「はぁ……ああっ……んっ、んっ……んんんっ……」  
 
 じゅぷ……じゅぷ……。  
 ベッドから脚を下ろし、足裏を床につけた少年の上で、一人の少女がみだらなに腰を振  
りたくる。  
 じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ……。  
 そそりたった男性器は、少女のスリットをリズムカルに出入りするたびに、卑猥な音を  
立て続ける。  
   
「あんっ……んっ……んっ……」  
 
 のどをさらしてあえぐ少女の手は後ろ手で固定されていた。カラダを動かすのは、ベッ  
ドにのった脚のみだった。バランスをとるため、むつみあう男性に、乳房をおしつけてい  
る。  
 普段、彼女の首もとを飾るサンドイエローのマフラーは、いまは彼女の両手首を後ろ手  
で縛り付ける拘束具になりはて、さらに丈の短いショートパンツは、片足を抜かれ膝下に  
引っかかっている。彼女が戦闘時に身につける、ガンベルトや対弾アーマー付きのジャケ  
ットは、無造作に床へとなげすてられていた。  
 
「あああっ、んっ、ぅぅぅっ、んん…キリトっ……!」  
 
 重なる相手の名前を少女が叫んだ。  
 時折、カーテンの隙間から色とりどりのネオンが、対面座位で結びついた男女の姿を照  
らし出す。  
 
「あんっ、んっぅ……んっ……んっ、気持ちいい……!」  
 
 猫のように丸く大きい藍色の瞳をとろけさせ、少女は――シノンはキリトの性器を求め  
て腰をおとした。  
   
「ああ――!」  
 
 突き上げられるたびに淡いブルーの髪はゆらゆら揺れ、スレンダーな肢体がびくっ、び  
くっとふるえあがる。  
 
「シノン……。そんな顔されたら、俺も止まれなくなるよ」  
「んっ、ぅぅぅ…止まらないで……。はあっ、やぁぁぁ――」  
 
 シノンは下腹部をへこませ、小さく達した。  
 が、挿入は止まらない。絶頂でほそまった膣道をあじわうかのようにキリトは、更に性  
器を突き上げる。  
 
「ああ……シノン」  
 
 なめらかなハスキーボイスをつぶやいたキリトの唇が、シノンの乳房をぱくっとくわえ  
た。  
 
「んっ――!!」  
 
 と、小さくあえぐシノンをもてあそぶかのように、キリトの舌先が勃起したチェリーピ  
ンクの乳首をはじく。  
 
「はあっ、ああっ、ああああ! やっ! 胸、やだっ!」  
 
 切なく泣き叫びつつ、しかしシノンは手首を拘束されているせいで、なにもできない。  
 サイズはそれほど大きくないものの、形よく張った乳房は、キリトが唇を這わせるたび  
に唾液で濡れ輝いていった。  
   
「んっ――!」  
 
 小さい分感度が良好な乳首をせめられ、びくびく四肢を揺らしながら、シノンは浅く達  
した。  
 
「ふあぁっ……ああっ!」  
「そ、そんなに締めてくると――!」  
 
 ヒクつく膣道に誘われるように、キリトはシノンを下からするどく貫いた。  
   
「あああ! んっ……んっ! 腰っ、動いちゃう……!」  
 
 シノンはみずからも腰を振りたくり、突き上げる性器にあわせて身を踊らせた。顔の両  
脇で結わえられた髪が跳ねる。暗闇の中にあって、真っ白な裸身がまばゆく輝く。  
 
「あああっ、んっ、んっ、んんっ――!」  
 
 頬から一筋の涙をながしつつ、野太い肉茎に貫かれ、背を揺らすシノンの姿は、可憐で  
小柄なアバターに艶やかさを与えている。くくっ、とかみしめられた唇から、時折あまっ  
たるい吐息がこぼれ落ちる。  
 男声にも女声にも聞こえるハスキーボイスで、キリトが唸った。  
 
