこからユウキの体温を感じる。お互いにお互いの体温を交換しながら、じゃれあっていた。  
 
 しぱらくして、ユウキが俺の耳に唇を寄せて、この距離でなければ消えてしまいそうな声で、  
 
「いれて、いいよ……」  
 
と言った。  
 
「うん」  
 
 自分の身体を彼女の脚と脚の間に滑り込ませる。  
 すでにぬるぬるとした愛液で十分に濡れたユウキのそこに、先端を押し当てる。  
 理性の箍ががらがらと音をたてて崩壊していく。  
 わずかな抵抗があったものの、ぬぽっ、となにかを貫く感触がして、俺はユウキと一つになった。  
 
「んっ――!?」  
 
 息子の全体が柔く包まれている。アバターの体格から算出される擬似的な膣道。  
 でも、ユウキはとろけるような表情で俺を見ていた。俺とつながっている下腹部を片手で撫でながら。  
 
「キリト……ちゃんと入ってる? おかしなところない?」  
「ああ、大丈夫」  
 
 大丈夫というよりも、我慢をしていなければすぐに暴発してしまいそうだ。小柄な体格のせいか、先端から根元までをぎゅっと締め付けてくる。  
   
「よかった……」  
 
 ユウキはほっとしたように身体から力を抜いた。  
 
「それだけが心配だったんだ。ボクの身体はアバターだから普通とは違うから……でも、キリトのが……熱いのがわかる……」  
「心配なかったみたいだな」  
「うんっ! よかった……」  
 
 肩をなで下ろすユウキの頭をもう一度丁寧になでてから、その細い腰に両手を添えて、ゆっくりと腰を後ろに引いていく。  
 
「んっ……!」  
 
 じゅぽ、というはしたない音を鳴らしながら、亀頭の先端近くまでを引き抜いてみる。  
 
「ユウキ……痛かったら止めてくれよ?」  
「う、うん」  
「じゃあ……」  
 
 そこから一気にユウキを貫いた。  
 
「んっ――っ!」  
「うわ――」  
 
 ユウキが耐えるように悲鳴をあげる。  
 でも、俺のほうは耐えきれないかもしれない。  
 一度貫いていたおかげで、挿入自体はかなり楽だ。だが、それに加えて――。先端のユウキの奥に当たっている部分が、ざらざらと心地よく、当てているだけで心地よい。背骨のあたりに直接響くような快感に、理性の何割かを持って行かれた。  
 
「はっ、うっ……キリト……?」  
「ごめん、ユウキ……ちょっと我慢できないかも。痛くはなかった?」  
「痛くないよ……。けどキリトのここ、お腹のなかでびくびくしてる……気持ちいいの?」  
「すっごく」  
 
 おもわず内心をぶちまけてしまう。  
 
「……いいよ。好きに動いて――気持ちよくなって。ボクのここに、キリトのちょうだい……」  
「うん……」  
 
 もうどちらが先導しているのか、よく分からなくなってきたが、俺は素直にユウキに甘えることにした。  
 顔をあげてユウキの顔をまじまじ見てみる。頬を赤く染めながら、本当にうれしそうに俺を見てくれていた――。  
 もう我慢が効かなかった。  
 俺は本能の赴くままに腰を動かしはじめる。  
 
「んっ、んっ、あっ、んんっ、ああっ――熱いっ!」  
 
 腰の動きにあわせてユウキの呼吸にさえずるような可愛らしい嬌声がまざる。その声をもっと聞いていたくて、俺はリズムよく腰を動かしつづけた。  
 引き抜こうとするたびに、ぎゅぅっと、ユウキが締めつけてくる。  
 
