「えっ・・・そ、それは・・・」 
サティアはあまりに意外な問いかけに、一瞬頭が真っ白、そして顔は真っ赤になってしまった。  
二人きりで相談に乗って欲しいことがある―――レイハからそう持ちかけられたとき  
サティアは「またリュクティさんと喧嘩でもしたのかしら・・・」と思った。実際、二人が  
付き合っていると周囲に知られるようになってからも、喧嘩―――というより、リュクティが  
一方的にレイハを怒らせ、呆れさせているだけとも言う―――は日常茶飯事で、シャディをして  
「あれがあいつらの恋愛表現なのかね・・・」と言わしめた程である。しかし先日の一件  
以降は、それなりに落ち着いているようにも見えたのだが。  
何はともあれ、彼女自身、相談事を受けるのは嫌いではない。そこで時間をとって  
自室にレイハを招き、「相談」とやらを聞くことになったわけだが・・・その内容を聞いたサティアは  
不覚にも冒頭のようなリアクションを取ってしまった、というわけである。  
 
「・・・すまない。困らせるつもりではなかったのだが・・・」  
相談を持ちかけたレイハの方も心なしか顔が赤い。 
「こういうことは、サティア以外に相談できる相手がいなくて・・・」  
相談内容はこうだ―――「サティアはその・・・既婚者で、娘もいるわけだから、当然、経験は  
あるわけだよな。・・・そこで訊ねるのだが、その・・・男性というのは・・・一体どれくらいの間隔で  
求めてくるのが普通なのだ・・・?」―――普段の彼女からは想像できない、何とも歯切れの悪い  
口調である。  
一方のサティアも、困惑と動揺から立ち直れずにいた。最初はからかわれているのか、それとも  
ノロケてるのかと思ったが、レイハの性格からしてそれはありえない。  
「・・・どうして、そんなことを・・・」  
このまま固まっていても仕方がないので、とりあえず当然の疑問を口にする。まあ、だいたいの  
想像はつくのだが・・・  
「いや、・・・その・・・」恥ずかしいのか、少し言い淀む。「・・・リュクティが・・・割と頻繁に・・・  
求めてくるのだが・・・」  
―――私には今までそういう経験がなかったので、どれくらいの間隔でするのが普通なのか  
わからない―――それに周囲の目もある。そうそう求められるままに応じるのも―――ということ  
らしい。  
そこで経験者の意見を拝聴しよう・・・ということになったのだが、サティアとしても何と答えていいか  
わからなかった。自分のこと――かなり昔の話ではあるが――を話すのも恥ずかしいし、何よりこれは  
二人の問題で、第三者があれこれ口を出すべき問題ではない、そんな気もしたのだ。ただ、せっかく  
相談を受けたのに、答えらしい答えを出せない、というのも何だかレイハに悪い気がした。迷って答えが  
出ないからこそ、わざわざ自分のところへ相談に来たのだから。そこで答えを出すべく、いくつか質問を  
ぶつけてみることにした。  
 
「リュクティさんとしたのは・・・この間が初めて?」  
黙って頷くレイハ。なるほど、やはりそうだったのか・・・尻を叩いた甲斐があったわね・・・と妙な  
感慨にふけるサティア。彼女も相当のお節介焼きである。――あの時からまもなく一月が  
経とうとしている――そんなことを考えながら質問を続ける。  
「それで・・・リュクティさんは・・・どのくらいの間隔で求めてくるの?」  
何とも下世話な質問である。こういうことを訊くのは気が引けるが、致し方ない。  
「だいたい週に・・・一度か二度・・・くらいだろうか」  
その答えを聞いて考え込むサティア。・・・恋人同士ということを考えると多いような  
気もするが、この間が初めて、ということを考えると、レイハを求めるリュクティの気持ちも  
わからなくはない。  
「で・・・実際にしたのは・・・」  
サティアの問いに、レイハはためらいがちに答える。  
「いや・・・あれからは一度もしていない・・・一緒に住んでいるわけでもないし・・・その・・・  
そういうことをする宿に入るのは・・・気が引ける」  
「・・・!」驚きが思わず顔に出てしまう。彼女の性格上、連れ込み宿に入るのが嫌だ、というのは  
わかるが、リュクティがあれからずっとおあずけを食っているのは、さすがに気の毒に感じる。  
「そういうところに入るのは別として、あなたはリュクティさんと・・・したいの?したくないの?」  
したくない、ということは無いだろうが、一応確認のために訊く。  
「いや・・・そんなことはないのだが・・・」  
・・・互いに普段は相部屋だし、それに時と場所を考えずに迫られるのも・・・ということらしい。  
「うーん・・・」サティアは考えた。するのはやぶさかではない、ただ連れ込み宿に入るのは嫌、かといって  
自分たちの部屋にはルームメイトがいるから迷惑が掛かる・・・しばらく考えていたサティアは、あることを  
思いついた。・・・これなら二人の問題も解決できるかも知れないし、サティア自身が常日頃から悩んでいる  
全く別の問題の解決にも(微力ではあるが)一歩前進する。まさに一石二鳥のアイディアだった。  
 
