〜イカすエルフ天国〜
「ああ、こ、このドアの向こうに……」
腰にタオルを巻いただけの姿で拳を握り締め、僕は感動にむせび泣いた。
僕の名はエキュー。元は傭兵で、今は4人の仲間と冒険者をしている。
ここはターシャスの森の奥深くにある、僕の初恋の人、エルフのシルヴァーナさんの村。
彼女の依頼を受けて、古代王国の遺跡から彷徨い出てきたモンスター、バグベアードを倒して来たところだ。
憧れのエルフの村に来れたってだけで、踊り出したくなるぐらい嬉しいけど、今はそれどころじゃない。
ダメモトで言ってみた『エルフ風呂』というお願いを、何とシルヴァーナさんがオッケーしてくれたのだ。
マウナさんからは、氷の精霊フラウ並みの冷た〜い視線を受けたけど、それはそれ。
エルフフェチとまで言われるこの僕が、こんな素晴らしい機会、逃せるはずがない。
出来るだけキリッとした顔をしようとしても、どうしても頬が緩んでしまう。
ぱしぱしと顔を叩き、大きく深呼吸。
ドアの前に立って、まずは軽くノックしてみる。
「あっ、あのっ、僕はエキューと申しますが……」
う、声が裏返ってしまった。軽く咳払いをして、喉の調子を整える。
「あ、エキューなのね? お待ちしていましたわ、遠慮せずお入りになって」
うおっ、この声はシルヴァーナさんっ! シルヴァーナさんもそこにいるですかっ!?
それとなく期待はしてたけど、実際にいると分かると、余計に胸が高鳴る。
「おっ、お邪魔しまーっす!」
僕は大きく宣言すると、ドアの向こうへと飛び込んだ。
──エルフ耳が、ひとつ、ふたつ、たくさん。
脱衣所の扉を抜けると、そこは天国だった。
僕の正面には、ほんの数歩ほどの距離を置いて、大の字に寝ても余裕なぐらいの大きな湯船がある。
そして湯船の縁には、シルヴァーナさんを含めて、4人の綺麗なエルフのお姉さんたちが腰掛けていた。
胸から下をタオルで包んでいるけど、露わになった首筋から肩までの素肌はドキリとするほど白い。
そして何より、鳥の風切り羽根みたいに特徴的な耳が、それぞれの髪の間からぴょこんと突き出ている。
こっ、これぞまさに、夢にまで見たエルフ風呂っ!
父さん、母さん、僕はとうとうここまで来ました。今日は生涯最高の日です……。
「どうしたの、エキュー? そんなに大きなお口を開けて」
「いっ、いえっ! 何でもありませんっ!」
シルヴァーナさんに声を掛けられ、僕はようやく正気を取り戻した。
ふう、危ない危ない。もう少しで幸せのあまり卒倒する処だった。
「ふふ、おかしな子ね。さあ、そのままでは身体が冷えてしまいますわ。どうぞこちらへ」
ふわっと柔らかく微笑むと、シルヴァーナさんは湯船の中央を指し示した。
自分で要求しておいて何だけど、実際にこんなシチュエーションになると、すごく緊張する。
「はっ、はひっ!」
僕はぎくしゃくと手足を動かして、彼女に促されるままに、膝を抱えて湯船に身体を沈める。
そうすると、湯船の縁に控えていたエルフのお姉さんたちが、次々とお湯の中に入って来た。
あくまで優雅に、そして上品に、僕の後ろと左右に一人ずつ、膝を揃えて横座りになる。
大きな湯船とはいえ、さすがにこれだけの人数が入ると、それほどスペースの余裕は無い。
おかげで僕は、肌と肌が触れ合うぐらいの至近距離で取り囲まれるという、嬉しすぎる状態になった。
「それでは、私の友人達を紹介しますわね。まず、こちらにいるのが……」
「あっ、はぁ……」
最後に正面のシルヴァーナさんが静々とお湯に入ると、お姉さんたちの名前を順番に紹介し始めた。
他の人はどうやら人間語が全く解らないらしく、シルヴァーナさんが通訳をしてくれるらしい。
ヒースは論外としても、誰かにエルフ語を教わっておけば良かったかな、とチラッと思う。
でも、魅力的なエルフの皆さんが微笑む姿を見ていると、そんな事はどうでも良くなってきた。
なにしろ、右を見ても左を見ても、もひとつおまけに後ろを見ても、憧れのトンガリ耳がそこにあるんだ。
そして何より、僕が精霊使いを目指すきっかけにもなったシルヴァーナさんが、真っ正面にいる。
胸がすごくドキドキして、シルヴァーナさんの言葉の内容も、そのほとんどが頭の中を素通りしていった。
「……かしら? ねえエキュー、聞いていて?」
「あっ、はい! 皆さん綺麗だと思います!」
ぼんやりしている処に突然名前を呼ばれて、僕は思わず考えていた事をそのまま口にしてしまった。
僕の唐突な言葉に、シルヴァーナさんは小さな子供を叱るような、軽くたしなめる表情をする。
「もう、聞いていなかったわね?」
「す、すいません……」
素直に謝ると、シルヴァーナさんは悪戯っぽい笑みを浮かべて、流れるようなエルフ語で何事かを喋った。
その途端、周りにいるお姉さんたちも、口元に手を当ててクスクスと笑い出す。
雰囲気から察するに、今の失言をそのまま翻訳されてしまったらしい。
ううっ、シルヴァーナさん、出来れば今のは伝えないで欲しかったなぁ。
だけどまさか文句も言えず、鼻の下までお湯に浸かって、ぶくぶくと泡を立ててみたりする。
ひとしきり笑い合った後、シルヴァーナさんは耳元の髪を軽く掻き上げ、僕の顔を覗き込んで来た。
「ふふっ、ご免なさいねエキュー、笑ったりして。気を悪くしてはいませんか?」
「いっ、いいえぇ! シルヴァーナさんになら、笑われようが怒られようが、もう全然オッケーです!」
我ながら現金だとは思うけど、僕は力いっぱい首を振って、誤魔化し笑いでそれに答えた。
ああ、ちょっとお茶目なシルヴァーナさんも、やっぱり素敵だ。
「そう、それは良かったわ。それで、先程の話の続きなのだけれど」
「あ、はい、何でしょう?」
「他のみんなが、貴方に触ってもいいかと訊いているの。構わないかしら?」
「はぁ!?」
さ、触る? それってつまり、タッチサービスとかそういう事ですか?
