「んっ、んっ……、お兄ちゃん……」
とある夜、桐ヶ谷邸にある直葉の部屋にて。
ネットでMMORPGの情報をみていて、偶然みつけた通販サイトには。
【あの悪夢のゲーム<ソードアート・オンライン>を終わらせた英雄、黒の剣士再現添い寝シーツあります】という文言がおどっていた。
直葉にとって、SAOは大切な兄・和人を誘拐し、遠く引き離してしまった因縁がある。
SAOの文字をみるのも嫌なはずなのに、どうしてか吸い寄せられるようにページを開くと…
慕ってやまない兄にそっくりな、けれど凛々しい「黒の剣士」の、しどけない再現グラフィックシーツが売られていた。
高校生にとって、1万は安くなかった。
再現グラフィックにも、抵抗はあった。
けれども、慕ってやまない兄である。
シーツは手許にずっと置いておける。
悩みに悩んだ結果、買うことにした。
これが抱き枕だったら、流石に枕まで買わなくてはいけないが、そこはシーツの良い所。
どきどきしながら届くのを待ち、ヒヤヒヤしながら兄に見られないように部屋に運び込み、そして今。
パッケージの真正面に、兄に似た黒の剣士が配置されていた。
「お兄ちゃん...今より、ちょっとおさない顔だったのかなぁ」
SAOからアルヴヘイム・オンラインへコンバートした、シリカやリズのアバターは、現実の彼女達とほぼ同じである。
という事は、SAOの"黒の剣士"も、兄とほぼ同じであると思われるのだが。
"<黒づくめ>先生"と言われるスプリガンのアバターは、ランダム作成からのものだし、SAOからの解放からはすでに3年が立っているし、現実での兄は男性らしさが増している気がする。
おさなさと線の細さから女性的にもみえる"黒の剣士"は、もしかしたらもう居なくなってしまうのかもしれない。
買ってよかった、と直葉は思った。
ちょっぴりわくわくしながら、袋を取りさる。折り畳まれた布地をベッドの上でそーっと広げてみて、あわてて畳み直した。
「し、刺激が強すぎるよ...!」
視界にはだけた胸元が飛び込んできた。
伸ばされた腕と共に。
つまり、横たわると、胸元に飛び込むような体勢になるのだ。
ばくばくとはね回る心臓を必死に落ち着かせようとしながら、シーツをもう一度広げてみた。
年頃といえば年頃の女の子と男の子が、ベッドでいっしょに寝ると言われれば、性的な事だって考えてしまう。でも、これを広げていると、
『スグ、なにしてんだ? おいで』
なんて言われている気がした。
「お兄ちゃん…」
そばにいたい。
本当は兄には明日奈さんがいると知っているのだ。
でも、それでもこの"黒の剣士"は直葉が独り占めにしてもいいのだ。
「お兄ちゃん...!」
おもいあまってシーツに倒れこむ。
ーー以下皆さんの脳内でえろえろオナヌーする直葉さんをお楽しみください