「ん、ふぅ……んっ……きもちいぃ……んっ、んんっ」  
 
 なんだか暖かくてなまめかしい感覚に目を覚ます。  
 ゆっくりと瞳をもちあげると自室の天井が目に入った。時間は――と視線を巡らせたと  
ころ――。  
 
「ふあ、んっ……んっ……」  
 
 聞き覚えのある嬌声を聴覚がとらえた。  
 薄暗い室内を視線で探っていくと、窓から差し込むひかりにつやめく黒髪があった。見  
覚えがあるなんてレベルじゃない。  
 
「スグ……なにやってるんだ……?」  
「あ、んぅ……んっ……おはよう」  
 
 胸元に密着している、妹――直葉が顔をあげた。まだ瞼のあたりが甘い――。  
 しかしなんというか、まあ……格好が格好だ。  
 俺の胸板に当たっていたのは、剣道着の胸元をもりあげ強調するよく育った胸だった。  
 圧力でつぶれてはいるものの、先端には確かにしこりの感触がある。さらに下は……す  
でに直葉に包まれている。  
   
「ちょ、ちょっと……なにを……」  
   
 さすがに俺がうろたえていると、直葉が小さく微笑んだ。小刻みに体を動かしつつ。  
 
「忘れちゃったの? 昨日寒かったから、一緒に……その、寝ようって……それで……え  
っちして……あたしが上で、お兄ちゃんが下で、そのまま寝ちゃって……」  
「……」  
 
 そうだったろうか? 俺は昨夜の記憶をさぐりよせる。  
 ああ、そうだ。たしか寒い、寒いと布団に潜り込んできた直葉と体を重ねて、そのまま  
……眠ってしまったんだった。  
 まだ母さんや親父には、俺たちがつきあっていることは内緒にしている。そのせいでい  
ろいろ制約は多いが、一つ屋根の下にいられるだけでも良しとしていた。たまにこういう  
ふうにくっつくことができるので。  
 母さんは昨日帰らなかった。仕事が忙しい……とのことで、久々に二人だけの食事&い  
ろいろをして、最後に直葉を抱きながら眠った。  
 
「――思い出した。たしかにそのまま、裸で寝たな……」  
 
 下腹部からしんしんと響く快感は、すでに直葉の柔肉に包まれているせいだ、といまさ  
らになって気がつく。  
   
「んっ…んっ、はうっ……んっ、ふともものあたりにね……お兄ちゃんのが当たってきた  
から……こうして……」  
 
 一度先端近くまで抜いた直葉は、そこでいったん制止する。そのままはあ、はあと吐息  
をはき つけたあと、一気に腰を沈みこませ、自分を貫いた。  
 性器は先端から根本まで一気に包まれる。直葉の柔肉の内側がぞふぞふ、性器の表面を  
くすぐっていく。思わず腰を浮かせてしまった。  
 
「うわっ……!」  
「っ――!! んっ、気持ちいい……んっ…… 」  
 
 再び、水音をさせながら腰を大きくグラインドさせた。  
 ……ようするに、直葉は朝立ちしてしまった性器で飛び起きて、そのまま俺を慰めてい  
てくれたのだ。  
 
「…まあ俺の意志とは無関係で、アクティブになる男の生理現象だからな……起こしてご  
めん……」  
「ううん。新鮮だったから、いいよ。お兄ちゃんのぐうって、おっきくなって目が覚め  
て」  
 
 考えようによってはものすごくなまめかしいことを口にした直葉は、顔をあかくしなが  
らも、体の動きをとめない。  
 俺から積極的にもとめることが多いので、行為の先手をとられるはすこし新鮮だ。  
 そもそも愛しい直葉にそんなことをされているという状況が否応もなく、俺を興奮させ  
る。  
 
「んっ……んっ……んぅ……」  
 
 ちっちゃな唇がわずかに開き、切なげな吐息がこぼれるように漏れる。  
 
「す、スグ? どうした?」  
「んっ、意識したら……いつもより気持ちいい……その…このまま動いていいよね…  
…?」  
「お、お願いします」  
「じゃ、いっしょに……気持ちよく……なろうね……んっ!!」  
 
