今夜は聖夜。既に日は落ち、扉の向うは夜の闇。  
剣の国オーファンは首都・ファンのファリス神殿。  
「…ひーす、兄さんの、バカ…」  
イリーナは私室のベッドの上で、パジャマの上に毛布を掛けて、膝を抱え込んでいる。  
木製テーブルに用意していた、ケーキとプレゼントの包みを時折見つめては、溜息をつく。  
冬の凍てついた夜気が忍び込む。  
小さくなった暖炉の火では追い払えないのか、身体が小さく震えた。  
わかってる。兄さんはこない。来るはずない。  
約束なんて、なにもしてないんだから。  
ヒース兄さんが、最近魔術師ギルドのお仕事で忙しいのはわかってる。  
でもでも冒険に出かけても、帰ってきても、二人きりになれない日々がもう半月以上になった。  
もう一週間もすれば、大晦日。世界の始まりとされる始原の巨人が亡くなった日。  
そしてその翌日は、神々がその骸から生まれたとされる、元日。  
そうすれば今度は、神殿に詰めて忙しくなるのは神官のイリーナの方。  
だから、だから、せめて。  
(今夜こそは、一緒にいてほしかったのに)  
今夜は光の神々が使わした聖なる方々の、聖なる夜(ホーリーナイト)。  
各信者団体では、某聖人聖女の誕生日だとか、結婚記念日だとか、死後の復活(リザレクション)記念日だとか、  
大神降臨(コールゴッド)記念日だとか、イロイロと諸説はあるけれど、  
…神々に連なる聖なる記念日というコトだけは一致している、聖なる夜。  
隣人や家族、愛する人と愛を分けあう聖なる日の前夜。  
お昼のうちに魔術師ギルドに連絡を取りに行っても、あいにくヒースクリフは近隣のギルドに出向中ということで、逢うことはできなかった。  
逢えないとなると、返って逢いたい気持ちが募る。  
「にゃあ」  
白猫が頭を擦りつけてくる。  
愛しい人の…ヒースの分身。使い魔のデボン・ロンデル。  
小さな頭を、くりくりと撫でると、その生きた白い毛玉の暖かさに、わずかに慰められる。  
それでも。淋しい。  
「…兄さんのバカ…傍に…いて…ほしいよ…」  
膝に顔を埋めて……。  
 
そうして、どれだけの時間が過ぎただろう?  
「にゃあ!」デボンが、尻尾をぴーんとたてて、再び鳴いた。  
カチャリと、錠の外れ落ちる音がする。  
イリーナが顔を上げると同時に、ガチャリと扉の開く音がして、凍える夜気が吹き込んだ。  
小さく頼りなくなった、暖炉の明かりに浮かび上がるのは、黒いクローク(外套)にすっぽりと身を包んだ、長身の黒い人影。  
フードを落とし、人影は落とした声を出した。  
「よう」  
象牙色の髪、深い青の瞳。皮肉気な、それでいて、とてもとても逢いたかった、笑み。  
気がつくとベッドから飛び出して、抱きついていた。  
ひんやりと冷えた黒いクロークからも腕が伸びて、イリーナの身体を抱え込む。  
「…あ…っん…」  
互いの頭を抱え込むように深く、物も言わずに、唇を重ねた。  
触れるその手や肌や唇は、冬の凍える大気に晒されたせいか、酷く冷たい。  
それでも厭いはしなかった。  
暖かさを譲り渡すように、強く抱きしめて、深く深く…。  
息が足りなくなって、蕩けるように熱くなったころ、ようやく、そっと身を離した。  
「ホントに…ホントに、兄さん…?」  
「俺にはお前がわかるってのに、お前には俺サマがわからないってのか? この味覚オンチ」  
「…っ…もう! わかりますっ…わかります…。兄さんです。…ヒース兄さんです」  
身を寄せる。黒いクロークからは、魔術師ギルドで使うのか薬草の匂い。  
ヒース兄さんの、肌の匂いは安心する。  
ヒース兄さんの舌の味と感触は、温かくて、とても優しい。  
嬉しさに、きゅっと抱きつくと、頭の上に大きな手が置かれた。  
「まったく。お前があんまりオレサマを恋しがるから…今日は特別だぞ?  
朝には雪になるな。来るまでに随分と寒い思いをした。  
…あったかくして、くれるんだろーナ?」  
「あ! 気づかずにすみませんっ!」  
ヒースの腕をすり抜け、慌てて暖炉前のラグに座りこみ、火の中に新しい薪をくべた。  
その後ろでヒースがやや淋しそうに、手をくきゅくきゅと動かしている。  
暖炉の火勢が大きくなるのを確認して、ほっと笑みを浮かべた。  
「にゃっ!」「お、いつもありがとうな、デボン。偉いぞー」  
解錠の際に精神力を借りた、イリーナのお目付け役の白猫の頭を、ぐりぐりと撫でクロークを着たままの腕に抱き上げる。  
後ろで交わされる、ほのぼのフレンドリーな動物使いの会話に和みながら振り向き、その光景を目にして、動揺した。  
 