「うう……もうっ!」  
「はあっ、んっ、んんんっ! うんっ。来て――キリトっ!」  
「じゃあ、遠慮なく――!」  
 
 ぐぐっ、とキリトがシノンの腰を思い切り引き寄せる。  
 両手を縛られているせいで、キリトに寄りかかったシノンは、真下から吹き上がる精液  
の直撃を受けた。  
   
「あぁぁぁっ! あっ、あぁぁぁっ!」  
 
 下腹部を灼かれる射精が強引にシノンを絶頂へと追いやっていく。  
 
 どぷ、どぷ、どぷ……。まるで出の悪いポンプのごとく、断続的にあがる熱いしぶきを  
子宮でうけとめるシノン……。  
 
「あ、ああぁ……ぁ……」  
 
 無遠慮に吐き出される精液と、吐き出すことによって生まれる性器の微震動が鋭い快感  
におぼれるシノンは、唇をかみしめて耐える。  
 やがて飛沫の放出がおわり、シノンはキリトに覆いかぶさるようにベッドへ横になった。  
 ぼふっ。柔らかなスプリングがシノンとキリトの身体を受け止める。  
 
「はあ……ああ……ぁぁ……」  
 
 目を閉じ、法悦の吐息を漏らすシノンの髪に、キリトの指が埋まる。同時に――ちゅぷ  
……。スリットに、一度ぬかれた男性器がシノンへ押しつけられた。  
 
「シノン……俺……」  
 
 キリトが上半身を折る。肩甲骨あたりまでのびたキリトの黒髪が、シノンの胸元をくす  
ぐった。  
 
「あ……っ。もう……?」  
「ああ……。俺もがまんできないよ。シノンもそうだろ?」  
 
 じゅぷ……じゅぷ……。  
 愛液と精液にまみれた亀頭が、ぬらぬらと濡れ輝きながらシノンの肉壁を左右に押し開  
く。  
 
「ぁぁ……んっ……ぅぅ……」  
 
 髪先が偶然、乳首の上を通りすぎ、思わず腰をくねらせたシノンの膣道へ、膨らんだ性  
器が侵入していく。  
 
「あ、あああっ! うんっ……いいよぉ……!」  
 
 体で敷いた手首の痛みなどあっという間に遠いた。  
 自由にならない体のまま、シノンはキリトを受け入れる。  
 
「んっ……くっ……!」  
 
 キリトの剛直がシノンのスリットをめくりあげるたび、シノンは快楽に泣き叫ぶ。  
 頬をキリトの鎖骨にあてつつ、再開される律動が生む、セックスの快感にシノンはずぶ  
ずぶと飲まれていった。  
 
 
――――  
 
 
 
 絹の質感をもつ黒髪を鎖骨にさらさらと流した少女――にしか見えないアバターのとな  
りで、シノンはゆるゆると目をあけた。  
 灰色のカーテンから漏れる光量に目をひそめつつ、ベッドの上辺部に据え付けられたデ  
ジタル時計の表示を確認する。時間は八時五十分。起きるにも寝るにも中途半端な時間だ。  
 嘆息しつつも、もう一度シーツにもぐりこみ、となりで眠る美貌の人へ視線を送る。  
 光り輝く真珠のようになめらかで真っ白な肌。折れてしまいそうなほど細い首から繋が  
る、うすい肩が芸術的な曲線を描く。  
 
 ――朝から……いいもの見ちゃったかも。  
 
 正直な感想をシノンは抱きつつ、さらに視線をすべらせていく。  
 うつぶせに眠っているせいで男性的特徴はまったくみあたらない。ゆたりと膨らんだ臀  
部は、腰から下を隠した薄いシーツになだらかな丘をつくっていた。  
 
 ――ウエストからヒップへのラインとか、ちょっとうらやましい……。  
 
 つい、「本当に」女性であるシノンが、つい憧れてしまうほど、ガンゲイル・オンライ  
ンのアバター<<キリト>>の姿は、あまりにも女性的だった。  
 絵画的な肢体を、どこぞの絵師が女性的な特徴を付加し――胸部などを書き足して――  
裸婦画として売り出せばすぐにでも買い手がつきそうだ。  
 寝息は穏やかそのものだった。となりに体を横たえるシノンへ向け、ときおりむにゃむ  
にゃと口元を動かし、片頬を枕にぐりぐり押しつける。その美貌とはアンバランスな無邪  
気な仕草が、シノンの胸をさらにさざめかせる。  
 
 ――かわいいなぁ……もう……。  
 
 現実の彼もこんな無防備な寝顔を浮かべて眠り、安らかな寝息をたてるのだろうか、な  
どと考えるとなぜだか心臓が大きくさざめき、頬がじわじわ熱くなる。  
 そもそもこのキリトはいま、シノンの独り占め状態だ。キリトへ想いを抱くほかの女性  
陣は、GGOにキャラクターをコンバートしていない。  
 