 直葉が俺の首筋に腕を回して密着しながらとろとろと腰を上下させる。  
 汗ばんでいるせいで予想外にぬめる双丘の感触が俺の胸板の上を移動する。  
 
「はぁっ、はぁぅ…、っ、ぅぅ、ぁ……」  
 
 耳元に直葉の吐息が吹き込まれてくる。視界の端に切りそろえられた黒髪がおどり、真  
っ白な鎖骨が汗で光る。筋トレの鬼である妹――というか従兄妹、もう少し詳しく言うと  
恋人は、鍛え上げられた背筋と腹筋を駆使して、柔筒を根元から締めつけてくる。  
 下手をしたら持ち上げられそうな勢いだ。  
 
「あ……くっ……スグ……」  
 
 俺は直葉の背中に手をまわした。指先で肩甲骨のあたりをくすぐり、しっとりと濡れた  
――熱くとろける肌を指でなでまわす。わき腹のあたりをくすぐってやると直葉はんんっ、  
と可愛らしい悲鳴を上げた。肌の下に日ごろの努力を感じさせる、硬すぎず柔らかすぎな  
い、しなやかな筋肉の感触がある。  
 が――快感におぼれつつある俺は、ここでとんでもない失言をした。  
 
「んっ……くっ……スグ……またちょっと……重くなったんじゃないか……?」  
「な……」  
 
 絶句した直葉が上半身を持ち上げて、視線を合わせる。  
 
 なんたることか、重力に従った胸の先端はひっついたままだった。そこまでおっきく育  
っていたのか。  
 
「ち、ちがうもん! 筋トレの量増やしただけだもん! 太って……ないもん! ぐすっ  
……お兄ちゃんのばか」  
 
 直葉の目尻に大きな透明の水滴が浮かぶのを見て、俺はやっと自分の犯した罪の大きさ  
に気がついた。  
 いつだったか泣いている直葉にパピコをぶん投げたことを思い出しつつ、あわてて謝る。  
 
「わ、悪かった……泣くなよ、もう……それになんていうか……その……そのせいで気持  
ちいいよ……」  
「え……?」  
「……体重移動のせいだとおもうけど……一気に腰をおろしてくるとき、全部こすられる  
ような気がしてさ……」  
 
 本当だった。  
 直葉が体を移動させるときの慣性が心地よい。一気に包まれ、一気に抜かれる。その静  
動が性器をあぶるように刺激している。  
 直葉は不満げに唇をとがらせたあと、俺の肩に両手をあてた。そのままくりくりと手の  
ひらで鎖骨のあたりをくすぐってくる。  
 
「ほめられてる気がしないけど……もう……」  
 
 すがる場所を得たことで直葉は、下腹部を擦りつけるように動いてきた。  
 直葉は快感に集中するように目を閉じる。  
 
「んっ、んっ、んっ、んっ――! や……いつもよりびくびくしてる……!」  
「そりゃ……スグが、かわいいからだろ……!」  
「おせじに聴こえる……」  
 
 この手のコミュニケーションスキルレベルを上げそこなっている俺からすれば、必殺の  
一言だったのだが、すでに腰のグラインドに夢中な妹さんは聞いていない。  
 俺を包む柔筒から間断なく熱くとろけた愛液が分泌されて、俺と直葉の熱の交換を手助  
けする。襞にも潤みが満ちていて、肉茎を根元から先っぽまでを包んで引っ掻いていく。  
 
「んんんっ、あうっ! んっ! んっ! んっ! すごい……お腹の中でごりごりする…  
…っ!」  
 
 無意識にイヤラシイことを呟く直葉の声にくらくらする。。  
 さわり心地のいい髪と耳をくすぐってやると、直葉はぱちっ、と黒目がちの瞳を見ひら  
き笑みを浮かべる。陽のような微笑みをうかべながら、腰を躍らせる直葉は背筋がふるえ  
あがるほど色っぽい。瞳が涙を湛えて潤み、強くひきしめられていた唇が徐々にひらかれ  
ていく。  
 
