ちちち、と宿の外では小鳥の群れが朝のあいさつを奏でています。  
私はそれを聞きながら心地よい睡魔に身を委ねていました。  
「こらイリーナ、もう朝だぞ。いつまでも寝てると学校に遅れるぞ?」  
耳元に入ってくるいつも聞く大切な人の声。  
さらにほっぺたをつんつんと突付かれる感覚に、私はまだ残る眠気と格闘しながら重いまぶたをゆっくりと開けました。  
「ふに〜…」  
ああ、そういえば今日からだったんだ…。  
そんな事を思いながら緩慢な動作のままベッドからのそりと起き上がります。  
「制服はクローゼットに置いてあるから早く着替えろよ。遅刻しちまうぞ」  
「ふぁ〜い…」  
兄さんが入れてくれたのだろう、ホットミルクの入ったマグカップを手に取りまだ朝もやがかる外をぼうっと見ていました。  
 
ことの起こりは2日前。  
私と兄さんは巡礼の旅を終えて、アノスで結婚式を挙げた後のことでした。  
 
あ、実は夫婦になっても私は『ヒース兄さん』と言ってます。  
何だかいつもそう呼んでいたから癖になっちゃって。  
兄さんも『いつもの呼び方でいい』って言ってくれたから今でも兄さんって呼んでるんです。  
 
えーっと。そうそう、結婚式の後の話ですね。  
私たちは新婚旅行を兼ねてアノス市内の観光をしていました。  
そして市内の商店街を一緒に買い物をしていた時に、見たことのない格好をした女の子たちが私の横を通り過ぎて行ったのです。  
紺色の襟と白の生地で出来た上着に同じ紺色のスカート、胸には赤いリボン。  
何故かその格好が可愛らしくて、私は思わずヒース兄さんに尋ねていました。  
「兄さん、あの女の子の格好…」  
「ああ、あれは神学校の生徒たちだな」  
「神学校?」  
初めて聞く言葉に私は首を傾げます。  
「神殿が神の教えを説く人材を育てる為に作った学校だ。いわば魔術師ギルドの神殿版、といったところか」  
「へぇー…」  
私は街角を歩く女の子たちの姿を見ながら呟いていました。  
「そういえばイリーナはこういう場所に通った事は無いんだったな。俺様がお前の家庭教師をしていたからな」  
兄さんの言葉に私はこくり、と頷きます。  
「でもギルドとは違ってあんな衣装を着るんですね」  
「国によって違うけれどな。ああいう風な格好も珍しいかもな」  
そこまで言って兄さんは口元をにやつかせてこっちを見つめてきました。  
 
 
「…イリーナ、ひょっとしてああいう服を着てみたいとか思ってるんじゃないか?」  
「え、何で分かったんですか!?」  
心の中を読まれたのでしょうか、私は驚きの声を上げてしまいました。  
「いや、お前の視線がずーっとあの女の子のほうに向かっていたからな…」  
何だか恥ずかしくなってしまったのか、私の顔がちょっと赤くなっていくのが分かります。  
「よし、ちょっと待ってろ」  
そう言うと兄さんは近くの露天商のおじさんに二言三言話しかけると、私を連れて歩き出しました。  
 
「…成る程、事情は大体分かりました」  
「ただこちらもあまり長居は出来ないので、出来れば1週間程の体験をお願いしたいのですが…」  
あの後に連れて来られたのは、何と先ほどの女の子たちが通っている神学校でした。  
受付で私たちの名前を告げると中に通され、そして学園長らしき女性の方と兄さんが話し合いを始めたのです。  
「もちろん結構ですよ。はるばる遠方から巡礼に来られた方が、さらにファリスの教えを学ぶ為に当学校に興味を持たれた事は  
我が神学校としては大変名誉な事ですから」  
学園長は笑顔で頷きます。  
「では早速明日から…」  
「そうですね…。服の採寸とか教科書の配布もありますので明後日からお越し下さい」  
「という訳だ、イリーナ。1週間ほどじっくり勉強して来いよ」  
 
「…ほへ?」  
あまりの出来事に私は間抜けな言葉を発してしまいました。  
 
 
そして宿に戻る帰り道。  
「兄さん、あまりにも唐突すぎますよ」  
少しじと目で兄さんを見つめる私。  
「すまんすまん。でもこれで憧れの衣装を着る事が出来たから、まぁいいんじゃないか?」  
そう言って兄さんは軽く口笛を吹く。  
「まぁここの生徒よりお前さんのほうが神官としての徳は高いからな。気楽に学んで来いよ」  
「…兄さんは?」  
私が質問を投げかけると兄さんは少々ふて腐れた顔になりました。  
「授業料代わりにここの少等部の指導を頼まれちまったよ。だから一緒に学校に通う事になるな」  
「少等部ですか。兄さんは子どもが好きですからねぇ」  
兄さんの言葉に私は軽く微笑みました。  
「そんな事無いぞ、俺様は孤高の魔術師を目指してイルンダカラナ?」  
私の言葉に動揺しているのか、言葉の語尾がギクシャクしています。  
その姿に私の顔はますます緩んでいくのでした。  
 
