「それが“祝福の聖杯”の真なる力……」
殺風景な下宿の一室で、チャ・ザの神官アマディアは感極まった声をもらした。
再び宝物庫にしまわれたミスリル製の酒杯。それを取り戻してくれた冒険者の言葉は、神の啓示にも
等しい重さで彼女の胸に響く。真実を伝えてくれたのが彼――ライスであることこそチャ・ザ神の配
慮だと、アマディアには思えた。
「そう。幸運は分かち合うことで無限となるってね」
得意満面で言わずもがなの補足をしたのは、頭に鸚鵡の羽根を差したハーフエルフの少女(と言って
も、年齢はアマディアよりもずっと上だが)リーライナだった。
感動に水を差された気がして眉をひそめかけたアマディアだけれど、かろうじて思いとどまる。自分
の苛立ちが、現在のライスに一番近い場所にいる女性への嫉妬だと自覚したから。
恋敵の葛藤などどこ吹く風で、リーライナは馴れ馴れしい笑顔を浮かべる。
「という訳だから、あたしたちも幸運を分かち合いましょうね」
「は?」
なにがどう『という訳』なのやらさっぱり判らず、アマディアは首をかしげる。隣で聞いていたライ
スが、困り顔でリーライナを見やった。
「リル……まさか、さっき言ってたことは冗談じゃなかったのか?」
「あたしは、いつだって本気よ」
イタズラ小僧めいた表情で、リーライナは言う。
「だって、仕方がないでしょう? アマディアは、もうすぐグードンに帰ってしまうんですもの。あ
たしと公平な立場でライスを分かち合える機会なんて、今しかないじゃないの」
「ライスを、分かち合う?」
鸚鵡返しに呟いたアマディアは、たっぷり五回は深呼吸できる時間をかけて、その意味を理解する。
「あの……それは……つまり……」
「そうよ。あたしと一緒に、ライスに抱かれましょうって言ってるの」
リーライナは椅子に腰掛けたアマディアの背後に回ると、相手の首に腕を回してもたれかかった。
「アマディアは、まだ処女なんでしょう?」
あけすけな質問に反射的にうなずいてしまったアマディアは、頬をかっと上気させる。そのウブな反
応に、リーライナもほっとした様子だった。
「あたしも、これが初めてなの。だから、今ならば、あなたとあたしとは対等ってワケ」
「リ……リル!」
ライスがたしなめる声をかけても、リーライナは聞く耳を持たない。緊張で身体を縮こまらせる女神
官の耳に息を吹きかけるようにしながら、妖しくささやきかける。
「でも、アマディアがイヤだって言うなら、やめてもいいのよ。あたしは、自分だけライスに抱かれ
たりしないって約束するから、安心して」
リーライナは、エルフの里で生まれた。ハーフエルフにしては珍しいことに、迫害を受けることもな
く育てられた彼女は、一般的なエルフと同じように性的な欲望に貧しい。
今度の一件がなかったなら(と言うより、アマディアがいなかったなら)ライスとは単なる冒険者仲
間で満足し、彼に抱かれようなんて考えもしなかっただろう。
「さあ、アマディア、どうするの?」
「……たいです」
決断を迫られた女神官は、か細い声をもらした。やがて彼女は、勇気をふるって声を絞り出す。
「わたしも、ライスに、抱かれたいです。ライスに、愛してもらいたいんです!」
「じゃあ、決まりだわ」
満足げにうなずいたリーライナは、鴉の羽根を頭に差した冒険者に視線を向ける。
「さあ、ライス。あたしたちを幸せにしてちょうだい。もちろん、二人とも平等にね」
二組の視線に訴えかけられて、ライスは気圧されたみたいにうなずいた。
乙女たちが、服を脱ぎ捨てる。リーライナはてきぱきと。アマディアはおずおずと。
二人の間を揺れ動くライスの視線を意識して、リーライナはちょっと不愉快な気分になった。やっぱ
り男って――人間であれ、エルフであれ――胸が大きい女がいいんだろうか?
