「はぁ……」  
 何度目になるか分からない溜息をついて、女盗賊はぼんやりと虚空を見上げた。  
 ロマール盗賊ギルドの地下牢に放り込まれてから、すでに一月が過ぎている。  
 尋問にはすべて正直に答えたし、裁判なんてまどろっこしいものが盗賊ギルドにあるわ  
けもなし、なんだってこんなに長いこと拘留されるのだろう――そう疑問に思って飯を  
持ってきてくれる看守に尋ねたら、「あんたを捕まえた若いシーフが女には手荒な事はす  
んなって煩くてな、そいつが意外とギルドの有望株なもんで対応にあぐねいてんのさ」だ  
という。  
 そんなこというなら、さっさと釈放してくれたらいいのに。黴臭い地下牢に閉じ込めら  
れっぱなしでは、肉体的にはともかく、精神的に参ってしまう。  
 仲間たちは別の牢に放り込まれているが、無事だろうか。看守は知らん、とそっけな  
かったし、自分を捕まえシーフも”女は”と言っていたそうだから、彼女より酷い目に  
あっている可能性は決して低くない。  
 どうしてこんなことになってしまったんだろう。  
「はぁ〜……」  
 抱えた膝に額を押し付け、女盗賊は長い溜息をついた。 
 
 彼女は元々はレイドの賢者の学院の生徒だった。だがそこの師匠が女好きで、言い寄ら  
れて抵抗した際に誤って大怪我をさせてしまい、追放されてしまったのだ。その挫折が彼  
女を不良にし、犯罪者へと貶めてしまった。  
 裏通りの酒場で知り合った薄汚い身なりの小男から盗賊ギルドを紹介してもらい、一通  
りの盗みの技や戦闘術を学んだ。そして2、3度簡単な仕事をこなし、気の置けない仲間  
も出来て、それなりに順調な第二の人生に満足感を覚え始めたときのこと――  
 
「ロマールでの仕事がある」  
 小さな仕事を終えて、酒場でささやかな祝宴をあげていた彼女たちに、大柄な戦士風の  
男が囁いた。一応顔見知りではある。以前盗賊ギルドに盗みの依頼を持ってきて、それを  
彼女がこなしたことがあった。  
「ロマール?」  
 女盗賊は首をかしげた。なにゆえロマールでの仕事を、レイドの盗賊である自分に持ち  
かけるのか。そもそもギルドを通さないで、直接自分に話を持ってくる意図がわからない。  
 大男はさっと周りを見回し、聞き耳を立てているものがいないことを確認してから、話  
を続けた。  
「ギルドには知られたくない仕事なんだ。それに目当ての家はロマールのギルドに保護料  
を払ってるから、どのみち掟を犯すことになる」  
「ちょっ……なにいってるのよ、そんなヤバそうなの……」  
「報酬は前金で2千、成功したら8千。合計で1万ガメルだ」  
「――」  
 女盗賊は耳を疑った。駆け出しの彼女には見たことも無いような金額である。危険だと  
分かっていても、興味が湧いてしまったのは仕方が無いのだろう。  
「そ、そんなに……でも」  
「やる気があるなら、明日の昼ごろに街外れの廃屋に来てくれ。依頼主に会わせる」  
 それだけ言うと、男はさっさと店を出て行ってしまった。  
「ど、どうするんですか?」  
「い、1万っていったら、2年は遊んで暮らせるぜ」  
「話だけでも聞いてみましょうや。やばそうならお断り、ってことで」  
 仲間たちも、1万ガメルの誘惑には勝てないようで、興奮した口調で囁きあっている。  
 嫌な予感はする、だが虎の巣に飛び込まなければ虎の子供を捕まえることが出来ないの  
も事実だ。  
「……わかったわ。とりあえず明日いってみましょう」  
 
