キリトの助けにより、ピナは生き返った。だが、キリトは再び前線に戻るためにいってしまった。  
連れていってほしいのはやまやまだったがそんなことをすれば自分はなすすべなく魔物に殺されてしまっただろう。  
それが普通のゲームだったらそのうちどうにかなるかもとは思ったが、一度の死が現実の死であることが問題だった。  
だから、シリカはついていくのをあきらめた。少なくともこの段階では。  
 
「目標:レベル85」  
彼女は羊皮紙とペンとインクを店で購入し、そう書いた。  
別れた時のキリトのレベルは78。シリカのレベルは45。  
彼が12レベル上げる間に自分が40レベル上がれば、少なくとも足手まといにはならないだろうと考えた。  
そして、75層、つまり次のクォーターポイントではボス戦に参加して、そこからは…と考えた。  
当然、それにはリスクもあった。もし、追いつくことがないのならまだいい。無茶をして死んでしまうのが一番怖かった。  
だから、偶然にも同じくらいの年齢で同じくらいのレベルの少女とパーティを組めたのは幸運だった。  
ソロでは麻痺などが特に致命傷になってしまう。いくら竜のピナが回復するといっても、また死なせたら今度こそどうしようもない。  
とりあえず、最低限パートナーが必要だと思ったのは50層くらいと考えた。それは相手も同じだった。  
彼女の場合は、針子として材料を探すことが目的だったらしい。だから、自分が主な戦闘を行い、針子は補助に徹した。  
具体的には、致命的状態異常を受けたときの緊急回復などが主な作業だった。その代わり、素材の多くは針子に渡した。  
 
予定通り、50層に到達する2つ前の48層、シリカたちはそこで鍛冶屋の少女、リズベットに出会った。  
彼女はある男性の依頼で素材取りをするにあたり、その男性と24時間ほど一緒にいたという。  
そして、その男性に剣を渡し、告白しようとしたところで、恋人らしき強い少女を見て泣く泣く身を引いたという。  
彼女が身を引いたのは「強い人じゃないと彼の隣には立てないから」ということ。そして、男性の名前を聞いてシリカはびっくりした。  
そう、その男性というのはキリト本人だったのだ。針子はそれを聞いて、もはや愕然としていた。  
何があったのか聞いたが「エギル」という男にほれたのだが、彼は最前線にいてやはり追いつかなければと思ったという。  
だが、シリカはエギルという男性が商人であることを偶然にも知っていた。だから職人でも追いすがれるはずだ、と確信した。  
シリカはそう説得したものの針子の少女は、もう先へ進む気力を失ったらしく、パーティから離脱した。  
 
シリカはひたすらソロで懸命に前に進んだ。そして55層へ到達した。  
彼女はリズベットから事前に聞いていたインゴットのある場所を目指した。  
彼女はそこで長いロープを持って降りた。そしてインゴットを回収。48層のリズの元へもっていった。  
「リズベットさん、これを短剣に加工してくれませんか?」  
「そうねー、素材持込なら8万コルでどう?」  
彼女は、もっと高い額を吹っかけられると思ったが、この額なら安いと思い、即座に支払った。  
「出来は保証しないわよ」「わかりました」  
実際に出来上がったものは、固有名をもち、さらに名鑑にないようなものだった。  
「どう?」「うわー!これ、使いやすいです!ありがとうございます!」  
 
ユニーク武装を手に入れたシリカは夜通しレベル上げをし、どんどん前へ進んだ。そして60層のある宝箱の前で立ち止まった。  
彼女の推測では、以下のように考えた。  
1. この宝箱には罠が仕掛けられている  
2. その罠はおそらくアラームトラップである  
3. ここでは結晶を使うことはできない  
で、あるからにして、解除スキルが心もとないシリカはあけるのは難しいかもと思った。そして解除を試みて、案の定失敗。  
トラップは案の定アラームで、そして結晶が使えないというのも予想通りだった。  
ところが、事前に覚悟していただけあって、シリカはなんら動じることなく、すべての敵を葬り去った。  
HPバーは、赤くはなったが、どうにか生き残った。その中にあったのは、彼女の体に合ったとても優秀な服だった。  
ピナも無事に生存。このまま前にどんどん突き進んだ。  
 
