洞窟の壁面に氷を張り付かせた極寒のレアダンジョンで、俺は人生初の体験  
をしていた。  
 安物のシェラフの上にあおむけとなった俺に、シリカの小柄な体が覆いかぶ  
さっている。白い肌がちろちろと燃える薪に照らされ、シリカの裸体に艶めか  
しい陰影をつけている。  
 倫理コードを解除された俺は、異性の裸体に否応なく興奮した。興奮した結  
果として局部を持ち上げてしまい、その局部はいま――シリカのそこを貫いて  
いる。  
 なだらかに盛り上がった乳房と、ぴん、とチェリーピンクの淡い乳首。まだ  
ぽっこりとした、くびれの少ない腹部。でも、俺の勃起したそれを受け入れて  
いる膣道は、女性のそれだった。  
 
「んちゅ……んっ……んっ……キリトさん……温かいですか……?」  
「シリカ……いくらなんでも、んっ、そんなことするなよ……」  
「いや……です。ぁっ、うぅ……キリトさんの体、冷え切ってますよ……」  
 
 寒さで動かない俺の体を、シリカはぎゅうっと抱きしめる。接触した肌から  
確かな人肌の暖かさを感じた。  
 同時に体の中で唯一突出し、本来ならこの洞窟を占める冷気に当てられるは  
ずの局部がシリカのなかを行き来する。  
『初めてですけど、キリトさんにならあげられます……お願いですから、キリ  
トさんを暖めさせてください……』  
 シリカに涙を浮かべながら訴えられ、寒さで身動きの取れない俺は彼女の行  
為にただただ甘えていた。  
 
「んぁっ、んっ、夢……みたいです。ぁぁ……キリトさんと、んっ、エッチし  
てます……」  
「シリカ……本当に無茶しないでくれ……。俺どうしたらいいかわかんないよ  
……」  
 
 身動き一つとれない自分が恨めしい。  
 シリカは一度俺から上半身を起こして、こんな極寒のダンジョンに不釣り合  
いなひまわりのような明るい顔で言う。  
 
「んっ、いいんですよ……あたしが好きでやってるんです。ピナのときのお礼  
もちゃんとできてませんし……。そもそも巻き込んじゃったの、あたしだも  
ん」  
 
 そのままシリカがおずおずとくちびるを近づけてきた。俺はされるがまま、  
シリカの小さくて暖かなくちびるを受け入れた。  
 
「んちゅ……んっ……キリトさん……くちびる、冷たくて、甘くて、アイスみ  
たい……んちゅ……ん……」  
「ん……く……シリカ……」  
 
 その瞬間、ひくひくとシリカの後ろで何かが揺れる。  
 現実の姿を模すSAOアバターでプレイヤーが自由に設定できるのは瞳の色、  
髪型、髪の色くらいだ。だが――シリカのそれらは装備品でも容姿変更アイテ  
ムでもない。  
 
「んちゅ……キリトさん……んっ……尻尾、揺れちゃいます……」  
 
 キスはなんども俺のくちびるに体温をわけあたえてくれる。シリカのしっぽ  
は上機嫌な猫がするように左右へ揺れた。  
 SAOプレイヤーのデフォルト設定では決して存在しないしっぽと三角の獣  
耳を生やしたシリカは、くちびるを離すと今度は顔を真っ赤にしながら、に  
ゃーといたずらっぽく言った。  
 
「にゃー……大好きです、キリトさん」  
 
 俺は波のように緩やかにゆれながら、頬を肩胛骨のあたりによせて甘えてく  
るシリカにただただ甘えて、彼女に聞こえないように嘆息した。  
 
 ちなみに事情がよくわかっていないだろう、フェザーリドラのピナは、きゅ  
る、と首を傾げて、俺たちの成り行きを見守っていた。  
 
「あう……キリトさんのここ、おっきいです……。だんだんあったかくなって  
きました……」  
 
 ぞふ、という音がしてシリカの腰が深く沈む。同時にシリカが「んっ――」  
とひと際大きな声を体をそらした。  
 
「んんっ……初めて……なのに……んっ……キリトさんの、気持ちよすぎです  
よ……」  
「シリカ……だんだん、趣旨変わってきてないか?」  
「んっ。いいんですよ……なにごとも愉しまないと損です……」  
「……」  
 