暖炉の淡いオレンジの光に照らされた、薄い金色の髪の、長身の男の人。  
身の丈にあった長い黒いクロークに白猫を抱えて、優しい笑みを浮かべている。  
良く見知った相手。ヒース兄さん。そんなこと、わかりきっているのに。  
しらない・ひと・みたい。  
見惚れていた。  
あまりにも逢いたいと願った心が見せた、一瞬の幻かもしれない。  
それでも、綺麗だと思った。素敵な男の人だと、思った。  
そしてその男の人が、自分の兄貴分で恋人だという事実に、いきなり激しく動揺した。  
「どうした? 顔、真っ赤だぞ? 風邪っぴきを抱くのは流石にオレサマ、嫌だからな?」  
デボンを抱いたままのヒース兄さんが近寄ってきて、私の目線までしゃがみこみ、心配気に額に手をあてる。  
「ほれ」  
クロークを広げパジャマのままの、私の身体を暖かく包んでくれた。  
…息がとまる。  
こんなこと、あるはずない。こんな、まるで奇跡みたいなこと。  
あんなに傍にいてほしかったヒトが、今は隣にいてくれる。  
こんなに素敵な恋人が。なんだか、泣きそう。  
「…ごめんなさい、来てくれてありがとう…ヒース兄さん」  
大好き、です。  
素敵なぷれぜんと…ありがとうございます、ファリス様。  
まだ、兄さんの顔をまともに見ることができず下を向いたまま、額を彼の胸に預けた。  
 
そのまましばらく二人と一匹でラグに座込み、暖かい暖炉の火を眺めていた。  
ようやく心と部屋が温まり、テーブルの上に置いたままだったプレゼントの包みを進呈する。  
プレゼントは手作りの…ちょっぴり指で編んだような目の荒い…深い青色のマフラー。  
「どこで、しろってんだ? 製作者、バレバレだろ」  
ヒースが遠い目をして、首に掛けられたマフラーで窒息しそうになったり  
ムダにならずにすんだ、手作りの胡桃と干無花果のブランデーケーキを、ヒースが命の危険を感じて回避しそうになったりした。  
それでも逃れられる訳もなく、切り分けられたケーキを、もぐもぐと食べる。  
「ふん、ま、風味づけの酒が少しきつい気がしないでもないが、意外に美味かったぞ」  
ちらりと私を見て、偉そうに、でも照れ笑いしながら謝ってくれた。  
「じゃ、メインディッシュな」「へ?」  
「俺はお前を食べにきたんだぞ? 食わせてくれるんだろ?」  
手を差し伸べられる。  
「ほらこい。大人しく食べられてしまいナサイ」  
そんなデリカシーのない、いつもの物言いが今は、なんだか嬉しい。  
「…あ、えと…ハイ。…ワタシを、食べて…クダサイ」  
おずおずと重ねられた手が、くいっと引っ張られて、座っているヒース兄さんの身体のなかに、ぽすんと、落ちた。  
 
