ヒースはある日、とある薬品の調合を内密に任された。
自白や拷問に使うらしい『刺激を倍加させる』というその薬を、ほんの少しイタズラ心からから行為の最中に使ってみる事にした。
いつものヒースの部屋。呼び出されやって来たイリーナ。
酒に溶かした微量のそれを、キスのさなかにイリーナの口に注ぎこむ。
「ん…」
程なくイリーナの様子がおかしくなってきた。
体が沸々と、ピリピリとする感覚。
ヒースに抱かれ触れている場所が体がモドカシイ。
その感覚が次第に強くなって立って居られなくなってきた。
「…ナニか、お酒に…っ!?」
床に蹲り、震える。小刻に身震いする。
「ちょっとした薬だ。拷問や自白に使うらしい。『刺激に敏感』になるらしい。
快感も倍加させるかと思ってな。イリーナで試してみる事にした。」
ふっくらとした紅い唇から、溢れる吐息は、かすれながらも甘い。
「…ヒド…い…っ…」
それでも気遣われる様に背にヒースの手が触れられる。
それだけで身体がウズく。火照って身を捻る。
「…ほんの微量だ。イリーナなら、簡単に解毒出来るだろ…?」
耳元で、甘く低く囁かれて、背筋がぞくぞくする。
「…しないのか?…ん?」
耳の中に息を吹き入れられて、身体がビクビクと反応する。
耳朶を甘く咬まれる。堪らずに声を上げた。
ナニかが触れるたび、肌が、恐いほど反応する。
まるで身体が全て性感帯になったみたいに。
『恐い…こんなの…シラナイ…。…でも…せつない…セツナイ…の』
小さな身体は燃え、心は彷徨う。
「ヒース兄さん…セツナイ…の…たすけて…」
震えて崩れそうな身体を抱き締めて、イリーナはすがりつく様に、熱っぽくヒースを見上げた。
透き通る茶色の瞳は潤み、ヒースを映す。
再び重ねられた唇は、優しく滑る。より深く口内を侵し、優しく舌を貪る。
舌も頭の中までも、とろけるようだ。唾液が混じる。名残惜し気に飲み下す。
まだ服の上から、撫で回しているだけなのに、イリーナは、身悶え、喘ぐ。
イリーナの上々の反応にヒースは半分残した、薬入りの小瓶の酒を自分で飲み干す。
沸々と肌の粟立つ感覚が襲い始める。
自分のモノをズボンから、引き出して陰茎からそっと撫であげてみる。
『うわ…スゲ…っ。生殺し大絶頂…っ』
その感覚ひとつで、全身が総毛だった。
『これで…抱いたら…どうなるんだ?』
微かな恐れは、好奇心の前に吹き飛んだ。
イリーナの紺のミニスカートの中に手を滑らせ秘所を探ると、既にパンティの上からでもビショビショに濡らして染みを作っている事が感じ取れた。
イリーナがいつもより更に興奮し感じてる証拠だ。
ヒースは意地悪く口の端をあげた。
「イヤラシイな。イリーナ。お漏らししてるみたいダゾ?」
笑いながらイリーナの尻を引き寄せ、パンティを引きずり落とした。
健康的な小麦色のフトモモと引き締まった臀が目前に現れる。
突き射されるためだけに、突き出されている。それはあまりにも煽情的だ。
ピンク色にヒクつき、誘う禁断のワレメにヒースはゆっくりと指を指し込む。
ヌプりと温かい粘液に指が沈む。
滴る。零れる。ピクピクと蠢く。
臀肉をムニりと広げさせ、息を吹き込む。
ムセ返る様な女の匂いの中に、ヒースは顔を埋めた。
舐める。すする。響かせる。
「ハァ…ぁん。…兄さん…いやぁ…お願い…します…ジラさないで…
セツナスギて…死んじゃいます…兄さんの…にいさんの…はやく…はやくぅ…」
身体はくたりとベッドに突っ伏しながら、喉を仰け反らせ、可愛い尻を天高く突き上げて震わせる。
「…お前のクチからそんなオネダリが聞けるとはな。…どんな顔してそんな台詞吐いてるんだ?ああ?」
ヒースは笑いながらイリーナの身体をひっくり返し、
かえるの様にだらしなく足を開いたままの女陰に、チロチロと舌を這わせ持て遊びながら顔を窺う。
イリーナは泣きそうな顔で、片腕で身体を支え、もう片方軽く握り結んだ手でクチを覆い、熱く潤んだ瞳で見返してきた。
「…おねが…い…」
その可愛さに、ヒースの性欲も限界に達した。
部屋の空気を震わせるイリーナの甘い嬌声。ヒースの苦悶の声。
侵し、押し込む。引き抜き。押し広げ、犯す。突き上げる。
奥まで、繋がる。子宮を打つ。
今まで感じたことのない、心も身体も、壊れそうな、契り。
喜悦。陶然。恍惚。
絡む腕。密着する汗ばんだ肌。
全身で絡みつく滑らかな小柄な四肢。
