恋を自覚した乙女ほどしたたかで美しいものは存在しないだろう。彼女たちは恐怖を幸福でねじ伏せ、手段と目的を同一化し、あらゆる方法をもって願いを成し遂げようとする。  
 桐ヶ谷直葉もその例に漏れなかった。ふたりが同じベッドで目覚めてからというもの、過熱ぶりというのは冷める様子がない。  
 あれ以来、直葉はひとりで寝ようとしない。隙あらば和人のベッドの入りこみ、からだを密着させて寝るのである。  
 おんならしい肉付きになりつつある少女がくっついて眠るというのだから、和人もたまったものではない。しかもひとりの時間が減るのだから、当然、自己処理をする余裕もないのだ。  
 翠がいない場合などは、和人の背中を流したり一緒に風呂に入ろうとするのだから、これまた、たまったものではない。  
 そんな生活がもう一週間も続いた。和人の鉄のごとき精神力は驚嘆と賞賛に値するだろう。それも、明日奈という恋人と妹と不埒な関係に至っては申し訳がないという倫理のおかげである。  
 しかしいかに強靱であろうと、有限であるならば無くならないはずがない。  
「お兄ちゃん。今日もいっしょに寝よう」  
 ノックから返答を待たず、ドアを開いて和人の部屋に入り込んだ。椅子に座り、モニターを見ていた和人の背中にぴたりと張り付き、首に手を回す。  
 鉄の意思はそぎ落とされた。手を回された首を支点に器用に椅子を回し、ふたりは見つめ合う恰好になる。ややも照れながら、嬉しそうに笑みを浮かべる直葉に、和人はゆっくりと顔を近づけ唇を奪う。  
「んっ……」  
 目を見開いて驚愕しながらも腕の力を弱めることなく、逆により深く抱きしめながら、目を閉じて受け入れた。和人の手が背中に回り、くすぐるほどの優しさで背筋から腰からなで上げながら、抱きすくめる。  
 たっぷり二〇秒ほども続いただろうか。唇を離すと立ち上がり、そのまま直葉を抱え上げて和人はベッドにやわらかく押し倒す。のぼせたような虚ろな表情が冷えたベッドの感触で理性を取り戻し、上から見下ろす和人を捉える。  
「キス、しちゃったね」  
「して欲しいって、顔にかいてあった」  
 両手を隠すように頬にあてて、その隙間からのぞき込むように直葉が言う。  
「あたし、そんなにやらしい顔してた……?」  
「ぜんぜん、やらしくなんかなかった」  
 それは、あまりに純粋な恋する乙女の相貌だった。だからこそ和人は我慢できた。だというのに、直葉のすることすべてが純粋過ぎた。あまりにも素直すぎる行動が、純粋な感情をみだらな行動へと置き換えていた。  
「じゃあ、いまのあたしの顔って、どんなことかいてある?」  
「もっとチューしたい」  
「……あたり」  
 今度は直葉からだった。和人の上半身を抱き寄せて唇を重ね合わせた。小鳥のように何度も何度も、角度を変えてキスをする。  
 口づけを重ねるごとに、直葉の頭はもやがかかったようになっていった。足下が浮くような気分に踊らされていた。  
 お揃いのパジャマの上から、和人が主張の激しい乳房に手をやった。やわらかさよりも、密に詰まった堅さが成長途中の少女の証である。痛めつけたいわけではなかったのだろう。ごく弱く、指が沈むか沈まぬかのあたりで加減しながら、その感触を楽しんでいる。  
 直葉にとってそれはくすぐったいだけのものだったが、いかにも嬉しそうにしている和人の邪魔をするには忍びなく、好きにさせていた。  
 やがて息が苦しくなり、直葉は腕を緩めて唇を離した。まざった唾液が糸を引き、銀色の橋を架けている。プツリと途切れたのを名残惜しそうにしながら、寝間着のボタンに指をかける。  
 ひとつ外れるたび、少女のからだが露わになっていく。  