 
「や、どうしたんだ、サティアさん。こんな店の前で」  
夕刻――常宿である<牢獄亭>に戻ってきたリュクティを、店の前でサティアが捕まえる。  
「リュクティさん、宿代のツケのことなんですけど・・・」  
サティアの言葉に後ずさるリュクティ。「いや、今は持ち合わせの方が・・・」  
「リュクティさん・・・!」精一杯しかめっ面を作るサティア。しかし持ち合わせがないという  
リュクティの反応は予想通りである。そこで本題を切り出す。  
「・・・仕方がありません。宿代のことはいいです。ただし、代わりといっては何ですが  
仕事をひとつ引き受けてくれませんか?」  
仕事?不思議そうな顔をするリュクティにサティアは続ける。  
「<草原の憩い亭>のバレットさんが、なんでも料理で使う香辛料が必要だとか。いつもは  
タラントの馴染みの商人から仕入れているらしいのですが、その商人がしばらく顔を見せなく  
なったらしくて・・・」  
<草原の憩い亭>――元冒険者のザウエル・バレットが経営する宿屋で、レイハとボウイが  
常宿にしていることから、バレットと「ナイトブレイカーズ」の面々は顔なじみである。料理に東方風の  
味付けを施すに当たって、特殊な香辛料が必要だ――という話はリュクティも聞いたことがある。  
「で、タラントまでおつかいに行って来てくれ、と?」  
「はい。あと、タラントの知り合いに届けて欲しいものもあるそうです。詳しくはバレットさんから  
聞いて下さい。明日の朝一で行くと伝えているので、寝坊せずに行って下さいね」  
「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ」驚くリュクティ。「今すぐ俺ひとりでタラントまで行くの!?」  
「いえ、一人での山脈越えは危険です。だからレイハさんとあなたで向かうとバレットさんには  
言っています。二人なら大丈夫でしょう?」  
考える顔になるリュクティ。・・・レイハと一緒・・・確かに魅力的な条件だが、最近の  
運動不足の体に山脈越えはきつい・・・  
「嫌だったら結構。いますぐ宿代を払ってもらうだけです」  
サティアの厳しい言葉に、リュクティは降参するしかなかった。  
 
翌朝、旅支度を済ませたリュクティが<草原の憩い亭>に着くと、店の前で今回の  
依頼人であるバレットが待っていた。  
「悪いな。本来は自分で行かなきゃならんのだが、俺ももう若くないし、店を空けるわけにも  
いかないんでな」  
元冒険者であるバレットなら、山脈越えの行程もこなせないことはないが、店のことと  
万が一のことを考えると、やはり報酬を払ってでも現役の冒険者を雇った方が確実と言えた。  
「で、タラントに行って、何をしてくればいいんだ?」  
「ひとつは香辛料の仕入れ。リストはこれだ」紙切れをリュクティに渡す。「もうひとつは  
届け物だ。タラントの冒険者の店にこれを届けてくれ」  
そういって両手の平サイズの箱を手渡すバレット。  
「ベルダインのバレットから届け物だ、と言えばわかる」  
「わかった」  
中身について少し気にはなったが、バレットが言わないのならわざわざ詮索する必要も  
ないだろう。  
「必要経費のほうはレイハに渡してある。お前さんに渡すと何に使うかわからんからな」  
「・・・そういえば、レイハは?」  
「旅に使う馬を借りに行っている。もうすぐ戻ってくると思うが」  
そうこう言っているうちに、二頭の馬を引いたレイハが戻ってきた。  
「すまない。遅くなった」  
「なぁに、こいつもさっき来たところだ」とリュクティを指さし答えるバレット。「首尾はどうだった?」  
「ああ、なかなか良い馬を借りることができた。少々値は張ったが、これならクロスノー山脈の  
整備されていない道を進むのもそこまで苦にはならないだろう」  
草原の民であるレイハの馬を見る目は確かである。レイハが連れてきた二頭の馬は、見栄えこそ  
良くないものの、なかなか頑丈そうに見えた。確かにこれなら少々の山道も苦にはしないだろう。  
「特に期間は設けないが、なるべく早く戻ってきてくれ。香辛料の残りも少ないんでな」  
そう言って、出発の準備を終え馬上の人となった二人の顔を見上げたバレットは、ニヤリと笑って  
一つ付け加える。  
「まあ、お前達はゆっくりと二人きりの旅を楽しみたいのかも知れんが・・・」  
 