 翌日、廃屋を訪れた女盗賊はすぐに自分の選択を後悔した。  
 彼女たちを待っていたのは昨日の大男と、魔術師風の男、それから――  
(ダークエルフ……)  
 魔術師の傍らに無表情で立つ、黒い肌の女。学院の書物で学んだ知識によれば、ダーク  
エルフは闇の神に従った邪悪な妖魔、精霊魔法や暗黒魔法にも通じた恐るべき暗殺者だ。  
そんなのが依頼主なのだとしたら、この仕事は相当ヤバいことに違いない。彼女の3人の  
仲間も、ダークエルフの知識は無いにしろ、相手の禍々しい雰囲気に飲まれてすっかり竦  
みあがっている。  
「あの……話はやっぱり……」  
 話を聞いて後戻りが出来なくなる前に断ろう、そう思っておずおずと切り出そうとする  
が、魔術師の冷たい視線に睨まれ、彼女は「ひっ」と言葉を飲み込んでしまった。  
「ふん……素人に毛が生えたようなものではないか」  
「ええ、まあ。ですが……」  
 呆れたような魔術師の言葉に、大男がこそこそと耳打ちをする。聞き耳を立てた女盗賊  
には、彼が「丁度いい」とか「どうとでもなる」と言っているのが聞き取れた。まるで自  
分たちを使い捨てにでもする様な会話だ。  
(なんでこんなことに……)  
 ちょっと欲を出したせいで、とんでもないことになった。  
 泣きそうになるのをぐっと堪え、どうにかこの場を無事に切り抜けられないかと思考を  
めぐらせていると、  
「いいだろう。お前たちに頼むことにする」  
 魔術師がそう言った。  
「え、や、その……」  
 断りたいし聞きたくない。そう思うのだが、魔術師は構わずぺらぺらと話を続ける。  
「お前たちに盗んできてほしいものは<うろこの仮面>という魔法の道具だ。ロマールの  
ある商家に飾られている」  
「調べではそれほど厳重な警備は無い。ギルドに保護料を収めているという油断だな。そ  
こが付け入る隙だ」  
 大男が言葉を引き継ぐ。  
「そ、それを盗んでくれば、いいだけなんですか?」  
 意外なほどあっけない依頼に、女盗賊は恐る恐る聞き返した。  
 緊張すると敬語になってしまうのは、学院の生徒だったころの名残だ。不良と化して家  
出はしたものの、もともとの育ちは悪くないのだ。  
「ああ。お前たちのような素人に多くは望まん」  
 一言余計だ、と思いつつも、実際に下っ端である彼女には言い返すこともできない。  
「でも、やっぱり……ギルドに内緒というのは……」  
「安心しろ。うまい作戦がある」  
 大男がにやっと笑う。腕は立ちそうだが、頭は決してよいように見えない男の作戦に、  
どれほど信頼が置けるものか。  
 女盗賊が悩んでいると、苛立たしげに魔術師が杖で床を叩いた。  
「別に断っても構わんぞ。ただし、話を聞かれたからには生かしては返さん」  
 くい、と魔術師が顎をしゃくると、ダークエルフが一歩前に進み出た。その手が腰の獲  
物に伸びる。女盗賊は慌てて手を振った。  
「ひぃっ! や、やります! やらせてくださいっ!」  
 ダークエルフとやりあったら、万が一にも勝ち目は無い。もはや従うしかなかった。  
 
 <うろこの仮面>は水中で呼吸が出来るようになる道具だ。そんなものを盗んでどうす  
るのか。湖底に沈んでいる遺跡でもあるのだろうか。  
 元魔術師として多少の興味はあったが、そんなことを聞いて依頼主の怒りを買っても面  
白くない。女盗賊は大人しく自分の仕事に専念することにした。  
 仕事自体は簡単だ。スミスという豪商の屋敷に忍び込んで、仮面を盗み出す。万が一に  
供えて数千ガメルほどの貨幣も鞄に詰め込んだ。見つからなければよし、見つかった際に  
は似た容姿の人物にガメル入りの鞄を押し付け、官憲や盗賊ギルドの目がそちらにいって  
いる間にロマールを脱出するのだ。どちらにしろ、オラン辺りまで逃亡し、もう二度とロ  
マールの地を踏むことは出来ないだろう。  
 とりあえず仕事は半ばうまくいった。仮面は盗み出せたし、姿を見られたものの、大男  
の策に従い、コロシアムの前にたむろっていた連中に罪を擦り付けられた。あのエルフの  
女性には悪いが、冤罪だということはすぐに分かるだろうし、そんなに酷い目にはあわな  
いだろう。あとは仲介人の大男と接触し、さっさと街を脱出すれば終わりだ。  
 
「まったく……本当に素人だな、おまえらは」  
 青ざめて震えている女盗賊に、剣に付着した鮮血を拭いながら、大男が罵声を浴びせる。  
彼の足元には乞食風の男が横たわっていた。背中の切り傷からはだくだくと血が溢れてい  
る。呻き、身悶えているが、放っておけば死に至るだろう。  
「尾行にも気づかず、しかも自分たちのねぐらまでご丁寧に教えてやるとは……」  
「ご、ごめんなさい……」  
「にしても、さすがはロマールだ。ギルドの動きが早い……のんびりとはできんな。今日  
にも街を出るぞ」  
 すたすたと歩き出した大男に、女盗賊が声をかける。  
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ、このままじゃこの人……」  
「ああ、そうだな……放っておいても死ぬだろうが、念のために止めを刺しておくか」  
「や、やめてっ」  
 大男が、一度収めた剣の柄に手をかける。その腕を女盗賊は必死で掴んだ。  
「こ、殺すなんてあんまりです! 盗みだけって言うから――」  
「騒ぐなっ、人が――くそっ」  
 いくつかの足音が近づいてくる。大男は女盗賊の手を振り払い、逆に彼女の細い腕を掴  
んで、アジトの方へと走り出した。  
 
 その後は散々だった。アジトを襲ってきたのは、女盗賊が罪を擦り付けた連中だった。  
抜け道から逃げ出そうとしたら回りこまれ、スリープクラウドで眠らされ、目が覚めたら  
今度はシーフのムチに絡め取られてしまった。  
「これが魔法の発動体ですわね。いいものを手にいれましたわ」  
「ふぅーん。ベルカナもこんな風に笑うんスねぇ」  
「盗賊ギルドのおでましだー! 神妙にしろー!」  
「このタイミングはご都合っスよー!」  
「ベルカナ、指輪隠しちゃえ」  
「そうしますわ」  
「あ、こら! そこ! 犯人の持ち物は全部ギルドで没収だ!」  
「ちっ――ですわ」  
 そんなこんなで女盗賊は捕まってしまった。  
 
