「あ、あの、キリト君少し話があるんだけど……」  
 
 アルゲードから帰還したキリトを迎えたアスナは、開口一番、ずっと胸の内 
で考えていた言葉を伝えようとした。  
 しかし、キリトはうつむいたまま、アスナの手を取ると懐から転移結晶をと 
りだし、第二十二層から十層ほど上の主街区の名前を告げた。  
 数秒のタイムラグのあとに、聞きなれた鈴の音の効果音が耳朶をうつ。  
「ちょ、ちょっと!」  
 手をひかれるがまま転移結晶が光に満ちあふれる。  
 キリトが片頬をつりあげて笑った。  
「大丈夫。向こうについたらちゃんと説明するよ」  
「ちがうわよ! だったらちゃんと街の転移門から! 転移結晶一ついくらす 
ると――!」  
 家計の財布を預かるアスナの叫びは、転移のエフェクトにかき消されていっ 
た。 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 
 
 栗色の髪をアップにまとめたアスナは、キリトが持ち出してきたバスタオル 
に体を包んで、そこに脚を踏み出す。   
 
 半裸の体には『イトスギの月』の風がすこし冷たかったが、目の前の景色を 
認めた瞬間、アスナは寒さをわすれてしまった。  
 アインクラッドを取り囲む帯雲に真円をえがく月がぽっかり浮かび、その月 
から生まれた青ざめた月光が雲と雲の間にゆるやかにどこまでもどこまでも、 
伸びている。  
 そして雲は、秋風にふかれるまま流され、月光を刻一刻と変化させる。  
 周囲に空と雲しかないアインクラッドの外にはいわゆる地平線がない。外縁 
からいくら周りを見渡しても陸地が一切見えないからだ。  
 だから地平線のかわりに雲海が月と太陽を隠す。  
 そういえばとアスナは思い出す。  
 キリトに手をひかれるに任せたまま進んできたせいで、まったく現在位置が 
わかっていなかったアスナは予想外の光景に心が震えた。  
 景色が作り物のオブジェクトだとしても、感動に震える心や魂はアスナただ 
一人のものだ。  
 
 露天風呂、だとキリトはいった。しかも五十階層以下では珍しい未踏破区画。 
ここにたどり着くまで少なくとも十回以上階段を上り下りし、その間になんど 
も連結した小部屋を行き来した。未踏破なのもうなずける。相当なもの好きで 
なければこんなところ発見できないだろう。  
 ついた場所は周囲からは絶妙にみえない絶好のロケーションの露天風呂だっ 
た。黒っぽい岩でできた風呂べりに、湯気をくねらせたお湯がたまっている。 
 
 ふ、と肩を優しく抱かれる。他人にそんなことをされれば間違いなく鍛え上 
げた腕力補正と敏捷で反撃するアスナだが、夫のそれなら別だ。アスナの耳元 
でキリトがささやく。  
「たまにはほら、ゆっくりアスナと入るのもいいかなって思ってさ」  
「……」  
 本当に? と尋ねてしまいそうになるのを、アスナはあわててやめた。そし 
て思い出したように体が寒さを感じはじめて、無意識にぶるりと震えてしまう。 
 
「風呂、あったかいよ。例によってざっくりとした非再現風呂だけど」  
 アスナはキリトの言葉にこくん、とうなずき、岩で囲まれた露天風呂の水面 
に足先をつけた。冷えた足先にお湯が当たって気持ちいい。キリトとつれ立っ 
て露天風呂にゆっくり肩までつかる。  
 しばらくぼーっと冷えた体をあたためて、ふたりでぼんやり、月を見ていた。 
 
 
「これ……このアイテムのことなんだけどね……」  
 アスナは意を決してアイテムウィンドウを自分とキリトに見えるところに展 
開する。問題の二つのアイテムを指定して、近くの平らな岩の上に実体化させ 
る。  
 透明なバケツのような入れ物が出現した。その中身こそ、アイテム「粘塊 
ポーション」。もうひとつは男性のシンボルを模した黒光りする「ディル 
ドー」。  
「間違ってたらごめん……これ、うしろの穴に使う道具……?」  
「……」  
 キリトは否定も肯定もしなかった。思わず顔色をうかがってみると、驚いた 
ような顔をしていた。アスナはくしゃ、と顔をゆがませる。  
「……ごめんね、キリト君。わたし……できないよ」  
「え……?」  
「ほんの少しだけ……、気になったから練習してみたの……そしたら、怖くな 
っちゃった……」  
 今度こそ、アスナの顔が泣き顔に変わった。パートナーの求めていることに 
ついていけないことの悔しさと、行為に対する恐怖にアスナは涙を流してしま 
った。  
「ちがう……ごめん。そんなにプレッシャーかけるつもりなんてなくて― 
―!」  
 正面に回り込んだキリトがアスナを抱きしめる。小さい子どもを慰めるよう 
にアスナの頭をなでながら、アスナのくちびるに頬をよせた。  
「……ごめん、本当にごめん。気がつかなくて、ごめん」  
「う……ひっく……ごめんなさい……でも、怖いの……」  
「うん……俺こそ、ごめん」  
 アスナはキリトの胸に思い切り頭をよせてしばらくの間、泣き続けた。  
    
