「だれかいませんか?」  
 まだ20台半ばほどの女ナナシーはちりりん、と使用人ベルを鳴らした。  
 その音にすぐに反応してノックの音。入りなさい、というと1人の執事然とした老齢の男が入ってきた。  
「セバスチャン。すぐにこの方たちを探し出してください」  
「はっ、仰せの通りに」  
 ナナシーが差し出した紙には、4人の少女の似顔絵が描かれていた。セバスチャンと呼ばれたいかにも執事な男はそれを恭しく受け取り目を通す。  
 それぞれの似顔絵はグループ分けされていて、『イリーナ、マウナ。オーファン』『ベルカナ、シャイアラ。ロマール』とだけ簡潔に書かれていた。  
 その似顔絵は実に特徴を捉えていて、まるで指名手配書のようにも見えた。  
「可及的速やかに、ですよ。何せこの方たちは……」  
 ナナシーは、オランでも未だ高級品であるガラスのはまった窓から、沈む夕日を眺めて、彼女の自信作を光にかざすように掲げた。  
「わたくしの命の恩人なのですから」  
 
 
 ナナシー・パンティーノはオラン屈指の豪商の1人である。  
 扱っているのは、まぁその名前から察するとおり、女性専用の下着である。  
 なんでもいつぞやの時代か曖昧なほどの大昔、彼女の先祖が現在の女性用下着の原型をデザインしたということで、下着の名の由来になったという由緒正しい(?)家系である。  
 当初はその功績をたたえるために名づけられたのだが、今となっては少々、というかかなり恥ずかしい。  
 だが、逆にそのストレートさがウケたのか、ナナシーの(正確には先祖代々続く)パンティーノ商会は女性専門下着だけしか取り扱っていないが、巨万の富を築くことに成功していた。  
「かしこまりました。ですがお嬢様……あれほど、旅路は危険だと申されましたのに。以後、このじいを心配させることだけは決して……」  
「わかっています。ですけど、わたくしのデザインした下着をはるか西部諸国まで売り込みに行くんですよ。本人が出向いたほうが……」  
「それでも、です。道中、二度も賊に襲われたと聞かされたときは、寿命が縮む思いでしたぞ」  
 およよ、と大げさに涙しながら悲壮感を漂わせるセバスチャン。だが、これはいつもの手なのでナナシーは、またかとため息をつくだけだった。  
 だが、道中二度賊に襲われたのは事実であるし、命の縮む思いもした。  
 しかし幸運にも、その危機を救ってくれた冒険者たちが2組いた。  
 1組は、遥かタイデルまで向かう道中、オーファンで野盗に襲われたとき。近道を移動中、不意を撃たれ護衛たちが毒矢で動きを封じられてしまったが、あわやというところで巨大な剣を操る少女引き入る5人組の冒険者が嵐のように賊を蹴散らしてくれた。  
 どうやらどこかの村へ向かう途中、たまたまその近道を冒険者たちも選んだようだった。  
 その幸運を感謝し、とりあえずは手持ちのお金で謝礼を支払った。  
 もう1組は、タイデルで無事商売を終え、帰り道のロマールで野盗に襲われたとき。さすがロマールの野盗だけあって、金を持っている馬車を鋭く選び抜いて襲ってきたようだった。  
 人数自体はそう多くなかったが、馬車を落とし穴にハメられ、護衛たちもまんまと魔法で動きを封じられてしまった。今度こそダメだ、と思ったとき、まるで襲われていることを知っているかのようなタイミングで5人の冒険者たちが飛び出してきた。  
 チョコレート色の少女の指揮のもと、まさに電光石火という言葉がふさわしいほどの早業で、魔法で、ネットで、鞭で、とにかく電撃的に賊たちを捕らえてしまった。  
 再びその幸運を感謝し、再び彼らに手持ちのお金で謝礼を支払った。  
 ちなみに、後者の冒険者たちが実は、最近無許可の強盗行為を行っているよそ者を捕縛するために派遣されてきた盗賊ギルドのメンバーで、ハナから賊をおびき出すためのオトリにひそかに使われていたという事実をナナシーは知る由も無い。  
 