ライスにしてみれば、二人を比較している余裕などない。両方から目を逸らすこともできず、一方だ
けを注視するワケにもいかないから、そわそわと視線をうろつかせているだけなのだけれど。
「あの……これから、どうすればいいんでしょうか?」
着衣を脱ぎ終えてしまうと、アマディアは困ったようにリーライナに尋ねた。
「そんなことを訊かれたって、あたしだって初めてなんだから。あとはライスに任せましょう」
「わ、わかりました。ライス……お願いします」
お願いされたライスは、ようやくのことで度胸を決めた。
まずはリーライナの裸身を抱き寄せ、ついばむように唇を合わせると、間をおかず、アマディアにも
同じようにしてやる。
二人の乙女は、奪い合うようにライスからの愛撫を求め、助け合うようにライスを愛撫した。両手を
使って同時にいじくり回される二つの花弁は、瞬く間に蜜をあふれさせる。
「最初はどちらからにしようか?」
ライスが生真面目な口調で尋ねると、生娘たちは困ったように顔を見合わせた。交わす視線で互いに
先を譲り合い、結論を出すことができない。
「あ、あなたが決めてよ、ライス」
「わたしは、どちらからでも、かまいませんから……」
そう言われたライスは、選択を神の手にゆだねることにした。目を閉じたまま無作為に手を伸ばし、
たまたま触れた方の女をベッドに押し倒す。
押し倒されたのは、アマディアだった。
堂々といきり立った男根が、ゆっくりとした動きで門をこじ開ける。
「い、痛ぁ……っ!」
ライスが腰を押し進めようとすると、アマディアの内側はそれを拒んだ。未通の場所をえぐられる苦
痛が、彼女をわななかせる。
「大丈夫だからね。力を抜くんだ」
ライスは優しくささやきかけ、そっとキスしてやりながら、指でこわばりを解きほぐす。
やがて彼の分身がずぶりと沈んだかと思うと、そのまま最奥まで届いた。
「あ、はぁぁぁぁぁ……っ」
胎内に押し込まれた異物と同じ分だけ息を吐き出して、アマディアは全身を震わせる。思い焦がれた
相手に純潔を捧げる悦びに満たされて、痛みを意識から追い払う。
ゆっくりゆっくりと腰を動かしてアマディアを睦むライスに、横合いから切ない声がかけられた。
「ねえ、ライス……あたしにも……」
恋敵の破瓜の情景を黙って眺めていたリーライナだけれど、どうやら我慢も限界のようだった。
許可を求めるようにアマディアを見やると、力強いうなずきがライスを促した。
「じゃあ行くよ、リル」
引き抜かれた肉棒は、まとわりついた血を落とそうともせず、次なる処女腔へと襲いかかった。
今度は怯える時間を短く終わらせてあげようと、一気に刺し貫く。
「くっ……きつい!」
ぎゅっと締め付けられる感触に、ライスは思わず叫んでしまう。
アマディアの中も窮屈だったけれど、リーライナのそこはいっそう狭く感じられた。たっぷりと愛液
を滴らせていても、妖精の血を引く女の膣内は、感覚的にだけでなく実際として狭かった。
「いっ、うっ……うぅ……」
果たしてアマディアへの対抗心からだろうか、リーライナは痛みを訴えようとはしない。歯を食いし
ばり、眉間にしわを寄せながら、必死で苦痛に耐える。
「がんばって……リーライナさん」
リーライナの手を握りしめ、アマディアが励ましの言葉を贈る。
「あ、あはぁ! あぁ……」
いつしか身体の芯から快感がにじみ出し、リーライナはそれに身を任せた。
ライスはなにも言葉を発せず、ひたすら半妖精を貫き、ゆさぶる。リーライナが身悶えするたびに、
狭い肉壁がきゅうきゅうと締め付けて、彼を攻め立てた。
二人の快感はほとんど同時に限界に達し、リーライナの中に灼熱の粘液が放たれる。
「あぁ、ライス! 全部出しちゃ、だめ! アマディアにも……アマディアにも!」
恋敵を気遣うリーライナの叫びに応えて、ライスは半ばまで放出した肉棒を引き抜く。
ついさっき純潔を失ったばかりのアマディアの媚肉は、精を注がれる瞬間を待ちわびて、ひくひくと
蠢いていた。その狭間に先端が潜り込むやいなや、射精が再開される。
「う、うぅっ!」
あまりにも激しい快感に呻きながら、ライスは肉襞をかき分けて突き進み、精汁を噴き出し続ける肉
棒で子宮を圧迫する。
その一撃はアマディアの全身に鮮烈な快感を走らせ、刹那に絶頂へと導く。
「あ! あ! ああぁぁぁぁっっ!!」
まるで若木で造られた長弓のように、アマディアは背中を仰け反らせた。
くたりとベッドに沈んだアマディアとつながったまま、弛緩した身体を優しく抱きしめてやるライス
の背中に、さらにリーライナが抱きつく。
ライスは首を横にひねって、肩越しにリーライナと唇を重ねた。するとアマディアも身体を起こして
割り込み、三枚の舌が縦横無尽に絡み合う。
その時、アマディアがびくっと背筋を震わせ、あっ、という声をもらした。
「ライスが……わたしの、中で……また、大きく、なって……」
「まるで“祝福の聖杯”の奇跡ね」
嬉しそうに呟くリーライナの瞳は、淫蕩な色に染まっていた。
「わたし……もう、だめです……ああっ! もう、だめぇ! ああぁーーっ!」
すでに何度目かも分からなくなった絶頂に達したアマディアとの交合を解いたライスは、隣でぐった
りとなっていたリーライナの腰をつかみ、尻を高く持ち上げた。
「ま、待ってよ! あたし、まだ……ああっ!」
うろたえるリーライナのどろどろになった秘裂に、熱く堅い肉塊がためらいなく侵入する。
「ああっ! 今度は、後ろから? ん、もう……ああっ!」
獣のスタイルで貫かれたハーフエルフの肉体は、たちまち昂ぶってしまう。ライスの動きに従い、あ
るいは逆らって、疲れ切ったはずの腰が激しく踊り狂う。
荒い息をつきながらその嬌態を眺めるアマディアは、夢見るみたいにうっとりとささやいた。
「幸運は分かち合うことで無限になる……」
それは、ライスの信念だった。
自らの信念を証明するように、ライスは二つの淫肉を行き来する。
リーライナを奥深くまで貫いてはアマディアの子宮めがけて注ぎ込み、アマディアと腰を打ち合わせ
てはリーライナの胎内を満たした。
ふくよかな女神官と、ほっそりとした半妖精。
味わいの異なる女陰は彼が萎えることを許さず、枯れることを知らない男根が彼女たちに絶え間ない
悦楽を与える。
二つの聖杯を祝福で満たすべく、幸運神の神官戦士は歓喜の滴をほとばしらせ続けた。
了