桐ケ谷家の築年数を物語る天然木のフローリングが施された六畳の部屋。  
パソコンデスク、ウォールラック、パイプベッドが置かれているだけのシンプルな和人の  
部屋は、いま清らかな鈴の音と淫靡な水音で満ちていた。  
 
「んっ――、んっ――んっ――」  
桜色の振袖を白地に金の刺繍を施した帯で留めた明日奈が、和人の性器に舌を這わせてい  
る。清楚な衣装とは対照的なみだらな行為のなまめかしい音が、和人の部屋全体に広がっ  
ていた。  
しゃらん、しゃらん――。  
淫らな水音に加えて――明日奈が口戯を行う度に結い上げた髪にさした簪の鈴がしゃらん、  
しゃらんと音を立てている。明日奈が口や手を上下させるたびに涼やかな鈴の音が鳴る。  
「ん……んっ……んっ……ねえ、キリトくん……出ちゃう時は必ず言ってね。汚したら大  
変だから」  
「わ、わかってるよ。それよりも本当に大丈夫なのか? 皺になったりしないの?」  
「それは、んっ……心配しなくて大丈夫よ。んちゅ……でも汚れるのだけは絶対に駄目。  
お母さんにだまって着てきちゃったから……」  
「……俺そっちの方が心配だよ」  
デスクチェアに腰かけた格好の和人へひざまずくように脚を折り、色落ちした黒のジーン  
ズから唯一とびだしてる和人の性器を指と舌で刺激しながら、明日奈は微笑んだ。  
「い・い・の! お母さんは仕事でいなかったし、着物なら自分で着られる……でも!」  
明日奈は上品な桜色の振袖の裾からでる、白足袋をじり、と組みかえながら続ける。  
「『せっかくの初詣だから、振袖着てきて』って言ったのはキリト君でしょ」  
「それはそうだけど……そ、それに良く似合ってるよ、その振袖。髪も――」  
「――ふふ。ありがと。初詣も楽しかったしね。着てきてよかった……」  
明日奈がちゅるっ、と和人の先端を吸いながら、くすぐったそうに微笑み、つぶやく。  
「でもキリト君が『姫初め』のことをしらなかったのは意外だなー。てっきり、その……  
てっきりその……こういうこと、したいのかなって」  
うすい化粧を乗せた明日奈の頬に、ほんのりと朱がさした。  
その純朴な告白に顔を赤らめたのは明日奈だけではなかった。和人は照れ隠しにそっぽを  
向きながら、無言で明日奈の髪をなでる。  
「んっ……、続けるね……」  
気持ちよさそうに目を閉じた後、明日奈が口戯を再開した。  
リップクリームを乗せた瑞々しい唇がんっ、んっ、という吐息とともに和人の性器に這っ  
ていく。  
「んっ……」  
振袖の袖からまろびでるアスナのたおやかな繊手が、和人の性器をやさしく包みこみなが  
ら上下する。  
手の動きをそのままにアスナはそのまま舌先で鈴口をちろちろと舐め取る。そのたびに和  
人が背筋をゆらした。  
VR空間で何度も睦みあった結果、和人の弱点を知り尽くした明日奈の口戯は、和人をあ  
っという間に高ぶらせる。  
見た目にも高価な振袖を汚してしまうわけにはいかず、かといってもうでます! 限界で  
す! はプライド的にできなくて、和人はわざと話題を元に戻す。  
「い、一般常識なのかな?『姫初め』って! 俺どうしてもそういう知識に疎いからさ…  
…」  
んっ、と明日奈が唇を和人からはなし、あわてたようにつぶやいた。  
「……わ、わたしもリズに聞いただけだよー。そもそも柔かいご飯とか……そういう意味  
らしいけど?」  
しゃらん。  
「あっ……ぐっ……」  
無意識に尿道のあたりをくすぐった明日奈の指先が、和人のプライドを打ち崩した。  
「あ、明日奈……」  
「え――! ちょ、ちょっと待って! いま出したらだめだよ!」  
「違う! いや、違わないけど! も、もう――出ちゃいそうなんだよ! だから攻守交  
替! お願いします!」  
和人はとうとう泣きを入れる。明日奈は二、三度ぱちくりと目を瞬き、「……はい」と答  
えて恥ずかしそうにうつむいた。  
 