そして今日から1週間ほど、私とヒース兄さんは学校に行く事になったのです。  
着替えを済ませ、兄さんの前にその姿を見せます。  
一昨日に見た神学校の生徒の姿。  
今、私は彼女たちと同じ格好になっています。  
そんな私の姿に兄さんは一瞬びっくりした表情になっていましたが、すぐに平静を取り戻し言葉を掛けてきました。  
「…あ、ああ。まぁ全身筋肉ダルマの『ファリスの猛女』も衣装が違えばそれなりに見えるんだな」  
「さりげなくひどい事言ってませんか!?」  
全く、素直じゃないんだから。  
そう思いながらも、抗議の声を上げる私をさらりとかわして兄さんは教師用のローブを羽織りそそくさと外に出て行きます。  
「早くしないと遅刻するぞー」  
「ま、待ってよ兄さん〜!」  
私は慌てて後をついて行くのでした。  
 
 
「じゃあ兄さん、行って来ますね」  
学校の校門の前で私と兄さんはそれぞれ違う校舎に移動します。  
「ああ、頑張って来いよ。お前の事だから授業中に居眠りとかするんじゃないかと心配だが」  
「もうー、そんな事ないです!ちゃんと授業受けます!」  
そんな頬をぷっくり膨らませる私の頭を微笑みながら撫でる兄さんを見てると何故か嬉しくなってしまって。  
「兄さんもしっかり頑張って下さいね!」  
そして私は学校に向かって走り出していきました。  
 
「イリーナ・フォウリーさんです。今日から1週間、ここで皆さんと一緒にファリスの教えを勉強していただきます」  
学校に着くなり、担当になる教師に教室まで連れられ皆の前で自己紹介をする羽目になりました。  
「えっと…イリーナ・フォウリーです。オーファンから来ました、短い間ですがよろしくお願いします」  
そして用意された席に座り早速授業を受ける事になりました。  
授業はいろいろあって、ファリス神の定義を学ぶ授業やアレクラストの歴史、さらには聖歌合唱や  
私の苦手な数学の時間までありました。  
 
あ、もちろん頑張って全部しっかり聞きましたよ?  
…数学の時間はちょっと睡魔と戦ってましたけど。  
 
さらに休み時間になるとやはり初めての生徒に興味を示しているのか、私の周りにはいろんな人が集まってきました。  
「ねえねえ、オーファンってどんな所?」  
「私たちと同じ歳なのに巡礼の旅ってすごいねー!」  
「朝に校門の入り口で喋ってた男の人、あなたの恋人?」  
次々と出てくる質問にしどろもどろになりながら答えていく私。  
 
結局、学校が終わる頃には身も心もくたくたになっていました。  
「が、学校ってこんなに大変なところなんだ…」  
そして肩も凝っていないのに肩をぐるぐる回して首をこきこきと鳴らしてしまいます。  
「何を年寄りじみた事してるんだ?」  
突如、後ろから聞こえる声。  
私はびっくりしてその声の主の方向に振り返りました。  
「ヒース兄さん!」  
「その様子だと相当大変な目にあったみたいだなー」  
いつもの笑顔で私に語りかける兄さん。  
「本当に大変でした…。授業は良かったんですけれど、いろんな人から質問されて…疲れました」  
兄さんは私の愚痴を聞きながらうんうんと頷いています。  
「でも満更でもないって顔しているぞ?」  
「えへへ…」  
そう言って私は苦笑いをする。  
事実疲れる事も多かったけどそれ以上に楽しい事も多かったし。  
「さて、今日はもう宿に帰って休むか…」  
兄さんの言葉に私は頷くと夕焼けに照らされる街並みを手を繋いで帰りました。  
 