「スグ……すごい、顔、してるぞ……!」  
 
 じゅるっ、と結合部から水音がするたびに眉をさげる直葉の顔に大昔、まだ直葉を  
「妹」としかみていなかったころの、幼いころの表情が重なった。浮かんだ直葉の顔は、いま  
のとろけるようなつやめいた表情とは、あたりまえだが全く違う。  
 
 見ようによって、男の子にしかみえなかった直葉を、こんなふうに泣かせているのは自  
分なのだ、という事実に頭がぼんやりとかすんでくる。。  
 しかしその事実は背徳感として燃え上がり、ただでさえもちあがっている性器を更に膨  
らませた。  
 
「ひゃうっ――!」  
 
 どんなふうに膨らんだのかは、直葉が一番よくわかっているのだろう。深くつながった  
直葉の動きがより容赦のないものになっていった。  
 そもそも精神的にも、肉体的にも追いつめられ、俺はすぐに限界まで昂る。  
 
「スグ……っ! もう――!」  
「いいよ! 来て! んんっ、んんんんっ――――!!!」  
 
 小さく絶頂した直葉の膣がぴくぴくと脈打ちながら収縮を繰り返す。  
 すでに限界が近かった俺は、根元から先端までをなめあげられるようなその感触にさそ  
われ、性器から飛沫をまき散らす。  
 
「ああ……ぁ……」  
 
 密着していた直葉が法悦の吐息を漏らし、背筋を震わせながら再び小さく絶頂して、糸  
の切れた人形のように俺のほうへ倒れ込んできた。  
 乳房が俺の胸の上にのっかり、ふんわりと形を崩していく。暖かい。  
 鎖骨のあたりに頬をよせる直葉と俺はしばらく、荒く息を吐きつけて……。  
 
「お兄ちゃん……キス……」  
 
 陶然とした呟きとともに、キスをねだる直葉が顔をあげる。流れた髪が唇の脚にひっか  
かってしまっている  
 俺はその髪を払ってやってから、ねだられるままに唇を重ねた。  
 そのまま、直葉を抱いたままくるっと体の上下を入れ替えた。  
   
「はう……」  
   
 直葉が小さく息を吐いた。体の各所を汗でひからせる直葉の体は、ひいき目なしで美し  
かった。  
 さっき俺の胸の上でおどっていた胸部は、仰向けになっても形が崩れない。  
 
「スグ……ごめん、もう一回……」  
 
 一度だけでは済みそうになかった。  
 直葉が「うん……」うなずくのをみて、今度は俺から直葉を味わうべく、直葉へ手を伸  
ばした。  
 
――――  
 
「ん? どうしたんだいキリトくん。妙にすっきりな顔してるじゃないか」  
「ああ……菊岡さんか。いや、なんだか……すごく気持ちいい夢を見ていたような気がし  
てさ。STLってすごいな」  
「……守秘義務があるから、記憶のことについてはなにもいえないけど、キリトくんが満  
足ならそれでいいさ!(言えない! まさかもう一方のSTLに妹さんがログインしてい  
たなんていえない……! けどデータは完璧だ! ここまで性行時のデータが――正常位  
と騎乗位、後背位と立位のデータがとれるなんて予想外だ!) えーと。じゃあ、アスナ  
くんにもよろしくね……楽しみにしてるそうだから」  
「え……? アスナがどうかしたんですか?」  
「いや、なんでもないよ。(まさかアスナ君が小学生のときからキリトくんといっしょに  
……なんて要求してくるとは思わなかったけど、貴重なデータになりそうだしなぁ……)  
とりあえず、今日の分の協力費はいつもの口座に振り込んでおくから、本日はお疲れさ  
ま」  
「あ、ああ……とりあえず、今日は帰る……。また何か考えているんじゃないだろう  
な?」  
 
 
 
 
「ま・さ・か!」  
 
 
 
 
「ならいいけどさ……」  
 
 
 