 ――これなら簡単には起きないかも。なら……。  
 
 ふと浮かんだいたずら心が、指をキリトの唇に運ばせた。妖艶な朱を刷いた唇を指先で  
くすぐってみる。  
 絶妙な弾力が指に跳ね返ってきた。ここがVR空間であるのをおもわず忘れてしまうほ  
どの、みずみずしいリップ。整った朱唇を、端から頂点までたどってまた端まで、それを  
なんどか繰り返してみた。当たり前だが、頂点のほうがやわらかい。  
 唇の感触をたのんでいると、キリトの長いまつげがふるえだす。  
 
 ――っと。  
   
 シノンがさっ、と指を離した数秒後、長いまつげをふるわせつつキリトは、ゆるゆると  
目を開いた。  
 吐息が当たるほどの距離でキリトの黒曜石の瞳が見開かれたので、シノンはあわてて視  
線をはずした。じっと見つめていると、目がはなせなくなってしまう気がした。  
 
「ふあ……あ……」  
 
 そんなシノンの煩悶を知らずキリトはのんきに、美貌に不釣り合いな大あくびをした。  
そのあと瞳に拳をあてる。  
 緩慢な動作を見つめながら、シノンはさっきまで唇に触れていたことを悟らせないよう  
に言った。  
 
「おはよ。キリト……コーヒー飲む?」  
「んっ……やあ、シノン。うん……コーヒー……よろしく」  
「うん。砂糖とミルクは?」  
「ブラックよろひ……ふぁ……。シノンに任せるよ」  
 
 まったくキレがない返事。常時、シノンが舌を巻くほどの洞察力を見せるキリトだが、  
珍しいことにまだ頭が回転していないらしい。しかし、そんなのんびりとした仕草にすら、  
萌え立つ色気があるのは、なんたることか。  
 女性として、複雑な心境を抱えつつ、シノンはシーツから這いでる。  
 昨日は疲れ果て眠ってしまったので寝姿も適当になってしまった。  
 黒地のタンクトップとショーツ。ブラはつけていない。  
 そんな格好を異性の前でさらすことに、いささかの抵抗と羞恥心が頭をよぎる。しかし、  
キリトも同じ様なものだ。おそらくシーツに下にはなにもまとっていまい。そこまで考え、  
いまさら服装を気にするのがばかばかしくなった。  
 それとも……。  
 
 ――もしかしたら、まだ心のどこかで信じてないのかも。「こっち」のキリトが男だっ  
て。  
 
 男性的特徴を目で見て、現実の桐ヶ谷和人が男性であることを知ってもなお、<<キリト  
>>を男性として見ることができないでいるのかもしれない。  
 同姓ならだらしない格好を見せても、まあいいか……という思考がないとは、シノンに  
も断言できなかった。  
   
 ――第一印象のせいよね……。ほんと、「アレ」がついているのが嘘みたい。  
 
 ひとつため息をついて、シノンはキリトに背を向けると、狭苦しいアパートメントホテ  
ルのキッチンに立った。  
 シノンはチェックインした後に、この施設の本質――「いきずりの男女が寝落ちする」  
施設だと気がついた。  
 ガンゲイル・オンライン《SBCグロッケン》。その居住区に存在するこのホテルは、  
特定の「ホーム」を持たないプレイヤーに一夜の寝床を提供するNPC施設だ。大きめの  
ベッドとシャワールーム、それに簡易なキッチン、建材打ちっ放しの壁の部屋は寒々しさ  
すら感じさえるほど殺風景だ。その上、ホテルの入り口には、運営者のいかなる配慮の発  
露なのか「休憩3,500クレジット」「一泊6,500クレジット」などという、けしからん文言  
がおどっている。  
 しかし、シノンはチェックインの際、恐慌に陥っていた上、あとからやってきたキリト  
もそれを気にした様子は見せなかった。  
 一晩たってやっと、シノンは羞恥心を覚えた。知らず「そういう施設」へ足を運び、さ  
らには男性と同衾してしまったという事実に、ふたたびぶすぶす思考がゆであがる。しか  
も、この部屋は朝田詩乃のアパートとほとんど間取りが同じで……。  
 シノンは頬の熱さをごまかしつつ、ラックに備え付けられたインスタントコーヒーを手  
にし、これまた備え付けのカップを二つ手に取る。カップへインスタントコーヒーの元―  
―すなわちコーヒー粉をさらさら注ぎ、ポットからお湯を注いだ。  
 