(まったく、バレットのオッサンが最後に変なことを言うから・・・!)  
馬上で毒づくリュクティ。ベルダインの市街地から離れてしばらく経つが、出発間際のバレットの言葉が  
耳から離れない。おかげで二人のあいだを流れる空気もどことなくぎこちない。  
一方のレイハも、サティアから「二人きりでどこかに行ってみては?」と言われて、一度は  
「皆に迷惑が掛かるし、遊んでもいられない」と断ったが、「だったら冒険者として二人で  
仕事を受ける、という形ならどうかしら。二人旅なら周囲の目を気にする必要もないし――  
あなたたちに必要なのは、そういう時間じゃないかしら」・・・こうまで言われては降参するほか無い。  
これは仕事なのだ――自分にそう言い聞かせて出発しようとしたところでバレットのあの  
言葉である。何だか自分の心の奥底を見透かされたような気がしてひどく落ち着かない。  
交わす言葉も少ないまま、二人はタラントに向けて馬を進めたが、次第に太陽は西に傾き、気温も  
ぐっと下がってきた。無理して進まなければならない行程でもない。二人は街道から少し入った所にある  
小さな池の畔で野宿をすることにした。  
 
(・・・いかん。もう我慢の限界かも知れない・・・)  
テントの設営を終え、芝生の上に座ってぼんやりと満天の夜空を眺めていたリュクティは、ため息を吐きながらそう独りごちた。出発して半日、否、ここ最近ずっとだ――考えることといったらレイハのことばかりである。  
将来をどうするか――そういったまともなことも考えないわけではないが、やはり思考の中心はどうしても  
「どうやって二人きりになって楽しむか」ということになってしまう。  
 
――思えばああいう不完全(?)な形でレイハと結ばれてからの一月弱、リュクティにとっては  
苦難の連続であった。シャディと顔を合わせば「ちゃんとできたのか?この色男」と冷やかされるし  
(ちゃんとできなかっただけにより腹立たしい)、ボウイの態度もどことなくよそよそしい。 
何よりいけないのは、あの時以来一度もしていないということだ。ベルダインにいる限りは互いに別々の宿だし、一度そういうことをする宿に連れ込もうとしたら「私をシャディみたいな女と一緒にするな!」と激怒し、三日も口を利いてくれなかった。  
それならばとティリーが留守の間に自室に誘ったが、あまりの部屋の散らかり具合に  
「ティリーが気の毒だとは思わないのか」と叱られ、半日近くかけて部屋の片づけをする羽目になった。  
日に日に欲求不満は募る一方・・・そこで今度は人目のつかないところに呼び出して「その・・・出来ないならせめて・・・口でしてくれないか」とお願いしたところ、「変態!」の言葉とともに目から火の出る痛烈な平手打ちを喰らった。――何もかもが裏目。手詰まりとなったところで今回のタラント行きである。  
ここが千載一遇のチャンスと考えるのは当然といえば当然である。道中歩を進めているときは我慢もできたがいざ街道から離れ、人里離れた場所で野営・・・となると、もうレイハのほうをまともに見ることが出来ない。  
押し倒したくなるのを我慢するのが精一杯である。しかしレイハのほうはそんな苦悩を知るよしもない。  
少し離れた場所で馬の世話をしていたが、ぼんやりと空を見つめたままのリュクティを見ると、  
「どうした。調子でも悪いのか?」  
と声をかける。  
「ああ、いや・・・何でもない」  
突然話しかけられてびっくりしたが、本当のことを言うわけにもいかない。適当にごまかしたものの  
そんな様子を不審に思ったのか、レイハは馬を世話する手を止め、こちらに近づいてくる。そして  
リュクティの横に座ると  
「調子が悪いのなら、あまり無理をするな」  
顔を覗き込んで優しく声をかける。息がかかるほどの近さにあるレイハの顔――リュクティの我慢は  
限界を超えた。レイハを引き寄せると、強引に唇を重ね、芝生の上に押し倒す。  
 
