ソードワールドRPG

「ふわ〜、疲れた〜」  
 ファリスの聖印を鎧に掲げた少女が大きく伸びをする。ショートボブの茶髪が弾んだ。  
 『冒険者の国』オーファンの首都ファンの街中を、五人の冒険者達が進んでいた。和気藹々と馬車を引  
き連れて移動している。烏を肩に留まらせたソーサラーらしき青年がにやりと笑って突っ込んだ。  
「お前みたいな筋肉ダルマでも疲れるのか、イリーナ」  
「あ、非道いです、ヒース兄さん!わたしのこといつも盾にしてるくせに」  
「ほら、ヒースは生命力皆無だから、盾がないとすぐに死ぬんだよ」  
 癖のきつい赤毛を持つ少年がシニカルに笑う。後ろでリュートを手にしたドワーフがふむふむと頷い  
た。  
「成る程、生命力皆無のソーサラーは、人類の範疇ギリギリの鎧を装備しているファイターを盾にするわ  
けですな。至極道理」  
「あ〜ん、バスさんまで〜!」  
 若年が多く、見た目は新米にも見えたが、事実は全く逆だった。他のパーティーより遙かに高い経験を  
持ち、悪魔殺しを成し遂げた際は悪魔の首を掲げて往来を闊歩した、曰く付きの冒険者達である。その際  
とは若干面子が変わっているものの、彼等は他の冒険者達より頭ひとつ抜きん出たパーティーとして周囲  
に認知されていた。  
 かくしてその実体は、冒険では未だ間抜けなポカをやらかしパーティー内では悪口雑言が飛び交う、一  
味も二味も癖のある世にもデンジャラスな集団である。  
 マウナはひとり、目の前を歩く仲間達の会話に加わらず、御者台で手綱を握っていた。  
(こいつらも相変わらずよねえ)  
 マウナはハーフエルフだ。癖のない長い金髪の脇から覗く緩やかに尖った耳や細々とした体型がそれを  
表している。  
 遠目に、『青い小鳩亭』の看板が見えた。彼等が根城としている冒険者の宿であり、マウナの『家』で  
もある。つい最近、彼女は正式に『青い小鳩亭』の養女となったばかりだった。  
 サファイアの瞳がふと看板の真下に向いた。  
「……」  
 よく知る人物が玄関のドアの横の壁に背を預けていた。どうやら自分達を待っていたらしく、こちらを  
見つけると壁から背を離し、数歩歩いた。イリーナがあ、と駆け出した。  
「クラウスさんじゃないですか!」  
「おお、よく見れば」  
 ヒースが額に手をかざした。エキューが尋ねる。  
「誰?」  
「『青い小鳩亭』の甥っ子だ。冒険者をやってたはずだが、帰ってきたのか?」  
 訝しげに眉をひそめる。その瞳がちらりとマウナを見た。額にかざされていた手がおもむろに口元まで  
移動する。「ぷっ」と笑うヒースにマウナは何だかとてつもなくバカにされた気がして怒声を上げた。  
「何なのよ、その気持ち悪い笑いは!」  
「いやいやいやいや何でもございませんよ」  
 そそくさと逃げるヒースをマウナは憤慨して見送った。物の一つや二つ投げつけてやりたいところだっ  
たが、生憎彼女は貧乏性であるため、物を投げるなどという勿体ないことはできないのである。今度から  
石を拾っておこうか、などと半ば本気で考えていると、話題の主が声を掛けてきた。  
「お久しぶりです、皆さん」  
 軽く下げられた頭が上がったとき、目が合った。ぽかんとして瞬きすると、その視線はすぐに逸れてい  
った。クラウスは馬車を先導するように、他の面子と一緒に歩き始めた。  
「何なんだろ」  
 まあいいか。彼女は軽く考え、馬に鞭を入れた。  