「もう、お説教は散々聞きましたから。とにかくその方たちを探して、これを贈ってきてちょうだい」  
 そんなナナシーがなぜ彼ら冒険者を、それも女性メンバーだけを探しているかというと、ここまでくると察しはつくと思う。  
 感謝の気持ちを伝えるため、自分がデザインした下着をプレゼントしようというわけである。それがデザイナーとしての最大限の感謝の印だと思っている。  
 彼女たちの名前は、戦闘中仲間が呼んでいたのでたぶん間違いないだろう。できればその人の個性に合った下着を作ってあげたかったが、あいにくかかわった機関が短すぎて、戦い方から推測するしかなかった。  
(マウナさんとシャイアラさん。両方とも精霊使いで、どちらもエルフだったはず)  
 ちなみに、マウナは正確にはハーフだが、まぁそれは些細な問題のようである。  
 エルフらしさを表現した、レースで草花をあしらったものをデザインしてみた。  
(イリーナさんは戦士、ベルカナさんは魔術師。イリーナさんは神官みたいだったし、ベルカナさんはお嬢様っぽかったかしら)  
 あくまで推測だったが、実に的を得ている。それらを踏まえて、それぞれの魅力を引き立たせるようにデザインしたつもりだ。  
 どちらも自信作である。  
「気に入っていただけるといいけれど」  
 ナナシーは完成した自信作を綺麗に包装し、メッセージカードに「あのときのお礼です」などと簡潔なメッセージだけを添えて、執事に手渡した。  
 
 
 パンティーノ商会の荷馬車は、今度は順調な旅路をたどった。優秀な護衛を雇いなおしたのと、各地のギルドに顔の利くセバスチャン(お約束)をつれ、まずはロマールについた。  
 元盗賊のセバスチャンがギルドに顔をつなぎ、事情を話し裏が取れたら、すぐに彼女ら――ぺらぺらーずの女性陣に例のブツを渡すことができた。  
 ただ、老齢のセバスチャンが犯したミスがひとつあった。道中、馬車のゆれで剥がれ落ちてしまったメッセージカードを再び接着する際、ベルカナのそれとイリーナのそれを張り間違えたこと。  
 不幸なことに、来たときと包みの色が変わっていることに気づいたものは誰もいなかった。   
 ロマールでの任を終えた荷馬車は、ごとごとと次の目的地、オーファンへと向かっていった。  
 
 
 side ヒーイリ  
 
「すっごいよねぇ、あの時助けた行商人、実はオランの豪商だったんだね」  
「ええ、びっくりです!」  
 イリーナとマウナが、久しぶりに2人だけで青い小鳩亭でお茶していると、1人の老人が尋ねてきた。  
 どうやら自分たちを探しているようである。  
 今オーファンの冒険者で売り出し中ということですぐに見つかった、などと軽い世間話を挟み、手渡されたものが例のものだった。  
「しかもお礼にプレゼントよ。あのときだってお礼金もらったのに、さすがお金持ちはやることがでかいわ」  
 売り出し中でも貧乏人根性の変わることの無いマウナは、タダで下着をもらえたことにるんるん気分だ。  
 もしあのとき助けたのが男で、女性下着をお返しにくれても同じように喜んでいるようなテンションだ。  
「さらにすごいのが彼女がオランで有名なナナシーさんだったとはねー。驚きよね〜」  
 もっとも、ただの下着ではなく、超有名ブランドともいえるナナシーのデザインだからということもあるだろう。  
 反面、イリーナはお礼の気持ち自体に喜んでいるようだが、デザイナーの有名さにはピンときていないようである。  
「そんなに有名な人だったんですか?」  
「もー、相変わらずイリーナは無頓着ねぇ。ナナシーさんっていったら、そりゃあオランで右に出るものはいないってくらいのデザイナーよ。…下着専門だけど」  
「へぇー……そうなんですかぁ……」  
 やっぱりあんまりピンとこない様子で、手にした先ほどプレゼントされた包みを見る。  
「あんまり色気の無い下着ばっかり着てるからよ。たまには違うのはいてみたら? ヒースも喜ぶかもよ?」  
 うししって感じで、顔を覗き込むように肩を抱くマウナ。  
「…っ! ま、マウナー!」  
「あはははは! まぁアンタたちはそんなことしなくていいか、あっつあつだもんね〜」  
「そ、そっ!」  
「照れなくていいって、あははは〜。それじゃああたし、休憩終わりだからまたね〜」  
 散々イリーナをからかって、マウナは厨房の奥に逃げ帰る。  
 休憩室に包みを置いて、エプロンをしめなおす。  
「うふふ……これで○○○(ぴー)に迫ってみようかな」  
 ○にはエキューでもクラウスでも好きな名前を入れてお楽しみください。  
 マウナの相手になどそれほど興味は(ry(全国のマウナーのみなさん、ごめんなさい)  
 