驚きに目を見開くレイハ。しかし抗うことはせずに、口内に侵入してくるリュクティの舌と自らの舌を  
絡め合わせる。その時にリュクティと目が合い、羞恥から思わず瞳を閉ざす。  
それを肯定のしるしと受け取ったのか、上着の裾から手を入れて、肌着越しにレイハの胸をまさぐる。  
「・・・っ!」  
荒々しい刺激に体が震える。唇を離すと、どちらのものともつかない唾液が絡み合う。  
「いきなりは・・・ひどいぞ・・・」  
非難の声をあげるレイハ。ただ、その口調は柔らかい。  
リュクティは何も答えずにレイハの耳に舌を這わせる。その間も手の動きは止めずにレイハの上着を  
剥ぎ取り、肌着をたくし上げる。そして、露わになった胸を直に愛撫する。  
「んんっ・・・くっ・・・!」  
自らの指を咬み、声を上げまいと必死に堪える。その様子を見たリュクティは耳から  
舌を離し、囁く。  
「声を・・・聴かせて欲しいんだ・・・」  
(そんなこと言われても・・・もし誰かに聞かれたら・・・)  
周囲に人の気配はない。ただ、声をあげると他人に気づかれてしまうのではないか、という不安が  
心を苛む。しかしリュクティは、  
「大丈夫。誰もこんなところに来やしないさ・・・」  
そう囁き、耳朶を軽く咬むとそのまま舌を首筋に這わせ、愛撫によって先端が硬くなった双丘を  
口に含み、強く吸い上げる。  
「・・・ぅあっ・・・!」  
刺激に堪えきれず声を漏らす。一方のリュクティはしばらく胸の感触を楽しんだあと、レイハのズボンを  
降ろそうと、両手を腰に回す。  
「そんな・・・ここで・・・するのか・・・?」  
思わず抗議の声をあげる。しかしリュクティは手の動きを止めようとしない。  
「せめて・・・テントの中で・・・んんっ・・・!」  
抗議の声はリュクティの唇によって塞がれる。その間にベルトが外され、ズボンと体との間に  
できた隙間にリュクティの左手が差し込まれ、下着の上から秘所を愛撫される。  
「・・・!」  
唇を塞がれたまま刺激に身を震わせる。その間にも愛撫はだんだんと強くなっていく。  
 
やがて唇を離すと、愛撫を一時中断し、両手でレイハのズボンを降ろす。  
「・・・っ・・・卑怯・・・だぞ・・・」  
なおも声をあげるレイハ。だが抵抗する力はもう残っていない。  
リュクティはレイハの両足を開かせて、その間に体を入れる。そして下着に手をかけ、ゆっくり  
外すと、レイハのそこはうっすらと濡れていた。その淫靡な光景に思わず目を奪われる。  
「きれいだ・・・」  
リュクティはそう呟くと、顔に秘所を近づける。  
「・・・そんな・・・っ・・・!汚い・・・やめ・・・っ・・・!」  
拒絶しようとするが、羞恥と刺激でほとんど声にならない。  
リュクティの舌は無造作に茂みをかき分け、突起に触れる。  
「ひあっ・・・!」  
ひときわ高い声をあげ、レイハが震える。  
「・・・感じるのか・・・」  
「・・・っ・・・!触るな・・・っ!」  
その様子を見たリュクティは、指で突起をつまむ。  
「ああっ!・・・やめて・・・っ・・・!」  
普段の凛としている彼女からは想像できない喘ぎ声に、リュクティの興奮は高まる。  
「すごい・・・こんなに濡らして・・・」  
ふたたび秘所をまさぐったリュクティが思わず声をあげる。一方のレイハは恥ずかしさに目を伏せる。  
その様子に我慢が出来なくなったリュクティは、ズボンと下着を脱ぎ、レイハを後ろ向きにして  
四つんばいの格好にさせる。  
「や、やめろ、・・・こんな・・・獣みたいな・・・」  
羞恥に体を震わせるレイハ、しかしリュクティは構わず、パンパンに張った自分のものを  
レイハの秘所にあてがうと、ゆっくり押し開くように挿入する。  
「ふあっ・・・!・・・ああ・・・」  
自分の中に入り込んでくる感覚・・・痛さは感じるが、最初の時ほどではない。  
すべてが埋まったところでリュクティは動きを止める。  
 
