いつものように酒場のお姉ちゃんにちょっかいを出すリュクティ、それを生暖かい  
目で見守るレイハ、シャディ、サティア、ボウイの四人。シャディがレイハに対して声をかける。  
「おい、放っといていいのか?アレ」  
「知らん。私には関係のないことだ」  
「冷たいねぇ。あんた達、一応恋人同士なんだろ?」  
「・・・大きなお世話だ」  
「ま、そりゃそうだけどさ。なんかさー・・・最近雰囲気悪くない?あんた達。  
リュクティはあんたを避けてるみたいだし、あんたはあんたで前にも増してリュクティに冷たいし」  
横に座っているサティアとボウイも、口には出さないが思っていることは同じだった。  
人前でベタベタするのは私の性に合わない――以前レイハはそう語ったことがある。  
それはそれで理解できるが、最近のリュクティに対する態度はいささか冷たすぎると  
言えなくもない。リュクティがレイハを避けるような態度を見せてるのも気になる。  
しかしそんなシャディ(と他二人)の疑問にも  
「そういうことは私ではなくリュクティに言ってはどうだ。私を避けてるのはあっちなのだからな」 
と言い残して席を立ってしまった。  
残された三人は言葉もなく互いに顔を見合わせた。  
 
 
「・・・まったく!何さ。せっかく人が心配してやってるって言うのに!」  
沈黙を破ったのはやはりシャディだった。レイハの言うとおり、大きなお世話だというのは  
百も承知だ。二人が恋人同士になってからしばらく経つが、レイハが素っ気ないのも、  
リュクティが女にちょっかいを出すのも、いつものことと言えばいつものことである。  
しかしここ数日の雰囲気の悪さといったら何なのか。  
「ボウイ、あんたレイハと同室でしょ?何か変わったことはなかった?」  
ボウイはメンバーの中でレイハとの付き合いが一番長い。宿の部屋割りでも一緒になることがほとんどだ。  
しかしそんなシャディの問いに対してボウイは、  
「・・・さぁ・・・ボクが見る限り、特に変わったことはなかったけど・・・」  
「けど?」シャディが先を促す。  
「・・・強いて言うなら、最近何かにイライラしているような・・・そんな感じはする」  
「・・・イライラ、ねぇ・・・」 
ボウイほどレイハとの付き合いは長くないシャディには、そういったところまではわからない。一方、今まで沈黙を守っていたサティアは、結局女に相手にされず、疲れて床にへたり込んだリュクティを見やりながら、  
「リュクティさんもレイハさんも、お互いに不安なんじゃないかしら」 
と呟いた。  
「・・・確かに。今はいいけど、あいつはいずれミラルゴに帰らなくちゃいけない身だし・・・」  
「違います」 
サティアはシャディの言葉を遮るように言った。 
「そういう先のことじゃなくてもっと初歩的なことです」  
「ははぁ・・・」 
シャディにも納得がいったようだ。 
「しっかし、いい年こいてそれは無いって気もするけどねぇ」  
一方色恋に関してはとんと疎いボウイには、何のことかさっぱり分からない。  
「何?どういうこと?ボクにもわかるように説明してよ」 
その疑問に対しシャディは少しぬるくなったエールをあおりながら  
「お互いにウブだってことさ」  
と、なぜか楽しそうに答えた。  
 
〜  
 
そんな下の喧噪はよそに、階上の自室に引き上げたレイハは、独り暗い天井を  
ぼんやり眺めながら、何度目となるかわからないため息をついた。──「あんた達、一応  
恋人同士なんだろ?」シャディの言葉が頭の中で反芻する。恋人同士・・・本当に  
そうなのだろうか?・・・自分は族長の二女として、将来は次期族長である姉を  
補佐せねばならない。そのために、同世代の娘が恋だの愛だのに浮かれているのを  
横目に強さを求め、"戦乙女の紋"を体に宿した。・・・自分にとって、恋や愛と  
いったものは邪魔にしかならない・・・そう思いもした。しかし実際はどうだ。いざ  
自分が他人を愛するようになった時、相手にどう接していいのかひとつわからない。  
人前でベタベタするのは性に合わない──以前にシャディたちの前でこう語ったことが  
あるが、これにしても半分は嘘だ。性に合わないというよりも、そういう「甘さ」を  
他人に見せたくなかっただけに過ぎない。だからリュクティに対して必要以上に冷淡な  
態度を取ってしまう。二人きりでいる時も結局は同じ事だ。・・・最近リュクティが私を  
避けているのも、そんな私の態度に愛想を尽かしただけのことだ。  
「・・・私は自分勝手な女だ」  
そう独り呟いた時、扉をためらいがちにノックする音が聞こえた。  
 