傭兵をやってた頃、年上の仲間達に連れていかれたエッチなお店の記憶が、一気に頭を駆け巡る。
「他の子たちは、人間の男の子が珍しくて、興味があるのですって。ほとんど森を出た事が無いから」
「……ああ、なるほど」
やっぱりここでも愛玩動物ですか、僕は。
ちょっとガックリくるけど、尖った耳のお姉さんたちのお願いとあれば、僕に断れるはずがない。
それに、この状態でエルフの皆さんに撫で撫でされるというのも、それはそれで心躍るものがあるし。
「ええと、僕としては、構わないと言うか、むしろこちらからお願いしたいと言うか……」
「そう言ってもらえると助かるわ。────」
シルヴァーナさんが短く言って頷くと、他のお姉さんたちは待ちかねていたように手を伸ばしてきた。
肩や腕をつんつんと突かれたり、髪の毛をよしよしと撫でられたり、まるっきり子供か犬猫扱いだ。
まあ、何百年も生きてるエルフの人にしてみれば、16歳の僕なんて、本当にお子様なんだろうけど。
僕が膝を抱えてもじもじすると、お姉さんたちはますます面白がって、僕の身体をぺたぺたと触ってきた。
あ、あは、あはは。い、いいのかな、こんなに幸せで。
お姉さんたちは何やら楽しそうに喋りながら、だんだんと僕の方に身体を寄せてきた。
柔らかいやら良い匂いがするやらで、ぬるめのお湯なのに早くものぼせそうになる。
まずい事になってきた股間を見られないように、僕はしっかりと足を閉じて、膝を身体に引き寄せる。
だけどエルフのお姉さんたちは、そんな僕の動きも気にしない様子で、あちこち触りまくっていた。
「あの、お嫌でしたら、きちんと言ってくださいね。私が言って聞かせますから」
僕がオモチャにされているのを見て、シルヴァーナさんは少し困ったような顔をして呟いた。
どうやら、だらしなく顔が緩みそうなのを我慢している僕の態度を、嫌がってるのと勘違いしたらしい。
「い、いえ、嫌だなんて、そんな事ある訳ないです!」
「そうですか? けれど、先程から膝を抱えたまま、とても緊張しているように見えますけど……」
「ええ、その、確かに緊張というか、固くなっているのは自覚してます」
特に一部分が。
「でしたら、もっとくつろいで下さいな。よろしかったら、こちらに足を伸ばしても結構ですのよ?」
「いっ、いえ、お気持ちだけで結構です! どうぞお構いなくっ!」
そんな真似をしたら、シルヴァーナさん他エルフの皆さんに、僕の今の状態がバレてしまう。
両手を上げてぶんぶんと打ち消すように振り、それ以上の追求から逃れようとする。
けど、まるでその隙を狙っていたかのように、一人のお姉さんの手が、僕の足の間にするりと忍び込む。
「うわぁっ!?」
慌てて両手でそこを隠すけど、時すでに遅し。
しっかりと確認してしまったお姉さんは、僕が止める間もなく、大きな声で周りに訴えた。
残りのお姉さんたちが甲高い声で叫び出す中で、シルヴァーナさん一人だけがぱちくりと瞬きをする。
そして、数テンポ遅れて大きく目を見開くと、いきなりパッと俯いてしまった。
「あっ……! い、いやですわ、エキュー、貴方……」
「ちちちっ、違いますシルヴァーナさん! これは違うんです!」
両手で頬を覆って、みるみるうちに耳の先まで真っ赤に染めたシルヴァーナさんへ、僕は必死で弁解した。
彼女の事をいやらしい目で見ていたなんて思われたら、死んでも死にきれない。
でも、実際にこんな風になってるんじゃ、どう言ったって言い訳にしか聞こえないだろう。
居たたまれない気分で肩を落とし、僕はさっきにも増して身体を丸め、湯船の中央で小さくなる。
すると、周りのお姉さんに何かを言われ、シルヴァーナさんは勢い良く顔を上げた。
「──、──────、────っ!」
シルヴァーナさんは、赤面したまま強い語調で、他のお姉さんたちと口論を始めた。
言葉の意味は全然判らないけど、態度からして残りの3人の言う事を拒んでいるように感じる。
もしかして、僕の事を弁護してくれてるんだろうか?