震える尻を割る逞しい両腕。
断続的に刻む。擦り付ける。幾重にも、掻き回す。
丹念に、繰り返し。終わりなく、責めたてる。
互いに繋がった股間から、溢れる。泡立つ。噴き出す。
上も下も、ひとつに繋がる。
心から身体まで溶けあう感覚。
その行為は、何処までも妖しく、淫靡。
そしてツガイの獣の様に、美しい。
重ね貪ぼる舌の内から、苦悶の声。
身体に這わせる指の先には、熱く充血した欲望。
貫くその刺激。快楽。痛み。猛り。
欲情と劣情。本能と愛慾。
総ては、ただひとつの行為に。
煽り。疼く。うめき。悶え。
強く抱き締めて。
魂までに響く音。
キガトオクナル。
暗闇に拡がる心地良さ。
閉じた視界に散る光景は。
狂い咲きの華華に似て。
髪が滲んだ汗で額に張り付く。不快さも倍だ。
苛ただしく払う雫はイリーナの身体に小雨の様に降りかかった。
イリーナはヒースの身体にしがみつき、いやいやをする。
「あああぁ…っ!…おね…が…っ…んくぅっ」
瞳に涙を浮かべて、ヒースの腰に絡む震える足の先は強く握りこんでいる。
「にい、さん…も…ダメ…やだ…ゆるして…」
イリーナの懇願をヒースは獰猛な獣の笑みで退けた。
「…もう少しだ…イリーナ…っ」
呼吸はもう人ではないモノの様に浅く、低く、速く、深く。
それでも息をこらしているかのように、空気が足りない。
イリーナの吐息が触れる肌が、熱い。
身体に回す愛しい腕の熱さも、まるで灼熱。
「…壊れ…っ…ああっ…ああっン…死ん…じゃぅゥ…っッ」
「…いくぞ…っ…イリーナ…出すぞっ…!…く、はぁ…っっ!…!」
「…あああああァアっ…っ!!…アゥァッ!あ、熱いっ…熱い…っ!
にいさんの…ミルク…熱いよぅ…っ!灼けちゃうぅゥっ…!」
二度三度と、イリーナの中でビクつき吐き出した精液の熱さにも、過剰なまでに反応するイリーナの身体。
強すぎる快楽の刺激は――苦悶
それはヒースも同じこと。
『ヤバイ…これは…キツ過ぎる…っ!』
予想外の薬の効果にヒースは驚異を覚えた。
いつもよりキツい、焼き切れるような感覚、苦痛。
それが、止まらない。一度迎えた絶頂の後も、谺し続ける余韻。
それが終わらないうちに下半身に再び血が巡る。
快楽に溺れるからだは、さらなる欲望を求めイリーナの中で突き動く。
『ダメだ…コレイジョウは…ヤバい…壊れ…』
残された理性が悲鳴を上げる。
快楽の涯のソノ先。ヒースは狂喜の果ての深淵を覗いた。
止まらなケレバ。
イリーナの吸い付く様な体内に、身体は突きあげすり落とす。
男性自身は、ヒースのペニスは止まらない。
正気という名の大地ヲ、足が離れた気がシタ。
堕ちる。底知れぬ深淵に、呑み込まれて…。
「…だ…め。」
ずっと遠くで、声が、シタ…気がシタ。
現実には、ほんの耳元で、イリーナが喉の奥でウメイタ。
「ファリス…さま…お力…を『キュアーポイズン』…!」
――意識が、明滅する。
光りが、意識が戻る。精も根もつきはてて。ヒースは繋がったママのイリーナの上に、崩れ落ちていた。
あの狭間で、イリーナが二人に放った解毒の呪文。
その薬が抜けてもまだ、頭の中がガンガンくらくらとする。
過剰な血の巡りが、毛細血管のひとつやふたつぶち破ったのかも知れない。
漸く自分がイリーナの上に乗っていることに気づき、気遣う。
「…大丈夫か?イリーナ?」
ゆっくりとペニスを引き抜き、身体をイリーナの隣へと転がす。
イリーナは浅い呼吸のまま、涙を溢れさせ、虚空をみつめていた。
「…悪かった。」
その僅かにくせのある茶色の髪をくしけずり、くちづける。
「…もうこんなことはしない。」
流れでる涙をそっと掬う。
「…すまん。イリーナ。」
まるで独りぼっちの子猫の様に震えるその身体を、ヒースはそっと抱き締めた。
イリーナの瞳から涙が、溢れ落ち、そしてそっと伏せられた。
それにしても、とヒースは思う。
『ヤバイ薬もあったもんだ。』
刺激を倍加させる。
この魔薬の性能なら自白や拷問も効果を上げるだろう。
どんな犯罪者ヤツに使われるのかは知らないが、ヒースは少しソイツに同情した。
その頃、小さな酒壺に魔薬を溶かし、届けられたことを確認すると
すっかりと雰囲気の『ヤバいモノ』へと変わったリジャール王が、王妃メレーテと襲いかかっていく声を後に聞きつつ、
宮廷魔術師ラヴェルナは、ため息をひとつついて、その場を去った。
終