 シリカの小さい膣は十分に湿っていて、俺のものをいとも簡単に飲み込んで  
しまう。体位の関係上、結合している部分がはっきりと見えていた。  
 俺の腰をまたいで座っているシリカが腰が上下するたび、俺の局部がずるっ、  
シリカにはいって出てくる。じゅ、じゅ、じゅと淫らな音をさせながら。  
 
「毛……やっぱり生えてないんだな」  
 
 アバターには顔と髪以外に体毛は存在しない。だからちょうど、シリカの割  
れているところが丸見えになっている。そこだけ見ればまだ幼いのに、股を開  
いているせいでぱっくりと割れたピンク色のワレメが、薪の光にぬらぬら輝い  
ていた。  
 
「んっ、キリトさんにつながってるとこ、見られちゃってる……」  
 
 自分の言葉に興奮したのか、シリカがより一層強く、俺の局部をしめつける。  
 
「はうっ……んっ、んっ、いやっ……もう、ちょっと……」  
「うわっ!」  
 
 シリカが何かをつぶやいた瞬間、ペースがアップする。俺は悲鳴をあげた。  
 
「んぐ……んっ、シリカ――! そんなにされたら……」  
「ぁぁ、んっ、やっ、んっ、キリトさん、女の子みたいです……んっ、んっ―  
―!」  
 
 ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ……。局部が一端大きく引き抜かれて、再  
び飲み込まれる。  
 シリカの内側が、先端だけじゃなくて全体に絡みついてくる。それをかき分  
けていると、最後にこり、と何かをおしあげるか感覚が先端をくすぐる。  
 
「ああっ、あっ、ぅあう、んっ、んっ――」  
 
 シリカの声のトーンが跳ね上がる。  
 
「ぉああ! シ、シリカ……ううう!」  
 
 一年半ちかく一度も解放されてなかった衝動にぐずぐずと脳みそを侵食され  
ていく。中学二年生だった俺でも射精の快感は知っていて――。  
 シリカがぐっと俺に体をよせた。裏スジがぎゅ、とシリカの中をすりあげる。  
頭を白く染め上げる快感に無意識に声が漏れる。  
 
「あぐっ!」  
「キリトさん……かわいい……んっ、キリトさんの……あったかいの、くださ  
いっ……あたしを暖めてくださいっ!」  
 
 シリカはつぶやくと同時にぎゅっ、と局部をしめつけてきた。シリカの中に  
はいっている局部全部が、あますことなく舐めあげられる。その感覚で俺は我  
慢していた最後の一線をこえてしまった。  
 
「うぐ……うあ……ああ……っ……ごめんっ!!」  
「んっ――!?」  
 
 それだけは、と頑張っていた俺の局部が、シリカから与えられる快感に負け  
た。性器がシリカの中を暴れ回りながら、ぶしゅ、ぶしゅと液体を吐き出し、  
奥底に精液をぶつけていく。  
 
「ん――あ、あああああああ――!!」  
 
 シリカが体を大きくのけぞらせて痙攣させた。彼女の後ろで左右にふるえて  
いたしっぽが真直ぐな針金のようにびん、とつき立つ。  
 俺をぎゅうぎゅう締めつけるシリカにうながされ、自分でも驚くほど長く射  
精は続いた。  
 
「ん……く……ぅ……」  
 
 ひくひくと全身を痙攣させていたシリカは、力尽きたかのように俺にしなだ  
れかかった。ずいぶんやわらかくなったはずの性器はまだ、シリカの体の芯に  
包みこまれてときおり、俺の意思とは関係なくふるえていた。そしておしつけ  
られている彼女の胸やお腹から、熱い汗がぬめる感触。俺も全身汗まみれだか  
ら、汗と汗が交わって体のいたるところで、くちゅ、と水音がなる。  
 
「はう……んっ……キリトさんので……いっちゃいました……」  
「き、気持ちよかったならなによりだけど……」  
「中でだされるの癖になっちゃたら、キリトさんのせいですよ……それはそう  
と」  
 
 しばらく俺の胸に頬をよせてうなだれていたシリカは、獣耳を揺らして俺の  
目を覗き込んだ。まだ幼い――まだ中学生だった妹にも通じる幼さの――、か  
わいらしい、愛らしいという形容が似合うはずのシリカの顔には、たった今お  
こなった性交の余韻が残っている。俺を見ている瞳はわずかに持ち上げられて  
いるだけで、頬も首筋も鎖骨も、真っ赤だった。  
 