 こぽこぽ、耳心地のよい音とともにお湯がカップへ注がれていく。インスタントにして  
は芳ばしい香りが漂った。  
 VR空間のコーヒーにカフェインは含まれない。だが、香りと味が覚醒をうながすのに  
一役買う。  
 左手で角砂糖とミルクをカップに落としたコーヒーをかき混ぜつつ、右手でメインメニ  
ューウィンドウを開いた。  
 
 ――やっぱり……。  
 
 そこにはステータス《発情》の表示がある。  
 昨晩、ログアウトするにはあまりにも、ひっついているキリトの体温は魅力的だった。  
キリトも同じように感じたようで、シノンとキリトは二人、ぴったりと寄り添うように眠  
ってしまった。その間に日を跨いでしまったため、例の惚れ薬が生む《発情》の効果が再  
び現れてしまったらしい。だからこそ《寝落ち》ログアウトが機能せず、シノンはキリト  
の隣で目を覚ました。  
 役得、という言葉が勝手に頭へ浮かんできた。無意識に浮かんだ言葉を、インタラプト  
すべくコーヒーを一口。  
 
「あっ。おいしい……」  
 
 ホテルのアメニティーとは思えないほど、味が良い。  
 
 ――これははやく、キリトにも飲ませてあげないと。  
 
 湯気をうかべたカップを二つもってベッドへと戻るとキリトが、うとうととまどろんで  
いた。  
 
 ――ほんとに良く眠るわね……。  
 
 シノンはコーヒーをサイドチェストの上に置く。ふと、髪の毛には触れていないなと思  
いつき、それからキリトのとなりであひる座りになり、頬のあたりにかかっていた髪を指  
ですくった。  
 十分にコシのある、絹糸めいた触感。そのまま何度か指先で髪を梳いていると、なぜだ  
か陶然とした心ごこちになった。指の間をさらりと涼やかに流れる。  
 二度寝を実施していたキリトが、本格的に目をさましはじめる。  
 
「んんっ……んっ……」  
 
 小さく唸り声を上げつつ、キリトが上体を持ちあげた。シーツが腰のあたりを滑ってい  
き、細い裸の体があらわになる。そのままぱちくりとなんどか瞬きをおこない、気だるげ  
にシノンの方へ体をひねった。黒髪がはらはら、後ろへと落ちていく。  
 
「シノン……いま、何時?」  
 
 男声にも、女声にも聞こえるハスキーボイス。  
 シノンは手元のウィンドウを確認してから答える。  
 
「朝の九時……ね」  
「あれ。でもどうして寝落ちしてな……そうか。あのまま寝ちゃったからログアウトでき  
なかったのか」  
「あたり。やっぱりでているわね、アレ」  
 
 ウィンドウを可視化して、キリトにむかってひっくり返す。シノンのステータス異常を  
見とったのだろう。キリトががっくりとうなだれた。  
 
「くそ……まいったな。こっちのシノンにまで迷惑かけるなんて」  
「迷惑だなんて思ってない。そもそもこうなったのはキリトのせいじゃないし、それにこ  
っちのあんたからも感染するなんて考えてなかった……」  
 
 言いつつサイドテーブルのコーヒーカップを、手にとってキリトに差し出した。  
 
「とりあえず、コーヒー飲んで、落ち着いたら?」  
「ああ……」  
 
 ありがとう、と手を伸ばしキリトがカップをとらえる。シノンの指にふれた。  
   
 ――っ  
 
 ふれたのはほんの一瞬だった。キリトの白い指先がカップの取っ手をつかんで、口元へ  
カップを運んでいく。  
 細くて白い指を改めて意識する。昨日の夜はあの細くて柔らかい指に、思い切り狂わさ  
れたのだ。やめて、と叫んでもやめてくれず最後には何度も何度も、シノンを追い込んだ  
指。  
 最後にはお互い力つきるようにベッドへ沈み込んだ昨晩の記憶に、かっ、と体中が燃え  
上がるように熱くなった。視界がかすむほどの熱情に、頭がくらくらする。  
 触れてもらいたい。あの細い指先で思い切り、昨日みたいにしてほしい。  
 そんな欲望がシノンの内側で膨れ上がり、足と足の間にあるそこが、なにかをもとめる  
ようにきゅっ、とせつなくなる。  
 