□□□□□  

 『青い小鳩亭』食堂。  
 ヒースはぐっと拳を握りしめた。その顔に悪代官のような笑みを浮かべる。  
「甥っ子め、ついにマウナに会いに来たな!」  
「立てるべき恋愛フラグも終盤ですね、ヒース兄さん!」  
「当たり前だ!とっととくっついて跡目を継いで貰わなければいつまで経っても宿代に割引特典がつか  
ん!」  
 マウナを除く四名は夕食の席で緊急会議を開いた。ちなみにマウナはこの店で給仕を務めており、現在  
はカウンターで忙しく立ち回っている。  
 四人はテーブル上で額をつきあわせてこそこそと会話を交わしていた。とはいえ新規参入の二人にはわ  
けの分からない話で、額をつきあわせているのはすぐに二人だけになった。バスが手持ちぶさた気味にリ  
ュートを磨き始めた。  
「事情はよくわかりませんが、盛り上がっておりますなあ」  
「ちょっと待ってよ!なんか話の内容から察するとあの人とマウナさんがいい仲みたいな話になってるん  
だけど!?」  
 赤毛の少年、エキューがばんとテーブルを叩いて抗議の声を上げた。彼は元々マウナに──正確に言え  
ばエルフに憧れてこのパーティーに入ってきたのである。  
 他の面子には極めてシニカルな彼がマウナにだけは極端に態度を軟化させ、依頼にダークエルフが絡ん  
できた途端、敵陣に先陣を切って突貫する。周囲は彼を称してエルフマニアと呼んだ。  
「何を言う!お前が知らなかっただけであの二人は既に相思相愛だ!」  
「そうだよエキュー!人の恋路を邪魔するとジェイミーに蹴飛ばされるよ?」 ジェイミーとはヒースが可愛がっている荷馬の名前である。  
「大体お前はエルフならマウナでなくてもいいんだろうが!」  
「うっ!?」  
 図星を指された表情でエキューが硬直する。その脇に、エールのなみなみと注がれたジョッキがだん!  
と盛大に音を立てて置かれた。  
「聞こえてるわよ」  
 ウエイトレス姿のマウナだった。吊り上がった眉がぴくぴくと震えている。  
「わわっ、マウナ!これはね、あの、その」  
 イリーナが意味不明のジェスチャーを展開させる。一方ヒースは「ちっ、ばれちゃしかたねえ」という  
表情で既に開き直った態度を見せていた。マウナはそちらに向かって額に青筋を立てた顔を向けた。  
「いくらそういう話に無縁だからって人をダシにするのはやめてよね!」  
「えーっ」  
「『えーっ』じゃないの、イリーナ!エキューも本気にしないでよね、そんなんじゃないんだから」  
「そう、そうですよね!」  
 きらきらと瞳を輝かせて両手を組み合わせるエキュー。マウナは疲れた顔で溜息をつくとジョッキを配  
り始めた。  

□□□□□  

 月が中天にある真夜中、マウナは一人で外に出た。  
 深夜の空気を感じたくなったのだ。部屋着のままで道路に出て、近くにある広場を散策する。当然だが  
誰もいない。しかしマウナはそれが好きだった。公園を貸し切りにしているような気分に浸れるのである。  
 いい天気だった。月も星もよく見える。彼女はのんびりと夜空を見上げた。  