 
 で、夜。イリーナの私室。  
「はぁー……無頓着かぁ」  
 昼間、マウナに言われたことを思い出す。  
 思えば、自分は下着に限らずファッションにはつくづく無頓着である。  
 いつもファリスの神官服だし、せいぜいがケープを羽織るとか、スカートの色を変えるとかその程度しかしていない。  
 下着にしても同じだ。無地の白い木綿パンツ。それか、ちょっとワインポイント程度にリボンがついたヤツ。  
 ブラジャーなんかサイズがないから、さらしを巻いているだけだ。町にいるときはノーブラなこともあるくらいである。  
「色気ない……よね」  
 改めて下着姿の自分を見下ろす。  
 さらしを巻いたぺた胸。まるで3枚数ガメルで売ってるような白パン@無地。  
 イリーナらしいといえばらしいのだが、やっぱり色気もへったくれもない。  
「ヒース兄さんは特になにもいわないけど……」  
 だからこそ、いつもと違ったものをつけていたらどうなるだろう。  
 ふと、そんな考えがよぎる。現在、それを確かめるのに都合よく、もらったばかりの下着がある。まだ未開封だが、きっとオシャレなデザインの下着が入っているに違いない。  
「……よし」  
 イリーナは覚悟を決めると、いさんで包みを開封しにかかった。  
 
「よし、イリーナ。脱がすぞ」  
「は、はい……」  
 で。ヒースもやってきて、いよいよお楽しみの時間である。  
 いつもの通り、世間話をして、キスを交わして、ベッドイン。  
 今日は珍しく、ヒース師匠の変態チックな要求もなく、きわめて普通に愛撫が始まり、その手がイリーナのスカートのホックにかかる。  
 すとん、とスカートが腰から抜け落ちる。  
「……ん?」  
 と、そこでヒースの手が止まった。  
「……ぁ」  
 そんなヒースの反応に、思わず視線をそむけ、頬を染めてもじもじするイリーナ。  
「イリーナ、これ」  
「あ、あの……その……ちょ、ちょっといつもと違った気分と思って……」  
 いつも見られているとはいえ、それがちょっと違った衣装というだけですごく気恥ずかしくなってくる。  
「え、えと……以前助けた行商人の方が実は……」  
 照れ隠しなのか、この下着を入手するに当たったいきさつをぺらぺらとしゃべるものの、どうしてもヒースと視線があわせられないイリーナ。  
 ヒースはしばらく言葉を失っていたが、何かを衝動に駆られたようにイリーナの上着を引っぺがす。  
「きゃ」  
「おお!」  
 そこにはやはり、いつもの無愛想なさらしの姿は無く、パンツとおそろいになった小ぶりの胸を包み隠すブラジャーが当てられていた。  
 素材は上下ともに上質なシルク。色自体はいつもの下着と同じ白だったが、例えるならいつものパンツが路地裏の白猫。そして今イリーナが見につけているパンツが、貴婦人の膝でなでられている血統書つきの白猫といったところか。  
 縁にはふんだんにフリルがあしらわれていて、ものすごく高級なイメージを漂わせている。  
 パンツのフロントとブラの中止にあしらわれたそろいのリボンは、淡いピンクで模様が刺繍された、やはりフリルつきのかわいらしいものだ。  
 ブラは小さな胸を優しく包み込み、背中の紐を結んで止めるタイプ。パンツもふんわりと下半身を覆っていて、実に履き心地がいい。  
 
(ベルカナさんはお嬢様っぽかったから……派手すぎない豪華さ。セクシーというよりも可憐に、レースよりもフリル、色は清楚な白とワンポイントにピンクを少し)  
 