〜  
 
「・・・恋人同士?本当にそう見えるか?」  
シャディたちの座るテーブルに腰を下ろしたリュクティは、先程のレイハと同じ質問に対し、  
力無くこう答えた。  
「じゃあ質問を変える。あんたはレイハの事が好きなの、嫌いなの?」  
シャディの聞き方は何とも直線的だ。酒が入っているのもあるが、元々彼女はこういった  
恋愛話が好きだし、困っている(?)リュクティを放っておけない・・・こう思ったのも  
事実である。ようするに根が人情家でおせっかい焼きなのだ。  
「・・・好きか嫌いかって言われりゃ・・・そりゃ好きに決まってるさ」  
先程より力強くはあるが、その口調はいつもより弱気であることに変わりない。  
その様子にハァ、と一つため息を吐いたシャディは、先程より幾分真面目な口調で  
質問を続けた。  
「・・・じゃあさ。なんでレイハを避けるような態度を取るわけ?」  
「それは・・・」  
「・・・レイハさんの本当の気持ちが分からないから、でしょ」 
サティアの言葉にリュクティは顔を上げる。  
・・・本当の気持ちが分からない。言われてみれば確かにそうかも知れない。  
プロミジーでの一件以来、レイハは自分に好意を寄せてくれている。  
「愛している」とも言ってくれた。・・・ただ、だからといって恋人らしいことを  
してきたかといえば、答えは否だ。「冷たい泥の海」でいいムードになったのは事実だが  
それ以来2人きりになる機会もあまり無かったし、恋人らしいことをしようとしても  
「お前には他にやるべき事がいくらでもあるのではないか?」と言われてしまう始末だ。  
確かに、減りはしたもののいつまで経っても借金はなくならないし、冒険者としては有名に  
なっても、バンドとしての知名度はなかなか上がらなかったり・・・と、指摘はごもっとも  
なのだが、リュクティとて男である。あんなことやこんなことがしたくなるのは当然、とうか  
仕方がない。だからと言って強引に迫ったとしても悲しいかな、レイハのほうが  
腕っ節が強い。返り討ちにあうのが関の山である。  
 
女性に声をかけるのを生きがいとしているリュクティだが、実際に深い仲になったのは  
これが初めてと言っていい。自分の思い描いていた甘い生活とのギャップに戸惑い、  
「自分はひょっとしてレイハに愛想尽かされてしまったのではないか」 
・・・そう悪いほうに考えてしまうのも仕方がないことかも知れない。  
「・・・確かに、何考えてるかわかんないところはあるよなぁ」  
レイハとはまったく異なった価値観を持つシャディがしみじみ呟く。  
「そうかなぁ・・・」 
これはボウイ。 
「ボクにはレイハが何を考えてるのかわかるけどね」  
「何なのさ」 
シャディがちょっとムッとして聞き返す。  
「レイハはリュクティを縛りたくないだけだよ。裸を見せてしまったのも事故みたいなものだって  
言ってたし、それで結婚というのはかわいそうだと思ったんじゃない?」  
「かわいそう、ねぇ・・・」 
嘲りの色を隠そうともせずにシャディは言った。 
「だとしたらあいつは最悪の女だな」   
「どこが最悪だって言うんだよ」 
まるで自分のことのようにボウイが反論する。  
「だってそうじゃないか。自分で勝手に裸を見せといて、勝手に好きになって、挙句の果てには  
勝手に遠ざけようとする。全部自分のエゴじゃないか。リュクティの気持ちはどうなる?  
迷惑もいいところだ」  
ボウイが何か言い返そうとしたが、サティアがたしなめるように、しかしはっきりとした口調で言う。  
「こういうことは、どっちが悪いとか、悪くないとか・・・そういう問題じゃありません」  
そしてリュクティに向かって、  
「一度、レイハさんと二人きりでゆっくり話をしてみてはどう?たぶんレイハさんも、あなたと  
同じことを思っているはずよ」 
さらにサティアは続ける。 
「レイハさんは今ひとりで部屋にいるわ。 
善は急げ、今から行ってらっしゃいな」 
そう言うが否や、サティアはまだうつろな表情をしていたリュクティを立たせ、 
「ほら、しゃきっとなさい!」 
と背中を叩き、レイハの部屋へ向かうように促した。  
その有無をも言わせぬ態度には、リュクティだけでなく、シャディとボウイも言葉が無い。  
とぼとぼとした足取りでレイハの部屋に向かうリュクティを見ながら、サティアは  
レイハと同室のボウイに言った。  
「今晩はリュクティさんと部屋を替わってあげてね」  
 