「キリト……」  
 
 コーヒーを一口含んだキリトのじっと見ていると吸い込まれそうな黒瞳を、みつめなが  
らシノンは顔を近づけた。  
   
「し、シノン?」  
 
 こくん、と喉が小さく鳴って、コーヒーが嚥下される。  
 やや呆然としつつも、シノンに向き直るキリト。  
 シノンは自分のしていることに、すこし混乱している。いままで自分からせまったこと  
などない。でも、唇が熱くてしかたない。  
 求めるまま、シノンはキリトの細い首に手をまわした。  
 びくっ、キリトの肩が震える。  
 現実空間のキスをしらないシノンでも、唇と唇で交換される淫らな魅力は知っている。  
 
「んっ……ふぅ……んっ……」  
 
 ややとまどい気味のキリトをうながすように、シノンは舌を絡ませる。しばらくそうし  
て、くちゅくちゅとキリトの舌の感触をシノンが楽しんでいると、俊敏な動きでキリトの  
片腕がシノンの首筋に巻き付いた。シノンはそのまま、くっ、と体を引きつけられる。  
 
「んっ――!」  
 
 シノンは驚いて舌を抜いてしまった。が、今度はキリトの舌がシノンの口に侵入する。  
 
「んっ……ふっ……んっ……」  
 
 攻守があっという間に逆転してしまった。そのまま目を閉じ、キリトに口腔を犯される  
心地よさに酔う。  
 しばらくディープキスの応酬をつづけ、どちらともいわず唇をはなした。名残惜しそう  
に引かれた唾液の橋がぽた、と落ちる。  
 キリトの頬が、やや赤らんでいた。  
 
「いきなり……びっくりしたよ」  
「その割には楽しんでいたでしょ……」  
 
 キリトがシノンからのキスに、おどろいたのは一瞬だけで、シノンはそのあとずっとイ  
ニシアチブを握られ続けた。  
 シノンの言葉が図星だったのか、すこしだけ困ったように眉を下げたキリトは、表情を  
ごまかすように持ちっぱなしだったコーヒーを口に運んだ。そのままぐぐっ、と飲み干し  
てしまう。  
 どうやら恥ずかしいのは一緒のようで、シノンはほんのすこしだけ胸をなでおろした。  
 
「ねえ……手伝って……くれる?」  
「ぶっ……な、なにを……?」  
「その……」  
 
 シノンはキリトへしなだれがかりつつも、言葉の先を口にした。頬が熱い。  
 
「わかるでしょ?」  
 
 キリトが生唾を飲む音を、シノンは確かに聞いた。  
 
――――  
   
「シノン……いいよ、そんなことしなくて」  
「……」  
 
 気遣わしげにキリトが言った。シノンは答えずに指だけを進める。  
 胡座をくずした格好のキリトの下半身には、天井へとそそりたつ男性器がある。シノン  
はそこへ顔を寄せ、スナイパーらしからぬ心臓の高鳴りをなだめつつ、硬くなった男性器  
をくわえ込んだ。  
 
「んっ……」  
 
 舌先で先端をくすぐると、すぐにキリトが頭上で色っぽい声をあげた。  
 キリトのものはALO「キリト」のものよりも小さく、どこかかわいらしい。それでも  
性器には違いないちゃんと男性的な機能がそなわっていることを、シノンは昨晩、身をも  
って体験した。  
 性器から口をはなして根本を舌でくすぐる。それから根本を唇で吸い上げる。生々しい  
あたり判定があるフクロを指先でいじり回す。  
 
「し……シノン……」  
 
 ややうわずったキリトの声に、ちゅうちゅうと肉茎の縁をすいながらシノンは、上目遣  
いにキリトをみつめた。  
 視線の先のキリトは眉をひそめ、腰をたわめて、普段は真っ白い頬を赤く染めている。  
思わずといった風に開かれた唇が淫らだ。呼吸の執拗がない仮想空間でも、意図的ではな  
い胸骨の動きは再現してしまうので、薄くなめらかなキリトの胸部が、激しく上下してい  
る。  
 