 ナナシーがイメージしたのはそれだった。  
思惑がハズレ、着用者はイリーナになってしまったものの、普段からは想像のできないその姿は、ある意味アタリだった。  
「あ、あのヒース兄さん……そ、そんなにじっと見ないでください……」  
 感嘆の声を上げたきり視線をはずそうとしないヒースに、イリーナは下着姿を隠すように身を縮める。  
 まだ脱がせただけだというのに、耳まで真っ赤になって恥らっている。  
「……いい」  
「え?」  
「マーベラス!!」  
「ま、まーべらすっ!?」  
 そんなイリーナの初々しい反応と、フリフリ下着姿に大いに感動するヒース。  
 ここのところ、開発……もとい、愛し合い続けた結果、なかなかのエロ神官が出来上がったものの、反面当初のような恥じらいが薄れてきていた。  
 そこへきて、この反応とこの格好である。ヒース師匠、エネルギー再充填120%である。  
「実にいい! その貧乏くさい体にミスマッチな豪奢な下着! 普段の粗暴さからは想像もつかないフリフリさ加減!」  
「そ、それってほめてるんですか、もう!?」  
 包みを開けてから、こんな豪華なのが自分に似合うのかな、と戸惑ってしまっただけあって、図星をつかれているようでつい反論してしまうイリーナ。  
 だが、ヒースは聞いていない。  
「そしてなにより! このブラジャーなんてはじめてつけましたって感じがモロバレなへたくそ結びの紐!!」  
 びしぃ、とヒースが指したブラジャーの止め紐は、見事な硬結び。  
「だ、だってこういうの本当に初めてなんですもん……」  
 さらに頬を染めていじいじと呟くイリーナ。  
「だがそれがいい」  
 けどやっぱり、ヒース的にはツボらしい。イリーナを後ろから抱きしめ、首筋に唇を這わす。  
「ひゃ……」  
「いりーなサン、ちょっと俺さま、燃えちゃったぞ?」  
 首筋に這わせた唇から舌を差し出し、つつつ、と耳まで舐め上げる。  
「ひぁ……ちょ、ひ、ヒースにいさっ……」  
 全身を駆け抜けるぞくぞくとした快感。  
 さらにヒースの手が、フリフリブラの上からイリーナの平らな胸をまさぐる。  
「ふぁ!」  
「なんだイリーナ、もう乳首硬くなってるぞ?」  
 ニヤリと毎度の笑みを浮かべ、ブラジャー越しにコリコリとその突起を転がす。手触りのいい素材とその下の突起のコリコリ感が、指の腹から伝わってくる。  
 
「ふっ……ふあっ……んっ、んっ、……くあっ!」  
 ブラジャー越しのもどかしい快感に、喘ぎ声を押し殺すイリーナ。次第に下半身もじわじわと熱くなってきて、自然と腰がもじもじと動き始める。  
「さらしだとこういうことはできなかったからなぁ」  
 そういいながら執拗に乳首には直に触ろうとせず、ブラ越しの愛撫を続けるヒース。  
 その微弱な刺激に、ぴくんぴくんと小さく体を震わせ、イリーナは悶え続ける。  
「なんか、まるで高級人形みたいだな、イリーナ」  
「ひ、ヒース兄さん……も、もどかしいです……切ないです……っ」  
 耳元でそうささやいたヒースを潤んだ瞳で見あげるイリーナ。  
「こら、人形はそんなエロい顔しないぞ。このままじっとしてたらご褒美やるよ」  
 またなにかよからぬことを思いついたようなヒースの笑み。  
 こうなったらどうあがいても好きにされてしまう。それを悟ったイリーナは、黙ってそれを受け入れ、もどかしさに甘んじる。  
「ふっふっふ……しっかし、やっぱりお人形さんにブラジャーは早すぎたかなぁ。こんなにぺったんこなのになぁ」  
 ヒースはぷにゅぷにゅと、あるかないかといわれたら、かろうじてあると呼べるだろう胸のふくらみを寄せて寄せて寄せまくって揉みしだく。  
 いつもはそれこそ上側から手を覆ってもんでいるのだが、今日はわざと側面から無理やり揉んでいる。こちらのほうがより胸の無さを強調できた。  
「いつかこのブラジャーがもっと活躍する日がくるといいんだがなぁ」  
 耳元でささやきながら執拗に呟く。  
 そんな言葉をささやかれるたびに、イリーナは羞恥で真っ赤になっていく。  
 そう、今日のヒース師匠のプレイ内容は、ザ・言葉攻めである。  
「ま、乳首だけはいっちょまえだよな。こんなにコリコリになって、ブラジャーで擦れるだけで感じるんじゃないか?」  
「……ふああっ!!」  
 きゅうう、と少し強めにつまんでやると、たまらずイリーナから嬌声が漏れ出す。  
「ほれ、じっとしとけっていったろ? ん〜?」  
「ふっ……んんっ……くふっ!」  
 コリコリコリ、きゅううう、と連続的に乳首をいじめるヒース。そのたびにイリーナは身悶えし、嬌声を上げる。  
 だが、どうにか動きを最小限に、声を出さないようにと、目を硬く瞑ってそれに耐えている。  
 ヒースはイリーナを愛撫しながら、片方の乳首から手を放し下へと移動させる。  
 