だけど、他の3人は口々に声を上げ、シルヴァーナさんはいかにも押され気味だった。
そこで、ふと僕は昼間ヒースが得意げに話していた、エルフのお仕置き方法を思い出してしまった。
何でも、悪い事をしたエルフの子供は、両耳を荒縄で縛られて、木の枝に吊るされるんだとか。
これを『吊るしガキ』と言って、エルフの耳が長いのは、これのせいでもあるらしい。
さすがにそれは嘘だと思うけど、お姉さんたちが僕を責めているなら、何らかの罰を受ける可能性はある。
怒りの眼差しで見られていたらと思うと、僕は怖くて他のお姉さんたちの顔を見ることも出来ない。
しばらくチラチラとシルヴァーナさんの様子を窺っていると、彼女の声から次第に勢いが無くなってきた。
困惑している彼女を助けてあげたいけど、僕の言葉が分かるのは彼女だけだから、口出しもできない。
ピンと立っていた耳を力無く垂らし、最後にシルヴァーナさんは、観念したようにコクンと頷く。
僕としては、まるでお城の地下牢で判決を待つ、凶悪犯罪者の気分だった。
「あの、エキュー……?」
「はっ、はははは、はいっ!?」
すごく言い辛そうに語りかけてくるシルヴァーナさんに、僕は上ずった声で答えた。
なっ、何だろう、やっぱり『吊るしガキ』だったりして?
「わ、私達、貴方がたには、とても感謝しているの。村を救ってくれた恩人ですものね……」
ううっ、そう言う前置きをされると、ますます不安になる。
その後に、『だけど……』とか『それとこれとは……』とかが続くんじゃないかと、軽く身構える。
「それで、エキューにも、もっときちんとしたお礼をするべきだ、というお話になって……」
え、お礼? ど、どうも、話の流れが予想と食い違っているような?
そういえば、シルヴァーナさんの顔、困ってると言うより、……恥ずかしがってる?
僕が混乱していると、彼女はおずおずと自分の胸元に手を掛ける。
「み、皆が言うには、やはり男性には、こうした事が一番、よ、喜ばれると……」
そう言いながら、タオルを止めている折り返しの部分を、震える指でためらいがちに弄る。
慎ましげに恥らうその姿に、僕の心臓がドクンと跳ねる。
「と、とても恥ずかしいのですけれど……。私も、その、エキューになら……ですし」
え、えっ!? ま、まさかそれって?
期待に胸がバクバクと鳴り、縮みかけていた僕の股間が、また硬くなっていく。
ほっそりとした指が合わせ目を解き、外れたタオルがお湯の中で、花のようにふんわりと広がる。
そして、その下に隠されていた眩しい肌の白さが、僕の目に飛び込んでくる。
「ですから、私達のお礼……、どうぞ、受け取ってくださいな……」
潤んだ瞳で僕を見つめ、シルヴァーナさんは生まれたままの姿で、そっと囁いた。
「シルヴァーナ、さん……」
彼女が湯船の中で膝立ちになると、胸からお腹までの滑らかな曲線が、お湯の中から姿を現した。
片腕で半ばを隠した胸の膨らみは、ちょうど僕の手の平に収まるぐらいの大きさ。
細身の体はびっくりするほど華奢で、特に腰なんてちょっと力を入れて抱いたら折れそうにも見える。
その下、おへその辺りから先は、波打つ水面が邪魔をして、はっきりとは確認できない。
けど、脚の間で髪と同じ色の薄い茂みが、海藻みたいに揺らめいているのは分かる。
今まで見た事のないぐらい綺麗な身体を、僕はほとんど呆然として眺めた。
「エキュー……」
「ちょ、ちょっと待って下さい! シルヴァーナさん、なんでそんないきなりっ!?」
ゆっくりと身を乗り出してくる彼女に気づいた僕は、戸惑いまくってかすれた声を出した。
そりゃあ、僕だって男だし、そういう事を望んでないと言ったら嘘になる。
だけど、単にお礼としてってだけで、憧れのシルヴァーナさんとそうなるのは、ちょっと抵抗があった。
「いきなりではありませんわ。本当は私も、初めて会ったあの頃から、ずっと貴方の事を……」
う、嘘っ! まさか、そんな都合のいい話……。
思い掛けないシルヴァーナさんの告白に、僕の心臓は破裂寸前にまで追い込まれた。
「ただ、私と貴方の、種族や年齢の違いを考えて、自分の心をずっと誤魔化し続けていたんです……」
でも、シルヴァーナさんがこんな嘘をつく必要なんてないし、じゃ、じゃあ、本当に?
「けれど、彼女たちに、もっと素直になるべきだと言われて、それで私……」
目線で僕のあそこを触ったお姉さんを示し、シルヴァーナさんは恥ずかしげにちょっと目を伏せた。
ちらっと横目で見ると、そのお姉さんは『感謝しなさいよ』と言いたげな顔で、僕に笑い掛ける。
あ、ありがとう、ちょっとエッチなエルフのお姉さん! 名前は覚えてないけどっ!
しかしそこで僕は、重大なもう一つの問題点に、今更ながら気が付いた。
「あのっ、そりゃあ僕も、シルヴァーナさんの事はものすごく大好きですけど!」
「嬉しい……。初めてはっきりと言ってくれましたね、エキュー……」
「でっ、でも、他の人が見てる前でって言うのは、さすがにまずいのではっ!?」
わたわたしながらそう尋ねると、シルヴァーナさんは少し気まずそうな顔をした。
「ええ、それはそうなのですけれど。なにぶん私、こういった経験は全くないもので……」
いやまあ、逆に経験豊富だなんて言われたら、そっちの方がショックですけど。
だけど、それと他のお姉さんたちがいる事と、どういう……?
「上手くできる自信がないと言いましたら、その、彼女達も手伝ってくれると……」
えっ、ええええぇっ!?