 尋問にはすべて正直に答えた。ダークエルフの報復は恐ろしいが、抵抗すれば酷い拷問  
を受けて結局吐くことになる。素直に協力したせいか、それほど手荒い扱いは受けず、尋  
問はわずか3日ほどで終わった。  
 ちょっと変わったことといえば、尋問が終わった次の日、3人の男たちに小さな部屋に  
連れて行かれ、衣服を脱ぐように強要された。  
 犯される――そう思ったが、逆らえるはずもなく、震えながら彼女は服を脱いだ。男た  
ちに言われるまま、ベッドにうつぶせに横たわる。  
 ベッドは四隅に鉄の棒が生えていて、皮製の枷が鎖で繋がっていた。男たちは慣れた手  
つきで、女盗賊の手足に枷を嵌めていく。  
「やっ、やめてっ、抵抗なんかしないから、ひどいことしないで……」  
 見ず知らずの男たちに犯されるのはイヤだが、拷問じみた真似をされるのはもっとイヤ  
だ。ムチだの蝋燭だの、痛い思いをするくらいなら、大人しくセックスの相手になったほ  
うがいい。  
「お願いっ、なんでも言うこと聞きます――むぐっ」  
 だが男たちは女盗賊の懇願に耳を貸さず、その口をボールギャグで封じてしまう。変態  
プレイの生贄にされるのは間違いない――女盗賊は震え上がった。  
 枷に繋がれ、四肢を四方に引き伸ばされるようにして、ベッドに横たわる女盗賊。長く  
美しいプラチナブロンドの髪、自重で押しつぶされ、ほんのわずか体の脇にはみ出してい  
る豊かな乳房、くびれた腰のライン、ぷりっと突き出たヒップ、経験の浅いピンク色の秘  
部――豊満だが意外なほど初々しい女盗賊の肢体に、男たちの視線が突き刺さる。  
(怖い、怖いよぅ)  
 涙をこぼしながら、女盗賊は震えた。犯される。しかも、物凄い酷いことをされるに違  
いない。盗賊なんて擦れた商売をやる以上、ある程度の事は覚悟していた。それでも、実  
際に捕まって裸に剥かれ、拘束され、複数の男たちの前に晒される恐怖というのは計り知  
れないものがある。  
 がたがたと震えている彼女の背中に、男たちのごつごつした手が触れた。女盗賊が緊張  
に体を硬くする。だが男たちの次の行動は、彼女の予想を完全に裏切っていた。  
 ものさしで、彼女の背中の毛の長さを測り始めたのだ。  
(なっ、なに?)  
 ワケが分からない。ゴツイ指のわりには驚くほどの器用さで、摘めるほども無い彼女の  
背中の毛を丁寧に測りとっていく。  
 くすぐったさに身じろぎすると、二人の男が彼女の体を押さえつけた。それでまた恐怖  
がぶり返したが、やはり男たちは毛の長さを測るばかりで、胸や尻には触れようともしな  
い。  
 
(なに、なんなのっ?)  
 常識を超えた男たちの行動に、別の恐怖がわきあがる。女の裸を前にして、目の色を変  
えることもなく黙々と背中の毛の長さを測る男たち。不気味すぎる。  
 1時間も過ぎただろうか、何本もの毛の長さを測定し終えた男たちは、記録した羊皮紙  
を厳重に包むと、女盗賊の戒めを解き放った。それから服を着せられ、再び地下牢へと戻  
されてしまう。  
(……なんだったの?)  
 狐につままれたように呆然とする女盗賊だったが、結局それが何の意味を持つのか、教  
えられることは無かった。  
 
 
「――ん」  
 いつの間にかうとうとしていたらしい。  
 女盗賊は顔を上げた。少し頭がぼうっとする。  
 ぼんやりと視線を彷徨わせて、鉄格子の前に人が立っていることに気付いた。  
 人影は二つ、見慣れた看守と――もう一人は、可愛らしい少女だ。冷たい目でこちらを  
じっと見下ろしている。彼女の顔には見覚えがあるが――  
「あなたは……あのときの」  
 思い出した。アジトに乗り込んできて自分を捕まえた魔術師の娘だ。だがいまさら何の  
用があってこんなところまで来たのだろうか。  
「あら、覚えていてくれたんですの? 私は今日ここに来るまで、貴方の顔なんか忘れて  
いましたけど」  
 少女が薄く笑う。その笑顔に、女盗賊は体を震わせた。凍えるような冷たさ、なのに瞳  
の奥には煮えたぎるような憎悪が潜んでいる。まともな人間の見せる表情ではない。すく  
なくとも、自分を捕まえに来たときの彼女は、歳相応の笑顔を見せていたはずだが。  
「な、なんの……用?」  
「ふふっ……考えてみれば、仕返しはまだでしたわ」  
 女盗賊の問いに答えるというよりも、楽しいことを思いついた、といったように少女が  
呟く。  
「し、仕返し?」  
「ええ。貴方たちを捕まえたのは、あくまでも身の潔白を証明するためとギルドの依頼で  
すから。罪をかぶせられたことへの仕返しは、また別がよろしいですわ」  
 