(これが・・・レイハの・・・膣内・・・)  
何もしなくても達しそうになる。だがここで流されては最初の時と同じだ。  
一つ小さく深呼吸して気持ちを落ち着けると、ゆっくり出し入れを開始する。  
「あ・・・んぁ・・・!・・・くぅ・・・んんっ・・・!」  
屋外で・・・しかもこんな獣のような格好で・・・そう思いながらも、沸き上がる快楽には抗えない。  
無意識のうちにリュクティの動きに合わせて自らも腰を動かす。  
徐々に二人の官能は高まっていく。その高まりに押されるように、リュクティは腰の動きを早める。  
「いや・・・っ・・・!・・・うああっ・・・!」  
激しい刺激に、レイハの膣内がより一層締め付けを増す。流されそうになるのを堪えながら、  
リュクティはレイハの腰に当てていた手を離し、後ろから胸を激しく愛撫する。  
「リュクティ・・・!私・・・っ・・・!もう・・・!」  
息も絶え絶えに訴える。その声に応えるように、リュクティも動きを激しくする。  
「あっ・・・!だめっ・・・!・・・あああああっっ!!」  
ビクッとレイハの体が震え、絶頂に達したと同時に、リュクティも堪えていたものをレイハの中に放つ。  
「・・・っ・・・あ・・・」  
自分の中に注がれる感覚に、吐息混じりの声を漏らすレイハ。  
二人繋がったまま、激しい行為の余韻に浸る。  
「はぁ・・・」  
一つ息を吐き、リュクティはレイハの中から自らのものを抜き取る。  
そこからは、どろりとした残滓が流れ出し、レイハの太腿を伝って流れ落ちた。  
 
「・・・レイハ・・・」  
しばらくして、おずおずとリュクティが声をかける。  
「・・・なんだ」  
顔を背けたままレイハは応える。  
「・・・怒ってる?」  
単刀直入なリュクティの問い。レイハは、はあ・・・と心の中で一息吐く。  
リュクティは続ける。  
「その・・・すまない。・・・どうしても我慢できなかったんだ・・・」  
「・・・別に謝らなくていい」  
レイハはそう言うと、顔をリュクティのほうに向けて続ける。  
「私も・・・お前が我慢しているのは・・・その・・・知っていたし・・・。ただ、あまりにも強引だったから・・・少し驚いただけだ・・・」  
言い終えると、レイハはリュクティに身を寄せる。「少し冷えたな・・・それと・・・」  
頬を赤らめて続ける。  
「何か・・・拭くものはないか・・・?」  
その言葉の意味するところがわかり、リュクティのほうも赤くなる。上着のポケットからハンカチを  
取り出す。しかしレイハには渡さず、片足を持ってレイハの足を開く。  
「何を・・・」  
レイハが言い終わらぬ内に、リュクティはレイハの中から太腿に流れ出した残滓を丁寧に拭き取る。  
「あっ・・・!やめ・・・っ・・・!」  
その感覚に思わず声をあげるレイハ。しかしリュクティは手の動きを止めずに、中からまだわずかに  
流れ出る残滓を掻き出すように拭き取る。  
「はぁ・・・はぁ・・・」  
レイハから熱い吐息が漏れる。その姿を見たリュクティは、自分のものがふたたび硬さを  
取り戻すのを感じた。そしてレイハの耳元で囁く。  
「・・・もう一回したい」  
「ダ、ダメだ・・・!」あわてて制止するレイハ。「せ、せめて今度はテントの中で・・・」  
リュクティはその提案を受け入れた。  
 
 
「・・・まったく・・・初日からこれでは思いやられる・・・」  
翌朝、タラントへ向けて再び出発した二人だったが、馬上のリュクティは未だに半分眠っている  
状態だ。  
「・・・少しは旅の途中だということを考えたらどうなのだ」  
レイハの口調は厳しい。  
昨晩はあれから三回も・・・明日のことがあるからという制止も聞かずにリュクティは求めてきた。  
「・・・よく君は平気だな・・・」  
恨めしそうにレイハのほうを見るリュクティ。その情けない言葉にレイハの堪忍袋の緒が切れる。  
「私だって平気ではない!それに・・・こうなったのは誰のせいだと思っている・・・!」  
「いやー・・・すまん」  
一応謝るが、大して悪びれる様子もない。「お前という・・・!・・・」  
レイハは何か言いかけたが、途中で言葉が途切れる。  
(・・・あっ・・・昨晩の・・・)  
昨晩の名残が不意に下りてきて、レイハの下着を濡らす。それと同時に、記憶が頭の中を  
反芻し、思わず赤面する。  
「・・・どうした?」  
その様子を訝しんで、リュクティが声をかける。  
「・・・何でもない!」  
そう強く言い返すと、馬のスピードを上げ、リュクティから離れる。  
「・・・っておい、待ってくれよ!」  
リュクティも慌てて追いかける。  
――彼らの旅は、まだ始まったばかりだ。  
 
 
了  

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