 にちゅ……。  
 
「んー……? はっはっは、お人形さん、まだ下には触っても無いのに大洪水みたいだぞ?」  
 ヒースの手がフリフリパンツの股の部分で止まった。  
 まだ本格的には触っていないというのに、そこには大きなシミが出来上がっていた。指で軽く押すと、水音がしてじんわりと愛液の生暖かさが指先に伝わってくる。  
「エロいなー、お人形さん。もうこんなに濡らしてるなんてな」  
 ささやくたびに耳に息がふきかけられ、そして羞恥を煽る言葉に、イリーナは顔だけでなく身体全体を真っ赤に染めて打ち震える。  
「せっかくプレゼントしてくれた素敵な下着なのに、一回履いただけでもうこんな大きなシミ作って。ほんとエロいなー」  
「ふ……ふぅぅ……」  
 唇をかみ締めてヒースを見上げる。相変わらず意地の悪い笑みを浮かべているが、その笑みはイヤではなかった。  
 むしろ、言われれば言われるたびに、身体の奥が熱くなってくる。愛撫されているだけではなく、股の奥から愛液が溢れてくる。  
   
 くちゅ、にちゅり、くちゅ、くちゃ、にちゃあ……  
 
「また濡れてきた。これは中が気になるな」  
 水音が増したのに満足な笑みを浮かべると、ヒースはフリフリパンツに指を引っ掛け、くいっと引っ張った。  
 その瞬間、パンツの中にこもっていたイリーナの雌の臭いがむわっと漂ってきた。  
「おー……すっげー臭いだな」  
(〜〜〜っ!!)  
 羞恥で死にそうになる。だが、同時に言い知れぬ快感が全身を駆け巡り、さらなる愛液を分泌させる。  
「お人形さん、毛はやっぱり薄いんだな。これ以上はえてこないのかもな」  
 パンツの中に無遠慮に手を突っ込んだヒースは、イリーナの薄い陰毛をしょりしょりと撫で回す。  
「なんだ、もう毛まで愛液まみれだな」  
「……ぁううう……はぁぁっ……」  
 イリーナからあふれ出した愛液は、割れ目周辺だけでなく、すでに陰毛までぐっしょりと濡らしていた。  
 パンツのシミは前面にまで広がり、製作者に申し訳が立たなくなりそうなくらいだ。  
 
 次第に陰毛をいじっていたヒースの手が割れ目に、そしてクリトリスをつまみ上げた。  
「〜〜〜〜〜っっ!!」  
 その瞬間、イリーナは越えなき悲鳴をあげてビクビクと仰け反った。  
 そして、  
 
 しゅるるるるるるっ!!!  
 