 看守が鍵の束を取り出し、鉄格子の扉を開けて中に入ってきた。怯える女盗賊の腕を掴  
み、引きずるように牢の外へ連れ出す。少女が歩き出し、看守がその後をついていく。  
「っ、いたっ、自分で歩きますっ」  
 女盗賊は抗議の声を上げるが、看守は意に介さず、彼女の腕を引いていく。  
 辿りついた突き当りの扉を少女が開けると、看守が突き飛ばすように女盗賊を部屋の中  
に押し入れた。バランスを崩し、冷たい石畳の床に倒れこむ。  
「つ……」  
 打ち付けた膝の痛みに呻きながら体を起こし――女盗賊は息を呑んだ。  
 ランタンの明かりに照らされた広い部屋には、三角木馬やムチ、蝋燭といった、女性を  
責め立てる為の器具が所狭しと置かれている。雰囲気は拷問室、というよりも奴隷の調教  
室か。そんなところに連れてこられたということは、つまり――  
 呆然と眺めていた女盗賊を、看守が背中からのしかかるように押さえつけた。慣れた手  
つきで彼女の両腕を背中で縛り上げる。  
「つっ――なに、なにするのっ」  
「さっきも言ったでしょう? 仕返し、ですわ」  
 少女が冷たく笑う。それからいくつかある拷問器具を見渡し、「あれがいいですわ」と  
呟くと、三角木馬の方へとことこ歩いていった。  
「んっ、重いですわね」  
 ずりずりと部屋の真ん中の方まで三角木馬を引きずり出し、少女がほうっと息を吐いた。  
その様子を震えながら見ていた女盗賊だったが、看守が彼女の体を軽々と持ち上げたとこ  
ろで、ようやく悲鳴をあげた。  
「いやあああ! やめてっやめてぇ!」  
 脚をばたつかせ、体をよじり、必死で看守の手から逃れようとする。だが看守のごつい  
腕は彼女の細い肢体をがっちりと掴み、逃さない。  
「いい声で泣いてくださいな」  
「いやっ、いやあああ!」  
 看守が無造作に女盗賊の体を三角木馬に乗せた。布越しに鋭角の先端が股間に喰い込む。  
「ひ――ぎっ――」  
 敏感な場所への痛みに、女盗賊は半ば無意識に内股に力を入れた。ふとももで木馬を挟  
み、腰を浮かせるようにして自分の体を支える。  
「うっ、ううー……」  
 魔術師も盗賊も、力仕事とは縁が遠い。彼女の筋力で自重を支え続けるには限界がある。  
ものの5分もしないうちに、再び木馬の鋭角が女性器を抉るだろう。  
 
「お、お願い、おろして……」  
「だめですわ。ちゃんと堪能していただきませんと」  
 そう言うと、少女は部屋の隅から鉄球つきの足枷を二つ持ち出してきた。人の頭ほども  
ある大きさの鉄球だ。重しとしては十分すぎるだろう。  
「そ、そんなの、なにするんですかぁ!」  
「見て分かりません? これを今から、貴方の足に付けて差し上げますわ」  
「ひっ……や、やめてくださいっ、そんなのつけたら死んじゃう――」  
「死にはしません。でもあそこはズタズタになるかもしれませんわね」  
 さらりと言い捨て、少女は女盗賊の脚に枷を取り付けた。ずしりとした重みが、左右の  
脚を引っ張る。  
「――っ!」  
 歯を食いしばり、増大した重力に逆らう。だがもとより不自然な体勢だ。努力の甲斐な  
く、木馬を押さえる大腿はずるずると下がって行き、鋭角が下着越しの割れ目へぐいぐい  
と喰い込んでいく。  
「あっ――ああああああっ!」  
 敏感な花弁を完全に抉られ、女盗賊は悲鳴をあげた。  
 自分の体重と重りの全てを、鋭い木馬の先端に押し付けた女性器一つで支えている格好  
である。生半可な痛みではない。全身に玉のような汗が浮かび、視界が涙でにじむ。  
「ひぐっ、おねがいっ、おろして、おろしてぇ!」  
 女盗賊の悲痛な訴えにも耳を貸さず、少女は壁にかけられている鞭を手に取った。  
「貴方はたしか、クレスポさんの鞭で絡め取られてしまったんでしたわね。鞭がお似合い  
ということにいたしましょう」  
 サディスティックな笑みを浮かべ、少女が鞭をしならせた。ぴしん、と高い音が床を打  
つ。それだけで女盗賊の心が砕けた。  
 
「いやあああああああああああ! 助けてっ、たすけてぇ!」  
 狂ったように泣き叫び、少女から逃げようと必死で脚をばたつかせる。当然股間への食  
い込みが酷くなり、悲鳴をあげ、激痛から逃れようとさらに必死で体をゆする。悪循環に  
陥っていることにも気付かず、女盗賊は木馬の上でもがき続けた。  
 そんな滑稽な姿をくすくす笑いながら、少女は女盗賊の背中に鞭を打った。容赦なく放  
たれた一撃が、薄手の黒い衣服を引き裂き、その下の柔肌に鮮血を滲ませる。  
「あああああああああああっ!」  
「あら、ちょっとやりすぎましたわ。加減が難しいんですのね」  
 再び鞭が唸り、むき出しの大腿に当たった。びしっと皮膚が裂け、細かな肉片と赤い雫  
が石畳に飛び散った。  
「ひぎぃぃぃぃっ! いやっ、いやああああああ!」  
「むーっ、納得いきませんわ。クレスポさんにうまくできて、なぜ私には扱えません  
のっ」  
 ぴしぃっ!  
「あづっ!」  
 加減の効いた一撃が、女盗賊の腕に赤い線を走らせる。少女は満足げに頷くが、女盗賊  
にしてみれば、痛いことに代わりは無い。  
 