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 
 
「……落ち着いた?」  
「……はい」  
 どれくらいの時間がたっただろう、とアスナは思った。湯面としてオブジェ 
クトの効果が固定されているらしいお風呂の温度はいつまでたっても冷めず、 
中途半端な温かさを与え続けている。横目で見た月はかなり高いところに移動 
していた。もしかしたら一時間くらい、泣いていたかもしれない。  
 アスナは恐る恐るキリトの肩に触れてみた。  
「冷たい……」  
 アスナが泣きやむのをじっと待ってくれていたキリトの肩は、湯面から出て 
いたせいで冷たくなっていた。  
 キリトは緊張の糸が切れたのか、ふうっと一つ大きなため息をつくと、ざぶ 
ん。肩までお湯につかった。  
「あー……アスナ。本当にごめん。そこまで追いつめてるとは思いもしなかっ 
た……。アイテムはもしアスナがその気になった時、少しでも楽になればなあ、 
位の気持ちでかってきたんだ」  
「……うん。信じる」  
 ほんの少しずつ、恐怖が溶けていく。キリトは粘塊ポーションとディルドー 
を風呂べりに実体化させる。ポーションのほうはともかく、ディルドーのほう 
はまがまがしく見えてならない。 
「片方の粘塊ポーションは五十五層のスライムが落とすレアドロップアイテム 
だし、ディルドーは実は短剣扱いなんだ。プレイヤーメイドの」  
「えっ、これ武器なの?」  
 黒光りするそれはとても武器には見えない。先ず間違いなくHPは減りそう 
になかった。理性は削られるかもしれないが。  
「『張り子』とか『えっちなローション』とか直接的な表現のアイテムは実装 
できないだろうし、苦肉の策でこうなってるんじゃないかな。今回は短剣扱い 
のディルドーにしたけど、片手剣扱いのオルクリストディルドーとか、細剣扱 
いのスティングディルドーとか、両手剣扱いのグラムドリングディルドーと 
か」  
「それものすごくやだ……」  
「大きさと種類はかなり豊富なんだって。でもこの短剣扱いのディルドーが一 
番小さくて取り回ししやすいそうだ。それに……俺のものより、ちょっと小さ 
めだろ」  
「まったくもう……」 
 不器用の彼なりのやさしさを受け止めて、アスナはもう一度、キリトにより 
かかろうとした。  
 よりかかろうとしたのだが、生来の生真面目さと怜悧な思考がはたと疑問に 
ぶちあたる。恐怖と絶望に染めあげられ、まともな回転をしていなかった頭が 
急激にまわりはじめた。  
 性交用のローションと張り子が、SAOの倫理観点から名前をかえて実装さ 
れたのなんとなく理解できるし、あり得る話だ。問題は微妙に隠蔽されていた 
それらの話をキリトがいったい誰から聞いてきたのか、ということだ。そんな 
レアで正確な情報を知る人物をアスナは一人しかしらない。  
 最悪の予想が頭をよぎる。  
「ね、ねえ、キリト君、その粘塊ポーションとディルドーの情報ってだれから 
手に入れたの?」  
 得意げだったキリトの表情が凍りついた。いままで真摯にアスナに向かって 
いた視線がそこかしこに泳ぐ。  
「その、えっと」  
「だ・れ・か・ら!」  
 キリトは肩をすくめてバツが悪そうに言った。  
「情報と粘塊ポーションはヒ、ヒースクリフ……。ディルドーは武器扱いだっ 
たからリズに頼んで作って……」  
「ばっ、ばか――!」  
「うわっ!」  
 アスナが繰り出した正拳突きは、キリトの眼前でエフェクトをまき散らして 
ながら受け止められた。キリトが同じく体術スキルでブロックしたのだ。  
 二人とも全裸なので使用できるとしたら体術スキルくらいしかない。体力 
ゲージの半分も減らせればと思って放った一撃はキリトの卓越した戦闘能力の 
前に霧散した。  
「あ、あぶな……」  
「団長に……しかも、よりにもよってリズにまで……」  
「大丈夫だろ。別にアスナに使うなんてひとことも言ってないし、それにリズ 
なんて『これなんにつかうの?』なんて話してたぐらいだしな」  
 ……ごめん、リズ。本当にごめん。心の中で親友に謝罪する。早くも新婚生 
活のいざこざに親友をまきこんでしまっただった。  
 ぷくっ、と頬を膨らませながら湯船のなかでキリトの腕を捕まえてひきつけ 
た。  
 キリトの鎖骨の辺りに頭を寄せてやりかかる。やっと人心地ついた気分だっ 
た。キリトはおずおずとアスナの肩に手をやって引き付ける。アスナはされる 
がままだ。  
 ぼんやりとした温かさを与えてくる風呂の湯に比べて、よりかかるキリトの 
体温は確かに熱を伝えてくる。人肌の温かさがじわじわと体に染みた。  
 その優しい暖かさに少しだけ甘えたくなってアスナはあえて聞いてみた。  
「わたしのあそこ、ゆるくなってたり……してないかな?」  
「ぶっ」  
 キリトが噴き出す。  
「そんなこと心配してたのか」  
「するよー。だっていきなり『SAOには排泄は無いが、果たしてアナルセッ 
クスはサポートされてるんだろうか…』なんて言うんだもん。心配になっちゃ 
うよ」  
 ああー、それで。とキリトがうなずいた。そして乙女の苦悩を吹き飛ばすよ 
うな心地よい笑みを浮かべたキリトは、  
「そんなことないよ。毎日味わっている、俺が保証する」  
 と言った。  
 半日近くなやんでいたことがいまのたった一言で解決してしまい、アスナは 
心のそこから脱力した。  
「……保証って……もう、まあいいや。キリト君らしいし」  
 本当に一日なやんだのが馬鹿みたいだった。恥ずかしがらずに――それもか 
なりハードルは高いが――聞いてみればよかったのだ。  
「じゃあ、キリトくんが『SAOには排泄は無いが、果たしてアナルセックス 
はサポートされてるんだろうか…』なんて言ったのは、単純に興味があったか 
ら?」  
「その通りです、はい。アスナのそこを眺めてたらつい疑問が、こう。ほら、 
攻略組にとにかくなんでも毒見するギルドがあるだろ。俺たちにできることと 
言えばそれぐらいだから」  
「……そうだね」  
 キリトの言葉は実にいいわけじみてはいたものの、攻略組に課せられた一種 
の義務に、手に入れたアイテムの効果を確認するというのは確かに存在する。 
 
 通常そういった検証行動は何があってもいいように毒消しやら麻痺消しやら 
高グレードのポーションなどを用意してことに当たるが、戦線から個人的な事 
情ではなれているアスナとキリトにとって、検証行動は微力ながら攻略組に支 
援できる行為でもあった。  
 
 『SAOには排泄は無いが、果たしてアナルセックスはサポートされてるん 
だろうか…』  
 
 本日半日間、大いにアスナを悩ませた言葉がよみがえる。昼間に一度試した 
結果、危機感を感じ、あきらめた行為。  
 
 アスナはキリトの腕を思い切りだきしめる。初めての行為への恐怖はもちろ 
んある。でも、どうしても彼の期待にこたえてみたかった。  
 泣きだしてしまう前に。本気で考えれば、怖くておびえてしまう。だから勢 
い半分でキリトの耳元でささやいた。  
「さっきは泣いちゃってごめんなさい……でも、キリト君が望むこと……わた 
しもしてみたい……」 
  体と体が密着し、巻きのゆるんだバスタオルが湯面に浮いてほどけていっ 
た。  
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 
 