シリカもレベルが80に到達し、この当時の最前線も74層になっていた。彼女の訓練場所は70層になっていた。  
安全マージン10はソロではかなり厳しいが、それでもやりぬく必要があった。  
レベルが1あがるごとに1つずつ階層を進めていき、彼女のレベルが85になったまさにその日に74層が攻略された。  
その新聞を見て、キリトが二刀流というスキルをもっていることを知った。  
 
75層主街区、コリニア。ここでキリトと再会を果たした。  
「シリカです。キリトさん、お久しぶりです」  
「シリカ、久しぶりだな。この人はアスナ。KoBの副団長をしてる」  
「アスナです。よろしくね。だいたい見当ついてるけど…」  
シリカの目の前にアスナとの1vs1デュエルの窓が出た。当然初撃決着モードを選択。そして、デュエルは始まった。  
彼女はアスナという人をすでに話に聞いていたが(リズから)、感じたことは「速い!」ということだった。  
とはいえ、彼女がよけるのは案外造作ない話だった。逆に、あっさりとクリーンヒットを叩き込み、勝利してしまった。  
 
「嘘…なんでこんなに強いの?前キリト君に聞いた話だと30以上差があるって話だったのに…」  
「私のレベルは、今85です。アスナさんのレベルはいくつなんですか?」  
「87よ。油断はまったくしてなかったけど、レベルがキリト君と10も違わないってどういうこと?」  
「ずっと、キリトさんと一緒についていきたいと思って、がんばってレベルを上げてたんです。  
キリトさん、私の強くなった姿、見てください」  
そういうと、シリカは今度はキリトに向かって1vs1デュエルを申し込んだ。キリトはやはり初撃決着モードを選択。  
そして即座に戦いは始まった。その戦いは、シリカとキリト、双方にとって文字通り興奮するものだった。  
どちらの攻撃も次々と飛び出し、そして次々とよけていく。それが実に7分にわたって続いた。  
だが、ついにキリトの剣がシリカをとらえた。だが、  
「まだです!」  
そして1本の剣をはじいた。だが、2本目を迎撃するために改めてそこに向けたが、短剣ははじかれ、クリーンヒット。  
勝負はキリトの勝ちに終わった。  
「ふう、これはいい準備運動になったよ、シリカ。ヒースクリフとのデュエルにいってくる」  
「わかりました…」  
まだ届きはしなかったが、それでも確実な手ごたえはつかめた。何よりKoB副団長たるアスナと同格程度はあることは示せたのだ。  
もしアスナに万一のことがあれば、自分に向くかもしれない。そう考えた。  
 
結局、そのときは来なかった。だが、シリカはアスナを助けることができた。  
あのシステム的な麻痺から真っ先に抜け出したのは、アスナではなく、シリカだったのだ。  
シリカは事前に麻痺すること前提で準備をしていた。解除が楽なような姿勢になっていたのだ。  
そして、システム的麻痺を打ち破り、アスナの麻痺をシリカが強制的に解除した。  
それが間に合ったのはまさにキリトに致命傷が飛ぶほんの6秒前だった。  
そして、キリトがまさに死のうとする寸前、彼女はある重要なことをした。  
偶然にも、クラインの持っていた「還魂の聖晶石」をもらっていて、それを使ってアスナを生き返らせた。  
そして、アスナは生き返る準備をした…のだが、キリトとヒースクリフが相打ちになるほうが早かった。  
声は届いたため、無駄にはならなかったのだが…。だから、アスナが復活したのがクリアした後になったのである。  
 
そうしてすべてが終わり、ALOの事件も終わりかなり経過した2026年5月のある日のことである。アスナが、入院したというのだ。  
原因は、ある暴漢に襲撃され、辛くも逃げ延びたものの、そのときのにできた傷だという。  
全治3週間。その間、キリトはアスナに昼は会えるものの、夜は会えないという。  
まあ、門限がやたら早いアスナに夜会いにいくのはもともと相当困難ではあったのだが。  
ちなみに、本名呼びしないのは、「人前ではないから」である。人前ではきちんと本名で呼ぶことを徹底していた。  
「で、だ。リズに相談しようとしたんだけど、留守だったんだ。だから、最後にすべてを助けてくれたシリカに頼もうとしたんだけど」  
どうやら、自分がアスナを助けたことを知っているようだ。  
「何を…ですか?」  
「とりあえず、今日1日、一緒に寝てくれないか?」  
「えぇぇぇぇっ?!」  
驚くのも無理はない。本当の恋人でもな異性と一緒に寝るっていうのがそもそもびっくりではあった。  
つまり、そういうことなわけで…。  
「いやなら無理しなくてもいいけ…」「お願いします!」  
こうして2人はあるホテルに向かった。  
 