「ちゅ、んっ、んっ……もう……勘違いしてもしかたないじゃない……」  
「な、なにが……」  
「なんでもない……ほら」  
 
 もっと気持ちよくなって……。  
 音にはせず、シノンは舌先でぼっこり膨らんだ尿道をなめあげ、先端のカリ首をちりち  
ろなめまわしたあと、再び口に含む。  
 
 ――どんな顔……しているの……キリト……  
 
 キリトの表情を確認したい、すこしだけ性器を傾がせた。そのまま視線を上にあげてい  
く。  
   
「熱っ…」  
 
 キリトの悲鳴とともにシノンの口腔で性器がはねあがった。シノンは悦んでくれている  
実感に、充実感を得ながらも、暴れる性器を口から出ないように気をつけつつ、のカサを  
なめまわす。  
 
「ちゅ……ぢゅる、んっ……んっ……」  
「くっ……んっ……んんっ……」  
 
 面白いように嬌声をあげるキリトをシノンはかわいい、と思ってしまう。あえぐ様な吐  
息は、最初よりも荒く早くなっていた。  
 フェラチオの経験が少ないため、キリトの反応をいちいち気にしつつも、シノンは行為  
を続けた。舌先と唇をはわせて、なでるようにしていると、よりいっそうキリトの悲鳴が  
大きくなる……。  
 
「んんっ……んっ、ぢゅる……」  
 
 亀頭の上にキスを落としていると、キリトの指がシノンの着るタンクトップの上をすす、  
と上下した。  
 
「んっ、んっ……んっ、くすぐったい……」  
 
 背筋を上下する指先が、ちりちりとした刺激を生む。  
 そのまま背中を探るような手つきで、さすりあげる。そして最後に、シノンの脇下から  
手のひらを進入させ、薄布につつまれた乳房に触れた。  
 
「むぐ……んっ……んっ……」  
 
 キリトに抗議の目線をむけつつ、お返しとばかりに性器にむしゃぶりつく。  
 そのうち、胸をなで回していた手が、より容赦なくシノンを誘惑しはじめた。指が器用  
にうごめき、シノンのタンクトップの裾をたぐりよせる。  
 ふるん、とまだわずかに先端をとがらせただけの、他の女性陣とくらべるとささやかな  
実りが露出する。そしてキリトの指先が、シノンの先端をさらうようにうごめいた。  
   
「はふっ――!?」  
 
 服の上からの優しい愛撫とは違い、指先の体温を強くかんじる。灼かれるようならなれ  
ない刺激にシノンは背筋をふるわせながら、フェラチオを続けようと……。  
   
「シノン…」  
「え……?」  
 
 思わず間抜けな声をあげてしまいつつも、いったん性器から口を離した。  
 キリトの性器はシノンの口から解放されても、刺激をもとめるようにびくんびくん、う  
ごめいていた。  
 
「シノン……」  
 
 もう一度切なげな声で呼ばれ、視界をあげると、眉を切なげにゆがめた、キリトの顔が  
あった。どこか保護欲をそそるその仕草に、シノンは胸が高鳴るのを感じつつ、いつもキ  
リトがやるように、シニカルな笑みを作った。そのまま無言で性器をひとなめする。  
 
「くっ……」  
   
 キリトのかわいらしい悲鳴は、魅力的だが、《発情》におかされた身体は、すでにキリ  
トの性器を受け止める準備を終えている。  
 口腔で感じた体温をすべて、そそぎ込んで欲しい。  
 
「キリト……お願い」  
 
 つぶやきながら、そそりたつ性器の少し上、なめらかなおなかに口を近づけた。蝋でで  
きたような白い肌に舌をあてて、そのままそろそろと上半身をもちあげていく。胸骨のあ  
たりをぬけ、鎖骨をくすぐったあと、再び間近となったキリトの頬を一なめする。そのま  
ま、欲望のまま呟いた。  
 
「気持ちよかったなら……、わたしにごほうび、ちょうだい……」  
 
 ふだんなら恥ずかしくて言えない台詞を、つぶやき顔を赤らめつつも、シノンはそのま  
まキリトに口を近づけた。  
 
 
 ――――  
 
 
 ベッドサイドにおいてあるヘカートUを手に取り、キリトをサイトインしたとして、命  
中率は果たしていかほどが。おそらく心臓の鼓動と同期するパレット・サークルは激しく  
収縮・拡大を繰り返し、まともな射撃などできないはずだ。それほどまでシノンの心臓は  
高ぶっている。  
 もっとも、バレット・サークル以前に一メートルに満たない距離でヘカートUを構えれ  
ば、銃口が対象と接触する。  
 キスをされたまま押し倒されたシノンは、ベッドのシーツへ埋もれるように体を仰向け  
た。キリトの指がするするとのびて、下着を脱がしてしまう。  
   