「ちょっとは、温まりましたか……? 汗でいっぱいですよ……?」  
 
 荒い息を吐きながらシリカが言う。まるで子供の柴犬がうまくできたから褒  
めて、褒めて、とねだるような仕草につい苦笑してしまう。  
 
 思わずシリカの頭を撫でようとして、腕が動いたのに気がついた。  
 やれやれと思いながら、今度こそシリカの獣耳ごと彼女の頭を撫でる。これ  
でやっとこの極寒のダンジョンから抜け出せる。  
 
「あれ、キリトさん、手が――」  
「うん。助かったよ――」  
 
 そしてその手でシリカを思い切り抱きしめる。俺を見つめるシリカの目がく  
りくりまわった。  
 
「キ、キリトさん……痛いです――」  
「無茶した罰な」  
 
 無茶してくれてまで、俺を温めてくれたシリカに感謝はしつつ、無茶自体は  
褒めない。そんな行為をされて当たり前、なんて思えるほど俺は自分に自信が  
ないし、傲慢でいたくない。  
 シリカはしばらく唸っていたが、やがて諦めてまた俺の鎖骨の辺りに頬をよ  
せてしなだれた。  
 桜色のくちびるがそっと呟いた。  
 
「無茶……しましたけど、後悔なんてしてませんよ。キリトさんの初めての相  
手、あたしですから」  
「シ、シリカ……。いや、だからその無茶をさ……してほしくない……という  
か、シリカも初めてだったし……その……」  
 
 そういえば生まれて初めての体験だったのを思い出し、途中から言葉がしど  
ろもどろになる。あわあわしているうちに回答時間のタイムアップ。  
 
「もういいです。キリトさんのはじめて、ごちそうさまでした!」  
 
 シリカはぷいっ、と顔をそむけて拗ねてしまった。  
 いったい何が彼女をおこらせたなのか、まったく検討のつかなかった俺はし  
かたなくシリカを抱きしめ続けた。  
 
 
 
 が、五分もすると……寒い。寒くなってきた。汗が冷えて体中が凍えてくる。  
 シリカは対寒補正のため、大丈夫のようだがこっちはそうもいかない。  
 シリカもそのことに気がついたようだ。三角の獣耳がぴくぴくうごき、その  
あと俺を見上げて、にぱ――と笑った。  
 
「キリトさん――。寒くなってきましたね――」  
 
 シリカの尻尾がくねくね、誘うように揺れた。  
 
 
 
 そもそもこんなことになったのはシリカがとあるレアクエストを受領したと  
ころからはじまった。  
 
 NPCクエスト「氷原のケットシー」。  
 
 
 俺が<<風見鶏亭>>を訪れたのは、シリカの「助けて」というメッセージをう  
けとってから二時間がすぎたころだ。急いで上層のダンジョンから引き上げて、  
彼女が滞在中という部屋をあけると、そこに待っていたのはしっぽと獣耳をは  
やしたシリカだった。ベッドの上で車座になっていたシリカは、俺の顔を見る  
と泣き出してしまった。  
 俺は覆いに慌てながらシリカから話を聞いた。しゃくりあげながら言うシリ  
カの言葉を整理するとしっぽと獣耳は、クエストを受領した結果のようだった。  
氷原のケットシーという彼女の受領したクエストは、クエスト受領者にクリア  
するまでしっぽと獣耳を与えてしまうらしい。  
 大昔に「クエストをクリアするまでアバターの容姿が変化する」クエストを  
受けたことのある俺は、おおいにシリカに同情しクエストクリアのためダンジ  
ョンに同行した。  
 しかしそのダンジョンはとんでもない難易度をもっていた。クエスト受領後  
に解禁されるそのレアダンジョンは氷で囲まれとんでもなく寒い上に、結晶無  
効化空間がフロア全体に広がり、入った後にすぐ出口が閉まるという、マゾい  
仕様だった。救いはシリカくらいのレベルでも対応できるくらい、出現モンス  
ターのレベルが低かったことくらいだ。  
 ただ俺自身はロクな寒さ対策をして来なかったせいで、体感で氷点下はくだ  
らない寒さに参ってしまい、身動き一つとれなくなった。  
 ちなみにシリカは寒さの影響がまったくないようだった。どうやらしっぽと  
獣耳の発生と同時に、極寒耐性が付加されているらしく、寒がる様子はなかっ  
た。ピナはそもそもモンスターなので寒さは感じないらしい。  
 入り組んだダンジョンを三時間ほどさまよい、寒さによる不快感で俺はつい  
に意識をうしなってしまった。  
 意識をとりもどしたとき、シリカはもう裸だった。自分用に用意してきたシ  
ェラフを敷いて、倫理コード解除状態の俺の装備をはいで暖めてくれていた。  
 俺はあまりの寒さと冷たさに、シリカにされるがままだった。獣耳としっぽ  
が生む、耐寒補正のかかっているシリカの体は周囲の冷気の影響を一切受けて  
いないので、温かだった。  
 寒さの不快感で振るえる肌を抱きしめてくれて、縮こまった体をなでてくれ  
たおかげで一心地はつけたのだが、それ以上は打つ手がなかった。  
 そうこうしているうちに俺は――間の悪い事に――局部を立たせてしまった。  
一度認識するとあと決壊したダムのように思考が性欲の方向に流れていく。年  
下の少女であっても異性には違いない。しかも俺はその手のことにまったく耐  
性がなく――。  
 