「ふあ!?」  
 布越しのくぐもった流水音。下半身に妙に暖かい感覚が広がっていき、全身から力が抜ける。  
「おっと……おもらししたか。せっかくのパンツが尿まみれ、だな」  
 トドメとばかりにささやくヒース。  
「……っく……ひっく……ヒース兄さん、ひどいで……えうっ」  
 パンツに、そしてシーツに広がっていく黄金水の水溜り。その中心に佇み、イリーナがついにすすり泣き始めた。  
「はぁ……悪かったよイリーナ。かわいすぎてついな」  
 ヒースはイリーナの性感帯から手を離すと、態度を改めると後ろから優しくイリーナを抱く。  
 さらさらと髪の毛を梳きながらイリーナが落ち着くのを待つ。  
「………かわいかった……ですか?」  
「ああ」  
「いつもより、ですか?」  
「ああ」  
「……やっぱり、色気のある下着のほうがいい……ですよね?」  
 ぐすり、と涙と鼻をすすり、イリーナが呟く。  
「アホ。まぁそれもないとは言い切れないが、下着よりもイリーナのほうがかわいかったぞ?」  
 心の中で、なれない下着に恥らうところが、と付け加えておくが、まぁ概ね事実だった。  
「俺はイリーナだからこうしてるんだ。ま、陳腐なセリフだが……お前が好きだし、まぁ、そのなんだ」  
 なかなか泣き止まないイリーナに、つい本心を口に出してしまい、頭をボリボリとかくヒース。  
 そんなヒースの照れ隠しに、ようやくイリーナがくすりと微笑をこぼした。  
「……じゃあ」  
「ん?」  
「じゃあ、ご褒美、ください……。じっと我慢したんですから、ヒース兄さんのキモチイイの、わ、わたしのココにください……」  
 そ、と愛液とおしっこで濡れた、割れ目の浮き上がったパンツに手を置くイリーナ。  
「わたしだって、ヒース兄さんが好きだからこんなおねだりできるんですよ……?」  
 ぽ、と頬を染めて上目遣いで呟くイリーナ。  
「……」  
「ひ、ヒース兄さん……?」  
「マーベラス!!」  
「ま、またですかーっ!?」  
 ヒースの目がカッと見開かれる。  
「それではイリーナさん、お待ちカネのものをあげようじゃないか!」  
「け、結局そんなノリなんですかーっ」  
 がばーっとイリーナを押し倒し、ヒースジュニアをセットアップする。  
「ちょ、ちょっと! ヒース兄さん、ベッドは……! そ、その……おしっこでつめた……」  
 押し倒された瞬間、背中に妙な冷たさが広がる。さっきもらして濡れた部分があたっているらしい。  
「問題なし!」  
「あ、ありますよーっ! せっかくの下着が汚れちゃいま」  
「あとで風呂はいって洗濯するからよし! それに中で出せばそれで汚れる心配もなし!」  
「そ、そんなーっ!」  
 ヒースはイリーナのパンツに手をかけ、一気にずりさげようとしてそれをとどめた。  
「……ど、どうしたんですか…?」  
 仕方なく覚悟を決めたイリーナは、そんなヒースの行動に上体を起こしてたずねる。  
「……うん。せっかくだ、このまましよう」  
「え、こ、このままって……」  
 ヒースはイリーナのパンツを横にずらすと、脱がせることなくトロトロにスタンバイされたイリーナの秘所をあらわにさせた。  
「こうするんだよ……うりゃ」  
「ひあああっ!?」  
 そしてそのままヒースジュニアを挿入。トロトロの愛液に包まれ、灼熱するイリーナの胎内へと無遠慮に突き進むヒースジュニア。  
「そ、そんないきなりふかっ………あああっ、あっ、ああっ、ふにゃあああああっ!!」  
 容赦なくずんずんと突き進み、一番奥まで到達し子宮口をノックした瞬間、イリーナが身体を仰け反らせて絶叫した。  
 
 瞬間、強烈に収縮する膣内。  
「おお……なんだ、もうイったのかイリーナ?」  
 ぐりぐりと膣内でジュニアさんをこねくり回しながら尋ねるヒース。  
「ひぁっ……ひくっ……だ、だって……あ、んなに…我慢して……はっ……たんですからっ……ふぅっ!」  
 びくびくと小刻みに身体を痙攣させながら、息も絶え絶えにうめくイリーナ。  
「そーかそーか。だけど、まだ休ませないぞ?」  
「ひっ……そ、そんなヒース兄さん、まだイったば……ひゃああっ!!」  
 ヒースはイリーナの静止も聞かず、その腰を掴むとずんずんとピストンを開始した。  
 
 ずっちゅ、ぐっちゅっ、ぐちゃっ、ずちゅあっ、びちゅぁっ!!  
 