そのホテルは、一応普通のビジネスホテルだった。まあ年齢を考えれば当然なわけだが。  
シリカはさっさと風呂に入った。一応それは別々にすることにはしていた。キリトも風呂に入り、一緒の布団に入った。  
どちらもこの段階で手を出すつもりはなかったわけ…ではあるのだが、アスナからキリトに連絡が入った。  
「リーファちゃんも今旅行に行ってていないでしょ?リズもちょっと連絡が取れない状況だし。  
もしかして今シリカちゃんと一緒にいる?だとしたらあんまり本気で手を出すのはだめだけど、今回は仕方ないわ。  
私の体、今かなり壊れてるもの。とりあえずどこまで行ったか報告ちょうだい」  
 
「…これって?」シリカが聞いた。  
「GOサインが出たわけじゃないとは思うんだけど、というより手を出すつもりはまったく…」キリトが答えようとすると、もう1通。  
「中途半端に手を出したらシリカちゃんもやりきれないでしょ?手を出すなら最後まで徹底的に、ね?」  
アスナのメールはとことん理解不能な混沌の渦に2人を叩き込んだ。  
「恋人って、何なんでしょうか?」「さあ…」「普通、独占したくありません?」「だよな」  
「とりあえず、メール出しておくか」  
キリトはアスナに「ごめん。行き着くところまでいってしまった。後でその分きっちり返すから」と投げた。  
アスナから「了解。戻ったらとことん愛してね!」という返答が帰ってきた。  
 
「だそうだ。で、覚悟はできてるのか?」「もちろんです!でも…」シリカは聞いた。  
「どう、アスナさんに返すんですか?基本、夜に会えないと思うんですが…」  
「ああ、休日の昼間にやってる。最初は痛がってたけど今じゃ快感がすごいらしいんだ」  
「へえ…」もはや絶句するしかないシリカであった。  
 
どうやら今日はこのホテルの宿泊客そのものがほとんどいないらしい。  
原因はもともと団体が来るはずだったところが、その団体が飛行機の延着でたどり着けなかったかららしい。  
ともあれ、まずはモバイル回線を利用してALOに2人で行った。  
 
現実の肉体に実際に行う前に、ALOにいった2人は、ある小さな建物を1日分借りた。  
事前に確認すべきことがあり、しかもそれは人前で言えることではないなどの制約があったためである。  
SAOに隠されていた「倫理コード解除設定」は新生ALOでも健在。まずは服を脱ぎ、いろいろと必要な説明をした。  
自動カットオフ機能が働いたらまずかったが、それはおきなかった。元通り服を着て、部屋を出てもとの場所に戻ったらログアウト。  
要するに「現実でHするときにどのように振舞うことになるのか」を確認したわけであったのだが、それでもシリカは興奮した。  
 
外に出ると、すぐさまキリトはシリカの小さな胸をなめ始めた。高い声がシリカから出た。そして、それだけで十分ぬれていた。  
なぜなら、ALOの中での興奮がそのまま肉体へ影響を及ぼしていたのだから。そのため、キリトは面食らっていた。  
早いうちに自分のほうが準備しなくてはならないと。まあ20秒も裸を見たらすぐ準備できたわけだが。  
そして挿入。彼女は痛みをこらえ、彼の生殖器を受け入れた。そして…、  
 
「もう…だめです!あぁぁっ!」  
彼女は初回の性行為で絶頂に到達した。アスナでさえ完全な絶頂に到達したのは4回目だというのに、である。  
まあキリトの経験回数が増えた、というのもありはするのだが。彼は欲望を中に吐き出した。  
ところが、ここで彼は過ちを犯したことに気づいた。ゴムを付け忘れていたのだ!  
うっかり子供ができてしまったらどうするのだろう…。その懸念に対し、シリカは、  
「大丈夫です。もし何かあっても、責任は取りますから…」  
「いや、責任を取るのは俺のほう…」  
 
そして、ばっちり後日、キリトはアスナにも同じように中に出したわけである。  
そして両方が「もしかして…」と思ったのは言わずもがなである。幸いなことに生理が交わった後に来てほっとしたわけだが。  
Fin  
 

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