 両手や体が動くのを確認する。さっきまで石のように重苦しかった腕や足が  
想像より簡単にうごくのがわかった。  
 俺はいちど上半身を起こしてシリカを太股のあたりに乗せた。局部はシリカ  
の希望で挿入されたままだ。  
 
「シリカ……ごめんな。シリカのはじめてだったのに、こんな形になっちゃっ  
て」  
「それは、いいんですけど……キリトさんのはじめてももらっちゃいましたし  
……気持ちよかったですよ?」  
「とはいえさ。大きな借りつくっちゃったなぁ……」  
「……あたしとしては、貸し借りなしの状況なんですけどね。もしキリトさん  
が借りだって思ってくれてるなら……その、ちょっとお願いが」  
「ん? なにかあるなら言ってくれよ。なんでも言ってくれ。俺が返せるもの  
なら、なんでも返すから」  
 
 そこでシリカは珍しく目を泳がせた。言うのをためらうようなことなのだろ  
うか。  
 俺は手を持ち上げて、シリカの天頂部に生えた獣耳に触れた。  
 
「にゃっ!?」  
 
 シリカがひく、と体を動かす。事前に聞いた限りだと、耳としての感覚は生  
きていてるらしいが、形と位置が大きく違うので不思議な感じがするそうだ。  
 俺は指で三角耳の頂点をくりくりと刺激してみる。  
 
「ひゃ……んっ……ひっ……くすぐったいです……」  
 
 自立してるだけあってある程度の硬さをもっている耳は、うすいうぶ毛に囲  
まれていてさわり心地がよかった。  
 おお、いいじゃん猫耳……なんて考えつつ、息を吹きかけてみた。  
 
「ひゃ……っ!」  
「ほら、シリカ……」  
 
 思わず身をすくめるシリカを促す。  
 さっきまでの強気な態度はどこへ行ってしまったのか、頬を薄紅にそめなが  
らうつむくシリカの耳にもう一度息を吹きかける。  
 
「ひゃっ……うう……。じゃ、じゃあ……もう一度……今度はキリトさんから、  
ほしいです。ちゃんと……その、えっちなことしたいです」  
「え……そ、それでいいの?」  
「はい。はじめてがキリトさんでよかったですけど、動いてばかりでしたし…  
…気持ちよかったんですけど、でも、やっぱりちゃんとえっちがしたいです。  
キリトさんからも求めてきてほしいです」  
「……」  
 
 とぎれとぎれに紡がれる彼女の言葉の意味をかみしめる。俺は返事の変わり  
にシリカの頬を唇でつっついた。  
 真っ赤に紅潮しているせいで、普段より熱をもっている頬からもシリカの熱  
がつたわってくる。  
 さっきまで俺を必死に暖めてくれたシリカの望むことをしたい。  
 俺はシリカに向き合って言った。  
 
「わかった。ちゃんとできるかわからないけど、シリカのはじめて、きちんと  
貰うよ」  
「……っ!! はいっ!」  
 
 シリカは勢いよく頷いて、俺の体をだきしめてきた。  
 
 

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