「ふあ! はんっ、くふぁっ、ひっ、あっ、ああんっ、んんんーっ!!」  
 イったばかりの身体にさらに快楽が津波のように押し寄せ、イリーナはシーツを掴んで、よだれと涙を垂らしながらベッドの上で跳ね回る。  
「すごい締まるぞ、イリーナ……それになんかパンツはいたままっていうのも新鮮でいいな」  
 ずんずんと腰を動かし、いやらしい音を響かせながら動くヒース。さらに、パンツ越しに包皮から顔を出しているだろうクリトリスをぐにぐにと軽く押しつぶす。  
「ふああああっ!! だ、だめでふっ、く、くりとりすはダメでふぅぅっ!! ひああっ!!」  
 再び、きゅうと激しく締め付けられる膣内。  
「うっは……イリーナ、いつもよりすご……はぁはぁ」  
「わ、わたしも……っ、き、気持ちよすぎて、へ、変になっちゃいそうですぅ……っ!!」  
 大きめにピストンしていたヒースの動きが、だんだんと小さく、早くなっていく。  
 ぱんぱんという腰と腰がぶつかる音がだんだん大きくなっていき、部屋中に響き渡る。  
「ひああっ、ああんっ、も、もっと……ゆっくりぃぃ……ぃいっ!!」  
 イリーナが喉の奥から搾り出すように喘ぎながら懇願する。  
「わ、わり、もう止められね……」  
「ふああ……そ、そんなに突かれたら、ま、また、あああっ!!」  
 イリーナの声からも限界が近いことがわかった。  
 ヒースは両手でイリーナの腰をがっちりと掴むと、猛然とラストスパートをかけた。  
 
 ずちゅずちゅずちゅ、ぐちゅちゅぶぐちゅずちゃっ、じゅぶじゅぶじゅぶじゅずちゅっ!!  
 
「ふああぁあっ!! だ、ダメです、もうだめですっ!!」  
「はぁはぁっ」  
「お、おかしくなっちゃい、まふううっ!!  と、とんじゃいますうっ!!」  
「イリーナっ、もう出すぞっ」  
「ひゃああああんっ!! きゃあああああんっ!!」  
 ヒースが力強く腰を押し出した瞬間、いっそう甲高いイリーナの悲鳴があがり、二度目の強烈な収縮。  
 びゅるびゅるとイリーナの膣内で精がはじけ、そこを満たしてごぷりと逆流してくる。  
「ふぁぁぁ……はふぅぅぅ〜〜〜………」  
 
 事が済んで、  
「も、もう!! お風呂に入って洗濯すればいいって、よく考えたら今何時だと思ってるんですか!」  
 ギャピー、とイリーナの怒声が響き渡る。  
「ん、んー……よくはわらかんが、まぁ日はまたいでるだろうなぁ……がべぶぼらっ!」  
 引きつった笑みを浮かべて答えたヒースの顔面に鉄拳が炸裂する。  
「そんな時間に公衆浴場があいてるわけないじゃないですかーっ!」  
 そう。さすがにそんな時間では、公衆浴場はあいていない。雨漏りファリス神殿には、常時湯を溜めておく設備などあるはずもない。  
 要するに、汚れた下着やシーツは洗濯できたとしても、からだまでは完全に綺麗にできないのである。  
「ヒース兄さん……」  
「お、落ち着いてください、いりーなサン?」  
「汝はやっぱり邪悪ですーっ!!」  
 どごおおおん!! ばきばき! ごろごろごろっ!  
「ぎゃぼー!」  
 イリーナにぶっ飛ばされ、鎧戸を破壊して表に転がるヒース。  
 さらに、どこからか取り出したのか、冷たい冷水をぶっ掛けるイリーナ。  
「つめてぇぇぇぇ!!」  
「成敗です! それと、表でティンダーで火をおこしてお湯を沸かしたら、あったかいタオルでわたしの身体を拭いてください!」  
「い、イリー……」  
「わかりましたか!?」  
「わかりました、いりーなサマ」  
 正義は勝つ。  
 
 ちなみに、  
「………やっぱりこの下着は、勝負下着っていうことにしてとっておこう」  
 むしろ勝負の回数が多すぎて、後日新しいオシャレな下着を見繕いにマウナとでかけたとか、でかけてないとか。  
 
 side クレベルに続く。 

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