 アスナはキリトに背を向け上半身をぐっ、と折って風呂べりに手をかけ、お 
尻をキリトにつきだす。水晶玉のようになめらかなお尻の間にアスナの菊座が 
息づいていた。菊座はアスナの不安と期待をあらわすようにひくひくとうごめ 
いて、菊座の下の秘裂はすでにお湯と愛液で潤い、サーモンピンクの淫靡な光 
を放っていた。 
 アスナはキリトが一度大きく唾をのむ音を聞いた。なにに悩んでいるのかす 
ぐに思い立った。  
「キリト君が言いだしたんだからね……。こんな格好までさせたんだから、ち 
ゃんと責任とってよ……」  
「りょ、了解」  
 キリトが粘塊ポーションを手にしてアスナの美尻にふれた。  
 んっ、と本人も意図しない悲鳴をあげる。お湯で温まった皮膚には、いまと 
りだしたばかりの粘塊ポーションが冷たすぎたのだ。  
 心配そうに見つめてくるキリトに大丈夫、とジェスチャーで伝えると彼は行 
為を再開した。  
 まず、キリトはアスナの尻肉に手のひらをあわせ一回転させた。手のひらに 
載っていたポーションがのばされてお尻に広がっていく。  
「く、くすぐったいよぉ……」  
 アスナは徐々にキリトの手がなめらかに動いていくのを感じている。キリト 
とは何度も睦みあっているものの、これほどお尻をさわられたことはなかった。 
 
 最初に触れられたときはポーションの冷たさに驚いたものの、それがキリト 
の手のひらの体温とアスナの体温で暖められると徐々に心地よくなってくる。 
 そうしてまんべんなく、彼女の尻にポーションをまぶしたキリトはほどよく 
弾力をもった尻を指いっぱいにつかんで、一気に折りたたんだ。  
 にゅるん、にゅるん  
「ひゃんっ!?」  
 二つの大きな尻肉がぷるん、と震えながらキリトの手のひらから抜けた。  
 そしてふたたび、にゅるん、にゅるんと、尻肉はキリトにつかまれるたびに 
指先から逃げ回る。指との摩擦力をポーションが失わせているため、肉感的な 
彼女の尻がにげる、にげる。  
「ううう……キリト君……遊んでるでしょ……」  
 アスナは体をひねってキリトをらみつける。予想通り、そこには新しいおも 
ちゃを見つけて遊んでいる子どもの表情をうかべたキリトの姿があった。  
 視線に気がついたのか、わざとらしく一つ咳払いをしたあとキリトが言った。 
 
「面白くてさ。悪いんだけどもうすこし、お尻上げてくれる?」  
 悪びれなく言うキリトに、心中でため息をつきながらアスナはキリトの言葉 
にしたがった。ポーションでつやめいたお尻が、つんとより高く持ち上げられ 
る。  
「これで、いい?」  
 キリトは小さくうなずくと、再びアスナに触れはじめる。ポーションでぬれ 
た指先をアスナの嵌りに当て、くっ、と小さく押す。  
「あ……」  
 昼間に経験した感覚にアスナは思わず声をもらした。  
 キリトの指はあくまでやさしい。菊座に丁寧に指をはわせ、ときおり嵌りに 
指の腹をおいて刺激する。なんども、なんども。時にはポーションを手のひら 
に追加して、ガラス細工の壊れ物を扱うかのように準備をすすめる。  
「……はじめてだよね、キリト君」  
「も、もちろん……まだ痛くないよね」  
「大丈夫。自分で触った時もそんなに痛くなかったし……」  
「じゃあ……」  
 キリトはもう一度ポーションを指先にからめると、菊座の中心に指を立てた。 
粘塊ローションまみれになって輝くそこに、つぷっと指が侵入する。  
「んっ……指……」  
 軽い異物感を感じてアスナはキリトを振り返る。  
「うん。少しだけ入ってる。大丈夫?」  
 アスナはこくんとうなずいた。まだ入り口だし、正直に言ってまだそれほど 
負担はなかった。キリトは空いた手でアスナの腰のあたりにふれた。いくよ、 
という彼なりの合図なのかもしれない。  
 アスナとキリト、二人の想像よりもたやすく行為は進んでいった。キリトの 
指はほぼなにも抵抗なく指の付け根まで菊座に飲み込まれる。 
「あれ……?」  
 アスナは内心で首をかしげた。恐怖感がない。逆に心地よい刺激がキリトの 
指から伝わってきて、心地よかった。そのことを伝えるとキリトは心底安堵し 
たような表情になった。  
 前準備は続いていく。根元まで入れられていた指がすこしずつ抜けていく。 
ほぼ丸二年間、排出という生理的欲求を満たされなかったせいか、アスナは無 
意識に押し出す喜びに震えていた。  
「んっ……あぅ……」  
 赤ちゃんがよくおしめを汚すのは、排出という行為自体が気持ちがいいから 
だ、とどこかで誰かに聞いたのをアスナは思い出していた。そんな乳幼児が感 
じるような快楽にいま自分も浸っていると、考えると恥ずかしくてしかたない。 
 
 キリトは指を抜き出し、ポーションを指にからめて再びうしろの嵌りに指を 
押し込んでいった。  
 ポーションの半分も使い切ったころ、前準備は十分と判断しキリトとアスナ 
は連れだって風呂からあがった。 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 
 