――――  
 
振袖の裾を巻き上げた明日奈は和人と交代でデスクチェアに浅く座る。  
下着もなく、着物の布もなく下半身を晒す明日奈が、ふるっ、と体をわななかせた。  
「はずかしいよ、こんな格好」  
「もっと恥ずかしいところ見せてくれてるだろ、大丈夫」  
和人は慎重に明日奈の膝を開いていき、明日奈の大事なところを晒していく。  
「あ……やだっ! 本当に恥ずかしい……」  
和装のしきたりにしたがって、和人の目の前に髪と同じ色の陰毛に隠されたそこが露出す  
る。  
桜色の振袖に、白地の帯が彩りを添える和装。  
豪華な金の刺繍が施された帯の下から野生の雌鹿のような脚線を描く、瑞々しい脚がまろ  
びでる。  
楚々としていれば桜の精と見まごう美少女が、つややかな秘処をまだ昼明るい部屋に晒し、  
恥じらうように顔をうつむける様は和人を興奮させるのに十分だった。  
そんな明日奈の艶姿と、濡れ輝くサーモンピンクのスリットにごくりと喉をならしつつ、  
和人はすこし湿り気を帯びた肉ひらに舌先をつけた。  
「んっ――」  
わずかにおとがいを上げた明日奈の鈴がしゃらん、と音をたてる。舌先にくすぐられた明  
日奈はいとおしげに和人の黒髪に指を埋めて、愛おしそうに撫でまわす。そのたびに振袖  
の袖がチェアの肘掛けの上を這い、ずる、ずると衣擦れの音をさせていく。  
「んちゅ……んっ……なあ、明日奈。さっき言ってたけど、姫初めの姫って、やわらかく  
炊いたご飯のことなのか……」  
「んっ……うん。そうらしいけど、姫初めの意味ってはっきりしてないみたい。ご飯とそ  
の――えっちって関係ないしね……」  
「や、俺なんかわかった気がする……ここ、柔かいご飯みたいだよ?」  
和人がぐっと明日奈に顔を押しつけて、それこそ本物の――白粥めいて柔くなった粒を舌  
先で『食べる』。  
「んっ――もう。言ってることがえっちだよ」  
「でもここ、本当に柔かいし、美味しいし……。VR空間だと本当に適当だよな、この辺  
……」  
和人は呟きつつ、波立つ肉ひらと、肉門の縁をなめる。  
「んっ、んっ! キリト君……」  
しゃらん、しゃらん。入り口のあたりより深くくすぐられ、明日奈はお尻をひくつかせる。  
揺れはすべて鈴に伝わってしまい、感じていることを隠すことができない。  
しゃらん、しゃらん、しゃらん。  
しばらく無言で続けた和人がやっと口を明日奈からはなしたとき、女性器の入り口からは  
とろとろと透明な液体が流れ落ち、頂点は赤々と、それこそ米粒のように愛らしく膨らみ、  
そしてなにより和人の唾液で濡れ輝いていた。間違いなくおいしく『たべられて』た、明  
日奈ははふっ、と脱力する。和人はそんな明日奈の姿に感慨を覚えながら言う。  
「ごちそうさま……」  
「……お粗末さま」  
明日奈が呟き和人の髪をやさしく撫でまわす。  
和人はその手をとって自分の頬におしつけながら、明日奈を見つめた。  
「じゃあ……その、やっちゃうか『姫初め』」  
 