「女性の夜歩きは感心しませんよ」  
 足音と共に聞こえた声にマウナは振り返った。  
「あ、クラウスさん。どうしたんですか?」  
「どうしたんですか、じゃありませんよ。こんな真夜中に一人で外に出るなんて」  
 クラウスは咎めるような口調で言った。  
「ああ……」  
 最早荒事に慣れきってしまった冒険者としては思いもしなかったが、確かに真夜中に女の一人歩きとい  
うのは危険である。マウナは苦笑いを浮かべて頬を掻いた。  
「大丈夫ですよ、あたし。強いとは言わないですけど、それなりですもん」  
「そんな事言って……万一ってことだってあるでしょう」  
 驚いたことに、クラウスの口調は本気でマウナを心配している様子だった。マウナは居心地悪く頬から  
手を下ろした。これじゃああたしが悪いみたいじゃないか。  
 近付いてきたクラウスも彼女と同様部屋着だった。彼もかなりレベルの高い冒険者だが、こうしてみる  
と普通の若者のようだ。背が高めで引き締まった体つきをしている。黒い癖のある短髪が闇に沈んで見えた。  
「クラウスさん、久しぶりにおばさん達に会いに来たんですか?駄目ですよ、心配掛けちゃ」  
「いえ、違うんです」  
 否定の返事が返ってきた。マウナは驚いた顔で瞬きした。てっきり、彼はおじさんとおばさんに会いに  
来たとばかり思っていたのだが。  
「じゃあ、何で帰ってきたんですか?」  
「おばからあなた方が今日戻ると聞いていたので、待っていたんです」  
「……」  
 真正面から視線をぶつけられ、マウナは思わず身構えた──実は心当たりがあった。彼女は戦いて言った。  
「……もしかして立て替えて貰ったノリスの蘇生費用を回収しに来たんですかっ!?」  
「違います!」  
 叫んで、呆れたようにクラウスは溜息をついた。  
「……何処まで鈍いんですか、貴女は……」  
 負けず嫌いなマウナはその台詞を聞いてむっとした。彼女はクラウスに歩み寄った。クラウスは背が高  
いので、傍まで行くと見上げるような形になる。  
「じゃあ、はっきり言ってくださいっ。何の用で帰って来たんですか?」  
 クラウスは苦笑した。そしてマウナの要望通りはっきりと答えた。  
「貴女に会いに来たんです」  

 マウナは一瞬沈黙した。  
「……は?」  
 我ながら間抜けな返事をしたと思ったが、相手はこちらが聞き返していると思ったのか、もう一度言った。  
「貴女に会いに来た、と言ったんです。マウナさん」  
「あ──あの」  
 そこまで言ってから彼女は固まった。肩に手が置かれている。クラウスはゆっくり身を屈めると、マウ  
ナの唇にキスをした。  
 唇を放すと彼は言った。  
「私の部屋まで来てくれませんか?」  
「……」  

□□□□□  

「……何やってんだろ、あたし」  
 マウナは水浴びをしながら独りごちた。  
 クラウスは『青い小鳩亭』ではなく、他の店に宿を取っていた。清潔そうな宿だ。敵地ということで、  
ついついベッドメイクなどに意識が行ってしまう自分に苦笑しながら、階下まで水を浴びに来た。深夜  
だったので流石に湯は使えなかったが、水浴びには慣れている。  
 身体を洗いながら漠然と考える。  
(……クラウスさんって、かっこいいよね)  
 冒険者としてもかなりの腕だし、紳士的だ。背は高いし、顔も、スタイルだっていい。  
 でも、安易にこうなっちゃっていいものだろうか?……拒めなかった自分が思うのも何だけど。  
「よしっ」  
 マウナは気合いを入れた。自分がはっきりしないままだと相手にも失礼だろう。部屋に戻ったら断ろう。そうしよう。彼女は身体を拭き、さっと服を着ると部屋に戻った。  

「あれ?」  
 ドアを開けるとクラウスの姿が何処にもない。どこに行ったんだろう?確か自分より先に部屋に帰って  
きている筈だが。  
 几帳面ないつもの癖でドアを閉じ、肩に掛けたタオルで髪を丁寧に拭いながら部屋の中程まで進む。す  
ると突然、背中から抱きすくめられた。  

「きゃっ」  
 髪を吹いていたタオルが床に落ちる。  
「く、クラウスさんっ」  
「驚いた?」  
 からかうような響きの声。しかしマウナは答えられなかった。だってこの位置は……  
「だ、駄目ですっ……耳に息がっ」  
「耳、弱い?」  
 それを聞いて自分の台詞を思い切り後悔したがもう遅い。  
「っ、あっ……」  
 長い耳を噛まれてマウナは思わず声を漏らした。  
「クラウス」  
「は!?」  
「クラウスって呼んでくれないか?」  
「……!ん……はっ」  
 そのキスはたっぷり時間をかけて行われた。ゆっくりと絡め取られるようなキスに、マウナはなけなし  
の抵抗力を奪われていった。ああ、こんなことでどうするんだあたし。断るんじゃなかったのか。五分前  
の決意もこの状況ではまるで役に立たなかった。濡れた髪を撫でられ抱きしめられて、マウナの身体から  
力が抜けていった。  
 唇が離れた頃にはマウナはぐったりとした身体をクラウスに預けていた。クラウスはすぐ傍のベッドま  
で彼女を連れて行った。柔らかいシーツがマウナの背中を抱き留める。クラウスの手はすぐにマウナの服  
をはだけさせた。  
「あっ……駄目、ですっ……ああっ」  
 露わになった胸に触れられ、二の句が継げなくなる。身体が反射的に逃げようとしたがベッドの上では  
それもままならない。両の乳房を揉みしだかれて、マウナは言葉と裏腹に甘い吐息を漏らし始めていた。  