「ふう。難しいですけど、丁度いいですわ。あなたに練習台になっていただきます」  
「いっ、いやあああっ!」  
「それっ」  
 ぴしぃ!  
 ぱしぃ!  
 少女が微妙に力加減を変えながら、女盗賊の体に鞭を降ろす。強すぎて衣装ごと肌が裂  
けることもあれば、うまく痣を残す程度ですませることもあった。どちらにしろ、木馬の  
上で鞭打たれる女盗賊にとっては拷問以外の何ものでもない。  
「ひぐっ、うう……お、お願い、もう許してくださいっ……こ、これ以上されたら、死ん  
じゃう……」  
 ぐったりと木馬にもたれるように前かがみになった女盗賊が、息も絶え絶えに訴える。  
服はあちこちが引き裂かれ、白い肌は鮮血と蚯蚓腫れの跡に埋め尽くされている。木馬が  
ぎっちりと喰い込んだ白い下着にも、赤い染みが広がっていた。  
「あと一回ですわ。多分、完璧にコツをつかめた気がしますの」  
「うっ……あ、あと、一回……?」  
「ええ。あと一回だけ。それで今日は終わりにしますわ」  
 終わり――あと一回で終わり――その言葉が、絶望の淵にあった女盗賊の心を幾分か癒  
した。あと一度だけ我慢すれば解放してもらえる、そんな甘い考えが彼女を支配する。当  
然、『今日は』という言葉の意味など、考えている余裕は無い。  
「ううっ……」  
 観念し、うなだれた女盗賊の背中に、ぴしっと綺麗な鞭が入った。衝撃で体がゆれ、木  
馬が股間へとぎりぎり喰い込む。その痛みと、これで終わりだという開放感が交じり合い  
――  
 しゃああああああ……溢れた出した暖かな液体が木馬を伝い、床に染みを広げていく。  
ほかほかと湯気を上げるそれを見たのを最後に、女盗賊は意識を失った。  
 
 翌日も、少女は牢へやってきた。  
 全身包帯だらけ、衣装もずたずたのままの女盗賊を再び調教室へと連れ込む。  
「どうして……」  
「はい?」  
「どうしてこんな酷いことをするんですか……?」  
 抵抗しても無駄――たった1日でそんなことを悟り、女盗賊は諦めの浮かんだ顔で、三  
角木馬を用意する少女に尋ねた。  
「酷いのはそちらですわ。私たちに罪をなすりつけたでしょう? 危うく晒し首になると  
ころでしたわ」  
「……」  
 言い訳は出来ない。まさか罪をかぶせた相手が、ギルドの体面のために見せしめにされ  
るとは考えが及ばなかった。そのときの少女たちの恐怖を思えば、自分への憎しみが強く  
ても仕方が無いのかもしれない。  
「ごめん……なさい……」  
「謝らなくても結構です。その分は昨日お返しいたしましたので」  
 少女がさらりと答える。  
 昨日のように、看守が女盗賊の腕を縛り上げ、体を持ち上げる。  
「じゃ、じゃあ、今日は――」  
「今日からは、正式に調教させていただきますわ」  
「ちょ――」  
 調教?  
 おぞましい言葉に女盗賊が目を見開いた。  
「申し送れました。わたし、ベルカナといいます。昨日からロマール盗賊ギルドの女性奴  
隷の管理を担当することになりましたのよ」  
「ど、奴隷って、そんな――」  
 女盗賊を抱えて、看守がゆっくりと三角木馬の方に近づいていく。  
「当然ですわ。あなた、本当ならギルドに逆らった愚か者として晒し首ですわよ? 命が  
つなげるだけありがたいと思いなさい」  
 それは――それはそうだけど、でも――  
 言い返す言葉も見つからないまま、女盗賊の体は三角木馬に乗せられた。癒えきってい  
ない女性器に、再び鋭い先端がぎりぎりとめり込む。  
 
「あっ、ぐっ……」  
 歯を食いしばり、必死で痛みに耐える。今日は重りは無い。足で踏ん張れる分、まだな  
んとか悲鳴をあげずにすむ。それもいつまで持つか――  
 不意に、ノックの音がした。  
「きましたわね」  
 ベルカナが返事を返すと、扉が開いて別の看守が入ってきた。その後に、ロープで繋が  
れた3人の男たちが続けて部屋に入ってくる。  
「ああっ!」  
 男たちの顔を見て、女盗賊は声を上げた。  
 同時に、男たちも女盗賊を見つけて息を呑む。  
 彼らは女盗賊の仲間たちだった。共に囚われ、今まで安否が分からなかったが、どうや  
ら無事ではあったらしい。  
「感動の再会ですわね」  
 ベルカナが可笑しそうに笑った。  
「ど、どうして……っ」  
「どうしてでしょうね? まあ、ギャラリーがいようがいまいが、同じことですわ」  
 ぴしぃ、とベルカナが鞭をしならせる。  
「ひっ……」  
 その音に、昨日の拷問が脳裏をよぎる。傷も癒えきっていない体に打たれたら、どんな  
ことになるか。  
「や、やめてください……おねがい、鞭は許して……」  
「だめですわ」  
 冷たく言い放ち、ベルカナが鞭を振るった。皮の鞭が高い音を立てて女盗賊の背中を打  
つ。  
「ひぎぃっ!」  
 じんわりした痛みが走る。2発、3発と、続けざまに鞭が振り下ろされ、女盗賊は悲鳴  
をあげた。  
「どうですか? そろそろ鞭が快感になってきたのではなくて?」  
「そ、そんなこと……」  
 とっさに答えたが、しかし――女盗賊は心の中でだけ首をかしげた。昨日よりも痛みが  
少ないような気がする。昨日の肌を切り裂く激痛に比べれば、今日のは平手で打たれてい  
るようなものだ。  
 ベルカナの鞭を振るう腕が上達したのだろうか。だがそれだけではないような。  
 疑問に思っている間にも、ベルカナの容赦ない一撃が加えられる。  
 