 最後のひとつを外すと、とろりとした目で和人を見ながら、両腕を前に差し出した。  
「……脱がせて」  
「っ!」  
 和人のなかで、限界までアクセルが開けられた。ちりちりと神経が痛み、脳が鼓動するような感覚に襲われながらも丁寧に、直葉のパジャマを脱がしていく。  
 それが彼の最後の紳士さだったかのように、自分のパジャマを脱ぎ捨てた。  
 
 弱めの暖房が効いているおかげか、ふたりとも寒いとは思わなかった。  
 桜色に染まった直葉の肌を撫で、それよりもすこしばかり濃い双山の峰を舐め、口に含んだ。たがの外れた和人は、思う存分、からだに溺れていく。  
 自分に夢中になってくれることが嬉しいのか、直葉は自分に吸い付く和人のあたまや背中を撫でていた。それは子供をあやしているようにも見えたし、甘える夫を許す妻のようにも見えた。  
 仮想世界では何度経験があったとしても、それはしょせん、仮想のものである。見当違いの場所を触っていたり、自分がよろこぶことに集中しすぎているのは仕方がないだろう。  
「お兄ちゃん、かわいい」  
「かわいいはやめてくれ」  
 乳房に吸い付いたままの台詞に拒否権はなかった。  
「あたしも、してあげるね」  
 体を起こした直葉が、パジャマのズボンの下から突き上げている和人のものを見た。時折震えているのが、見た目にも苦しそうであった。  
 しかしいきなりズボンを下ろすほどの覚悟はなかったのか、直葉はパジャマの上からそろそろと、大切な物を扱うように触り始めた。  
「うっ……」  
「痛かった。そんなに敏感なの?」  
「いや、ぜんぜん。もっと強くてもいいぐらい」  
「うん。じゃあ続けるね」  
 とはいえ、いまの張り詰めた和人にとっては先ほどの直葉のさわり方でも、あっという間に達してしまいそうになってしまう。  
 先ほどよりもすこし強く、カタチをはっきりと読み取ろうとするかのように、直葉の手は上から下から這いずり回る。  
 たったそれだけのことが、一週間おあずけを食らった犬のような和人にとっては、極上なのであった。思わず腰が引けるほどの快楽に、思わず直葉の手をつかみ、動きを止めさせる。  
「タンマ、ちょっともうヤバイ。ステイ、ストップ、フリーズ」  
「うん、わかった。なんか、男の人って敏感なんだね」  
 和人に触られても、嬉しくはあっても気持ちよさというものは、直葉にはまだほとんどない。これは和人の技量よりも経験のなさが原因と言える。  
 やや不思議に思いながら和人が落ち着くのを待って、直葉は意を決したようにパジャマのズボンを下着ごと下ろした。ゴム仕掛けのおもちゃのように、跳ねて腹部に当たるものに、目を丸くする。  
「……こんなに大きくなるんだ。これが、入るんだ」  
 そう言われると和人は想像してしまい、言葉だけでまた興奮が昇ってきた。  
「スグも、脱がすよ」  
「あ……えっと……恥ずかしいから、あんまり見ちゃやだよ?」  
 風呂場では何度も見られているというのに、舞台がベッドであるだけで、まったく別の恥ずかしさが直葉を包んでいる。  
「やだ。全部見てやる」  
「もう、ばか! えっち、すけべ。嘘でも見ないって言ってよ」  
「男はみんなそうなの! っていうか嘘つくほど余裕なんかない!」  
 お互いを脱がしあうと、いよいよ、という気持ちがふたりのこころに湧いてきた。和人はもう臨戦態勢であったが、直葉の方はまだそういう訳にはいかない。  
 なにしろ、はじめてのことであるから、かんたんに踏ん切りがつくものでもない。それに、まだ潤いも足りていなかった。  
「あんまり気持ちよくなかった?」  
 直葉は顔を赤らめながら、  