「っ――」  
 
 タンクトップ一枚の姿にされ、さすがに恥ずかしくなったシノンは、キリトからわずか  
に視線をはずした。いままで下着に守られていたスリットが心細い。  
 キリトはごくん、と唾を飲み込む音をさせる。  
 
「ああ……ごめん。こっちでやるのまだ二回目だし、昨日の夜は急いでいたからさ……。  
こうやって」  
 
 キリトはやっといつものシニカルな笑みを浮かべると、つつ、とシノンの溝を指先でな  
ぞった。  
 
「きゃっ……あ……」  
 
 思わず挙げてしまった悲鳴にかあっ、シノンは顔を赤らめた。本当に自分が発したもの  
なのかと、おもわずうたがってしまうほど、声がかわいらしい。  
 シノンの煩悶をよそにキリトはそのまま指先でくく、とスリットを広げた。  
 せき止められていた愛液がこぽこぽと流れ出る。なんどかそうして指先でシノンをいじ  
めたあと、すでに包皮をおしあげるほど育った秘芯を指ですりあげた。  
 敏感なところを優しく触れられ、シノンはひくひくと体を揺らした。電撃のような刺激  
がキリトの細い指から間断なく与えられる。  
 
「は……くぅ……んっ……」  
「シノン……もうこんなになっているぞ……」  
 
 くちゅ……くちゅ……。  
 すこし大きめの水音が、部屋中に響く。  
   
「んんっ……はぁぅ……んっ、言わないでっ……恥ずかしい……気持ちいいけど……」  
 
 キリトの指がふるえて、シノンの秘芯を優しくはじく。  
   
「ひっ、んんっ…ぅう…んっ、じらしちゃ、やだぁ……」  
 
 スリットをひくひく揺らすシノンの反応に満足したのか、キリトは秘芯から指を離すと、  
両手のひらで太股を押し上げた。  
   
「ひゃう……んっ……」  
「苦しくないか?」  
「ん、んっ、それは平気だけど……」  
 
 いままではわずかに開いていただけだったスリットが大きく開いた。小柄なシノンの体  
型に合わせた、小さめなサーモンピンクのスリットが露出する。  
 脚を持ち上げられ、息をのむシノンにキリトは、妖しい笑みをうかべる。  
   
「昨日はよくみなかったけど……かわいいな、シノンのここ」  
「……昨日は部屋が暗かったから」  
 
「うん。そう考えるとちょっともったいなかったかもしれないな……」  
「で、でも…そ、その……じろじろみられると……」  
 
 熱を持っているかのようなキリトの視線に、シノンはからだをくねらせた。秘処からと  
ろ……と、透明な液体がこぼれおちた。  
 
「ね、ねえ。恥ずかしい……、キリト……」  
 
 キリトはシニカルに微笑むと、性器をシノンにあてがい、挿入する。じゅぷ……とおお  
きな水音をまき散らしながら、濡れそぼった膣道はすぐさま性器をうけいれた。  
 
「んっ――! んっ……入ってるっ……」  
「ああ。温かくて気持ちいいよ。痛くはないよな?」  
「うん。んっ……昨日よりちょっとおっきいかも……」  
   
 膣道に確かに存在する性器の熱さに理性を焼かれながらも、そこから得る甘美な刺激は  
シノンを虜にする。重なり合う安心感に脱力しながら、キリトを促した。  
 再び頷いたキリトが腰を動かし始める。  
 
「あ……はんっ……」  
 
 パン、パンという乾いた音が響く。  
 キリトの思い切りのいいグラインドにシノンは背筋をふるわせる。  
 
「あっ、あっ、あっ、ああんっ……ふあっ、ああっ! いいっ……キリトのいいっ!」  
 
 キリトの性器が脈打つたびに、膣粘膜をけずられる。形を誇示するように、自分のうち  
がわで動く性器が、断続的な快感をシノンに与えてくる。  
 じゅる、じゅる内側をこすられる熱に夢中になる。もっと深く、強く……と望んでしま  
う自分をおさえられない。  
 狭めの膣道を埋め尽くさんばかりに突きこまれる性器に夢中になってしまう。  
 