「あぐっ、ひはぁ……」  
 じわじわと広がる痛みに、女盗賊が呻く。ベルカナは満足げに頷いて、彼女の背後に近  
づいた。  
「ふふっ。こちらの痛みも、多分それほどではないでしょう?」  
 木馬が喰い込んでいる秘部に、ベルカナが指を這わせた。細い指が下着越しに肉芽を擦  
る。ぞくっとする快感が、女盗賊の背筋を走りぬけた。  
「あっ……く」  
 漏れそうになる甘い声を噛み殺す。  
 確かにベルカナの言うとおり、性器に突き刺さる痛みも、昨日に比べれば穏やかなもの  
だ。重りが無いとしたって、これほど違うことは無いだろう。  
「それがマゾヒスト、というものですわ」  
 女盗賊の耳に息を吹きかけるように、ベルカナが甘く囁く。  
「ま、マゾ……?」  
「ええ。あなたは拷問されて喜ぶ変態ですのよ」  
「そ、そんなこと……」  
 ぴしぃっ!  
 女盗賊の言葉を遮り、豊かな乳房に鞭が振り下ろされる。  
「あぐっ!」  
「そんなに痛くないでしょう?」  
 たったいま鞭打ったばかりの胸に、ベルカナが手を伸ばした。昨日の拷問で引き裂かれ、  
白い乳房がこぼれ見える服の上から、そっと撫で回す。  
「んっ……!」  
 じんじんと痛む箇所を優しくさすられ、女盗賊は息を漏らした。不思議と痛みが和らぎ、  
落ち着いた気分になる。  
「気持ちいいでしょう?」  
「……」  
 見透かされたような気がして、女盗賊は唇をかんだ。  
 ベルカナは彼女の乳房を丁寧に揉みしだきながら、もう片方の手を再び股間に伸ばす。  
 
「あ、やめっ……」  
 ベルカナの指先がクリトリスに触れた。下着越しの甘い感覚がじわりと広がる。だが割  
れ目には三角木馬の凶悪な刃が突き刺さってもいる。痛みと快感、その二つに同時に責め  
立てられ、女盗賊は苦痛の呻きとも嬌声とも取れない声を漏らす。  
「んっ……はうぅっ……」  
「ふふ。認めてしまいなさい。認めてしまえば、楽になれますわ」  
 昨日の拷問で引き裂かれ、塞がったばかりの傷口をベルカナの指先が軽く引っかく。ぴ  
りっとした痛みが走るが、すぐにそれは優しく撫でる手のひらに癒されてしまう。  
 同時にクリトリスへの責めも続いている。指で摘まれ、転がされ、こすられ、その刺激  
に、木馬がぎちぎちと喰い込んでいるはずの膣から愛液が溢れ出す。  
 状況の異常さもあいまって、女盗賊の感覚は狂い始めていた。もはや何が痛いのか、何  
が気持ちいいのかが分からない。言われてみれば、鞭打たれた傷のじんじんとした痛みや、  
あそこに喰い込む木馬の鋭い痛みも、ぞくぞくするような快感なのかもしれない。  
 ためしに女盗賊は自ら腰を動かした。鋭角が股間をする、その痛みがクリトリスへの刺  
激と共にじんわりと広がる。  
「ぁはっ……あっ……」  
 堪えきれず、女盗賊は甘い吐息を吐き出した。  
 ベルカナは愛撫の手を休めず、彼女の耳元に唇を寄せた。  
「気持ちいい?」  
「は、い……」  
「三角木馬にあそこを抉られるのは?」  
「あそこが、痛くて……でも……」  
「鞭を打たれるのは好き? もっと叩いてほしい?」  
「う……は、はい……いいです……もっと叩いて……」  
「ふふ。えらいですわ」  
 ベルカナが女盗賊から離れ、再び鞭を振り下ろした。  
 びしっ、びしぃっ!  
 何度となく振り下ろされる鞭が、女盗賊の肌を打つ。だが昨日ほどの痛みも無いそれは、  
むしろ心地よくさえある。  
「あうっ、ふああっ、痛いっ、痛いぃっ」  
 痛い、といいながらも、その声には艶があり、身悶える体もどこか淫靡だ。実際、溢れ  
出る愛液は下着に染みを作るだけでは収まらず、木馬や大腿を伝って滴り落ちているのだ  
から。  
 
