皆様こんにちは、『血盟騎士団』副団長、《閃光》ことアスナです。ちなみに本名は結城明日菜です。本名プレイには突っ込まないでください……ゲームは初心者なの。  
えっと、それで、今私の前でニコニコしているのは、夫である《漆黒の騎士》キリト君です。本名は知りません。  
……聞いてしまったら今の私たちが、所詮作り物の箱庭の中での関係だと感じてしまうかもしれない、それが恐ろしくて。  
たぶんそれは、彼も同じ。  
本名も年齢も知らない。ただひとつ確かなことは、本気で愛し合っているということだけ。  
そんな私たちは今現在、ベッドの上で向かい合っています。ニコニコと笑っているキリト君に対して、指輪が光る彼の左手に右手を握られベッドに縫い止められている私はちょっと困った顔。  
 
「アスナ、駄目?」  
 
「ぁう……」  
 
わざとらしく懇願をちらつかせるその問い掛けに、私は目線をさ迷わせてしまう。  
キリト君は、間違いなく10代後半の男の子だ。ゲームを始めた2年前も、2年後の今も、青春真っ盛りというか有り余るリビドーをもて余している年頃だと思う。  
事実、男の子より成熟が早いとされる女の子の私がそうなのだから。  
凄く俗物的な言い回しを使ってしまうなら、「ヤりたいさかり」とやらなのだろう。  
 
「あの、せめて夕飯食べてから……ね?」  
 
「今がいいな」  
 
「だって、まだ外明るいよ?」  
 
「外の明るさは関係ないと思わないか?」  
 
凄くいい笑顔での切り返しに反射的に頷いてしまいそうになるのは、私がキリト君にベタ惚れだからだろう。  
誰か助けてください、私には彼の懇願を無下に扱うなんて器用なことはできないんです。  
 
「アスナ……」  
 
「ひゃぅ…っ」  
 
耳元で囁かれて身体から力が抜けてしまう。立っていたら間違いなく腰が砕けて座り込んでいただろう私を意地悪な顔で見詰めてくるキリト君に、素直な身体はどんどん準備を整えていってしまう。  
 
「っご飯、遅くなっても知らないんだか、っんぅ!」  
 
せめてもの抵抗の言葉は最後まで言わせて貰えない。  
 
口内を蹂躙する熱い舌の感覚は、比べる対象がないから本物に近いのかどうかはわからない。わからないけれど、快感の入り口には充分すぎるほど生々しい。  
 
「ふぁ、あ……ぅ」  
 
舌を強引に引っ張り出されて背筋が震える。  
外しっぱなしの倫理コードが「いつでもOK」状態と認識されることはわかっているのに、キリト君にこうして求められるのが嬉しくて、幸せで、ロックをかけるのを躊躇してしまう。  
ベッドに押し倒されて、服の上から胸をまさぐられて声が出る。  
彼がボタンひとつで解除できる装備をわざわざ脱がす行為を楽しんでいるのはその表情でわかるけれど、それにしても、最近なんだか焦らされている気がしてならない。  
初めてだと素直に告白した彼。  
当然彼と同じく初めてだった私もなにからしていいのかわからなくて、二人揃って固まっていたのに、始めた途端にキリト君は私を目一杯愛してくれることに夢中になった。  
本能的にわかるものなのかもしれないし、一応の予備知識があったのかもしれない。  
ただただイかされ身悶えるだけだった私にはなにもわからないけれど、少なくともキリト君が、私を抱くことに夢中になっていたことは確かだった。  
これまた比較対象はないけれど、最中の彼は少し意地悪だ。  
その意地悪に感じてしまっている自覚はあるから文句は事後に少ししか言わないけれど、彼のその意地悪で、とてつもなく恥ずかしいことを言わされたりやったりさせられている気がする。  
なにより、はじめてのときからしきりに言われている「見せて」だとか「電気つけていい?」だとか、私が恥ずかしがって嫌がるのを楽しんでいる節の言動は勘弁してほしい。  
…………あれ、今、明るい…………  
 
「やっやだぁっ!?見ちゃだめえぇっ!!」  
 
「残念、もう堪能中」  
 
「やだっキリトく、っふぁっやあぁ……っん、あぅっ」  
 
窓から燦々と降り注ぐ光に色まではっきり識別できる私の身体。引き剥がそうとする腕に力が入らない私をよそに、私の恥ずかしい場所に口をつけたキリト君は、わざとらしく音をたてて愛液を啜る。  
電気を流されたような激しい快感に仰け反らせた頭がシーツと髪を乱す。  
ようやくこんな時間に求めてきた理由を覚り、羞恥やら気持ちよさやら色々なものが混ざって、キリト君の荒い息や甘く蕩けた自分の嬌声にまで身体が反応して中の彼を締め付ける。  
 
「ふあっぁ、んぁ……っ!!」  
 
体内に広がっていく熱いものに震える身体を抱き締められて、キリト君の背中に回している腕に力を込める。  
 
互いの高い心拍数に酔うかのようにぼんやりする思考の中で、おもむろに彼が再開した腰の動きにあられもない声をあげてしまう。  
性のことに淡白なイメージがあり、本人も淡白だという認識があったらしいキリト君は、それに反して私を積極的に求めてくるようになった。  
その事自体は吝かではないし、むしろ歓迎しているのだけれど、こうも貪欲に激しく求められていると一抹の不安はよぎる。  
 
(現実だと、他の人にいったり……しない、よね……?)  
 
これだけの激しい運動に、現実世界ではただの女の身体である自分は耐えられるものなのだろうか。そもそも住んでいる場所が近いとも限らない、毎日会える保障などありはしない。  
 
「ねっ、ぁ、キリト君っ……」  
 
「っん?なに、アスナ?」  
 
動きを止めてくれたキリト君は私の話を聞こうとしてくれる。悪戯に胸を弄ぶ手に身体を震わせながら、それでも懸命に紡いだ言葉に、彼は優しく微笑んでくれた。  
大好きだよ、キリト君。  
毎日でも逢いたい。  
現実でも、こうやって抱き合いたい。  
だから、私だけを見ていてね。  
 
「当たり前だろ。……アスナだから、俺は、こんなに触れていたいんだから」  
 
抱きたいのはアスナだからだよ、なんて、そんな声で言わないで。そんな顔で言わないで。  
これ以上好きになっちゃったら、君に逢えない日の私は、脱け殻になっちゃうじゃない。  
 
 
 
 
 
 
「……でも、7回は無理だと思います。」  
 
「…………ごめん。」  
 
疲労パラメーターがあったら間違いなくレッドゾーンであろう身体をキリト君の胸に預けた私が溢した言葉に、わりと真面目な謝罪が返ってきた。  
よく考えれば現実の彼もそんなに体力があるわけがないとあとから気づいたけれど、反省しているキリト君が可愛かったから、言ってあげないことにした。  
 
 
 

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