 
――――  
 
 とん、とん、とん。  
 リビングから続くキッチンで、耳心地のいい音をさせながら、食事当番の直葉が包丁を  
使っている。  
 俺は直葉の後ろ姿をぼんやりと見つめていた。首と腰の後ろにエプロンの紐がまわって  
いて、包丁がとん、と音をさせるたびに、結び目が同じリズムで小さく揺れる、  
 ホットパンツからのびる脚が、妙に艶めいて見えるのは、どうしてなのか。  
 ふくらはぎも、ふとももも実に肉感的で、しっかりと鍛え上げられているのがわかる。  
 普段は用意ができたら、俺を部屋まで呼びに来てくれるので、こうして料理をする直葉  
をうしろから眺めることはない。しかし、どういうわけか、直葉の姿がみたくなり早めに  
リビングへと降りてきていた。  
 母さんは夜が遅いことが多いし、親父はそもそも日本にいない。俺がSAOにとらえら  
れている間、きっとあいつは一人で朝昼晩の料理をつくり一人で食べていたはずだ。  
 ややシチュエーションが異なるものの、一人で食べる食事の味気なさは、SAOの迷宮  
区や野宿で経験ずみだ。そんな生活を二年間も送らせてしまったことに小さな罪悪感があ  
る。  
 しかし、SAOでの二年間の上に、いまの俺と直葉の関係は成り立っている。そのあた  
りはやや複雑だ。  
 ぼんやりと、みていると包丁の音がやみ、直葉がこっちへ振り向いた。  
 
「もう……どうしたの…? さっきからぼうっとして……座ってるくらいなら、手伝って  
くれればいいのに……」  
 
 どうしたの、と聞かれても俺自信、自分の行動に首を傾げている。  
 
 背中を向けてはいても、俺の視線は感じていたらしい。頬がほんのり赤い。  
 
「や、その、さ……」  
   
 しかたなしやで、頭に浮かんだ疑問を口にした。  
 
「スグっていま体重どれくらい?」  
「――デリカシーない人には、お夕飯あげない! せっかくポトフに挑戦してるのに!」  
 
 ぷくっ、と頬が膨らんだ。ぱたぱたとエプロンを外して、向かいの椅子にひっかける。  
怒らせるつもりはなかった……が、よく考えれば怒られてもしかたないことを口にしてい  
る。俺は平謝りした。  
 
「や、ごめん。うそうそ、冗談……あれ? でもスグを抱っこした記憶があるような…  
…? しかもやたらとつい最近…………?」  
 
 最近……といっても一体それがいつのことなのかわからない。そりゃ、もっと小さいこ  
ろには一緒にお風呂に入ったりしていたし、それなりに甘えん坊だった直葉の面倒をみた  
りしていたので、抱っこくらいはしている。でも、腕の中にのこっている重みは、目の前  
の直葉の重みのような気がしてならない。  
 俺が正体不明の記憶に首を傾げていると、直葉が小さく口を動かした。  
 
「……お兄ちゃん。もしかして覚えてるの」  
「ん? 今何かいったか?」  
「な、なんでもない!! でも――今日も、いい夢みれるといいね、お兄ちゃん!」  
「え、あ、あああ……」  
 
 不思議な笑みをうかべ、直葉はキッチンへと戻って行った。  
 どこかかるい足取りだ。  
 
「……でも、なんだったんだろうな、さっきのあれは……?」  
 
 直葉を抱きしめた記憶の正体は、結局わからずじまいだった。  
 しかし、まあそんなこともある。これ以上気にしてもしかたのないことだ。  
 俺は気分を切り替えるべく、大きく両てのひらを組んで伸びをした。それがおわったら  
食器ぐらいだしてやろう。  
 
 
 首筋や肩のあたりに血流が流れていくのを感じて、気分をリセット。  
 そのまま、両手を振りおろす。  
 
 
 
 ぽっ――  
 
 
 
 
 小さなポップ音が部屋に響いた。  
 
 
 
 
 
「え……?」  
 
 
 現実世界にあってはいけない音を聞きつけ、俺はいやな汗を背筋にあたりにかきながら、  
恐る恐る、右手の、ポップ音が聞こえた場所へと視線をむけた。  
 
 
 
 
 
そこにはSAOに存在したものとほとんど同じ、青枠で区切られたメイン・メニュー・ウ  
ィンドウが――  
 

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