シルヴァーナさんが目配せをすると、他のお姉さんたちもタオルを外し、惜しげも無く肌を晒していった。
両脇のお姉さんたちの手が僕の足を左右に伸ばして行き、後ろのお姉さんは僕の腰からタオルを奪い取る。
「あっ、あの、あのあのっ!?」
きょろきょろと周りを見回すと、お姉さんたちはみんなすごくエッチな顔で、僕の股間を覗き込んでいた。
そこを隠そうとした手はやんわりと捕らえられ、代わりに柔らかい膨らみが両脇と背中に押し付けられる。
魅了の力を持ったドライアードのいる、森の妖精界にでも迷い込んだら、こんな感じになるんだろうか。
頭がボーッとして、どんどん他の事が考えられなくなってくる。
「エキュー、目を閉じて、下さい……」
正面に向き直ると、シルヴァーナさんが僕の首に腕を回し、顔を近づけてきている。
閉じろと言われても、彼女の緊張に震える長い睫や、艶やかな唇の美しさから、僕は目を離す事ができない。
薄目を開いたシルヴァーナさんの瞳と目が合った瞬間、僕の口元に彼女の唇が重なった。
「……シルヴァーナさんっ!」
「きゃっ! ……んっ、んんっ!」
我慢できなくなった僕は、シルヴァーナさんの背中を抱き寄せて、今度は自分から唇を奪った。
上下の唇を吸い、顔を斜めにして強く押し付け、むさぼるように口付けをする。
驚きにぴょんっと立った耳の先端が、僕がキスを続けるうちに、またくったりと折れ曲がってくる。
息の続く限り唇を重ね、一旦頭を後ろに引いて解放すると、シルヴァーナさんは大きく息をついた。
「はぁっ、はぁ……。エキュー、そんなに激しくされては、私、息ができませんわ……」
「す、すいません、つい……」
至近距離で抱き合ったまま、僕は息を弾ませるシルヴァーナさんに小さく頭を下げた。
だけど、彼女の顔には責める気配は無く、むしろ軽く開かれた唇が、僕を誘っているようにも見える。
そこで今度は優しく上唇を挟み、小鳥が木の実をついばむように、口付けては離すという動きを繰り返す。
そうすると、シルヴァーナさんも僕の動きに合わせ、甘く下唇に吸い付いてきた。
「んっ、ふ、エキュー……。そう、このくらいの方が、私……んむっ」
「シルヴァーナさん、素敵です……。んっ、ちゅ……、すごく、柔らかくて……」
「んふぅ、むっ、ん、んぅ……」
僕らのキスは徐々に深さを増して、自然と舌を絡めるようになっていった。
最初はぎこちなかった呼吸も、何度も繰り返すうちに、心が通じ合ったみたいに揃ってくる。
その間に、左右にいるお姉さんたちは、僕の足に片脚を絡め、両脇にくたっとしなだれ掛かってきた。
二人の手は僕の内股をさわさわと撫で、時々、肩や鎖骨につうっと唇を這わす。
後ろのお姉さんは、膝を立てて僕の身体を緩く挟み込み、前に廻した手で胸板を撫で回す。
身体中を滑らかな女性の肌に包まれて、僕の股間はこれ以上ないほどに硬く反り返っていった。
「シルヴァーナさん、僕、ここにもキスしたい……」
「あ、やっ!」
唇を充分に味わうと、続いて僕は、シルヴァーナさんの尖った耳に口付けしようとした。
だけど、囁きながら耳元に唇を寄せると、突然彼女は高い声を上げ、ビクンと首を反らした。
「どうして逃げるんです?」
「あ、あの、私、人から耳に息を吹きかけられるのは、くすぐったくて駄目なんです!」
「え? でも、そんなに強く吹いたりしてませんよ、このくらい……」
「やんっ! でっ、ですから、とても弱いんです、私っ!」
こちらの首に廻していた腕を解き、シルヴァーナさんは僕の胸を押し退けるように、手を突っ張らせた。
普通に話すぐらいの吐息でも我慢できないらしく、僕の腕の中で大きく身をよじる。
首を竦めて呟く声があんまり頼りなくって、僕はちょっと考え込んだ。
嫌がる事を無理やりする気はないけれど、やっぱりそこは僕の憧れの部分だし、諦めるのは忍びない。
それに、女性がくすぐったがる処は、実は気持ちいいポイントだ、っていうのも聞いた事がある。
「えーと……。それじゃ、耳の近くではずっと息を止めておきますから、キスさせて下さい」
「も、もう、どうしてエキューは、そこまで耳にこだわるのですか?」
仲間達がいたら、即座に『長耳フェチだから』なんて茶々を入れてくるだろうけど、そんなんじゃない。
「僕にとって、シルヴァーナさんの綺麗な耳は、ずっと憧れの対象だったからです!」
他人が聞けば同じと思うかも知れないけど、僕の中ではゴブリンとワイバーンぐらい決定的に違う。
「そ、そんなに真剣な目で力説されると……」
僕の気迫が通じたのか、シルヴァーナさんは何だか複雑な表情をして、小さく眉を寄せる。
「……判りましたわ。その代わり、絶対に息を吹きかけないで下さいね……」
そしてきゅっと目を閉じると、横を向いて片方の耳を僕の方へと差し出してきた。
「じゃあ、いきますよ……」
「……んぅっ!」
僕はすっと息を吸ってから止め、尖った耳の先端にちゅっと口付けた。
それだけで、シルヴァーナさんは軽く唇を噛み、ぷるっと子犬みたいに身体を震わせる。
「ちゅ、ん、んちゅっ……」
「……ぅん! ふ、んんぅん!」
唇で耳の外側を挟み、ちょっと引っ張るようにすると、細い肩を跳ねさせて、小さく息を洩らす。
彼女はさっきみたいに逃げようとはしないで、ただ僕の腕の中で小さく身体を縮めて我慢する。
そんな健気な姿に愛しさが込み上げてきて、僕は腕に力を入れて、ちょっとだけ強めに抱き締める。
耳から唇を離して大きく息を吐くと、シルヴァーナさんはおずおずと顔を上げた。
「も、もう、よろしいですか……?」
「あ、やっぱりその、くすぐったかった……ですか?」
「いえ、耐えられない程ではなかったのですけど、何か、むず痒いような感じがするもので……」
シルヴァーナさんはそう言って、湯船の中でもじもじと太腿をすり合わせた。
これって、感じてくれてたって事……だよね?