「り、リーダー……」  
 ぼそっという呟きに、女盗賊ははっと目を見開いた。  
 すっかり忘れていたが、彼女の仲間たちが見ているのだ。その目の前で、こんな痴態を  
晒すなんて――  
「いっ、いやっ、見ないで!」  
 女盗賊の声に、食い入るように見つめていた男たちが慌てて顔を背ける。ベルカナは小  
さく舌打ちし、鞭を打つ手を止めて女盗賊に歩み寄った。  
「見てもらいなさい」  
「そんなっ……」  
「あなたの仲間でしょう? あなたの本当の姿を見てもらわなくて、どうするのですか」  
「い、いやっ……」  
「本当は見てもらいたいくせに」  
「な、なにを……」  
「見てほしいんでしょう? 三角木馬に跨って、鞭打たれて、あそこをびしょびしょにし  
てる変態の姿を、たくさんの人に見てほしいんじゃないのですか?」  
 ベルカナの言葉責めに、女盗賊の背筋がぞくぞくと震える。恐怖のためか、それとも別  
の感情のせいなのだろうか。  
「あなたたち」  
 ベルカナが男たちの方に声をかける。  
「しっかり目を開いて、彼女の淫らな姿を見てくださいな。そうしないと……この女を、  
刃物付きの処刑用三角木馬に跨らせますわよ」  
「――っ」  
「や、やめろぉっ!」  
 男の一人が悲鳴のような声を上げた。  
「ちゃんと彼女を視姦しますか?」  
「う……うう、わかった」  
「よろしい」  
 にっこり笑って、ベルカナは再び鞭を手に取った。  
「す、すまねぇリーダー」  
「許して下さいっ……」  
 口々に謝りながら、男たちが女盗賊を涙目で凝視する。  
 
(い、いやぁ……)  
 見られている。  
 鞭打たれ、喘ぎ声を上げながらあそこを濡らす姿を見られている。  
 彼女が盗賊になってからの知り合いである以上、それほど長い付き合いというわけでは  
ない。それでも彼女を慕って集まってきた仲間だ。生死を共にし、苦楽を分かち合ってき  
た。それなのに――  
「ふふっ、見られてますわよ。あなたの大事な仲間に、あなたが恥ずかしいおつゆをこぼ  
してる姿をばっちり見られてますわ」  
「うっ……うう……」  
 嘲るような言葉に、女盗賊は硬く目を閉じた。せめて見られているということだけでも、  
意識の外に押し出してしまいたい。なのに、ベルカナは彼女のあごをつまんで、男たちの  
方へと顔を向けさせる。  
「貴方も目をそらさずに、しっかり御覧なさい」  
 言われるまま、恐る恐る目を開けた。  
 男たちは――顔を赤くし、熱を帯びた目つきで彼女の方を見つめていた。さきほどまで  
の恐怖や申し訳ないという気持ちは、もう感じられない。あれは間違いなく、牝を求める  
飢えた男の目だ。  
「あ……ああ……」  
 女盗賊の視線が下がる。男たちの股間のあたりが、むっくりと盛り上がっていた。鞭打  
たれて悶えている自分を見て、興奮している――彼女の体の芯が、じくんと疼いた。  
「ふふ……あの人たち、あなたを見てあんなになっていますのよ。嬉しいでしょう?」  
「そんな……」  
「体の内が熱いでしょう。恥ずかしい、という感情が貴方を興奮させているのですわ――  
貴方たち」  
 ベルカナが男たちに呼びかける。  
「自慰をなさってけっこうですわ」  
「なっ――」  
 戸惑ったように顔を見合わせる男たちに、ベルカナが続ける。  
「一月も牢に閉じ込められて、相当溜まってるでしょう? どうしてもしたくない、とい  
うのなら構いませんけど……こんな美しい女性が痴態を見せていらっしゃるのですから、  
素直になるのが礼儀というものですわよ。それとも貴方たちは彼女があまりお美しくない  
とお考えかしら?」  
 ベルカナの甘言に初めの内こそ躊躇っていた男たちだったが、半ば自棄になったように  
一人がペニスを取り出すと、他の二人もそれに習った。木馬の上の女盗賊に熱っぽい視線  
を送りながら、自らの手で扱き始める。  
 
