「…わたし、イリーナ・フォウリーは、これから夫に従い、…彼の花嫁となることを…我が神ファラリスの御前にて…誓います」  
イリーナは、暗黒神ファラリスの聖印の前に膝まづいて、頭を垂れた。  
『夫』は微笑み、彼女の身体を抱えあげると、初夜の寝台へと運び組み敷いた。  
そうして、イリーナは純潔を失った。  
 
 
【メラリア・ヴァルサス事件】  
「…汝らは邪悪なり!!」  
成敗した暗黒神信者と彼等をかくまっていたメラリア・ヴァルサスを護送した馬車を見送る。  
「…ふぃ。なんとか、最悪の事態は免れたな」  
それを見届けてヒースが親父臭く背を丸めて溜め息をついた。  
その後でマウナとエキューが、そっと心配気で意味深な視線をかわした。  
さりげなさを装い、マウナがイリーナに近づき並んだ。  
隣のイリーナ以外誰にも聴こえないよう、小さな声で問掛ける。  
「イリーナ…その、大丈夫…だった?」  
「…ん。大丈夫」  
イリーナは、小さく頷く。  
囚われゾンビメイカーを飲まされ、自意識を失った、あの時。  
マウナとエキューを残し、イリーナはあの執事に化けた闇司祭…リスリーと云っただろうか…その男に別室へと連れて行かれた。  
次に会ったのは3時間程も後だったろうか?  
その間イリーナにナニがあったのか、マウナとエキューは知らない。  
「なんでもないよ。大丈夫、平気」  
イリーナは微笑んで繰り返した。  
しかしイリーナはこっそりと、自分自身の身体を抱き締め、支えていた。  
身体の震えを、誰にも知られないように。  
 
イリーナはファンの街に戻ってきてから誰にも知られないように、湯を沸かし身体を、秘所を布で拭っていた。  
惨めな思いが、胸を刺す。  
毒を飲まされ、意識を奪われ、身体を操られて、闇司祭と暗黒神ファラリスの前に膝まづいて、婚姻の誓いをした。  
僅かな時間とはいえ、あの執事に化けた闇司祭の男、リスリーと寝床をともにした。  
初めて男とキスを交した。口内を蹂躙され、男の唾液を飲まされた。  
初めて男に裸の身体を舐められ、自ら足を開き、男のモノを受け入れた。  
いつかは好きな誰かとするかも知れないと、頬を染めたこともあるその行為が、毒を飲まされて自意識のないまま、邪悪な闇司祭に奪われるとは、想像もしなかった。  
あの男のおぞましいモノを受け入れ、身体の中、胎内で精液を受けた…。  
あの男の子供が、この身の内に出来てしまうかもしれなかった。  
男のモノを口に入れられ、舐めさせられ、口の中に出された白濁した分泌液を、命令どおり飲み下した。  
「…っ!!……っ……!!!」  
そのえぐい味を思い出し、思わず口を覆う。  
胸がむかつき、吐気がする。  
イリーナは床に崩れ落ちて、声を出さずに泣いた。  
鎧下に着ていた服や下着はすべて、炎の中にほうりこんで焼き捨てた。  
熱い湯に頭までつかっても、清められた気が、まったくしない。  
傷ついた身体を抱き締める。それでも、涙が止まらない。  
ファリス様はまだ、お側にいらっしゃる。  
それでも、恐い。  
…心が揺らぎそう…っ!  
ひとつの名前が浮かんぶ。  
なぜ浮かんだのか、なぜすがろうと思ったのか。  
それすら、わからなかった。  
━━…兄さん…兄さん…! タスケテ…兄…さん…っ!!  
 