どこか期待するような彼女の瞳に、僕の気持ちが更に昂ぶってくる。
「でも、嫌だった訳じゃないんですよね?」
「え、あ、はい……。ですけど、出来たらもう、耳は……んっ! あっ、ああっ!」
とりあえず後半は聞かなかった事にして、僕は彼女の耳の先をはむっと口に含んだ。
シルヴァーナさんの長い耳が、僕の口の中で網に掛かった小魚のように暴れる。
けれど、ゆっくりと舌で窪んだ部分を舐めてあげると、すぐに彼女の唇から切なそうな喘ぎが洩れてきた。
「ふむっ……。ん、んむぅ、んっん……」
「や……、エ、キュ……ぅん! そ……、だっ……め、わたっ……くぅ!」
僕はちゅぷちゅぷと音を立てて、シルヴァーナさんの耳をしゃぶり続けた。
長い耳に舌を絡め、唇をもぐもぐさせると、彼女は僕の首に廻した腕にきゅっと力を入れる。
たっぷりと唾液を塗りつけてから、ちゅるっと啜って喉を鳴らし、口全体でそこを味わう。
他のお姉さんたちの手もどんどん大胆になり、交互に僕の股間のものを軽く掠める感じで撫で始める。
むずむずする感覚に頭の半分を支配されながら、僕はシルヴァーナさんの耳から口を離した。
「ん、はぁ……。エ、エキュー、私……」
「……なんですか?」
「い、いえ、何でもありません……」
トロンとした瞳を覗き込みながら僕が尋ねると、シルヴァーナさんは思い直したようにかぶりを振った。
言い出したくても言い出せないといった雰囲気から、僕は彼女の望みを正確に察する。
「シルヴァーナさん。他のところも触っていいですか?」
「あっ……」
僕が代わりに言ってあげると、シルヴァーナさんは少し驚いたように目を見開いた。
態度に出ていた事を悟ったのか、彼女はすごく恥ずかしそうに目を逸らす。
「僕も、もっとシルヴァーナさんの事が知りたいんです。シルヴァーナさんの、全部を……」
「エキュー……」
心の底からの僕の言葉に、彼女は期待と喜びに震える声で、僕の名前を呼ぶ。
「はい、……お願い、します。触れてください……」
僕の首の後ろで指を組んだまま、もたれ掛かっていた体を起こし、シルヴァーナさんは小声で囁いた。
「あふ……っ」
背中に廻していた右手を引き戻し、胸の膨らみを掬い上げると、彼女の口から小さな溜息が起こった。
ぷにょんと柔らかいそこは、思った通りに僕の手の中へすっぽりと収まり、吸い付くような触感を返す。
「んっ、はぁ……」
左手は背筋を伝って下へ向かわせ、小振りなお尻を優しく包み込む。
繊細な曲線を指の腹で押せば、滑らかな肌の感触と、指を押し返す強い弾力が感じ取れる。
そのままゆっくりと力を入れると、指の間からふるんと肉がこぼれて、僕の手が沈み込んでいった。
「うわ、柔らかい……」
「ん、っん、エキュー……。はっ、ん……」
両手で感触を確かめるように身体を揉み解すと、シルヴァーナさんは可憐な吐息を洩らした。
耳の奥に響く甘い響きに、他のお姉さんたちの視線も気にならなくなる。
乳房を手の平でたふたふと波打たせると、触れていない方の膨らみも、それに合わせて小さく揺れる。
僕の手の動きに従ってうねるほっそりとした肢体は、例えようもなく魅力的だった。
「綺麗です、シルヴァーナさん……」
「んっ、いや、そっ……んな、ことっ……」
「本当です……。すごく、綺麗で、可愛い……」
「やっ、んふっ……、いや、ですわ……。私、とても、おかし……く、なっ、んっ、んんっ!」
僕の言葉に、シルヴァーナさんは更に頬を火照らせて、いやいやと首を振った。
指の間で胸の突起をころころと転がすと、声を出すのを我慢しているのか、きつく下唇を噛む。
両手を入れ違いに滑らせて、今度は左手を胸に、右手をお尻へと伸ばし、同じように愛撫する。
撫でる度にシルヴァーナさんの身体は柔らかさと温かさを増し、まるで手の中で解けていくようだった。
「んあっ!」
お尻を撫でていた手を前に廻し、脚の間に差し入れると、シルヴァーナさんは耐えかねたように喉を反らした。
指先がお湯とは違うぬめりを捕らえ、僕は思わず彼女の顔を振り仰ぐ。
「え……? シルヴァーナさん、こんなに……?」
「あ、いやっ、言わないで……! 私、こんな、恥ずかし……っ!」
僕に濡れていることを知られて、彼女はぎゅっと脚を閉じ、泣きそうな声で叫んだ。
だけど、僕の手は強く固定された事で、かえってその場所に押し付けられる格好になる。
ふわふわと漂う細い毛と、温めたバターみたいにトロトロになった外側の襞が、僕の指にまとわりつく。
軽く指を曲げるだけで、シルヴァーナさんのそこは容易く僕の指先を受け入れていった。
「ああっ、や、あぁっ!?」
「恥ずかしがらないで……。もっと、もっと感じてください……」
「やはぁっ、んっ、や、あんっ!」
僕は中指を浅く埋めたまま、そこを覆い隠すように宛がった手を、ゆっくりと前後に動かした。