「痛かったら、すぐにやめるから……」 
「……ちょっと心配しすぎだよ。こっちが不安になってきちゃうよ……」 
 平らな風呂べりにキリトが腰掛け、アスナはキリトの太股の脇に膝立ちにな 
る。そして内心の迷いを表すかのように、ゆるゆるとキリトに向かって菊座を 
おろしているところだった。男根が菊座に触れた。ぐす。突き上げる圧力にア 
スナは思わず眉をひそめた。 
「アスナ……?」 
「だい……じょうぶ……」 
 気遣わしげに声をかけてくれるキリトに笑いかけ、アスナは腰をおろしてい 
く。キリトの男根にもポーションがぬりたくられているため、アスナの想像よ 
りもはるかに、挿入は楽だった。 
 ポーションとキリトの前準備によってほぐされた菊座が先端を飲み込む。ず 
っ、ずっ、とアスナの呼吸にあわせて男根がミリ単位で挿入されていく。 
 カリ首のあたりまで挿入がおわったところで、アスナは一度腰をとめた。 
「はぁ……はあ……はぁ……あと、どれくらい……」 
「まだ三分の一くらいかな……なあアスナ。さきにディルドー使った方がよか 
ったんじゃないか? こういっちゃなんだけど、俺のここ、結構大きいかもし 
れないよ」 
 気持ちはありがたいけど、とキリトは続けていった。アスナは首をふる。 
「最初にするの……やっぱりキリト君のが、いいから。わたしの後ろの、初め 
てなんだよ……?」 
「う……」 
「大丈夫……思ったより怖くないし、大丈夫」 
「……」 
 アスナの覚悟を感じとったのか、キリトはもうなにもいわなかった。 
「続けるね……んっ……んっ……」 
 再びゆっくりとアスナが腰をおろしはじめると、いままでおとなしかったキ 
リトの手がそばに置いてあった粘塊ポーションを救った後、アスナの体を這い 
まわりはじめた。 
 ぬるぬるとした液体をはらんだ手は、まずは陶器じみたなめらかなくびれに 
触れ、腹部全体をなでまわす。アスナは体からすこし力が抜けるのを感じた。 
肩越しにキリトを見てみる。アスナと目があうとキリトは悪戯っぽくアスナに 
笑いかけ、マッサージだよ、と言った。お腹をさすっていた手の一本がアスナ 
のくちびるをやさしくなぞる。ポーションに共通する甘酸っぱいレモンの味を 
求めて、アスナは差し出された指先を口に含んだ。 
「んちゅ……んっ……んちゅ……」 
 菊座に集中していた意識が拡散されていく。自然と体がリラックスし、最終 
的に菊座の閉まりもゆるやかになった。キリトの指を夢中で吸いながら腰を落 
としていると、菊座は二人の想像よりもあっさりと、男根を飲み込んだ。 
「……ぜんぶ……はいった……?」 
「入ってるよ。アスナのなか、めちゃめちゃあったかい」 
「うん……キリト君が入ってるの感じるよ……熱くて、硬いよぉ……」 
 アスナは最後に車座になっていた脚を前に投げ出し、キリトに全部の体重を 
預けた。キリトの膝の外に脚をなげだし、ちょうど脛のあたりまでを湯面つけ 
る。キリト上で股を広げている形になるので恥ずかしい秘裂はすでに隠される 
こともなく空気にさらされ、より深く男根は菊座に嵌りこんだ。 
「ぁぁっ……ぅ……んっ……」 
 最初こそ、侵入されてくる違和感と熱さのみを感じていたアスナは、徐々に 
菊座が違う熱をもっていくのを感じる。閉じていなければいけない器官をこじ 
開けられる圧迫感が過ぎ去ってキリトの男根の形をした灼熱と狂おしいほどの 
痛痒感が菊座をさいなみ始めた。  
「はぁ……はぁ……んんっ」  
 出すことは想定されていても挿入されることは想定されていないそこがキリ 
トの侵入を拒否している。いますぐはまり込んだキリトの男根を外に出したい 
と、アスナの意思とは無関係に熱く律動する。  
 だが無理だ。体勢上アスナはキリトに全体重をあずけてしまっている。キリ 
トを排出するにはまず自分の体重をなんとか押しのけなければならない。  
 そしてそんなこと、できるはずがなかった。  
「ん……あっ……」  
 いつの間にか半びらきにしてしまっていた口をあわてて結び、目を閉じる。 
 
 体の芯の芯を犯されて理性の一部が崩壊していくのを感じる。はじめて味わ 
う心の中にくさびを打たれる感覚は、相手にすべてを預けていく感覚にも似て 
いた。  
 一人で試したときの恐怖はもう残っていなかった。 
「は……ぐぅ……」  
 締める、という意味においては膣よりもはるかに圧の強いアナルが、キリト 
の男根を締め上げ、アスナにその存在感を伝える。 
「き、りと……くん……」  
 無意識に愛しい人の名前を呼ぶ。口調のトーンこそよわよわしいが、それは 
明らかに悲鳴だった。  
「大丈夫……?」  
 なんとか首を縦にふって答えると、キリトは安心したように吐息をもらした。 
 