 
半ば強制的にレイハの部屋に向かうことになったリュクティだが、  
正直なところレイハと顔を合わせても、何を話せばよいのかさっぱり  
わからない状態だった。  
―――「たぶんレイハさんも、あなたと同じことを思っているはず」・・・  
同じこと・・・そう言われてもリュクティにはピンと来ない。  
あれこれ考えを巡らせている内にレイハの部屋の前に到着する。二階の  
一番端にある二人部屋だが、もう一人の部屋の主であるボウイはいない。  
何はともあれ、中に入らないことには始まらない――― ためらいがちに  
扉をノックした・・・  
 
 
・・・レイハは最初、ボウイが帰ってきたのかと思った。しかしそれにしては  
様子がおかしい。  
「・・・鍵は開いている」  
扉の外に向かって声を掛ける。  
扉を開けたリュクティは、明かりのついていない部屋の光景に一瞬面食らう。  
・・・リュクティの姿を目にしたレイハは、一瞬驚いたような表情を見せたが、  
「どうした。ナンパに精を出していたのではなかったのか」  
いつもの冷静な口調で問いかける。  
「・・・そういうレイハこそどうしたんだ。みんなで一緒に飲んでたんじゃないのか」  
我に返ったリュクティは、会話のきっかけを掴むべく逆に訊き返した。  
自分がナンパしている間、四人一緒にいたのは知っていたが、どうしてレイハひとりが  
席を立ったかまでは知らない。その原因の半分以上が自分にあるということなど、  
夢にも思ってもいない口ぶりである。  
 
「・・・お前には関係ないことだ」  
口に出したあとに激しく後悔する。違う!そんなことが言いたかったのではない!  
・・・頭ではわかっている。しかしいざ本人を目の前にすると何故か  
冷たい言葉をぶつけてしまう。  
リュクティも別の意味で後悔していた。やはり怒っている・・・レイハの関心を  
ひこうとあえて目の前で女を追っかけ、レイハを避けるような態度を取ったりしたが  
まるっきり逆効果だったようだ。・・・しかしここで黙ってしまってはいつもと同じだ。  
後悔を頭の隅に追いやり、言葉を絞り出す。  
「関係ないって何だよ・・・俺には話せないことなのか?・・・それとも・・・俺のことが嫌いになったのか・・・? 
だったらはっきり『もうお前の顔など見たくない。二度と私の前に顔を見せるな』って言ってくれ!」  
最後のほうは、なぜこのようなことを口走ってしまったのかわからない。  
だがこれがいい潮時と思ったのもまた事実だ。レイハが自分に愛想を尽かしたなら、  
それはそれでいい。何より振られるのには慣れている・・・。  
対するレイハは返す言葉が見つからない。・・・自分のつまらない意地と態度が  
リュクティを追いつめていた・・・その事実に愕然とした。  
二人のあいだに沈黙が走る。時間にしてみれば一分にも満たないものだったが、二人に  
とっては五分にも十分にも感じられた。その沈黙を破ったのはリュクティだった。  
「・・・すまん。独りで熱くなりすぎたみたいだ・・・今言ったことは忘れてくれ・・・」  
そう言うとリュクティはレイハに背を向け、部屋を出ていこうとする。  
―――「待ってくれ!」  
その声に我に返ったレイハは咄嗟に引き留める。ここで引き留めないとリュクティは  
私の前から姿を消す・・・なぜかそんな気がしたのだ。  
 
「お前は・・・お前のほうはどうなのだ!・・・お前こそ、私に愛想を尽かしたのではないのか?・・・ 
私の態度が気に入らなかったというなら謝る。・・・ただ私は・・・」  
最後の方は言葉にならない。振り返ったリュクティはレイハの瞳に浮かぶ涙を見て  
息をのんだ。・・・泣いている。あのレイハが。俄には信じられなかったが、目の前に立つ  
レイハの瞳から大粒の涙が零れるのを見て、それが現実のことと知る。と同時にレイハを  
引き寄せ、強く抱きしめた。  
 