シルヴァーナさんは強く背中を丸め、僕の首にすがり付いて、がくがくと身体を震わせる。
「いっ……や、あくぅっ! 私っ、こっ……な、んはっ、はしたな……っい、声っ……!」
「いいんです……。もっと、シルヴァーナさんの声、聞かせて……」
「だめぇっ! あっあ、エキュ、だっ、あ、ああぁん!」
人差し指と薬指で両脇の襞を挟み、擦り合わせるように指を蠢かせると、彼女の身体がビクンと跳ね上がった。
逃げようとする腰を左手で引き寄せて、僕はもっと声を引き出そうと、手首を細かく左右に揺らす。
中指を更に掌の方へ折り曲げると、指がぬかるみの中から、こりっとした感触を探り当てる。
そこに触れた途端、シルヴァーナさんの声は一気に高まり、奥からとろりとしたものが沁み出した。
「すごい……。どんどん溢れてくる……」
「やぁっ! あっ! あ! っあ! ああぁっ!」
狭くて熱いシルヴァーナさんの中をまさぐりながら、僕はますます興奮を深めていった。
周りのお姉さんたちも、彼女の喘ぎに影響されて息を荒くし、身体を強く押し付けてくる。
お姉さんたちの手は奪い合うように僕のものを握り、そこを緩やかにしごき立てていく。
やがて両脇のお姉さんたちが何事かを囁き合い、ひらひらと片手を振るって精霊語の詠唱を始める。
回らない頭を駆使して聞き取ると、それは水中呼吸の呪文だった。
「あの、シルヴァーナさん、この人たちは何を……?」
「はっ、あ……。わ、私の、お手伝い、だそうです……」
「お手伝い?」
僕が手を止めて訊くと、シルヴァーナさんは息も絶え絶えに答えた。
問い掛ける僕の視線に妖艶な笑みを残し、お姉さんたちはとぷんとお湯の中に潜っていく。
そのまま僕の股間に頭を突っ込んでくるのを、両肘を上げておろおろと見下ろす。
「あっ、あのっ、ちょっとっ!?」
「私が出来ない分を、補ってくれるだけですから、エキューは気にしないで……」
「いや、気にするなったって、……うっ、うあっ!」
左右から柔らかな唇で先端にキスをされ、僕の口から情けない悲鳴が洩れた。
交互に強く吸われる度、僕の意思とは無関係に腰がビクビクッとする。
「ちょ……、そんな、くっ……うう!」
更にちろちろと舌を使いながら、押し付けられた二つの唇が、幹の部分を根元まで下がっていく。
背筋をぞくっとする快感が駆け上がり、僕の頭の奥で白い火花が散った。
「エキュー、お願い、手を、止めないで……」
「はっ、はいっ……!」
「あんっ! んっ、ふ、んうぅん!」
甘い声で求められ、僕は他のお姉さんたちに責められながら、シルヴァーナさんへの愛撫を再開した。
身動きが取れないほどに絡みつかれた状態で、かろうじて自由になる指先をのたくらせ、中を掬い上げる。
指にまといつく肉襞の感触と、股間に走るじわじわっとした快感が、僕の頭を酔わせていく。
後ろで僕を抱きかかえているお姉さんは、円を描くように胸をすり寄せ、両手で僕の胸の突起を弄る。
しなやかな指先にくるくると捏ねられ、僕の乳首も硬くしこっていった。
「くぅっ……、ふ、うあ、こっ……んな……」
「あっ……! エ、エキュー、手を、止めては、いやですっ……」
「わっ、かって、るん、ですけ、どっ……!」
送り込まれる快楽に気を取られ、僕の手の動きは止まりがちになっていった。
二本の舌で、幹の半ばから雁の辺りまでを丁寧に舐め上げられ、肌が粟立つような気持ち良さを覚える。
漂う二人の髪が内股を撫で、くすぐったさが次第に快感へと差し替えられていく。
目線を下に落とせば、興奮に赤く染まった長い耳と、突き出された桃色の舌がお湯の中で蠢いている。
後ろのお姉さんは、僕の耳を軽く甘噛みしながら、色っぽい声で何事かを囁く。
正確な内容は理解出来なくとも、そのしっとりとした響きから、何となく意味は読み取れる。
「う……っく、シルヴァーナさんっ……!」
「や、っあ、私、そんな、激し……くふぅっ!」
自分の快感をぶつけるように、僕は指の動きを早め、シルヴァーナさんのお尻を強く掴む。
すると彼女の入り口がきゅうっと狭まり、僕の指をきつく締め付けてきた。
「はぁっ、はぁ、僕、僕っ……!」
「や、くぅんっ! ひっ、う、あっ、ああっ……!」
僕は中指を掻き出すように動かしながら、親指でその上の肉芽をぐりぐりと押し潰した。
シルヴァーナさんへの愛撫に熱を入れると、その分だけ他のお姉さんたちの責めも激しくなる気がする。
もっと彼女に感じて欲しくて、僕はじゅぷじゅぷと指を出し入れし、中を掻き回す。
するとお湯に潜ったお姉さんの一人が、僕のものをぱくっと口に咥え込んだ。
「くっ!?」
すぼめられた唇が僕の幹を取り巻き、ぬたっとした粘膜が先端を取り巻いて、僕の理性を蕩けさせた。
ゆっくりとお姉さんの頭が動き出すと、その快感は更に強くなる。
もう一人の舌は根元からその下の袋までを何度も往復し、腰の奥からムズムズする感覚を引き出していく。