 その吐息がちょうど心地よくうなじに当たり、アスナはひくっ、と体を反応 
させた。  
 そのわずかな動きすら、キリトとつながる部分は反応してしまう。  
「んっ……」  
「うわ……」  
 ほぼ同時にキリトとアスナは声をあげた。アスナは思わず締め上げてしまっ 
た快感に。キリトはおそらく、締め上げられる快感に。  
「はぅぁ、ああ……」  
 アスナは初めて見た時、可愛いとおもってしまったキリトの男根の形が、膣 
にはいっているときとは比べ物にならないくらい明確に体の中で像を結ぶ。  
「うう……ふかい……よぉ……」  
「アスナ…………」  
 アスナと同じくかすれた声でキリトが言う。 
「でも、まだ動いたら……だめ……」 
「わかってる……」 
 無理矢理するつもりはない、という言葉は本当のようだった。 
 しばらく二人で強い刺激に耐えるようにそのままの格好でいた。 
 ただし、あくまで能動的に動かないというだけであって、アスナは生理現象 
でキリトの男根を外に出そうとうごめき、その動きに刺激された男根は、びく 
びくと蠢いてアスナの内壁をくすぐる。くすぐられた内壁はさらにキリトをく 
すぐって、堂々めぐりにお互いを刺激しあっていた。 
 アスナの美貌が少しずつとろけはじめる。無視行きに呼吸が浅くなり、目は 
潤みをもち、呼吸のたびに揺れる乳房の先端はすこしずつ充血をはじめていた。 
 そして性行には使用されないはずの穴を、行為につかっている背徳感は徐々 
に秘避さえも潤ませていった。 
 キリトはぶるりと体をふるわせたあとに言った。 
「入れてるだけで気持ちいいよ……アスナ……」 
「うん……キリト君の、ビクビクしてて……気持ちいい……」 
 自らが口にした言葉のいやらしさに灼かれ、再びアスナは下腹部に熱を感じ 
た。まだ何もはめ込まれていない、秘裂から滴がひとつ重力にしたがって流れ 
ていった。 
「……アスナぁ……」 
 キリトが悲鳴混じりに声を上げたのはそのときだった。 
 なに、と聞き返す間もなくアスナは下半身から新たに与えられた刺激に体を 
すくめた。  
 驚いて視線をさげると、いつの間にかキリトの両手が広げていた股の間にあ 
った。 
 ちゅく……、ちゅく……、ちゅく……。 
 さきほどの尻の愛撫で使用し入れなかったらしいポーションが指先を輝かせ 
ている。  
 ポーションにまみれたキリトの指がアスナの秘芯と秘裂を同時に刺激しはじ 
めていた。 
 ちゅく……ちゅく……ちゅく……。 
「い、いやぁ――!」  
 なんどかあじわった絶頂の感覚を数倍にしたような、快楽のなみが押し寄せ 
た。  
 クリトリスを一舐めされただけで達したこともあり、秘裂を一回貫かれただ 
けで絶頂したこともあるアスナにとって、キリトの行為は昇り詰めるのに十分 
なだった。 
「や、やだぁ――! いっちゃ……やぁぁぁっ!」  
 偶然キリトの指がアスナの秘芯の急所をすべる。与えられた快感に感度の 
あがっていたアスナは絶えられない。あっという間に上り詰める。 
「いやぁぁぁぁぁっ!」 
 足先から上半身までくまなく震えさせたアスナは勢いよく絶頂のしずくを噴 
射した。 
 脚と脚の付け根から愛液が湯面にむかって発射された。湯面にたたきつけら 
れるそれは、じょじょじょじょじょ、と水面に波紋をつくる。 
「ふぁ……はぁ……はぁ……」 
 男根に後ろの穴をおかされ、指で秘裂をかきまぜられ、クリトリスをなぶら 
れる。経験したことのない三点攻めの快楽の嵐に、アスナはただただ揺られる 
しかない。 
 絶頂にふるえているのは秘芯や体だけではない。突き刺さったままの男根を 
無意識のうちに締め上げる。その刺激にキリトが唸って耐えていた。だが……。 
「ひっ……!?」 
 絶頂汁を垂れ流しているのにもかかわらず、アスナはぐいっ、と太股を抱え 
上げられた。 
 小さな子供が小水をさせられるな格好だ。アスナはキリトが何を考えてるの 
か明確に理解し、凍りつき――!  
「や、やぁ……いまは……おかしくなっちゃう……!!」 
 キリトにそう訴えた。キリトがびくっとっ全身をふるえさせ、次第に腕から 
力をぬいていった。抱えあげれれていた脚が元通りキリトの上にもどり、足首 
は湯面の下に沈んだ 
「はふっ……あぅ……はぁ……はぁ……」 
 ちゃんとやめてくれたことに安堵と――を覚え、アスナは荒い息をつきなが 
ら絶頂の余韻がどこかに行くのをまった。 
 肩越しにキリトを見る。こちらが切なくなるくらいの、泣き出す一歩手前の 
表情のキリトがいた。 
「俺……アスナのここ、良すぎて……我慢できなかった……」  
 キリトが荒い息で言った。 
 アスナが理性を飛ばして絶頂したように、キリトもまた行為に夢中になって 
いたのだ。 
 彼自身は何かを解き放ちたくて仕方がないのに、アスナの体を気遣ってうご 
けなかった。アスナがやめてと言ったから、キリトはそれに従って本能を強引 
にねじふせて、行為を中断したのだ。 
 快感とは明らかに違うなにかが胸の中を満たしていく。 
 思われている。大切にされている。思えば行為がはじまってから彼はアスナ 
を気遣ってばかりだった。 
「キリト君……」 
 アスナの言葉にキリトが体をすくませるのがわかった。大切にする、と言い 
ながらも行為に没頭しそうになった自分をせめているのだろう。 
「大丈夫……だよ。ごめんね、途中でとめちゃって……」 
「……アスナは悪くないだろ……全部、俺が……」 
 最後は消え入りそうな声だった。こうなると背中を向けてつながったのがも 
どかしくて仕方ない。キリトの体を抱きしめて、泣きだしそうな彼にキスして、 
もう一度一緒に気持ち良くなりたい、という願望がアスナの中で芽生えだした。 
 アスナはキリトに抱えあげられた時、思考が凍りつくのと同時に、膣堂と菊 
座が――期待で収縮してのを覚えている。 
 口では否定してしまったが、体は彼の行為を認めていたのだ。最後の最後、 
快楽におぼれて堕ちる一線を理性が食い止めてしまった。 
「もう……恥ずかしい姿、見られちゃってるのに……」 
 キリトの男根は菊座の中で、硬さの半分をうしなっている。アスナはごめん 
ね、と一声かけてから立ち上がった。 
 ぬぽん。半萎えの男根がアスナから抜けた。 
「……」 
 まだショックから立ち直れないキリトのを軽めのキスで慰めて、今度こそア 
スナは決めた。 
 キリトと一緒に――狂おう、と。 
 前準備をしてもらったときのように、アスナは体を折って近場の岩に手を置 
いた。キリトにそこが見えるように、尻を向ける。行為のはしたなさに覚える 
羞恥心すらも、覚悟を決めてしまったアスナにとっては、自分を高ぶらせる材 
料でしかなかった。 
「キリト君……見て……」 
 アスナは秘裂をキリトに向け、指を這わせる。絶頂とポーションでぬれぼっ 
た肉壁の左右に人差し指と中指を当てる。昼に自分の性器を確認した時にやっ 
たとおりに指と指の間に間隔をつくる。 
「アスナ……そんな……」 
「うん。もう――キリト君が、ほしいの。さっき、キリト君に犯されてたの、 
気持ちよかったの……頭がおかしくなっちゃうくらい、気持ちよかったから… 
…もう我慢しない……キリト君で狂っちゃいたい……」 
「……俺も……さっき、アスナの中……気持ちよすぎて、アスナのこと大切に 
するの忘れそうだった……けど……」 
「大好きだよ、キリト君……キリト君と一緒なら、狂っちゃっても……大丈夫 
だもん」 
「……」 
 キリトはふらふらと夢遊病のような足取りで、湯を蹴ってアスナに近づく。 
やや乱暴といってもいい仕草で、後ろの嵌りに男根をあてがう。 
「ふあ……」 
 すでに一度開通した後ろの穴が、わずかな刺激を貪欲に吸い上げる。それだ 
けで達してしまいそうな熱い刺激に体が期待する。あてがわれた先端をくすぐ 
るように菊座がしぼんでくすぐる。 
「……アスナ……俺、もう……」 
「く……ふぅ……いいよ……キリト君のでいっぱいにして……」 
「ああ……」 
 キリトは返事のかわりに腰を思い切り突きこんだ。侵入を拒否する菊門を強 
引に突破し、男根が突き刺さる――。 
「――!!」 
 アスナが言葉にならない悲鳴をあげる。電撃に似た激しい刺激が、背骨を伝 
って後頭部に直撃した。だがそれに酔う時間はアスナに与えられなかった。ず 
るん、と内壁を圧迫していた男根が排出される。 
「は、うぅっ――!?」 
 抜いてほしい、抜いてほしいと体は訴えていた。それをかなえられた瞬間、 
激しい脱力感がアスナを襲う。あって当たり前だったものが抜ける感覚に、腰 
がくだける。 
 くだけるが――、続く衝撃がアスナがうずくまるのを許さない。しゃがみ込 
みそうになるアスナをキリトは腰を抱えて強引に立たせ、じゅご、じゅご、じ 
ゅご、容赦なくアスナを責め立てる。 
「あ――あ――やぁ――っ!!」 
 自然に涙が頬を伝う。貫かれるたびに熱い痛痒感がどうしようもなくアスナ 
を苛む。 
 じゅご、じゅご、じゅご、じゅご、じゅご、じゅご。 
 満たして、抜かれてが繰り返される。菊座に十分刷り込まれたポーションが 
男根が抜かれるたびに二人の間に飛び散った。 
「は――は、あ……あっ――!」 
 酸欠の魚のようにぱくぱくと喘ぐアスナの横顔に、勇ましい<<閃光>>の横顔 
はない。ただ覚えたての快楽に翻弄され、享受する少女の顔があるだけだ。 
 ぽろぽろと流れる涙が新妻としての顔、血盟騎士団の副団長としての顔を涙 
と一緒に流していく。 
「くっ――!」 
 キリトは腕力補正にものをいわせて大きく突き込み、アスナの奥底でたまり 
にたまった精を吐き出した。砲弾のようにはき出された精液に直腸を広げられ、 
アスナは今度こそ絶叫した。 
「いやぁぁぁぁぁ――!」 
 肺に残っていた空気を残らず吐き出しつつ、同時に誰にも触れられていない 
はずの秘裂が再び絶頂のあかしを飛び散らせる。 
「は――う、ぅ……」 
 断続的に吐き出される性に唯一のこった体力を削り取られ、アスナは気をう 
しなうように脱力し、最後まで岩べりに差し出されていた腕から力がぬけた。 
ずるずると上半身が湯船に沈んでいく。菊座に食い込んでいた男根もあわせて 
外れてしまい、いまだに精を吐き出しつづける男根があらわになる。 
「う……はぁ……はぁ……」 
 何とか湯面から顔をだし、絶叫で空気を残らず消費してしまい、荒い息を吐 
くアスナの顔に、露出した男根から飛び散る精液が降りかかる。 
 射精はアスナのきれいに巻かれた栗色の髪や汗でぬれる背中、そしていまま 
で貫かれていたお尻を等しく汚しつくし、やっと止まった。 
「はぁ……はあ……はぁ……いっぱい……んぐっ!?」 
 キリトの精液の一滴を指ですくってくちびるに乗せていたアスナは、再び菊 
座を襲う快感に目をむいた。さっきさんざん味わったキリトのそれではない。 
もっと硬質で遥かに冷たいもの。あまりにも冷たくてアスナは温かいはずのお 
湯のなかで体を震わせる。キリトがオブジェクト化させたままだったディル 
ドーをアスナに突き刺したのだ。 
「つ、つめ……たいっ……!」 
男根よりも一回り以上小さいディルドーはいとも簡単に、アスナの菊座を埋め 
て自身の存在を刻みつける。排泄しようと蠕動する際の熱さとディルドー自体 
の冷たさにまたしても思考を刈り取られ目の前が真っ白になる。 
 その間を縫って、キリトが四つん這いになっていたアスナを強引にひっくり 
返した。ディルドーをくわえこんだお尻が今度は湯面に沈み、かわりに乳房が 
水面の上にあらわれる。行為をはじめてからまだ一度も触れられていないにも 
関わらず、乳房のつぼみはいやらしく充血していた。 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 
 
