「ご苦労様でした」
へっぽこーずの帰還を営業スマイルで出迎えるラヴェルナ。
「まったく、厄介な仕事だった……いでっ!」
「ヒース兄さんっ、言葉を選んでください! 相手は仮にも一応上司みたいなものでしょ!」
いつものごとく礼儀のかけらも感じられない態度で横柄に言ったヒースに、イリーナが拳で突っ込む。
もっとも、そういうイリーナのフォローもなんだかなぁといった感じであるが。
以前、ヴァンパイア騒ぎで行動を共にして以来、オーファン最強カップルの片割れであるラヴェルナの評価が下がっているようだ。
「こほん。とにかく、報酬は用意させてあるから、受け取ってゆっくり休んでください。以上です」
ラヴェルナは無理やり話を逸らし、ねぎらいの言葉を一通りかけるとさっさと引っ込んでいった。
今回の依頼は、ヴァンパイア騒ぎの尻拭いといってもいい仕事だった。
後の調査でヴァンパイア・ミシェイルがオーファン滅亡のために準備していたらしい魔獣が、最強カップルたちが攻略したモンスターオンパレードの地下道以外にも残されていたのだ。
その魔獣、名前をフンババという。
幸い、保管場所の魔法装置の力で主を失った今でもなんとか解放は免れているが、危険な魔獣を放置しておくわけにもいかず、へっぽこーずが抜擢されたという経緯になる。
もちろん、フンババの名前を聞かされ、ヒースは全力で依頼を拒もうとした。
名前はどこか間抜けだが、石化の視線に加え強烈な病原菌を含んだ炎を撒き散らすイヤな奴なのだ。
加えて、病気の伝染性は非常に高い。1人やられて治療が遅れただけでそのまま全滅してしまう危険性すらある。
だが、今このオーファンでへっぽこーずはトップクラスの冒険者グループである。
更には何だかんだで人の良い連中の集まりだったりする。
魔術師ギルドがごたごたしーの、オーファンのバスタードが旅立ちーのでなんやかんやあって忙しい国のトップ連中に代わり、この依頼を引き受けることにした。
もちろん、報酬の前金代わりに、魔晶石やら視線の魔力に抵抗するための護符やら何やらを浅ましくねだって借りていったのは当然である。
そして依頼は見事成功。
イリーナにかけられるだけの支援魔法をかけて前線に立たせ、あとはひたすら後方援護に回る作戦というには随分と簡単な作戦だった。
だが、実際この戦術は安全策であったりもする。下手にイリーナの攻撃力&防御力についていけない前衛を出せば、いつぞやのノリスのように一撃で大喜びの野に送られる可能性もあるのだ。
とにかく、経緯はめんどくさいから省くが、イリーナのグレートソードによってフンババは倒された。
報酬にはうるさいへっぽこーず。こんな危険な仕事をタダで引き受けるはずも無く。
へっぽこーずたちは、意気揚々と凱旋し、久しぶりの現金+αを手に入れたのだった。
「そしてこれが+αである!」
ヒースは意気揚々と叫んだ。
「ひ、ヒース兄さん、そんな大きな声出さないでください……」
イリーナは扉の影に隠れるように縮こまる。
依頼を終えて帰ってくれば、いつの間にやら新年である。
実に慌しい新年だが、冒険者だからこれくらいがちょうど良いかもしれない、とヒースは思う。
いや、むしろ冒険者だからこそこんな状況になっていることに感謝する。
「ほら、恥ずかしがらずにいくぞ」
「うー」
ヒースに手を引かれるイリーナは、ちょっと、いやかなり変わった服を着ている。
ゆったりひらひらとした色彩鮮やかなそれは、一見神官の貫頭衣にも似ている。
だがよく見れば、頭からかぶるのではなく、前が開いていて羽織るものだとわかる。
腰に巻いた帯も鮮やかな柄で、頭には豪奢な髪飾りをつけている。
これが、賢者の学院のパトロンということでアウザール商会が報酬+αとして提供した、イーストエンドとの交易品である。
彼の国でおめでたい日に着るという衣装だそうだ。以後、仮定名称晴れ着と呼称する。
「だが何でそんなに恥ずかしがる? 似たようなもの、着たことあるだろ」
どうやら、去年あたりに投下した暫定名称巫女服のことをいっているのだろう。
あれも話の設定上、イーストエンドの神官服ということになっていたはずだ。