「もう……やだ……」  
 女盗賊の目から、ぼろぼろと涙が零れ落ちる。  
 仲間たちの晒し者になったあげく、オナニーのおかずにされる――これ以上に無い屈辱  
だ。なのに、  
「熱いでしょう?」  
 体の内が熱い。ベルカナはそれが快感なのだという。自分が変態であることは確からし  
いのだから、それだって本当のことなのだろう。  
「仲間が貴方を見て自慰をしてますわ。ほら、あんなに激しく……貴方のいやらしい姿に  
興奮してるんですわよ。嬉しいでしょう? ゾクゾクするでしょう?」  
「……は、い……嬉しいです……見られて、ゾクゾクします……」  
「ふふっ。まるで雌犬ですわ」  
「ううっ……はい、私は、雌犬ですっ」  
 いまさら、なにを言ってもいいわけにしかならない。女盗賊は全てを諦めた。  
 ベルカナの言うとおりだ。自分は鞭打たれて悦ぶ変態で、大事な仲間の慰み者になって  
悦んでいる雌犬だ。  
「雌犬には、きちんと躾をしなくてはいけませんわねっ」  
 ベルカナが鞭を振るう。女盗賊は嬌声を上げた。もう守るべきものなど何も残っていな  
い。鞭の痺れるような痛みも、三角木馬の苛烈すぎる刺激も、今の彼女にとっては快感で  
しかない。  
「ひぃっ、いいですっ、もっとぶってぇ、あそこをめちゃくちゃにしてくださいぃっ」  
 痛い、痛い――もっと痛く、もっと叩いて、もっとアソコに喰い込ませて――女盗賊は  
苦痛に甘く喘ぎ、秘芯に喰い込む木馬の上で身悶えた。息は荒く、顔は涙とこぼれた唾液  
でぐちゃぐちゃだ。全身を大粒の汗が流れ落ちていく。溢れる愛液は白い下着を股間に  
べっとりと貼り付け、さらに伝った雫が木馬の端からこぼれて、床に染みを広げていく。  
「貴方たちも、もっと近くで雌犬を観察なさいっ」  
「はっ、はぁあっ……!」  
 だらしなく口を開け、それこそ犬のように荒く息を吐きながら、男たちが女盗賊の周り  
に群がる。彼らが絶頂を迎えるのも近いようだ。そして彼女も。  
「これでイきなさいっ、雌犬!」  
 バシィィィン、と一際強く打ち付けられた鞭に、女盗賊は弓なりに背をのけぞらせた。  
「あっ――ああああああああああっ!」  
 苦痛がもたらす快感に、びくっと体が痙攣し、それから開放感にも似た筋肉の弛緩が広  
がる。  
 ――ぷしゃああああああああ!  
 悲鳴と共に、黄金色の暖かな液体が派手に迸った。殆ど同時に、男たちも果てる。「あ  
ううっ」と情けない悲鳴をあげて、一月以上溜めた濃厚な白濁液を女盗賊の肢体にぶちま  
けた。  
 どぷっ、どびゅるっ!  
 降り注いだ精子が、女盗賊の綺麗な髪や顔、豊かな胸元やむっちりしたふとももを汚す。  
どろどろの体液は糸を引き、重力に従って蚯蚓腫れの浮かんだ彼女の体を流れ落ちていく。  
 酷い臭いと、粘つく感触。だが、仲間たちが自分への欲情の果てに吐き出したものだと  
思うと、それさえも愛おしく感じられる。  
「は、ぁ……みんな、大好き……」  
 唇に垂れた精液を舐め取り、口の中いっぱいに広がる饐えた臭いに酔いながら、女盗賊  
はゆっくりと意識を失った。  
 
 看守に後片付けをまかせ、ベルカナは調教室の外へ出た。  
「見事なものだな」  
 入り口の脇に立っていた男が、無感動に声をかけた。ベルカナが足を止めて男を半眼で  
睨む。  
「覗き見ですの? ギルドの幹部様はお暇な上にお行儀が悪いのですね」  
「タネを教えてもらいたいな」  
 ベルカナの悪態にも慣れているのか、男――バーゼルは涼しい顔のまま尋ねた。  
「気付かれないようにプロテクションをかけてましたの。鞭の加減もありますけど。後は  
うまく心を騙してあげればいいだけですわ」  
「君は詐欺師の才能もあるようだ」  
「どうも」  
 そっけなく言い、ベルカナはすたすたとその場を立ち去った。背中にバーゼルの視線を  
感じなくなったところで、小さく舌を鳴らす。  
(やはり監視してましたのね。余計なことを言わずに正解でしたわ。あの方をベルカナ派  
に引き入れるのはまた今度ですわね。可愛そうですけど……しばらくは調教師としての足  
場を確保しなくてはなりませんし)  
 バーゼルへの叛意を胸に秘め、ベルカナはギルドを出た。特に予定も無いのに、脚は自  
然とアイリが働いている冒険者の店へ向う。あそこに行けば――  
(……)  
 慣れない鞭を振り回し、慣れない言葉を使ったせいで、体も心も疲れきっている。こう  
いうときになぜか頭に浮かぶのが、女好きのひ弱な盗賊の顔だったりする。多分、ボコボ  
コにするなり罵倒するなりして、ストレスを発散しろ、という本能の訴えなのだろう。  
(はぁ……)  
 あのバカのことを考えていると、精神的な疲れは紛れるが、だんだんイライラしてくる。  
ベルカナは思考を切り替えた。彼女には成すべきことがある。  
 まずはギルドでの地位を確保すること。そのうえで、捕虜の背中の毛を測るなどという  
馬鹿な体制を打ち砕く。今はそのための手駒が必要だ。利用できるものならば、例え仲間  
であっても容赦はしない。そうして最後には自分が、ロマールの盗賊ギルドを支配するの  
だ。  
(……狂ってますわね)  
 ベルカナが自嘲する。アレクラストでも最大の規模を誇る盗賊ギルドで、こともあろう  
にクーデターを画策している。うまくいく確率は低いだろう。そもそもそんなことに意味  
など無いのだ。命を無駄にしている。  
(でも――)  
 それしかないのだ。  
 あの人形好きの愚かな魔術師に萌えた後にされた今、すべての夢を打ち砕かれ、何ひと  
つ手に入れることが出来なくなった今は、それくらい馬鹿馬鹿しく大きな目標でもなけれ  
ば、生きていけない。笑うことすら、出来なくなってしまう。  
「ふふっ……うふふふふ……」  
 楽しくも無いのに浮かぶ微笑が、なぜか酷く、悲しかった。  

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