その感覚に引きずられ、僕は温かな亀裂の中に埋めた指を、強く激しく暴れさせた。
「────っ! ──ぁ、あぁっ、──────、エ、キュー!」
「くっ……、はぁ、はっ……く、ううっ!」
「──、や、ぁ、────! ひぅっ、ん、あ……あ、ああっ!」
夢中でそこを捏ね回すうちに、シルヴァーナさんの喘ぎ声にはエルフ語が混じり出した。
僕の肩口に額を押し当てて切なげに頭を振り、首に抱きついた腕に力を込める。
肉芽の裏側へ中指を伸ばし、親指とでそこをつまむようにして刺激すると、狭い入り口が更に締まる。
「エキュ、ぅうん! ──、────……! や、ゃ、あぁあっ!」
「う……っ、はっ、はぁ、シル、ヴァーナ、さんっ……!」
手首をブルブルと震わせると、彼女のそこは息継ぎをするみたいに、開いたり閉じたりを繰り返す。
奥からはとろとろとしたぬめりが次々とこぼれてきて、僕の指の動きを滑らかにしていった。
「くっ、あ、まず……! 僕、そろそろ……うくっ!」
一方、僕の方も他のお姉さんたちの妙に手馴れた責めを受け続けて、かなり限界に近づいていた。
尖らせた舌先で、皮の継ぎ目から先端の割れ目をるろるろと舐められると、思わず声が出る。
このまま出したいという欲求と、やっぱりシルヴァーナさんの中でという欲求が、僕の頭でせめぎ合う。
そんな時、僕の気持ちを察したかのように、お湯の中に潜ったお姉さんたちが、僕のものから口を離す。
そして、仕上げとばかりにそこへ軽くキスをすると、お湯の中から顔を出した。
「え、あ……?」
急に止められて僕が声を出すと、お姉さんたちは濡れた髪を掻き上げながら、色っぽい流し目をした。
僕に向かってエルフ語で語り掛けてから、気だるげにお湯の中を移動して、湯船の向こう側に行ってしまう。
背中をポンポンと叩かれて振り向くと、後ろのお姉さんも少し身体を引いて、目線で僕を促してくる。
チラッとシルヴァーナさんを見てから横目で問い掛けると、お姉さんは妖艶な微笑みを浮かべて小さく頷く。
その態度に最後の一押しをされ、僕はごくっと唾を飲んでから、シルヴァーナさんに囁いた。
「あの、シルヴァーナさん……」
「はぁっ、はっ、はい、なんで、すか……?」
頭の上に呼び掛けると、シルヴァーナさんは顔を僕の肩に埋めたまま、頼りない声で答えた。
動きを止めた僕の指をせかすように、彼女の中がきゅくきゅくと締まる。
「もう、いいですか? その、シルヴァーナさんの、ここに……、僕のを……」
「んんっ! あっ……」
中からつるりと指を抜き、『ここに』の所でそっと入り口を縦になぞると、彼女の耳がピクンと跳ねる。
「………………。はい、いい……です。して、下さい……」
ほんの少しだけ黙り込んだ後、シルヴァーナさんの頭がコクッと上下に動いた。
「それで、私はどうすれば……?」
「こっちに来て下さい。こう、僕の上にまたがって……」
「あっ、こう、ですか……?」
僕は片方ずつ太腿を引き寄せて、ちょうど腰の横あたりに膝を突くように、彼女の脚を開かせた。
シルヴァーナさんは僕の肩に両手を掛けたまま、こちらの指示におずおずと従う。
「そうしたら、そのまま腰を下ろして……」
「はっ、はい……」
言いながら、片手を彼女の腰の後ろに廻し、僕の股間のものへと導いていく。
もう一方の手でそれの位置を調節すると、先端がくぬっと彼女の入り口に突き当たった。
「あっ! こっ、これが、エキューの……?」
「そうです。後はこうして……」
「つっ……!」
柔らかい先端に続いて、硬い幹の部分を割り込ませると、シルヴァーナさんの口から苦痛の声が上がった。
それ以上の侵入を拒むような強い抵抗に、僕は彼女が初めてだった事を思い出す。
「あ、えと、やっぱり、痛いです……よね?」
「えっ、ええ……。でも、大丈夫、です、からっ……」
痛みをこらえて微笑もうとする健気な姿に、僕は堪らないほどの愛しさを感じる。
「すいませんけど、少しだけ、我慢してください……」
「はっ……い、我慢っ、でき、ます……っ!」
出来るだけゆっくりと彼女の腰を引き寄せて、じりじりと様子を見ながら奥へと進む。
シルヴァーナさんの中は吸い付くように柔らかく、同時に壊してしまうんじゃないかと思うほど狭かった。
「はっ……、ああ、入っ、たぁ……」
小さなお尻が腿の上に落ち着き、ようやく根元近くまで彼女の中に収めると、僕は安堵の溜息をついた。
温かな内部は僕のものを隙間なく包み込み、みっしりと締め付けるような感触を返す。
シルヴァーナさんは僕の背中に立てていた爪を外し、薄く涙を浮かべた瞳を向けてくる。
「あ、エキュー……。これで、私達は、結ばれた……の、ですか?」
「……はい。シルヴァーナさんと僕は、もうしっかりと繋がっています。……分かりますか?」
「ええ、分かり……ます。私の中に、とても硬くて、温かいものが……」