「あっ、あっ、あっ、ああんっ! んっ、はああっ! もっと――!」  
「ああ――!」  
 
 腰をしっかりと掴んで固定される。膝がぐぐ、とシノンの体側に押し付けられ、挿入が  
より深くなる。こつ、とキリトの先端が下腹部を押す。  
 深く灼熱した性器が無遠慮に、シノンをさいなみ始める。  
   
   
「んっ、んっ、んっ、あぁ……んっ、奥にとどいてる――!」  
 
 シノンはベッドへ背中をこすりつけるように背をそらした。ぴんと勃起した乳首が、キ  
リトのグラインドに同期してぷるぷる揺れる  
 目の前が白くなり、腰や脳髄の深い部分を直撃する快感に、唇を閉じて耐えるシノンへ  
キリトがせつなげな声を漏らした。  
 
「シノン……俺、もう――!」  
「うん――わたしも」  
 
 シノンはうなずいてから、キリトの首に手をまわし、キリトのために勉強した言葉を耳  
に吹き込んだ。  
 
「私のなかにいっぱい――だして――」  
「っ――!」  
 
 キリトの性器が大きく波うった。  
 挑発にのるように、キリトの腰がより激しくシノンへ突きたてられる。  
 
「ふ、やあっ、激しっ……! んっ――!」  
 
 エクスタシーが理性を焼き尽くす。  
 背筋をふるわせるシノンの柔肉をむさぼりつくすように、性器を押し付けられる。  
 そして、次の瞬間、性器の先端から飛沫がふきあがった。  
 
「あっ、あああああああ――!」  
 
 膣内射精の灼熱感に悲鳴をあげるシノンにかまわず、より奥へ奥へ、キリトは性器をお  
しつける。仮想空間のアバターとはいえ、膣口は存在する。そこに熱いしぶきをぶちまけ  
られた。  
 
「んっ……出てる――っ!」  
 
 最奥をさらに押し広げるほどの勢いで熱い精液を注がれる快感は、シノンを再び頂点へ  
と導いていった。  
 
「あああ…っぅ……んっ……!――キリトのが……いっぱい……!」  
「く……あっ……」  
 
 シノンに向かってキリトが脱力した。汗ばんだ背中をだきしめる。  
 
「んっ……あああ……ぅぅ……」  
 
 膣の中で震える性器が、シノンに余韻を伝え続けている。  
 自分の膣で愛液と精液が絡みつくのを想像しながら、シノンはキリトの耳元につぶやい  
た。  
 
「お疲れ様……気持ちよかったよ、キリト」  
 
 髪をなでてやると、キリトが気持ちよさげにうめいた。頬に頬を当てる温かさに酔いな  
がら、シノンは射精によって力つきたキリトを抱きしめつづけた。  
 
 
――――  
 
 
「キリト」  
「……ん?」  
 
 同じシーツにうずもれながら、シノンは隣のキリトにつぶやいた。いまだに汗ばんだ肌  
に指を乗せる。  
 
「その…いつ、ALOに帰るの?」  
「あ、ああ。そりゃ……アカウント一つで、コンバートだし。今日中にはもう一回コン  
バートをするけど」  
「……じゃ、急ぎの用事があるわけじゃないのね?」  
「え……たしかに急ぎの用事はないけど」  
「そう」  
 
 シノンはほんの少し胸をなでおろす。  
 
「そっか……」  
 
 この世界に彼女はいない。彼女がいるべき場所こそ、キリトがいるべき場所なのだと、  
明確に理解している。  
 しかしこの仮想世界にはシノンとキリトしかいない。予定がないというのなら、少々の  
わがままをしても、彼女を裏切ることにはならないだろう。  
 汗ばんだキリトの胸板に額をおしつけてシノンは目をつむった。  
 
「じゃあ、もう少しこのまま――こうしていて」  
 
 このくらいのわがままは、許してほしい。本心の前半分を押し殺してつぶやく。  
 やがてキリトの腕は、おずおずとシノンの肩を抱きしめた。  
 差し出された腕に頭をのせ、シノンはしばらく、キリトを独り占めすることに成功した。  
 
 
 
 そして額で感じるキリトの体温にまどろみながら、音にせずつぶやく。  
 
 
 ――キリト……愛してる……。ずっとこのままこうしていて……。  
 

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