「ま、待って……っ!あたしっ」  
 マウナは決死の思いで振り返った。そして凍り付いた。  
 眼前にクラウスの顔があった。頬に手を置かれたと思った瞬間、キスをされる。  
「……!ん……はっ」  

 そのキスはたっぷり時間をかけて行われた。ゆっくりと絡め取られるようなキスに、マウナはなけなし  
の抵抗力を奪われていった。ああ、こんなことでどうするんだあたし。断るんじゃなかったのか。五分前  
の決意もこの状況ではまるで役に立たなかった。濡れた髪を撫でられ抱きしめられて、マウナの身体から  
力が抜けていった。  
 唇が離れた頃にはマウナはぐったりとした身体をクラウスに預けていた。クラウスはすぐ傍のベッドま  
で彼女を連れて行った。柔らかいシーツがマウナの背中を抱き留める。クラウスの手はすぐにマウナの服  
をはだけさせた。  
「あっ……駄目、ですっ……ああっ」  
 露わになった胸に触れられ、二の句が継げなくなる。身体が反射的に逃げようとしたがベッドの上では  
それもままならない。両の乳房を揉みしだかれて、マウナは言葉と裏腹に甘い吐息を漏らし始めていた。  
頂点を摘まれて弄ばれ、自然に声が出る。  
 マウナは知らず知らずのうちに相手の名前を呼んでいた。  
「あ……クラウス……さんっ」  
「──マウナ」  
 呼び捨てにされる。それだけでマウナの身体はぴくんと反応した。  
「さん、はいらないよ」  
「……クラウス……」  
 満足そうに微笑まれると何も言えなくなる。拳を握って愛撫に耐える。手が服の内側を伝って鳩尾まで  
下りてきた。片手は乳房を刺激し続け、もう片方の手は下腹部を撫で、太股を撫でる。片手で器用に下着  
を脱がせると、クラウスは秘所を弄び始めた。  
「あぁっ!」  
 身体が跳ねた。誰にも触れられたことのないそこは熱を帯びて湿り始めていた。優しく触られて、恐怖  
と羞恥、快感が同時に襲ってくる。敏感な蕾を何度も擦られてマウナは身悶えした。  
「やぁっ、そこ、駄目えっ……!」  
「だけど、濡れてきてるよ?」  
「ん、んっ……!だってっ」  
 耳元で囁かれて、恥ずかしさに身を縮める。指の動きが段々と激しくなっていった。指先が秘裂を這い、ゆっくりと差し込まれてくる。  
「っ、ふうん……っ!ああっ、やっ、やあぁっ」  
 抜き差しされ、掻き回される。身体が勝手に仰け反ってどうしようもない。性感が嫌が応にも高まって  
いく。  
「ああっ……あ、あっ!」  
 ひときわ大きく身体を仰け反らせて、マウナは達した。  
「……」  
 荒い息を付き、霞む目をうっすらと開けると目の前にクラウスの顔があった。額を合わせるようにこち  
らの眼を覗き込み、首筋で髪を梳く。もう片方の手の指は彼女の中に入れられたままで、ほぐすようにま  
た何度も掻き回され、マウナは微かに声を漏らした。  
「……っ、クラウス……駄目よぉ……っ」  
「でも、もう少しほぐさないと、辛くないか?」  
「だけどっ……んっ」  
 身体は既に次の絶頂へ向かい始めている。クラウスはその様子を察したのか、わずかに顔を離すと尋ね  
てきた。  
「じゃあ……もう、していいかい?」  
「──……」  
 マウナは自分でも驚くほど素直に頷いていた。覗き込まれるようにして見ていた瞳のせいかもしれない。駄目だ、この人は拒めない。こんなところまで来てやっと気が付くなんて──。  
 一瞬唇が重ね合わされた後すぐにそれは入ってきた。  
「んんっ……!」  
 固いものが侵入してくる感覚に思わず身体を震わせる。ゆっくりとした動きだったが身体は敏感に反応  
した。途中まで入ってきたところで耐えられなくなり、身を捩らせる。それが余計に自分の内側を刺激し  
てしまい、マウナは身悶えた。  
 と、腰に添えられた手に力がこもった。  
「──ぁああああっ!」  
 一気に貫かれる。悲鳴を上げてマウナは背中を仰け反らせた。一瞬の後、ふっと全身の力が抜ける。  
「っ……あ……」  
 ようやく息を付けたと思ったら、押し広げられた中のものがすぐに律動を始める。感じていた痛みはす  
ぐに快感に塗り替えられた。  
「あっ、あ!はぁんっ!やぁ」  
 マウナは必死にかぶりを振る。  
「だ、駄目っ!駄目えっ」  
「どう……して?」  
「だって、っ……感じすぎ、ちゃうっ……!ふあぁっ」  
 そう言っている間にも身体の芯を突く波は止まらず、制止の声は喘ぎに変わった。  
「ごめん……俺ももう止められないんだ」  
 苦しげな声がそう言ったが、既にマウナは何も聞き取れなくなっていた。クラウスの動きに合わせて身  
体の中の蜜が外へと掻き出される。最奥を何度も突かれて彼女は声も出なくなった。想像などまるで追い  
付かないほどの感覚が体中を駆けめぐる。もう自分がどうなっているのかすら彼女にはわからなかった。  
絶頂へ近付くに連れ、その中はさらにきつく締まって強い快楽を得た。  
「……っ、……、────っ!」  
 マウナは身体を何度も大きく震わせる。そのたびに彼女の中から透明な液が溢れた。  
「マウナっ──俺も、そろそろっ……!」  
「……!あ、ああっ──あああああっ!!」  
 くわえ込んだそれが更に膨張したような錯覚に、マウナの身体はひときわ大きく震えた。ぎゅうっと内  
壁が縮まり、それを容赦なく締め上げる。同時に熱いものが身体の中を迸った。  
(──あ……)  
 頭の中が真っ白になった。今度こそ体中から力が抜け、マウナは力尽きてベッドに横たわった。  