兄さんが私の耳朶を甘く噛んで、耳もとで囁く。  
「ふ、とっとと自分の気持ちに素直になれよ」  
「ぅくんっ…兄さんに言われたくありません」  
軽く抱きしめられて、パジャマの上からちょっとだけ乱暴に身体がまさぐられる。  
首だけで振り返り、鼻をすりあわせるような、ついばむようなキスをする。  
次第に唇を優しく噛まれて、舐め上げられ、歯を割って兄さんの舌が滑り込む。  
兄さんの心地よい温かさを、私は目を細めて迎え入れた。  
深く貪られ、思うまま蹂躙されて、口のまわりが唾液でべたべたになってしまう。  
それを兄さんの大きな手が拭ってくれた。  
次第に兄さんのキスは、首筋へと移っていく。  
私もヒース兄さんの象牙色の髪に、兄さんの香りの中に、頬を埋めた。  
兄さんの指が、私の胸の先端を軽く擦る。私の胸を、じりじりとした感覚が焦がす。  
「はぅ…」私は無意識の内に内腿を擦り合わせていた。  
久しぶりのヒース兄さんの匂いに包まれて、恥ずかしいのに、どうしようもなく、嬉しい。  
ひーす、兄さん…もっと私を…食べてクダサイ。  
もっともっと、兄さんに…食べられたいんデス。  
「イリーナ?」兄さんの不思議そうな声。  
その不思議そうな声に、私自身怪訝な思いで見つめ返した。  
すぐ傍に兄さんがいるのに、視界が像を結ばない。  
知らずに私は、ぼろぼろと泣いていた。兄さんが雫を手の中で受け取っていた。慌てて涙を拭う。  
「ん? どうした?」  
「…来てほしかったけど…来てくれるとは思ってなかったの。  
だから…今夜の兄さんは、私にとっては、ファリス様からのプレゼントです」  
「あん? …ある意味さすがと言うべきか」「?」  
兄さんが、ちら、と私を見る。  
「…ぷれぜんと…プレゼントな。俺にもない事もナイが。…むしろお前にとっては災難かも…」  
思案顔のヒース兄さんは、ベッドの脇に掛けられていた黒いクロークの隠しから、銀色の指輪をひとつ取り出し、私の前にかざしてみせた。  
 
「呪いの指輪だ」  
「ええっ?! …えっえっ?」  
しれっとした表情で兄さんは私の手をとり、僅かに躊躇したあと、私の左手の中指にその銀色の指輪を嵌めた。  
「イリーナよ〜、オレサマの〜精神力タンクに〜、な〜れ〜♪」  
ヒース兄さんの、さも面白そうな表情になんとなく身の危険は感じつつも命の危険は感じなかったので…一応そのくらいの信頼はしているわけで…私はそのまま様子をみていた。  
「えっ?えっ? ナンですかコレ?」  
「【リンケージ・リング】という。ま、ふたつ揃いの魔法の指輪だ」  
 
【リンケージ・リング】  
知名度15 (イリーナでは6ゾロでない限り無理)  
同種族・異性の間でのみ、精神点のやりとりができる、銀のペア・リング。  
ただし、片方が精神に影響を受けた場合、両者に影響が及ぶ。  
リンクするのも、互いの距離が1q以内の間である。基本購買価格64000ガメル。  
 
「とーぶんナイショだぞ?  
 いつもの手袋でも、ガントレットでもイイからして、隠しておけ。  
あいつらにもな。揃いの指輪なんてバレると、イロイロとウルサいし」  
そんな言い訳をしながら、ペア・リングに、実は内心かなり照れまくり。  
ちなみにコレは元マイスイート・カレンお嬢経由のマジックアイテムで、友達割引が利いていても、ローン残金がまだ幾らか残っている。  
「オレサマの方は必要がある時まで、ペンダントにでもしておく」  
「ええ?」  
「不意打ちをくらっての共倒れはなるべく防ぎたいからな。  
だから、まあ、お前にとっては、まったくメリットのない呪いの指輪だがナー」  
「…メリット…」  
でもでも…お揃いのペア・リングで…ヒース兄さんと精神力がリンクする指輪…。  
「兄さん! ちゃんと手袋で隠しますから、コレ薬指にしてイイですか?!」  
(やっぱりそうなるか…)  
「いいのか? 言っただろ。コレは呪いの指輪だ。薬指につけると酷い事になるぞ」  
「…どうなるんです?」  
「片割れが入っている墓場と、同じ墓場に入ってしまう契約の指輪だ」  
「…なんだか恐い話ですね」  
「そうだろう。よく考えろ」  
「…」  
「…」  
「……でもでも、いいです! 呪われてもヒース兄さんの傍へ行けるなら!」  
にぱりと、イリーナは笑った。  
 