 形のよいくちびるは快楽に耐えられずにゆるみきり、瞳から流れ落ちた涙の 
線が月光に輝く。浅い呼吸をくりかえし、そのわずかな動きは乳房を揺らして 
湯面に波紋を立てていた。頬から乳房までを紅潮させ、キリトの男根をものほ 
しそうに眺める視線は、キリトを狂わせるのに十分な色気をもっていた。しか 
も湯の底にある可憐で白蜜桃のようにみずみずしいお尻には、真っ黒な張り子 
がくわえこまれていて、排出の蠕動をアスナが行うたびに、揺れる。。 
 そんな美少女の艶姿に誘われないものなど、いない。 
 異性すら籠絡するかもしれない色気と艶に、キリトは誘われるままにアスナ 
に覆いかぶさった。脚と脚の間に体を割り込ませて男根でアスナの秘裂を貫く。 
「んっ……キリト君……」 
「アスナ……すごく色っぽい……そそったよ……」 
「キリト君も……すごいえっちな顔してるよ……」 
 キリトは緩やかに腰を動かしつつ、湯面に浮いた乳房をやさしくなでる。キ 
リトの指にはまだ粘塊ポーションの残滓が残っていた。ポーションのぬめりで 
微妙な弾力をもった桜色のつぼみが指から逃げてしまう。 
「はぅぅ……んっ、ぁぁ、ひぅ……」  
 ポーションなしでは痛みで快感どころではないだろう刺激が継続的に与えら 
れ、アスナは乳首が指からすり抜けるたびに小さく、泣いた。 
 行為こそ緩やかなものの、二人の体は快楽に敏感に反応している。アスナは 
貪欲にキリトを締めつけ、キリトはむさぼるようにアスナの膣内を動きまわる。 
「あう……やさしいけど……はげしいよぉ……」 
「……うん。ゆっくりやってるけど……すごい感じる……」 
 水面下にいる以上、激しい動きはできないが、そのかわり先ほどと変わらな 
い快感が二人を甘く支配する。 
 ちゅぽ……ちゅぽ……と決して早くないペースでもリズムカルに突かれるだ 
けで、アスナは軽く達してしまう。 
「はぁっ――!」  
 もう何もかも投げ捨てて、アスナは乳房から与えられる快感と膣の内壁をこ 
そぐ快感、後ろの嵌まりに感じる快感に酔う。 
 背徳的で卑猥で淫靡な快感が体を好き勝手に犯していく。 
 知ったからにはもう戻ることのできない快感の甘い毒の沼に四肢がずぶずぶ 
沈んでいく。 
 でもその快感を与えてくれるのは、自分が愛したキリトだけだと気がつき、 
アスナはしゃくりあげながら言葉を口にする。  
「ん……いっく……キリトくんの……せいだよ……。もう、キリト君なしじゃ、 
生きていけないよぉ……」  
「俺も……もう、アスナ抜きじゃ生きていけない……。こんな……」  
「いっく……いいの……こんなに、えっちなのに……わたしで、いいの… 
…?」  
「アスナじゃなきゃ、いやだ……。生きていけないのはこっちのほうだよ… 
…」 
 本当のツガイとなる儀式のように恭しく、淫らに二人は互いに互いをむさぼ 
る。 
 先ほどのように激しいアナルセックスではない。ちゃぽ、ちゃぽという水音 
が響くような、体温を交換し合うような行為をしばらく続ける。 
 心と心を触れ合わせるには十分な刺激と快楽に二人は湯面のなかでおぼれた。 
 
 ただ明日ンは予感している。すぐにこの緩やかな性交は終わって、さきほど 
のように激しい交わりがはじまるのを、予感しているし、体はそれを望んでい 
た。 
 
「……いまだけだよね。きっと。また……おかしくなっちゃうくらい、キリト 
君に犯されちゃうよね……」 
「俺も、気が狂うくらいアスナに搾り取られるよ、きっと……だから、いまだ 
けな」 
「うん、いまだけ……やさしくして、キリト君」 
 アスナはキリトの肩に両手をまわして短く、くちびるをあわせた。 
  