□□□□□  

「……大丈夫、かしら」  
「ん?」  
 クラウスに尋ね返されてマウナは頬を赤く染め、しどろもどろになった。やっと聞き取れるくらいの微  
かな声で言う。  
「その……中に、されちゃったから……。エルフの血を引いてると繁殖力が弱いって言うけど」  
「いいさ。元から責任は取るつもりでいたから」  
「──」  
 マウナはしばらく顔を真っ赤にしていたが、やがて噛みつくように言ってきた。  
「あ、あたしはよくないわっ。まだ冒険者を続けたいものっ」  
「……冒険者って何かと危険が多いから、止めて欲しいんだけどな、俺としては」  
 そう言って近付いてきたクラウスの唇を右手でシャットアウトすると、マウナはむっとした表情で言葉  
を続けた。  
「続けるの。やっとお金が貯まってきたと思ったところでまたすっからかんになっちゃったし。まだまだ  
世間を見て回りたいし。何より、年中おじさんおばさんをほったらかしてる貴方が言えた義理じゃないわ」  
「……ごもっとも」  
 苦笑して、クラウスはマウナの髪を撫でた。  
「まだしばらくこの街にいるかい?」  
「次の依頼が見つかるまではいるけど……」  
「──じゃあまた、こうやって、してくれるかい?」  
 クラウスの問い掛けにマウナはまたぱっと赤くなる。やがてその右手がゆっくりと下ろされた。小さく  
頷く。  
 クラウスはすかさず彼女の唇を奪った。  

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