「キスとかは嬉しいんだけど……からだを触られるのは、くすぐったかっただけ、かな」  
「ぐむ……。それじゃ、自分でする時はどのあたり触る?」  
 やや肩を下げながら和人が聞くと、直葉はもっと顔を赤くした。  
「じ、自分でなんかしたことないもん! わからないよっ」  
「なるほど。それじゃしょうがない」  
 と、自分が下手なんじゃないという言い訳を見つけながら和人は直葉を引き寄せ、己のあいだに直葉を座らせた。  
「あの、お兄ちゃん?」  
「まず、直葉がどこらへんが良いのかってのを見つけようと思う」  
「それはいいんだけど、腰に当たってる」  
「それこそ置いといていいのっ! お前が魅力的っていう証だ。誇っとけ」  
 直葉の腋から手を回し、まずは乳房の先端をつまみ上げた。  
「ひゃっ」  
「やっぱりここは気持ちいいんだな」  
 
 そこから遡るように本体を触るが、直葉には何の反応もなかった。首筋や背中を通ったときにくすぐったそうに声をあげたが、それは未来の性感帯の話であって、現在使えるものではない。  
「く、くすぐったいからやめてよー」  
「がまんがまん。これもひいてはお前のため。兄は身を犠牲にしてがんばっているのだよ」  
「嘘だ。顔見なくても、今ニヤけてるのがわかる!」  
「……そういう仮説もあるな」  
 そう言いながら、今度は直葉の下半身に触れていった。さすがにそこは気恥ずかしさなどが勝つのか、顔を赤くしたり、目をつぶったり、くすぐったそうに身をよじったりしている。  
 手がふとももの内側まで行くと、ぎゅっと身を縮め、なにかに耐えるような姿勢を取った。  
「怖いか?」  
 首を振り、「怖くはないんだけど、なんか、へん」  
「じゃ、ちょっと慣らそう」  
 直葉の縮こまったからだを伸ばさせ、深呼吸させた。上向いた乳房が和人の視線を釘付けにした。  
 落ち着くと覚悟が決まったようで、どこからでもかかってこい、という雰囲気を出して、和人の手をうながした。  
 和人の手がふとももの内側をさすり始めた。そこだけじっくりと、たっぷり時間をかけながら、円を描くようにマッサージしていく。  
 している内に直葉の息が速くなり、ふとももにうっすらと汗が浮かんでくる。  
 そこからすこしずつ、川の流れに逆らうようにゆっくりと近づいていった。それに比例するように、直葉の呼吸が乱れ、肌の色も赤く変わっていく。  
「触るよ」  
「……うん」  
 指先が外周を撫でてから、泉水湧き出る水源にわずか入りこんだ。  
「んっ」  
「痛かった?」  
 ふるふると首を振って上を向き、和人の顔を見上げて意思を伝えた。こくりとうなずき、和人は指をふたたび動かす。  
 そこは濡れているというよりも湿っていた。ぬめりも少なく、なにかを受け入れるほどの準備ができていない。  
 しかし和人の指が動くごとに、直葉の口内では確実に声が生まれていった。それを恥ずかしく思うのか、唇を開かずに飲み込んでいるようだったが、そのこらえる姿こそ男をそそらせる。  
 遠火で焼くように時間をかけ、和人はじっくりと攻めたてていった。その甲斐あって階段を上るようにゆっくりと、直葉はだんだんと我慢を忘れ、呼吸を荒げ自身をもてあそぶ指に夢中になっていく。もはや唇は閉じることなく、かすれるような声が溢れている。  
 視点も怪しく目がとろけ、和人の唇で噛まれた耳さえも甘い疼きに震え、昂った神経はからだのすべてを感じるための器官へと作り替えていた。泉はもはやこんこんと湧き出て、和人の指をてらてらと光らせている。  
 そのうちに、もうこれは……というところまで昇った直葉を達させるために、手を伸ばしていなかった芽を、指先でなで上げた。  
「――っ!」  