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 
 
 東の空が少しあかるくなったところで、アスナとキリトは精根つき果てて行 
為を終了した。 
 
 最後は露天風呂の湯面のなかで、体面座位の形でまじりあっていた。 
 そんな状況でいざ体を離そうとしたところ「き、キリト君……お腹痺れて… 
…うごけないよ……」とアスナが言った。行為のせいで腰が砕け切ったアスナ 
をまず岩べりにもたれさせたキリトは、自分の男根を抜き出し、次いで後ろの 
菊座に嵌っていたディルドーを抜き出した。 
「ぁ…んっ……」 
 男根とディルドーに栓をされていた精液が二つの穴から順番に流れ出し、密 
度の濃すぎる精液はすぐにお湯に溶けず、アスナの出口からしばらくたゆたっ 
ていた。 
 もう腕一本うごかしたくないアスナは、精液が排出されていくのそのまま見 
守る。 
「だあ……やっちゃったな……」 
 キリトがアスナのすぐそばに横たわった。大きなため息をついて、パシャン 
と体を湯面にうずめて目を閉じる。 
 目を閉じているキリトは本当に幼い弟のように見えて愛らしい。先ほどまで 
男根をいきり立たせ、責め立てていた人とは別人だ、とアスナは思った。 
 アスナも一度大きく息を吐いた後、お湯に体をうずめる。浮力といい、感触 
といい、なんとも中途半端な露天風呂だが、改めて体を預けてみると案外に心 
地よい。 
 行為を始める前がそんなゆとりがなかったし、始まってからはさらにゆとり 
がなかった。しばらく二人でお湯の感触を愉しんでいるとキリトがぱち、と目 
を開いて難しい顔をしながらアスナに言った。 
「またやったな……。もうどれくらい出したんだろ……俺……」 
「朝から数えると、粘塊ポーションが入ってたバケツくらい、かなぁ……。あ 
くまで体感だけど」 
「「ゆるく」なったりしてない?」 
「し、してないもん……はずかしいなぁ……」 
 
 なったりしてない……、はず。最後の最後まで、キリトの男根を求めてぎゅ 
うぎゅう締めつけていたから間違いない。 
 むー、と唸ってアスナはキリトの片腕をとり、華奢なキリトの鎖骨の辺りに 
頭を乗っけた。 
「アスナは甘えん坊でさびしがり屋だよな……」 
「うん……。でも、キリト君は泣き虫だよね……」  
「……最近、自分でもそうだと思ってきたところ。俺、泣き虫かな?」 
 うんうん、とアスナはうなずいた。わりと最近自覚してきた自分の性格を言 
いあてられ、すこし胸の中が甘酸っぱい。 
「どこかで、禁欲しないと……。クリアした後、困るだろこのペースって… 
…」  
「……困るのキリト君のほうだとおもうよ。こんなに出ないよね本当は」  
「おっと、そこまでお求めですか、アスナさん」  
 キリトがからかうように言う。アスナは自分の失言に顔を赤らめた。 
 さっきは恥も外聞も捨てていたのに、落ち着いてみると恥ずかしい。後悔は 
一かけらもないのだけれど。  
 アスナはそっと下腹部のあたりを押さえて言う。おそらく、またキリトの精 
液でいっぱいになっていることだろう。ときおり、液体が膣道と直腸をうごめ 
いている。 
 SAOのシステムはありとあらゆる手段を簡略化する。現実では煩わしい作 
業もスクリーンウィンドウの操作一つで出来てしまうが、その弊害として料理 
などはアスナが不満を持つほど簡略化されてしまっている。 
 では性行為はどうなのか。 
 そもそもいまのペースで交わったら、簡単に――。 
「……っ」 
 アスナはキリトに気づかれないように顔を背けた。 
 一瞬だけ頭をよぎった光景はアスナにとって魂の底から望むものだったが、 
生活をある程度再現するSAOでも、それだけは不可能だ。 
 うしろの排泄器官は感覚器としては機能したものの、本来の排泄という機能 
は持っていない。 
 
 ――膣に関しても、同じだ。性交をするには全く問題がないが、それはあく 
まで形だけであってその先に進むことは絶対にない。 
 
 でも、告げる機会はきっとある。 
 現実をとりもどし、こんなふうに肩をよせあって、まどろみに似たあまい幸 
せを感じながら――。アスナはきっとキリトに告げる。 
 だから今はいまの幸せをかみしめたい。だからアスナは言ってみた。 
 
「えっちなキリト君も……大好きだよ」 
「……俺も。えっちなアスナが大好きだ」 
 
 そっけない返事でも返事は、返事だった。 
 
 もう絶対に離れれないなー、と心で思いながらころん、と頭を預けてもたれ 
かかった。 
 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 
 
Q:キリト「SAOには排泄は無いが、果たしてアナルセックスはサポートさ 
れてるんだろうか…」 
A:アスナ「……うん。でもほどほどにね……」 
 
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 
 
※おまけです。このラノ記念なのにアスナばかりになってしまいましたため追 
加しました。キリトさんマジパネェ。エロ無です。 
 
 
 未踏破のマップで迷うことは多々あったし、つい最近人生の岐路に迷ったば 
かりだった。 
 顔が熱い。俺はこのSAOには存在していない神に祈るように――無意識で 
だが――目の前で両手を組み合わせていた。 
 アルゲードそばをすする、ヒースクリフが眉をひそめてこちらを見る。俺は 
覚悟を決めて、うつむき加減にヒースクリフを見返して言う。 
 
「なあ、ヒースクリフ……SAOには排泄は無いが、果たしてアナルセックス 
はサポートされてるんだろうか…」 
 
 ――泣く子も黙る血盟騎士団、そこどけそこのけ血盟騎士団がとおる。 
 そんな揶揄すらある血盟騎士団団長が、鼻と口からアルゲードそばの麺を噴 
き出す光景を目撃したのは、後にも先にも俺だけのはずだ。 
 
 とりあえず、ヒントは得ることができた。ヒースクリフはどこか鼻声で、 
「では、この醤油ラーメンの味の分だけ教えよう」と言い、情報をくれた。そ 
して最後に「私の情報はたしかに一次情報である。だが、真実を見つけどう処 
理するかは、キリト君、君自身が判断しなければならない」という格好いいの 
か、ただスケベなだけなのかよくわからないセリフを残して席をたった。ヒー 
スクリフは、決戦の舞台となったアルゲード軒の暖簾をくぐりながら「なぜ私 
にそんなことを聞いてくるのだ……まさか私に興味を」なんてつぶやきながら、 
アルゲードの路地裏に消えた。 
 