 
───同じ時刻、階下の三人はというと・・・  
「わわっ!」  
「どうした?」  
突然声をあげ、なぜか頬を赤らめるボウイを見て、シャディが声を掛ける。  
二人のことが気になるシャディは、ボウイに使い魔のアンラッキー(猫)を使って  
窓の外からこっそりと部屋の様子を窺うことを提案した。勿論ボウイとサティアは  
「悪趣味にも程がある!」と猛烈に反対したが、シャディも負けじと 
「ここまでけしかけたんだ。最後まで見届ける義務がある!」と力説する。  
ただ、ボウイとサティアにしても、二人の行く末が気にならないわけではない。  
結局最後はシャディに押し切られる格好になってしまった。  
使い魔で覗き見、といっても、音と映像は当然ボウイにしかわからない。そこで  
ボウイが部屋の様子をかいつまんでシャディとサティアに説明することになるのだが  
レイハの涙はボウイにとっても予想外のものだったし、突然レイハを抱きしめた  
リュクティの行動にもびっくりした。  
「あ・・・」ボウイは何と言っていいのかわからなかった。抱きしめられたレイハに  
拒絶する様子はない。リュクティは抱きしめたレイハの顔を持ち上げ、唇を重ねる。  
さすがに見ていられなくなったボウイは、アンラッキーにその場から離れるよう  
あわてて命令する。  
「おい!一体何があったんだ!?」  
明らかに様子がおかしいボウイを見て、シャディが語気を強める。  
「あっ・・・えーと・・・」  
何とか言葉にして説明しようとするが、目の前でラブシーンを見せられたボウイは  
完全に気が動転してしまった。顔はもう真っ赤だ。  
そのボウイの顔色を見て、シャディもだいたいのことを察した。  
「なるほどね。お子さまのボウイにはちょっと刺激が強すぎた、ってか?」  
いつもならムキになって言い返すボウイも、今回ばかりは事実その通りなので  
何も言い返せない。一方のサティアは、二人のやりとりを見て  
「どうやらうまく行きそうね」  
と、誰にともなく呟いた。  
 
 
重ねた唇が離れると、どちらも照れくさそうに視線を外す。・・・互いに相手の顔を  
これほど間近で見たのは、プロミジーで初めて唇を重ねて以来だった。  
「これが・・・お前の答えなのだな・・・」  
リュクティの左腕に抱かれたままレイハがためらいがちに口を開く。  
「ああ」  
短く、しかしはっきりとリュクティは答える。  
「私はてっきりお前に嫌われたのだと――」  
レイハの言葉は途中でリュクティの唇に塞がれる。さっきよりも長く、激しいくちづけ。  
リュクティは唇から首筋、耳へと唇を移動させるのと同時に、後ろのベッドにレイハを  
押し倒した。そして、自由となった両手で上着の上からレイハの胸をまさぐる。  
「・・・っ!」  
ビクリ、とレイハの体が反応する。しかし手の動きは止むことなく  
上着の留め金を外そうと試みる。  
「ま、待ってくれ・・・」  
乱れた呼吸を整えながらレイハはリュクティの動きを制止し、起きあがる。  
「その・・・自分で・・・するから・・・」  
そして付け加えるように  
「恥ずかしいから、後ろを向いていてくれないか・・・」  
・・・リュクティは我に返り、あわてて反対側を向く。  
衣擦れの音を聞きながら、高まる緊張を抑えようと二度、三度と深呼吸をするが、  
全くうまくいかない。初めて人前で演奏したときもここまで緊張はしなかったと  
いうのに。  
「・・・いいぞ」  
その声にリュクティは振り返る。そこにはレイハの一糸纏わぬ姿があった。  
前にプロミジーで見たときも綺麗だと思ったが、月明かりに照らされた  
白い肌と、その肌に浮かぶ「戦乙女の紋」の美しさは、言葉では形容しがたい  
ものがある。  
「あまりジロジロ見ないでくれ・・・」  
ほんのり頬を染めたレイハは、リュクティの視線から逃れるように身をよじる。  
 