 腰から跳ねるように、全身が震えるように、和人の胸の中で暴れたあと、ぐったりと直葉はもたれかかった。目はうつろになり、開ききった口は空気を望んでいる。  
 はじめての少女を導いた感動と達成感に浸りながらも、どうしようもないほどに張り詰めた自身を見下ろし、和人はどうすべきか迷った。ようやく女性として目覚めはじめた直葉に無理をさせたくないけれども、かといってあっさり納められるほど男として腐ってはいない。  
 ぐるぐると思考をかき混ぜていると、戻ってきた直葉が和人のものをやわらかに掴んだ。  
「うっ」  
「なんか、もういっぱいいっぱい。……こっちもだね」  
「ちょ、ちょちょ、ちょいまち! いまされると……ボンッ! だぜ」  
「じゃあ、ボンッ!」  
「おうふ」  
 くにくにといじくられ、瀬戸際まで来ていた和人のものが、あっけなく散った。  
 
 どろりと粘っこいのが直葉の胸からへそ、ふとももにまでかかり、薄紅色の肌を汚している。  
「な、情け無や」  
「結構な匂いがするね……」  
 首をがっくり落としながら、和人は引き抜いたティッシュペーパーで直葉のからだを拭っていった。  
「あの、ごめんね。そんなに落ち込むとは思ってなくて。あたしなら大丈夫だから、しよ?」  
 耳から脳に言葉が伝わった瞬間、若い肉体は一瞬で回復した。これこそユニークスキル《二刀流》を得られた反応速度の賜物である。  
「は、はやいね」  
「愛の力かな」  
 せっかく潤ったのに乾いてはいかぬと、直葉を横たえさせて和人は馴染ませるように何度も擦りつけた。それにまだ昂っている神経が過敏に刺激を受け、また新たな潤滑油を生み出していく。  
「深呼吸できるか? たぶん痛いと思うから、息を吐いてからだを楽にするんだ」  
「すー……はー……すー……はー……うん。覚悟は最初からできてるから、いいよ」  
 にこりと笑って力を抜いた直葉に、和人はゆっくりと突き入れた。  
「……っ」  
 大丈夫か? とは、和人は問わなかった。痛いに決まっているし、直葉なら「大丈夫」と答えると分かっていたからだ。だから一刻も早く楽にしてやろうと、しずかにゆっくり突き進める。  
 本来、通れるわけがない道を押し広げ、抵抗を破り、すべてが直葉に埋まったとき、少女の目には涙が浮かんでいた。  
「ごめんな。痛いよな」  
 言いながら、唇で拭いとっていった。甘い塩味が舌に広がる。男にはそんなことさえ気持ちいいというのに、女に苦痛を押しつけなければいけないということが、和人にとってはどうしようもなく胸をかきむしりたくなるほどに厭なことに思える。  
「ううん……嬉しいの。だって、こんな風になれるなんて……きっと、信じてなかった。もっと、高い壁だって思ってた」  
 あふれる涙はあたたかく和人の舌に残った。痛みをこらえるような押し殺す呼吸が伝わりすぎて、和人の目にも涙が浮かびそうになる。  
「ほんとうに、嬉しいんだよ……? あたしのこと、信じてよ。和人くん」  
「信じてるよ、最初から全部。スグ――直葉のこと、疑ったりなんてしてない」  
「あはは。名前で呼んで貰えるのって、嬉しい。もっと呼んで」  
「いくらでも呼ぶよ。直葉」  
「うん。……やっぱり、そう言ってくれるの、すごく気持ちいい。和人くんも、気持ちよくなっていいんだよ?」  
「ああ。もう気持ちよくなってるよ。繋がってるだけで、十分気持ちいい」  
 事実、剣道で鍛えられているおかげか、和人の物は挿入しているだけでも刺激があり、さらに心臓の鼓動に合わせたようなうねりを受け、だいぶ高まっていた。  
「うん。嬉しい。でも、せっかくのはじめてだから、きちんとしたいの。……いいでしょう、和人くん」  