「…好きにしてクレナサイ」  
その声には照れと、焦りの成分が混じっている。  
「ふふふ。兄さんが付けかえてくれると、もっともっと嬉しいのになー」  
そう言って自分で指輪を抜き取ろうとした手が、兄さんの手に包まれた。  
顔を上げると、すぐ間近に兄さんの瞳。額がこつん、と当たった。  
まるで私の心を見通す様な、深い綺麗な青。…吸い込まれそう。  
兄さんの視線が、つっと、私の唇に落ちたのを見てとって、そっと瞳を閉じた。  
唇に、兄さんを感じる。  
それから見えない場所で、指輪が抜き取られて、ゆっくり嵌めなおされた。  
 
時折キスを交わしつつ、互いの服を一枚一枚脱がせて、露わになってゆく肌に唇を這わせた。  
軽く身を絡ませて、イリーナの小柄な身体を弄ぶ。  
やや癖のある栗色の髪からは、欲望をくすぐる甘い香りがした。  
首筋を責め鎖骨のラインを刺激して、女の肌から立ち昇る優しい匂いに酔いしれる。  
コトあるごとに、丹精をこめて育てている(つもりの)、小振りの胸。  
可愛いピンク色の頂きを口にふくみ、こりこりと噛み、転がす。  
「はぅ…っん…あん…くぅん…」  
甘い吐息が、俺の髪を揺らす。  
イリーナの腕がするりと首にまわり、うなじや背を攻めてくる。  
愛おしさに、下半身に血が巡り膨れるのを自覚した。  
気恥ずかしく多少みっともない自分の姿に、頭の片隅で冷静な自分が苦笑している。  
イリーナの身体を覆う最後の布を取り払うと、腰の上に打ち身のあざをみつけた。  
内出血で、赤黒く変色している。  
「…痛々しいな。どうしたんだ、これ?」  
「あ、えと神殿の稽古でついちゃったの。みんな、まだ見習いばかりだったんだけど…」  
俺がギルドの仕事で忙しい間、イリーナも神殿で後進の指導に余念がなかったようだ。  
その格下の相手のラッキーヒットというわけか。  
そうそうに消えるコトを祈り、いたわり舐めるくらいしかできない。  
…そうか、迂闊だったな。俺が冒険に出ないからといって、イリーナの身は安全ではないってことだ。  
事件があり神官戦士団に要請があれば、イリーナは俺のシラナイ所で、最前線に立たされる。むしろイリーナの性格としては、嬉々として立つ。  
イリーナとしては本懐だろうが、俺としてはいい気がしない。  
 
イリーナの精神。信仰のオーナーはファリスだろうが、身体のオーナーは俺だ。  
仮にもオレサマのおんn(げふんげふん)…ハニー♪の身体だ。  
シラナイ所でキズモノにされるのは、嫌だ。  
…オレサマ、なにやら、多少、浮かれているような、気がしないでもナイが。  
…まあ、いい。そのウチ、落ち着くだろう…。  
「はやく治れよナー」箇所をさすり、微妙にあざに文句をつけた。  
イリーナの身体を後ろから抱いて、指は気まぐれに肌を焦らし刺激しながら、さらに下方へと移動させた。  
まだ淡い栗色の繁みの中に、指が潜る。  
しっとりと湿気る恥丘の谷、敏感で弱いその箇所を軽く避けて、さらに奥。  
イリーナの秘所その泉は、もうすっかり濡れて、俺を求め淫蕩な愛蜜を溢れ出していた。  
口元がほころぶ。  
何も知らない処女だったイリーナを、そんな淫らな身体に導いたのは俺自身。  
俺が、そうさせた。より深くイリーナを貪る為に。逃れ様もなく支配する為に。  
なにより俺自身が、こんな淫らなイリーナの姿をみていたかった。  
どこまで俺を受け入れるのか。…愛してくれるのか。  
親指人指し指中指の三本で、イリーナの秘所を、責める。  
「ひゃぅんっ…!」  
蜜をすくい軽くスリットにそって捏ね上げると、イリーナは甘く呻いて身じろぎした。  
 