まだ辛そうな彼女の目尻から新たな涙がこぼれ、紅潮した頬をつうっと伝い落ちる。
鼻先が触れ合うほどの距離で、宝石のような瞳を覗き込み、強張った背中を宥めるように撫でてみる。
「まだ、痛いですか……?」
「いいえ、これは、嬉しくて……。やっと想いを遂げられたのですもの……」
そう言うと、シルヴァーナさんは眩しいほどの笑顔を浮かべ、僕の胸元にしなやかな身体を預けてきた。
二つの控えめな膨らみがくにゅっと胸板で潰れ、寄り添った肌から互いの心臓の音が伝わり合う。
彼女が息を吐く度に、痛いぐらいの締め付けが段々と緩んでいき、僕を歓迎するようにぞわっとなびく。
「僕も、嬉しいです……。シルヴァーナさんと、こんな事が出来るなんて……」
「んぅっ、あ……っ」
僕はシルヴァーナさんの身体を揺すり上げるようにして、ゆっくりと腰を動かし始めた。
ほんの小さな動きでも、全体を取り巻く肉が締め付けているお陰で、気が遠くなるほど気持ちいい。
「んっ、ふぅ、くっ、エ、キュー……」
シルヴァーナさんも、時々痛みに眉を寄せるけど、続けてくれて構わないと目線で訴える。
彼女のお尻と背中を両手で抱きかかえ、僕は馴染ませるように少しずつ、腰の動きを大きくしていった。
「エキュ、んっ、む……、っふ、はぁ……っ」
「むっ、ぷぅ……っ、はっ、ん、くっ……」
動きながら唇を重ねると、シルヴァーナさんもそれに応えて舌を絡ませてきた。
中を掻き回すように腰をくねらせるのと合わせて、彼女のお尻を軽く動かし、更に奥を探る。
彼女を気遣った緩やかな動きでも、身体も心も充分すぎるほどに満たされていく。
互いの身体の間で、波打つお湯がたぱたぱと音を立て、温かい飛沫が跳ねた。
「ん……、はぁ、エキュー、優しい……。私、身体、痺れて……、んっ、ふぅ……」
「好きです……。大好きです、シルヴァーナさん……」
「私、も……。こんな、んっ、温かな……気持ち、んぅっ、初めて……」
シルヴァーナさんの顔からは徐々に苦痛の色が薄れ、穏やかな至福の表情へと変化していった。
それにつれて、彼女の中は柔らかさと潤みを増し、僕のものが溶けていってしまいそうな感じさえする。
ずっとこのままでいたい気もするけれど、自然な欲求はじりじりと膨らみ、もう破裂寸前になっている。
僕は腰を突き上げながら、彼女のお尻を両手で抱え、引き寄せるようにして前後に揺さぶった。
「あっ、んぅ! ん、あ、あっ!」
動きを早めても、シルヴァーナさんはもう痛がる様子もなく、僕のものを従順に受け入れてくれた。
それどころか、自分からもわずかに腰を使い、僕の射精を促すかのように、くきゅくきゅと締め付けてくる。
言葉にしなくても、互いの態度と雰囲気から、求めているものが同じだという事を分かり合う。
彼女の奥の奥まで先端を届かせて、そこで小刻みに腰を振り、最後の高まりへと突き進む。
「……くっ、ううっ!」
「あああぁっ!」
小さなお尻をぎゅっと握り締め、僕はシルヴァーナさんの一番奥で、想いの全てを解き放った。
◇ ◇ ◇
「……ははは、な〜んてね。そんな事ある訳ないよなぁ……」
何だかすごく虚しくなったので、僕は妄想をやめてガックリと肩を落とした。
僕が今いるのは、エルフの皆さんが普段水浴びに使っているという、村の外れにある泉の中。
周りにはエルフのお姉さんどころか、僕以外には人っ子一人いない。
こうなったのには、勿論それなりの理由がある。
シルヴァーナさんは、『エルフ風呂』というのを、文字通り『エルフの人が入るお風呂』と受け取ったんだ。
そして、炎の精霊を嫌うエルフの人たちにとっては、お風呂イコール泉で水浴び、という事になるらしい。
シルヴァーナさんにそう説明された時は、それはもう頭を抱えたい気分で一杯だった。
でも、にこやかに『ゆっくり浸かって下さいね』なんて言われたら、それは違うとはとても言い出せない。
第一、詳しく『エルフ風呂』の説明をしてシルヴァーナさんに軽蔑されちゃったら、それこそ本末転倒だ。
そういう事情で、僕は一人寂しく水浴びをするという、トホホな状態になっているという訳だった。
「考えて見れば、浮世離れしたシルヴァーナさんが、女体風呂なんて知ってるはずが無いもんなぁ……」
二つ返事で了解してくれた時点で、少しもおかしいと思わなかった自分が、ひたすら情けない。
その上、こんなオチをヒースあたりに聞かれたら、ここぞとばかりにからかわれるに決まっている。
「やっぱり、感謝のキスとか、もっと分かりやすいお願いにするべきだったかなぁ……」
未練たらしく呟いてみても、もはや後の祭り。
ずっとここにいてもどうにかなる訳じゃないけれど、みんなの所に戻って笑われる事を考えると気が重い。
「くうぅ、エルフ天国への道は、遠くて険しいなぁ。はあぁぁ……」
水の冷たさが身に沁みて、僕は大きく溜息をついた。
〜END〜