 
夕食を取って部屋に戻り、ゆっくりとくつろぐ私たち。  
そう、この時間は私とヒース兄さんだけの時間。  
いつも兄さんは私に「ん」とだけ囁いてお互いの身体をぎゅっと抱きしめてキスをしたり、そのままベッドで愛し合ったり。  
私にとって一番幸せな時間です。  
「兄さん、今日はどうするんですか?」  
私はベッドの上に寝転んでいる兄さんの隣に寄ってその顔をじっと見つめます。  
「んー…。確かお前、その服の替えはあったよな?」  
少し兄さんの表情が妖しくなります。  
「ひょっとして…この格好でしちゃうんですか?」  
私の言葉に兄さんは顔を赤くしながらそっぽを向いて僅かに頷くだけ。  
恥ずかしがるその姿に何だか愛しさを感じちゃいます。  
「…いいですよ。いつもとは違う格好だから私もどきどきしちゃいます」  
そしてその唇をゆっくりと塞ぎました。  
 
兄さんに抱きかかえられるような格好になりながら首筋に優しくキスをされます。  
「ふぁっ…」  
全身にぞくっとくる感覚が気持ちよくて思わず声が出ちゃいました。  
その手は服の上から私の胸をゆっくり触っていきます。  
「あっ…」  
その度に私の口からはいつもとは違う、いやらしい声が漏れるのです。  
「いつもと違う格好だからなー、俺も何かどきどきしそうだなー」  
もう、はぐらかしちゃって。  
兄さんの心臓はすごく早くなっているのが背中越しに伝わっているのが分かります。  
胸、首筋、太もも。  
いろんなところを触られる度に身体がじんじんしてきて。  
私の大事な部分はもう下着から染み出すほどエッチなお汁が溢れ出てきちゃいます。  
「イリーナ…」  
「ヒース兄さん…」  
もう一度交わす、情熱的なキス。  
舌を絡めあって、お互いの唾液に塗れて。  
 
そして兄さんはそっと私のスカートの中に右手を入れてきました。  
「お前の中、やけどしそうな位熱くてびしょびしょだぞ?」  
「いやっ、恥ずかしい事言わないで下さい…」  
兄さんの言葉でさらに出てくる熱い蜜。  
それはスカートにも染み出していき、兄さんの身体にも付いてしまいます。  
「兄さんが、汚れちゃいます…」  
「お前のものなら汚れても構わない。もっといっぱい出しちまえ」  
そう言って私の恥ずかしい部分を何度も弄くります。  
「ああっ!」  
あまりの快楽にぴゅる、と音を立てて噴き出す液体。  
「兄さん、気持ちいいです…!」  
「すごいな、まるでおもらししたみたいだな」  
兄さんはそんな言葉を私の耳元で囁きながらぐちゅぐちゅと音を立てさせて私を攻め立てます。  
もうスカートは濃い紺色の染みが出来ていて、太ももの内側も恥ずかしい液体で溢れていました。  
 
兄さんの左手は私の胸を服の下から強く揉みしだきます。  
私の胸の先っぽの部分を抓られる度に全身を快感が支配していくのが分かりました。  
「にい、さん…!」  
まるで熱にうなされたような感覚。  
もう下半身は私のものであってそうじゃないみたい。  
口から出てくる言葉はいつもの私からは想像も出来ないものでした。  
「駄目ですっ、いっちゃいます…!」  
兄さんの声が聞こえてきます。  
「いいぞ、いつもの様に思いっきりいっちまえっ!」  
その右手が私の一番敏感な部分を抓りあげました。  
「ああっ!いくっ、いくっ!」  
あまりの気持ちよさに私の意識が断続的に途切れました。  
下半身が一瞬強張り、そして。  
 
ぷしゅうううう…!  
スカートの中から出てくる温かい液体。  
「あ、あああ…」  
快楽とか恥ずかしさとか、いろんな気持ちが混ざっているのに口からはちゃんとした言葉が出てこない。  
私のスカートは濡れていないところは無いほどにぐしょぐしょになり、足もその液体に塗れて。  
シーツも黄色く染まり、何より下で私を支えてくれたヒース兄さんのズボンが同じように濡れてしまいました。  
「おー、そんなに気持ちよかったのか?」  
嬉しそうな顔で私を見つめる兄さん。  
でも私は兄さんの身体を私のもので汚してしまった申し訳なさでいっぱいでした。  
思わず目から零れ落ちる涙。  
「兄さん、ごめんなさい…」  
「何で謝るんだ?」  
私の嗚咽に混じった言葉に兄さんは向かい合う形になって、そっと舌で涙を舐めとります。  
「だって、兄さんの服汚しちゃった…」  
「いいよ、お前の気持ちいい姿が見れたんだから」  
そう言うとおもむろにズボンのチャックを開ける兄さん。  
「わ…。すごく大きいです…」  
「お前の姿を見たらこうなったんだ」  
そして私の目の前にその大きなものを突きつけます。  
「いつものように…いいか?」  
兄さんの言葉に私はこくり、と頷くとゆっくりそれを口に含みました。  
 