身体を触られて、両脚の間が疼きはじめていた。  
兄さんの指が、恥ずかしい部分に触れて、弄り責めはじめる。  
「…ふぁ…、ぁあん…」  
心地良さと、強くは責めてくれないモドカシさに、私は喉と背をのけぞらせる。  
恥じらいもなく脚をさらに開いて、兄さんの指を、もっと深く受け入れようとした。  
私の体はイヤラしい雫をしたたらせ、ぐちゅぐちゅと音をだして、私の羞恥心を煽る。  
「ああんっ…!」  
…ひーす、兄さん。兄さんも、感じてくれてる? 私をもとめてくれてる?  
私は後ろ手にそっと、兄さんの股間に手を伸ばしました。  
熱く、なってる。…大きく膨れて、くれてる。  
私が触れたコトに気づいて、兄さんは少し、呻き声を漏らしています。  
頬に掛かる、私を求める、兄さんの熱い吐息。  
嬉しいです…。もっと、触ってクダサイ。もっと、私を、兄さん。  
身体の奥が、きゅん、となって、どうしようもなく疼いて、とめどなく雫を溢れさせていきます…。  
 
イリーナの秘所から溢れた愛蜜で、手をべとべとにしながら、イく寸前までイリーナの中を指で蹂躙し続けた。  
程よくほぐれたと思われるところで、イリーナの身体を持ち上げ、イタイ程に張りつめた俺のモノの上に、落とす。  
「ふぁんっ! あっつ …に、にいさん…イタイですっ…」  
イリーナが苦痛の声をあげた。いつもなら苦痛なくおさまってしまう程に慣れたヒースのモノに、気恥ずかしさと僅かな誇らしさを感じるのだけど。  
「んん? なんだ今更」  
「その、なんだか、いつもより…大っきくて…痛いです…」  
本当に痛そうで、恥ずかしそうに、俺を見る。  
確かにイリーナの膣内が、窮屈になった…ような? むしろ俺様も痛い。  
ご無沙汰の間に、イリーナの筋肉がまた発達してキツイ…と考えられなくもないが。  
「いや…まさかな。育ったか?」「…育つものなんですか?」  
「成長するものではある」  
今までは『大きいことはいいことだ』と思っていたが、場合によるな。  
必要以上に大きいと、苦痛しか与えなくなってしまうではないか。  
一応、大事なハニー♪の体に、負担をかけるのは本意ではない。  
「…そういえば、兄さんもここ暫くで随分成長しましたしね。当初とは随分と変わりましたしね。浜田絵師さんの兄さんの、顔も身体も体格も…ひゃっ!」  
「そういう危険な事は、忘れろ! 今すぐ忘れろ! 記憶の彼方へ消せ!」  
いきなり腰を容赦なく、揺らす。幼さの残る昔の自分と比較されるのは、好きではない。  
「ひゃぅ! っんあ ひぃっ わ、忘れますっ! 忘れますぅ」  
「なら、よし。仕方ないな。こなれるまでは加減してやろう」  
動きを緩やかなものに変える。  
…苛めすぎたか。イリーナの眦に涙が浮かんでいた。  
意地の悪いコトに俺はそんなイリーナの顔も、好きだった。  
 
私は目を閉じて、痛みから次第に与えられる、むず痒いような刺激に身を委ねてました。  
気づけばいつもの、私の困る顔を見て面白がっている、ヒース兄さんの顔。  
ムっとして、顔を見せないようにそっぽを向こうとした顔が、逃げられないように兄さんの両手に捕まってしまいました。  
ちょっぴり強引な、幾度目かのキス。  
息が足りない。頭がくらくらする…。  
ヒース兄さん、キス、上手…。  
頭も、身体も、ぼうっとする…。  
最初は自分からも求めていくのに、蕩かされて、返ってきてしまう。  
「…っふ。…はあ…ひーす兄さん、キス上手です。…上手、スギ…です…」  
兄さんは、どこでこんなすごいキス、おぼえたんだろう…?  
荒い息をつき、くたりと、ヒース兄さんに身を預けた頭で、ぼんやりと考える。  
兄さんの大きな手が、私の髪を優しく撫でるのを感じた。  
「そりゃ常日頃の研究の成果だな。俺はお前と違って、色々と毎回試してるから」  
「…私で…?」  
「まあな、例えば…こことか」  
「はぅっ!?」  
軽くさすりあげられた、その感触に、私の身体がビクリと跳ねる。  
「…イキかけたろう?」  
兄さんの声と目は、笑いを含んでいた。面白がってる。  
びっくりして開いた目を潤ませて、睨んだ。  
「…ヤダ…」  
「ん?」  
やり過ぎて不興をかったかと、ヒースの眉が寄せられる。  
「…ヤダ…なんだか、悔しいよ…」  
「俺に、やり返せなくて、か? そんなトコまで負けず嫌いだな、イリーナは」  
ぽんぽん、と、子供をあやすように背が叩かれた。  
「教えてやる。お前をオンナにしたのは、俺だ。…ゆっくりと覚えていけ」  
それでもまだ不満気な私の様子に、ヒース兄さんは困った顔をした。  
違うの、兄さんのせいじゃない。仕返しが、したいんじゃないの。  
与えられるばかりで、兄さんになにも返せない、子供な自分が、悔しいの。  
やっぱり兄さんは、私より頭が良くて、その分、大人で。  
『研究』し尽くされた、子供なワタシは、いつかオトナな兄さんに、飽きられてしまうんじゃないかって。  
でも、いっぱいいっぱいだった私は、そんな想いを言葉にできずに、ただ首を、ふるふる、と振って、兄さんを見つめるコトしかできなくて。  
 