 とにかくヒントをもらった俺は、以前何度か世話になったことのあるソロプ 
レイヤー御用達のアイテム屋に顔を出し、体よく『粘塊ポーション』を手に入 
れることに成功した。これ、名前こそポーションなのだが中身は摩擦力を軽減 
させるオイルのようなものなのだそうで、アナルセックスに関わらず、プレイ 
に使用できるSAO唯一のローションなのだ。 
 しかしこのポーション、やたらとでかい。バケツ一杯分くらいの容器に入っ 
ているから抱えて移動するわけにはいかず、仕方なくアイテム欄に格納する。 
まあ、名前だけなら用途までわかるまいと腹をくくれば、こと無駄遣いにはと 
んでもなく厳しい奥さんも怖くない。 
 店主から「お兄さんも好きだねえ。いいお湯屋さん紹介しようか」などと持 
ちかけられたが、心のダークリパルサーで<<ホリゾンダル・スクエア>>を放ち、 
闇の誘惑を振り払った俺は、次なるアイテムを獲得するためリンダースへ足を 
向けた。 
 ちなみにこのアイテムインベントリは『結婚』をアスナと行ったことで共通 
の財産となっている。アイテムを散財したり、無計画に売り払ったりすると妻 
のアスナから警告、あるいは注意が言い渡される。でもそれはなんだかこそば 
ゆくて、決して不快ではなかった。 
 ある意味愛の結晶でもあるので、暇になるとぼんやりと眺めてしまう。たま 
に彼女が第二十二層のホームで愛情いっぱいに生産した衣服やら食糧やらがに 
放り込まれてくる。それを見るたびに、にやにやするのが、アスナには内緒の 
楽しみだった。 
 ――第二十二層の湖で釣り糸をたらして、すでに十日前後。釣果がなくそれ 
でも夕飯に彩りを添えたくて――アスナの魚料理が食べたくて、村で魚を買っ 
てアスナに釣れたぞー、なんてやったことがある。アイテムチェックに厳しい 
アスナが不自然に増えた魚に気がつかないはずがない。でもアスナはうれしそ 
うに、よかったねと言ってくれる。そのちょっとした気づかいがうれしくてし 
かたなかった。日々ダンジョンに潜り続けたことで忘れてしまった、甘さへの 
渇望。それを満たしてくれる満たされるアスナに、俺は心から感謝していた。 
 そうこうしている内に『リズベッド武具店』にたどり着いていた。何度も世 
話になっているアスナの親友は今日も鍛冶屋というよりも、ウェイトレスのよ 
うな格好で店に立っていた。 
 手短に使いたい素材――意外なことに使用するのははじまりの街でしか採取 
できない秘密の黄色い果実――あれ、ということはもしかしてあの5コルの人 
って愛の戦士?――と武器のカテゴリを告げるとリズベッドは怪訝な顔をしな 
がらも俺の要求する短剣を作り出してくれた。カリ首まできちんと再現された 
『ディルドー』をリズベッドの白い指が握っているのを見た時には不覚にも股 
間が熱くなりそうだったが、魂のエリュシデータで<<ヴォーパルストライク>> 
を放ち、煩悩に打ち勝った。 
 アイテムを受け取る。これも実体化しなければ正体がばれないだろうと、ア 
イテム欄に放り込んだ。 
 
 とりあえず、今日のところはこれで買い出し終了だ。案外に遅くなってしま 
い、駆け足で転移門まで戻る。 
 入手した新規のアイテムも、アスナが拒否すれば絶対に使わないつもりでい 
たため、無駄な買い物、無駄な時間になってしまうかもしれないが、いざ事に 
及んだときに一遍の痛みすら彼女に与えたくない――というのが本音だ。 
 『イトスギの月』の夕暮は早く、暗くなるのも早い。第二十二層の転移門か 
ら抜け出した俺は、敏捷値を生かして文字通り飛ぶようにホームへ向かう。明 
りのついた我が自宅。待ってくれている人がいるだけでこんなにも、家路が恋 
しい。 
 ただいま、遅くなった、ごめん。と謝りながら扉を開けると、 
 
 目頭をぬぐって、淡い表情を浮かべて、おかえりなさい、と言うアスナがい 
た。 
 
 俺は一気に混乱した。いままで帰りついた時には笑顔で迎えてくれていたア 
スナが切なげで、いまにも泣きそうな顔で俺に笑いかけている事実。 
 人から離れすぎていた悪影響で、俺はたぶんいろいろ鈍感だ。妻であり、少 
女でもあるアスナの乙女心を十分の一も理解していない。 
 そんな彼女がこう話をはじめた。 
「あ、あの、キリト君少し話があるんだけど……」 
 俺はその先がアスナから放たれるのを本気で恐れた。もしかしたら彼女は重 
大ななにかを抱えていて、俺が帰るのを泣きながら待っていたのかもしれない。 
そう考えると混乱に拍車がかかった。 
 真摯に訴えるアスナの瞳から目をそらし、うつむく。次の言葉が発せられる 
まえにアスナの行動をインターセプトする方法を回らない頭で必死に探す。 
 その間にふと、ひらめくことがあった。 
 ここ第二十二層から少しのぼったところに、絶景の露天風呂がある。ソロで 
攻略していたときに偶然見つけたもので、まだ公にはなっていない。 
 いつかアスナを誘ってそこで朝が来るまでお湯につかっていようと計画して 
いた俺は、内心の混乱もあって計画を実行することに決めた。この場をごまか 
すだけの策――じゃない。落ち着いて彼女の話を聞ける場所がほしかった。 
 視線を下に向けているので、手に取れるのはアスナの手だけだ。 
 敏捷補正を最大限に活かして、その手を取る。 
 レイピアと包丁しかにぎったことがなかったよー、と語っていた彼女の手は 
握り締めると温かくて、やわらかい。 
 俺は覚悟を決めて懐から転移結晶を取り出した。聞きなれた鈴の効果音が鳴 
り響く。驚いたアスナが悲鳴めいたことを言った。 
 ふと、アスナの目を見てみる。目はうるんでいるものの、アスナの顔にはど 
こか楽しげなものが浮かんでいる。ひと安心した俺はやっと笑うことができた。 
「大丈夫。向こうについたらちゃんと説明するよ」とアスナをなだめようとす 
ると、形のいい唇が尖り、頬を膨らませて「ちがうわよ! だったらちゃんと 
街の転移門から! 転移結晶って一個いくらすると――!」なんて後のことを 
考えると、ぞっとするようなことを言った。 
 
 俺は転移結晶が生み出す転移の光でアスナの顔が見えなくなるまで、彼女の 
顔を見つめ続けこう思った。 
 
 彼女を手放すなんて、できそうにない。握った掌の温かさは、転移門をぬけ 
た後も、しばらく消えることなく残っていた。 
 
 
 
 
 

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