熱く脈打つ兄さん自身。  
「んっ…ふうっ」  
自分の舌と手を使ってそのモノをしごき始めます。  
「うぉっ…」  
兄さんの口から漏れる声に私は上目遣いでその顔を見ます。  
(兄さん、気持ちよさそう…)  
顔を赤らめ、本当に気持ちよさそうな表情を浮かべる兄さんを見て、私の大事な部分がまた疼き始めました。  
私はぴくぴくと波打つ兄さん自身を何回も愛撫し、唾液塗れにしてあげます。  
先っぽをぺろりと舐めて、根元から先端に掛けて舌を這わせ。  
その度に兄さんの色っぽい声が耳に入ってきます。  
私にしか見せない表情、そして甘い声。  
兄さんの言葉がまるで魔法がかかったみたいに私の身体を蝕んでいく。  
でも決して嫌な気持ちじゃなくて。  
再び私の下半身からは熱い蜜は溢れ出し、スカートから染み出していきます。  
 
「イリーナ、もう出ちまう…」  
兄さんもそろそろ限界に近づいてきたみたいです。  
それでも私は兄さん自身を前後に激しく動かします。  
「う、わっ…!駄目だっ…!」  
兄さんの喘ぎ声と同時に、私の口の中に熱いどろっとしたものが溢れてきました。  
「んっ!んぷっ!」  
口の中が一気に兄さんの出したもので一杯になり、思わず兄さん自身を離してしまいます。  
それでもまだ出し足りないのか、自身の先から白い液体を噴き出させて私の顔や髪の毛、上着とリボン、  
さらにスカートにまでかかり、服も私自身も白く汚れていきました。  
それと同時に痺れるような快感に私の下半身が反応して、残っていた泉がまたスカートの中に溢れます。  
お漏らしをしながらも私は口の中に残っていた兄さんの出したものをごくり、と飲み込みました。  
「イリーナ、お前…!」  
驚いた顔で私を見る兄さん。  
「…えへへ、飲んじゃいました。ちょっと苦いですけど…でも兄さんのだから美味しいです」  
笑顔で答える私を見て兄さんは何も言わずその身体を押し倒してきました。  
 
「イリーナ」  
真っ直ぐな視線で私を見つめるヒース兄さん。  
もうその顔を見るだけで私は全てを捧げたくなります。  
「兄さん…私の中に、兄さんを入れてください…」  
多分淫らな表情になっているであろう私の言葉に兄さんはゆっくり頷いて、また大きくなった自身を  
私の熱い部分に擦り合わせます。  
「あ、んっ…」  
いやらしい声を上げる私。  
その部分からまた蜜がぴゅっと噴き出しました。  
そして兄さんのものが一気に私の中に入っていきます。  
「ああんっ!」  
私を抱きしめながら何度も激しく突きたてる兄さん。  
「イリーナ、イリーナっ!」  
「ヒース兄さんっ…!」  
お互いの名前を叫びながら求め合う私たち。  
もう着ている服は私たちの出したものに塗れて、とても悲惨な状態になっているのにそれが何故か嬉しくて。  
激しいキスを交わしながら、私の奥まで兄さんのものが入っている。  
私はもう何回いったのだろうか、それでも足りなく感じてしまう自分がいました。  
 
「にいさんを、わたしにっ…!」  
腰からは激しい水音が聞こえ、お互いの身体は大きく上下に動いていく。  
もう頭の中は真っ白になって、何を言っているのかも分からなくて。  
「いりー、なっ…!」  
「にいさ…あああっ!」  
そして、お互いの身体を痛いほどに抱きしめながらも、まるで弓のように身体をそらす私。  
兄さんのものが私の中に溢れ、私から放たれたものが私と兄さんを再び汚していきます。  
私たちはそのままベッドに倒れこむように横たわり、荒い息をつきながら彷徨の表情の兄さんの唇を塞ぎました。  
「兄さん、好き…愛してます」  
その言葉に兄さんは照れくさいのか、激しいキスでお返しをしてきます。  
私もまた同じように舌を絡め合うのでした。  
 
学校の体験が終わってもたまにその格好で愛し合います。  
どうやらヒース兄さんが気に入ったみたい。  
私もそれを着て出かけたりする時があります。  
だって何だか女の子っぽくて可愛らしいんだもん。  
そして、その格好になる度に兄さんから『うむ、何もしなければ女の子っぽく見えないことも無いな』とか言われます。  
もー、本当に素直じゃないんだから。  
 
でも、こんな兄さんだから私は好きになったのかもしれません。  
こうやって一緒に居れる事が一番の幸せなんです…。 

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