【ヒースクリフの自習室】  
 
導師の心得講座の実技課題。それを徹夜明けで成し遂げたばかりの俺様を、イリーナが訪ねてきた。  
イリーナは眼を伏せ、震える声で告げた。  
「お願いします…兄さん。…私を、消毒…して、くれませんか…?」  
イリーナは服をはだけてみせた。そこからみえるその裸身。  
イリーナの小柄な身体に、幾つもの異様な傷痕と、朱色の内出血の跡が散っていた。  
「イリーナ…お前、それ…?」  
「闇司祭にゾンビメイカーを飲まされてから、わたし…」  
ファラリスの祭壇の前で結婚の誓いを闇司祭とし、初夜と称して凌辱された。  
ほんの2、3時間にも満たないその間に、イリーナは闇司祭に汚されていた。  
家族にも仲間にも言えなかったその秘密を、幼馴染みの兄貴分にだけ、打ち明けた。  
「…!!」  
「…ダメですか?…汚れたわたしは、ヒース兄さんに、抱いてもらう価値、ない…ですか? …懸命に洗ったんです…痛くなるくらい…。でも、どうしても…男の人の匂い…が…とれない…」  
伏せたままの顔。震える声。声に出さない、悲痛な鳴咽。  
「…恐いんです…揺らいでしまいそうで…。…でも、もし兄さんならっ…これが、兄さんだったならって…」  
痛い。  
「もういい」  
痛々しい。イリーナの痛みがそのまま移ったかのように、心が痛い。  
「…ヒース兄さん…」  
「もう…いい。わかった」  
イリーナに触れる。  
イリーナは一瞬だけビクリと身をすくませたが、俺が抱き寄せるとギュッと身を固くして、されるままになっていた。  
年下の幼馴染み。その身体は意外なくらいに小さくて、頼りないものだった。  
真昼の太陽のように明るくて快活で、時に容赦ない。  
そんなイリーナが、もうドコにもイナイ。  
それが、どうしようもないくらいに、辛かった。  
「…わかった。…だが…」  
抱き締め、栗色の髪に頬を寄せイリーナの顔を見ないまま問掛ける。  
イリーナは小さく震えていた。  
「本当に、俺で、いいのか?」  
「ヒース兄さんじゃなきゃ…ダメです…ダメ、なんです」  
腕の中でイリーナは、小さく泣き声を漏らした。  
 
あらゆる渦巻く感情を抑え、震える手で慰めを与えた。  
イリーナの顔をとり、重ねる唇。震えているのは、イリーナだったのか俺だったのか。  
怒りと悲しみと…初めての行為に対する…羞恥、と。  
ちゅっ…と軽く唇を吸う。  
知識ばかりで経験が伴わない状況に、多少困惑もしていた。  
慰めのキスひとつ、どうすればいいのか、よくわからない。  
それでも、俺にとってイリーナは『守りたい大切な相手』だった。  
それが、汚された。守れなかった。  
…そして今、俺に助けを…求めている。  
拒むことなどできなかった。  
優しくゆっくりと、キスを繰り返し、服をはだける。  
イリーナの純潔を奪いイリーナの身体の所有権を主張する赤い傷痕。  
この痕をつけた闇司祭の男だけは、未だ捕まっていない。  
そいつを忘れさせる。俺が、忘れさせなければならない。  
「イリーナ」「…はい?」  
「この痕をは神聖魔法でけせないのか?」  
「傷自体は治っているんです。…内出血は時間がかからないと…」  
イリーナは哀しげに応えた。  
「仕方ない。上書きするか」  
闇司祭と間接キスなどという嫌な想像を振り払い、優しく舐めた後にくちづけ、強く吸った。  
赤い色が、濃く…残る。  
『イリーナ…』  
怒りと悲しみに、思わずイリーナの身体にまわす腕に力が入る。  
忘れさせるためには、もっと強く、荒く抱いた方がいいのか?  
それともいたわるように、優しい行為の方がいいのか?  
わからない。  
赤いキスマークの上書きを重ね、俺はイリーナの肌を癒す様に舐め続けた。  
イリーナの肌は張りがありみずみずしい。一方で若い娘の身体としては悲しいくらいに、残ってしまった傷跡がある。  
イリーナはいつも、更に弱いものの盾として、この小さい身体で頑張ってきた。  
人並み外れた力の持ち主であっても、分厚い鎧に守られ、ファリスの加護や癒しの奇跡があっても、その前にイリーナは一人の少女だった。  
そんな当たり前のことに、気づかずにいた。兄貴分としても、失格だ。  
 