「わかった。痛くても後悔するなよ」  
「安心して。痛かったら泣き叫んでるから」  
 痛いはずなのに笑みを浮かべる健気さが、どうしようもなく和人には愛おしく思えた。この瞬間だけは、恋人よりも目の前の直葉が大切だと、そう胸を張って言えるぐらいに。  
 仮想世界で快楽だけを抽出した行為の経験はあっても、現実の和人は初めてみたいなものだから、どうしたって上手く動ける訳ではない。ただ、直葉がなるべく痛くないように。そう願いながら、からだ全体で動くように、往復していく。  
「は……ぁ……は……ぁ……」  
 ふたりの全身から汗が浮かんでいた。そのひとつひとつを吸い取るように、和人はキスを浴びせていく。  
 ふたつの動作は重ならず、はじめはキスのたびに動きが止まっていた。それでも次第にこなせるようになり、直葉のすべての部分を唇と舌でなぞっていく。  
 すでに昂っていた和人は限界に達した。元より、我慢して気持ちよくなり、その結果、直葉を長く苦しませようなどとは思っていない。  
「もう、終わる、から。よく、がんばったな、直葉」  
「……ぁ……うん。今度は、あたしも気持ちよくしてね……んぅ……っ」  
「こん――? っぐ!」  
 引き抜こうとした和人の腰を直葉が両足で挟み込み、目の前の汗だくの上半身を、両腕で抱きしめた。  
 結末は訪れた。直葉の最奥で和人のものが震え、快楽の塊を吐き出していく。一滴たりとも逃さぬと、抱きしめた四肢の力がより強くなった。  
「っ……! はぁ……。直葉、どうして」  
「だって、はじめてだもん。和人くんのぜんぶが欲しかったから」  
「だからって……いや、どう考えても、つけなかった俺のせいだな」  
「いいの。最初は壁なんて欲しくなかったから、それで良かったんだよ」  
 掻き抱いた和人のあたまを撫でながら、満足そうに直葉は笑った。  
 もう、一生あたまが上がりそうにないと思いながら、和人は目の前のゆたかな双子山に顔を埋めた。  
 
 
 ややまどろんでからふたりでシャワーを浴びると、パジャマを着て直葉の部屋に入った。和人のベッドは体液でぐちゃぐちゃになってしまい、シーツを交換してもそこで眠るには直葉が抵抗あったからだ。  
 同じベッドに入っていても、わき上がるものは性欲ではなく愛情だった。ただ愛おしいという思いがお互いにあって、眠るのが惜しくなり、見つめ合って言葉を交わす。  
「やっぱり、明日奈さんに知られたら、まずいよね?」  
「まずいっていうか、どうなるかわからないなあ。もちろん俺が」  
「それじゃ、ふたりの秘密?」  
「……そうしたいけど、たぶん、そうはできないっていうか」  
「コイビトだから?」  
 嫉妬と苦みを混ぜ込んで、和人をつねりながら言う。  
「いてて。えーと、はい。そうです。刺されたり殴られたり泣かれたり怒られたりするかもしれないけどね」  
「ふーん。……」  
 強く、ぎゅーっとつねりながら、直葉を唇を尖らせた。  
「いっっでぇ……! ちょっ、痛すぎませんか」  
「同じベッドに入ってるのに、他の女の話するのが悪い」  
「それについては弁解しようもないけども、始めたのは直葉から……っでぇ! なんでもありません」  
「ふんだ。……いいもん。一緒に過ごしてるのはあたしなんだから。覚悟してよ」  
「え?」  
「明日奈さんのこと考えられないぐらい、あたしに夢中にさせてあげるから」  
「……ははは。お手柔らかに」  
 これからの生活を思い、よろこびと恐れに震える和人であった。  
 
   了  
 

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