一方のリュクティも我慢の限界だった。レイハをベッドに寝かせ、覆い被さるように  
して唇を重ねる。そしてリュクティの唇は首筋、鎖骨と下りていき、形の良い双丘へと  
到達する。唇を離し一つ息を吐くと、その先端にしゃぶりつき、同時に反対側の  
ふくらみも手で愛撫する。  
「・・・ああっ!」  
その荒々しい行為にレイハも堪らず声をあげる。  
唇で柔らかい胸の感触を堪能しつつ、リュクティの手はゆっくりと下りていく。  
その手の動きに反応し、レイハの体が震える。やがてリュクティの指は、誰も  
触れたことのない場所に滑り込む。  
「そこは・・・っ・・・!」  
抗議の声をあげるレイハに構わずリュクティは指を進める。  
「はあっ・・・くっ・・・」  
声をたてまいとレイハは歯を食いしばり、本能的に脚をきつく閉じる。  
それによってリュクティの掌はレイハの太腿に挟まれる形になったが、それと  
同時に中指がちょうど秘唇に添う形になる。リュクティはその中指をゆっくりと  
内側に折り曲げ、レイハの中に進入する。  
「ふぁっ・・・!やめ・・・っ・・・!」  
堪えきれずに声が出てしまう。その様子を見てリュクティは耳元で囁く。  
「・・・自分でも触ったことがないんだ」  
レイハは目線を逸らし、頬を赤く染めるだけで答えない。・・・その様子を見た  
リュクティがさらに指を進入させる。  
「いやっ・・・痛っ・・・」  
感じたことのない痛みがレイハを襲う。と同時に指の締め付けも強くなる。  
それはリュクティにとっても初めての感触だった。その感触をさらに味わうように  
今度は指を前後に動かす。  
「くっ・・・ああっ・・・!」  
痛みとは違う感覚を感じ、レイハは背中を反らせた。  
秘所から流れる液体はリュクティの中指を伝い、掌だけでなくレイハの  
太腿やシーツを濡らし始めていた。  
 
(もうそろそろ、大丈夫・・・かな)リュクティはレイハの中から  
そっと指を引き抜き、尋ねる。  
「・・・入れていいかな」  
「ああ・・・そのかわり、ゆっくりと・・・頼む」  
「・・・行くぞ」  
そう呟くと、リュクティは自分自身に手を添え、レイハの中へと先端を進入させる。  
「うあっ・・・!」  
指のときとは比べ物にならない痛みがレイハを襲う。その様子を見た  
リュクティは思わず動きを止める。  
「・・・か、構わない・・・っ・・・そのまま・・・して・・・っ!」  
レイハのその言葉でリュクティはふたたび前に進もうとするが、先がきつく  
なる感覚に再び動きを止める。  
「痛いが、我慢してくれ」  
そう言うが否や、リュクティは一気にレイハを貫いた。  
「くあ・・・っ!」  
破瓜の痛みがレイハを襲う。一方のリュクティもあまりの締め付けの強さに  
堪えきれず腰を強く動かすが、何かに吸い込まれるような感覚に、たまらず己を  
爆発させてしまう。  
 
「はっ・・・!あっ!あ!・・・!」  
びくんっ、と何かが震える感覚とともに、レイハの胎内に熱い液体が注ぎ込まれる。  
「・・・達したのか・・・」  
「ああ・・・すまない。・・・自分だけ・・・」  
その言葉とともにリュクティはレイハから自分自身を引き抜く。  
そこからは、レイハの破瓜のしるしと、リュクティのものが混ざった液体が  
流れ出していた。レイハはそこに手をやり、指でその液体を拭い取る。  
「これが、私の・・・胎内に・・・」  
「・・・」  
言葉を失うリュクティ。今さらながら中出しの事実に愕然とする。  
「・・・その・・・やっぱり・・・まずかったかな・・・」  
「何がだ?」一方のレイハは、リュクティが何を困っているのかわからない様子だ。  
「何って・・・中でしたから・・・そのー・・・」  
「何だ、そういうことか・・・」ふう、と一つ息を吐いて続ける 
「こういうことはなるようにしかなるまい。・・・私は別に・・・その・・・出来ても構わないぞ・・・」  
「うっ・・・」予想外の反応に固まるリュクティ。  
「お前もそのつもりだったのだろう?」  
まさかここで「いや、そんなつもりでは・・・」とは言えない。絶対に言えない。  
言おうものならフレイムブレードの餌食だ。  
「ああ・・・」  
引きつった笑みを浮かべながらそう答えることしか、今のリュクティには  
できなかった・・・  
 
了  
 

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