ヒース兄さんは黒いクロークにもう一度手を伸ばし、私の左手に嵌った銀のリングと同じものを取り出した。  
自分の手で、するりと、自分の左手の薬指にリングを嵌めてみせる。  
私の左手が取られて指が絡み、指輪同士が軽く触れて、チンと鳴った。  
「薄々はわかっていただろうが、【リンケージ・リング】。  
コレは古代王国期の宝物で、婚・約・指・輪、だ。  
もう、コレで、お前は俺のモノで、俺の…オンナだ。  
お前が仕返しする時間は、たっぷりとある。どちらかが、死ぬまで…ずっとな。」  
そこで兄さんは、私をみた。左手の銀の指輪を示して。  
「今、もう一度、聞く。俺と生きて、墓場までついてくる気があるか?」  
その意味するコト。  
一度に、胸と息が、詰まってしまった。  
最上級の嬉しさと恥ずかしさに、声が出せない。  
何度も何度も、呼吸を整えて、ようやく、声を絞りだす。  
「…ハイ…! …可愛がって、ください…ね、ヒース、兄さん…」  
へこり、と下げた頭が、上げられなかった。  
胸にこみ上げた、嬉しすぎる、涙の痛さで。  
ぽたぽたと、雫が落ちる。  
下げられたままの頭の上に、さわっと、兄さんの手の温かい感触。  
「ふ、そんな可愛い過ぎる科白、似合わないぞー? 規格外の猛女のくせに」  
「…っ。もうっ!!!」「ぐえっ?!」  
頭を下げたまま、クロス・チョップをお見舞いして、…しまいました。(赤面)  
でもでもっ…ひーす、兄さんの…バカ…!!  
こんな時まで、『猛女』ってヒドい!!  
それでも、そんな兄さんが、結局、どうしようもなく、大好きで…。  
「お前に渡したい物があるってこと…ファリスはまるっと、お見通しだったな…」  
ベッドの上私のチョップで押し倒されたカタチのヒース兄さんが、天井を見上げて、ぼそりと言い。私は涙を拭って、笑ってしまいました。  
そのまま、押し倒した兄さんに、身体を重ねます。  
ヒース兄さんの腕が私の身体に絡み、抱き寄せられて…それから私は、容赦なく兄さんに貪られ、そして満たされました。  
なんども、なんども、とろとろに溶けあって。  
――「「 愛しい 愛しい 愛しい 」」  
互いに裸の身体を 強く抱きしめて 胸のうちで くりかえすのは その想いばかり  
――  求め 責めずには いられない・・・  
 
その夜、ヒースは思う存分にイリーナを抱いた。  
イリーナも心を尽くして、ヒースのすべてを受けいれる。  
絡ませる互いの指に、銀のリング。  
…身も心も 想いも 未来も それは永遠につながる約束…。  
 
身体の中で、外で、イリーナはヒースの白く熱い精を受ける。  
コドモが出来てもいいと、おもっていた。  
それで二人の繋がりを、永遠にできるなら…。  
 
残念ながら現在、激しすぎる運動量でイリーナの生理が止まっていること、その為コドモが欲しくても出来ない状態であることを、ヒースが知るのはもう少し後のことである。  
「…まあ、人間の限界値外まで身体を鍛えてれば、そうなるわなぁ…。  
…だから、少しは運動量を加減して、脂肪(特に胸希望!)もつけろ!と」  
「だってだって、脂肪がつくと身体のキレが悪くなって、気持ち悪いんですっ!」  
・・・・そんな会話があるのは、もっとずっと後のこと。  
 