イリーナの顔を、身体を丁寧に舐め、癒し、『消毒』するその間ずっと、イリーナの身体は震えていた。  
初めて自分の意思で、男に裸を晒し、くちづけられているのだから。  
ついっとイリーナの恥ずかしい部分に、指を這わせる。  
ヒッ…と声をあげ、イリーナの身体がビクリと跳ねた。  
「…怖いか?」  
問掛ける俺にイリーナは、ふるふると首を振った。  
怖くないはずが、ナイ。  
安心させるために、微笑みかける。  
「大丈夫だ、まかせろ。…指、入れるぞ?」  
イリーナはきゅっと、目をつむり首を縦に振る。  
つぷり、と熱い、女の部分に指が入る。  
イリーナの中が熱い雫を溢れさせるまで、ゆっくりゆっくりとこねまわす。  
イリーナの息が熱くなるまで、イリーナの身体からこわばった力が抜けるまで。  
次第にイリーナの息が荒くなり、俺に身体を預ける様子がみてとれる様になると、イリーナの秘所からも雫が溢れ始めていた。  
「…気持ちイイのか? もしかして?」  
意地悪な問いだったろう。  
イリーナはハッとしたように、顔を赤らめて背けた。  
「いいんだ。それで」  
いつものイリーナらしい反応に、少しだけホッとする。  
「本来エッチというものはだ、イリーナ。好きなモノ同士が、気持ち良くなるためにする、神聖な行為だからな」  
ウムウム。と、偉そうにホラを吹こうとして、やや失敗した。  
「…イリーナは、俺が、好きだったんだろ?」  
そうでなければ『消毒』にはならない。  
「気持ち良くなって、イイんだ」  
そっぽを向いた真っ赤な顔をとり、そっと、こっちを向かせる。  
「俺も、気持ち良くなってイイか?」  
イリーナの目が泣きそうに細められて、こくん、と頷いた。  
 
俺は自分の男の部分を、イリーナの女の部分にあてがう。  
「…いくぞ」  
俺のモノをイリーナの中に、ゆっくりと埋めこんでゆく。  
初めての女の身体の、熱さとか心地よさに溺れそうになりながら、それでも理性を手放すわけにはいかなかった。  
己れの快楽と獣性に、同じく獣の様に歯を剥き出し堪え戦いながら、そうして俺はできるだけゆっくりと動き、優しくイリーナを導いた。  
「…はぅっ!…にいさん…にいさん…っ!」  
イリーナの小柄な身体が、ひとつきごとに大きく揺れる。  
申し訳なさそうに、すがりつくように、イリーナの腕が俺の背にまわる。  
イリーナの鳴咽と、互いの荒く甘い息と、粘着質な水音が響く。  
「にいさん…ごめんなさい…ごめんな…ンンっ」  
もうイリーナの謝罪の言葉も泣き言も聞きたくなかった俺は、イリーナの口を自分の口で塞いだ。  
イリーナの身体の揺れが大きく、次第に激しくなる。  
互いに汗ばんだ裸の身体を、次第に強く強く抱き締めて……そして意識が爆発した。  
 
行為の後特有の気だるさの中、ヒースの眼が導師の心得講座の実技補習と言い渡されていた机の上の小瓶を捉える。  
事件後徹夜で仕上げた『ブルーロータス』の青い小瓶。  
「魔法薬」「薬草学」の貴重な成果。  
希少な青い蓮の実を原料とし、一定期間の記憶を遡り消すことができる。  
希少なで、とても危険な魔法薬だ。  
この薬の濃度なら、2、3日は軽い。  
イリーナの身に起こった、この事件そのものをイリーナの記憶から消すことだって出来るだろう。  
(忘れてしまえ。イリーナ。お前を傷つけた奴のことなんか、後生大事に覚えてる必要なんか、どこにもない)  
起き上がり、小瓶を握り締めた手に、痛いほど爪がくいこんだ。  
スマン、ハーフェン導師。  
それでも、どうしても、今、守りたいモノがある。  
『イリーナ』  
俺の、身勝手な独断を許してくれよ。  
(俺は…お前の記憶を…奪う)  
 
無くすだろう記憶の『言い訳』を捻りだしながら、寝台で眠るイリーナを振り返った。  
 
 
【いつもの青い小鳩亭】  
 
「ごめんなさいっ!ヒース兄さんっっ!」  
《青い小鳩亭》にイリーナの声が響きわたる。  
机にかじりつき、ヤケ酒を煽る。結局、講座を落とし、課題も提出できず。  
「いいんだ。サヨナラ、俺様の導師用ローブ…」  
…賑やかに明るく、いつもと同じイリーナの声が響く。  
「では『伝説の魔法・雷付与』の物語、どうぞご静聴下さいませ」  
「静聴できるか〜〜〜〜っっ!!」  
 
 
…そう『いつもと同じその声』に、ヒースはそっと笑みを浮かべた。  
 
 
 
 
終 (多分、続く)  

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