 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ――  
 
 燃え上がるような刺激を交感させるように、俺たちは交わり続ける。  
 
「うぅっ、ひゃぁ――! キリトの、あっついよぉ――!」  
「ユウキっ……ごめん、もう――」  
「ふぇっ!? んっ、んっ、んっ、んっ――! いいよ――!」  
 
 目に涙をためながら、ユウキが言う。  
 そのままぎゅう、とユウキの脚が俺の腰に絡んだ。  
 その瞬間、ぎゅうっ、と強く締め付けられる。  
 
「うわっ!」  
 
 最後の関を越えてしまい、俺はついにユウキの中にそれをぶちまけてしまった。  
 どくん、どくんとまるでポンプのように吐き出していく。ユウキの一番深いところでぶちまけれられた精液が、そこを直撃する。  
 
「――――!」  
 
 ユウキが無音の悲鳴をあげる。   
 そのままユウキの腰を押さえつけるようにして、そこにぶちまけていく。  
 俺は股間の先から感じる射精の快感によいしれながら、ユウキにおおい被さった。  
 
 しばらく射精したあとの脱力感に身をゆだねていると、今度はユウキが俺を抱きしめてくる。アバターとは思えない、人肌の体温が俺を包み込む。  
     
「ごめん、ユウキ……止まれなかった」  
「謝ったら駄目だよ、キリト。キリトが出したの……まだお腹のなかであっついよ……。まだビクビクしてるし……」  
「……」  
「ありがと、キリトっ。キリトのおかげで……」  
 
 しゃくりあげるような音が一つ。  
 思わずユウキの顔を見上げる。目の端に涙がたまっていたが、ユウキはいつものように無邪気な笑顔で。  
 
 
「キリトとアスナのおかげで、女の子にしてもらったよ」  
 
――――  
 
「うう……キリト、本当にこんなところでするの……」  
「や、最初に挑発してきたのはユウキの方だろ……」  
「だってキリトがみんなやアスナ以外に色目つかってるんだもん。さっきの対戦者さん、おっぱい大きかったもんね」  
「ご、誤解だっ!」  
 
 ユウキの身体を壁際に押しつけ、抱きしめながら誤解を説こうとする。わずかに汗のにおいがする。  
 それはそうだ。先ほどまでユウキも俺も、対戦者と戦い、勝利したばかりなのだ。  
 もう三十分もすればMMOストリームにも配信される、俺とユウキの統一デュエルトーナメント決勝戦が開始される。  
 
「……必死になると逆効果だよー。アスナたちにも、ボクにもバレバレなんだもん」  
 
 ユウキはくすくす笑いながら言う。  
 たしかに大きいなー、アスナよりは絶対に大きいなーとか思っていたため、俺はまったく反論できない。  
 
 だんだんと手玉に取られていく心地よさを感じながら、ユウキの小さい体を抱きしめる。  
 まだお互いに金属類の装備品を解除していないので、抱き合うときに、かちりと金属音が周囲に響いてキモが冷える。  
 
 闘技会場の選手控え室からは離れているし、いうなれば関係者通用口の通路の一つにいるので、そうそう大声を出さなければ、見つかることはないとはいえ、いつ誰が通りかねない状況は心臓に悪い。  
 
「もう……まだ決勝戦には早いのに」  
「なんども言うけど、さっきの対戦者に勝った瞬間に、俺に向けてスカートめくり上げて挑発してきたユウキが悪い……」  
「んっ♪ 作戦成功っ♪ だって昨日はほら、エッチしてないし」  
「二人では確かにしてないけど、アスナと三人でやったろ!」  
「ええー。二人じゃなかったし、なかで出してくれた回数、アスナより一回少ないし……。だからね」  
 
 ユウキがあまりに自然に口を近づける。俺は動けずに、その唇を受け入れた。  
 ちょん、と当たり判定極小のキスが終わって、ユウキははじけるような笑みを浮かべて言った  
 
「もう一回。決勝戦終わったら、アスナと一緒にもう三回っ」  
「よ、四回も……?」  
 
 宣言された回数に俺はおののく。そんな俺の心配をよそにユウキは俺にもたれかかってきた。  
 確かに感じる、彼女の吐息や体温。  
 そしてつぶやくように、ユウキは言う。  
 
「キリトなら大丈夫――! 信じてるよ、キリト!」  
「無茶いうな――!」  
 
 
 トーナメント決勝戦まで、あと三十分。  
 
 

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