ヒースの予想通り、夜半過ぎから音もなく雪が降り始めていた。  
 
ヒース兄さんに腕枕され、ベッドの中で私は、もぞもぞと何度も眠い目をこする。  
「どうした? 眠らないのか?」  
「せっかく、ヒース兄さんが一緒にいてくれるのに、惜しくて、眠りたくないんです」  
「…身体に悪いだろーが。朝までいてやるから、寝てろ。」  
兄さんは私の頭をかき抱いてくれた。  
「ほら、ここにいるから」  
「ふふ…。ファリス神官らしく、ないですけど、朝がくるの…名残惜しいです。  
ずっと、ずっと…兄さんの…腕のなかに…いられたら、いいの…に…」  
兄さんの素肌の温もりと言葉を、心地よく感じて、ほどなくして私は睡魔につかまってしまいました。  
意識が、優しく暖かいところへと 静かに 落ちてゆきます…。  
ずっと一緒の約束をしていても、いつまで一緒に生きてゆけるかわからない、危うい関係。  
それでも今だけは、間違いなく幸せだから。  
 
― ファリス様、見ていらっしゃいますか?  
  どうかこの幸せが、いつまでも、いつまでも、続きますように…。―  
 
昏い空から氷の精霊たちが舞い降りる。  
雪が街を白く白く染めていく。  
ファンの街は、白く白く薄化粧。  
舞う雪は、氷の精霊・フラウたちお手製の、花嫁のベールのよう。  
どこまでも、どこまでも、白くて清らかな…。  
 
すべてが白く雪化粧した、翌朝。  
デボンにも、ヒース兄さんとお揃いのマフラーを掛けました。  
瞳と同じ深い青色が、白い猫にはよく似合います。  
兄さんは来た時と同じ黒いクロークをはおり、青いマフラー、小脇にケーキの箱を抱えて、出立の準備も万全。  
 
同じマフラーをして並んだ、兄さんとデボンの妙な可愛さに、思わず笑みが浮かびます。  
朝の冷気に白い息を吐く兄さん。今日も近郊の街のギルドでお仕事です。  
「じゃ、な。デボン、イリーナを頼むぞ?」「にゃっ!」  
小さな白い騎士は、ちんまりと行儀よくお座りをして、ヒース兄さんに答えました。  
そして兄さんは私を振り返りました。  
微妙に首を傾がせて、私の様子を窺うように。  
「じゃあ、またな。…ハニー?」  
火を吹いた様に、真っ赤になった私を見て満足すると、ヒース兄さんはフライトの呪文で、黎明の空に飛び上がっていきました。  
「……兄さんっ!」  
思わず呆然と見送ってしまって、なんだかすごく悔しい。  
精神がゴリゴリと削れるようなナニカを言いたくて、懸命に考えをめぐらせ、慌ててデボンをつかまえる。  
今、ヒース兄さんとデボンの感覚が共有しているとは、限らないけれど。  
それでも、かまわない。  
満面の笑みで、デボン…の向うにいるハズのヒース兄さん…に、話し掛けた。  
「じゃあ、またね。マイラバー・ヒース兄さん♪」  
 
 
その頃、飛行中のヒースは、思わず失速していた。  
「………俺は、お前の、グレソ並かよ!!!」  
静かな夜明けのファンの街に、ちょっぴり悲しいヒースの声が響いた。  
 
リーン…ゴーン………リーン…ゴーン…  
聖なる日を祝う、神殿の天使(アンジェラス)の鐘が鳴る。  
聖なる夜が明け、今日は聖なる日(ホーリー・ディ)。  
もしかしたら後世、『ファリスの猛女・婚約記念日』と新たに言い伝えられるかもしれない聖なる日。  
朝日が、雪化粧を施した街並みを照らし、粉雪が輝き舞う。  
それはとてもとても、美しい朝でした。  
 
 
愛しさ半分。からかい半分。  
相手の精神をゴリゴリと削りあうような呼びかけをする、それはそれは見事な、バカップルができあがったとさ。  
 
              Fin  

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