――――  
ベッドの上に寝転んだキリトの上に、和人の頭に対して後ろ向きに明日奈が腰をおろして  
いく。和人の性器とそれを覆うゴムが中に収まり、明日奈がふうっ、と色っぽいため息を  
ついた和人もまた、ゴム越しとはいえVR空間ではまだ実現不可能な女性の膣の感覚に腰  
を震わせていた。  
「キリト君、ピクピクしてる……動くね?」  
明日奈は背中の飾り帯を踊らせて和人を刺激する。結合部を微妙に覆い隠す襦袢や振袖の  
衣の向こうで、明日奈の女性器が和人の性器を受け止めていった。  
が、和人は衣に包まれたお尻の向こうで行われる淫戯が気になって仕方ない。  
「な、なあ明日奈……そこ見たいんだけど」  
「え? どこ?」  
奥襟の向こうから綺麗に首をそらして聞く明日奈に、和人は彼女のお尻を撫でて答えた。  
「もう……しょうがないなぁ……」  
明日奈は一度腰を浮かせて、お尻が丸出しになるまで衣をからげ両手で裾を抱える。  
和人の眼前に、真ん中で和人とつながる、魅惑の桃尻があらわになる。  
「んっ――くっ……これでいいかな……?」  
何にも隠されない結合部を見つめながら、和人は頷いた。絡げた衣が落ちないよう両手で  
支え、膝立ちとなり、和人を受け入れ始める。  
両手を和人の体につけることができず、かなり不自由な格好なのだが、一生懸命に体を上  
下させて和人を受け入れる。明日奈の肉ひらが和人の性器の雁首の形に添ってゆがむ。  
和人の目の前で「飾り帯」に巻かれた帯が揺れた。  
「ぁ……んっ――、んっ!」  
明日奈の声のトーンが徐々に上がってきた。明日奈のお尻が和人の下腹部を打つ度に波立  
ち、乾いた音を響かせていく。と――。  
「んっ――!」  
しゃらん、しゃらんと一定のペースで流れていた鈴の音が、強く響いた。  
いきなりもたらされた衝撃に、きゅっと目をつぶった明日奈は、振り向いて非難の目を和  
人にむける。  
「もお……いきなり動いたらだめだよキリトくん。汚れちゃったら……」  
「わかってるけどさ……だって明日奈がすごい可愛く感じてるから」  
「んっ――!」  
和人が小さく、明日奈を突きあげた。悲鳴を上げる明日奈は唇を尖らせつつ、不承不承と  
いったかたちで、和人の突き上げに併せて体を上下させ始めた。性器が外にでて、襦袢を  
汚さないようにきをつけながら、慎重に腰の動きを同期させていき、リズムカルに水音と  
鈴音を響かせていった。  
「あ、明日奈――!」  
先ほどの口戯れですでに限界寸前まで高ぶっていた和人の性器が明日奈の中で振動する。  
「はあ――んっ、んっ――! キリトくんっ!」  
明日奈も和人においしく『食べられて』いたせいで、昂るのがはやかった。  
徐々に最初の目的――が遠ざかり、二人は貫く快楽と貫かれる快楽に溺れていく。VR空  
間では再現仕切れない、幾重にも重ねられた清楚な衣が激しい動きに衣擦れを起こしてし  
て鳴り、上下の動きで挿されていた明日奈の簪がベッドに落ちる。解れた結い髪の一筋が  
首筋に垂れて張り付いた。  
「くっ! 明日奈っ!」  
最後に大きく彼女の名前を呼び、お尻のあたりを掴んで自分に押しつけた和人がゴム越し  
に明日奈へ向かってまき散らす。  
「はああっ! んぐっ!」  
コンドームの液だまりに噴射された精液に子宮口をくすぐられ、続いて明日奈も絶頂する。  
「あああああっ!」  
和人の性器で埋まる膣道がきゅうっと引き締まり、さらに和人の射精を誘う。  
「あ……ぐっ……明日奈……」  
ほぼ同時に達した二人は、快感にうち震えていた。  
「んっ……んっ……はうっ……汚れちゃう……」  
陶然とつぶやきながら、明日奈は震える両手でなんとか衣をだき抱えた。  
桜色の振袖に包まれた肩を上下させ、首すじを真っ赤にしながら、清楚な着物の裾を自ら  
たくしあげ、絶頂の余韻に浸る明日奈の結合部から、透明な愛液が和人の性器を伝って落  
ちてくる。明日奈の脚からは力がなくなり、しっとりと汗にぬれたお尻が和人の下腹部に  
押しつけられて、形を崩している。  
射精の快楽に溺れつつ、和人は首筋を紅くし、絶頂にうち震える清楚で淫らな明日奈の姿  
を目に焼き付けていた。  
 
――――  
「俺も手伝おうか……?」  
「だ、駄目! 恥ずかしいし、汚しちゃうもん……」  
ティッシュで慎重に女性器のまわりを拭いつつ、コンドームを処理する和人に向かって、  
明日奈は美しく微笑しながら言った。  
「キリト君。姫初めってほんとうはね――夫婦でするもの、なんだよ?」  
驚いた顔の和人に、明日奈はいたずらっぽく笑いつつ、落としたかんざしを拾い上げて再  
び結髪に挿す。しゃらんと音を鳴らした鈴の音が和人と明日奈の耳にしみこむ。  
「あのね、キリトくん……」  
明日奈がみだれた裾をなおしながら、和人を呼ぶ。  
「着物脱いでもいい……? あとで自分で着れるから……」  
頬を真っ赤にしながらの『おねだり』に、和人はこくこくとうなずいた。和人の頭の中に  
は「あーれー」される明日奈や「襦袢一枚になった明日奈を後ろからせめるの図」が高速  
展開していたが、顔を赤らめたままの明日奈は、和人の様子に気がつかない。  
「あ……そうだ」  
明日奈が乱れをただし、清楚な振る舞いでベッドに正座する。  
「キリトく――和人くん。今年も、よろしくお願いします。いっぱい一緒にいようね」  
三つ指を立てて言うアスナに、和人はあわてて居住まいをただし、  
「こちらこそ、よろしく……明日奈」  
いまさらながらの挨拶を返した。  
 
以上です。  
 

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