「そ、それとこれとは別の……」
「んん?」
そこでようやく、鈍感なヒースにも察することが出来た。
イリーナの頬がうっすらと赤く染まっていた。それだけではない。唇も、だ。
「なんだ、照れてるのかと思ったら、化粧してたのか」
「う……は、はい」
イリーナが恥ずかしがっていたのは、これだった。
「ぶわははは!! 初めて化粧してそんなに照れるとは……子供だなぁ、イリーナさんは」
「むっ!」
無遠慮に大爆笑した次の瞬間、ヒースの顔にイリーナの拳がめり込んだ。
「そんなに笑うことないでしょう!」
「げ、げふげふ……そ、そう怒るなよ。……ま、それなりに似合ってるんじゃないか?」
「え……」
ヒースは身体を起こして、背中を向けてぼそりとつぶやいた。
ぼりぼりと頭を掻いている。
「ヒース兄さん……っ」
イリーナはヒースの不器用な褒め言葉にうれしくなり、飛びつくようにその腕に自分の腕を絡めた。
「今年もよろしくお願いしますね」
「……おう」
「で、いきなりこうなるんですかっ!?」
「はっはっは。当たり前じゃないか」
新年の参拝をファリス神殿で行った後。
せっかくの晴れ着ということで、街中を散歩していたのだが――
歩き始めて10分もしてないというのに、すでにヒースは近かった学院の私室にイリーナを連れ込み、ベッドに押し倒していた。
「もっとこう、普通にデートの続きしましょうよ……せっかく珍しい服着てるのに」
イリーナはおとなしく押し倒されながらも、口を尖らせて不平を零す。
彼女的には、せっかくおしゃれしているのだから、この機会に街中を練り歩いて自分も女の子だというアピールをしたいようだ。
ファリスの騒音公害の汚名を返上するためにも!
「だがそんなヌルい展開を住人が求めているだろうか。否、求めていない!」
求めている声も無きにしも非ずだとは思うが、この際突っ込まないでいただきたい。
「……何言ってるんですか?」
「なんでもない。神の声が聞こえただけだ」
「えっ、ヒース兄さんにもファリス様の声が!?」
「冗談だ……」
ヒースは話を逸らすようにイリーナの身体を抱き起こし、後ろから抱きしめる。
「まぁデートならいつでもできるだろう。だがやはりここは……」
「ここは?」
「ザ・姫はじめ」
「ロマンもへったくれもないじゃないですかーっ!」
ほとんど悲鳴じみた声をあげるものの、新年ともなればヒースの私室のあるハーフェンゼミに人気は無い。
2人っきりなのだ。
「イリーナはイヤか?」
「んっ……い、イヤではないです……最近、お仕事でご無沙汰でしたし……」
ヒースは耳元で囁きながら、晴れ着の胸元から手を滑り込ませる。
器用に手を動かし、胸のさらしを緩めるヒース。
非協力的だったイリーナも、そうやって囁かれるとだんだんと抵抗の意思を失わされてくる。
「おお、これはなかなかオツな構造だ」
「やぁん……!」
晴れ着の胸元でもぞもぞとヒースの手が這い回る。
今年も成長の見込みがなさそうな薄い胸をやさしく揉みながら、不意打ちのように乳首をつまむ。
「あんっ……」
「ご無沙汰だった分、いつもよりも敏感だな」
イリーナの乳首は、すぐに硬くなってきた。
「うぁぁ……ヒース兄さっ、強すぎます……っ!」
断続的に与えられる甘い刺激に、ぴくぴくと身体を震わせるイリーナ。
「あんなにイヤがってたのに身体は正直だな、イリーナ」
などとまるで宅配便を装って人妻に迫る強姦魔のようなセリフをほざくヒース。
「だ、だから別にイヤがってません……んあっ!」
胸だけですでにこれである。
「じゃあそろそろ脱がせるか。ほら、イリーナ、ちょっと立て」
「ふぇ……?」
とろんとした表情で、いわれるままに立つイリーナ。
「どうして立つんですか?」
「アウザールのじーさんが言うには、この服を脱がせるにも作法があるそうだ」
そう何度も面識があるわけでもないオーファン一の豪商をじーさん呼ばわりである。
さておき、ヒースはエキューと一緒にアウザールのじーさん――ローランド・アウザールから教えてもらった作法を行うべく、イリーナの晴れ着の帯に手をかけた。
「? ヒースにいさ……」
「うし、ほーれ、よいではないかよいではないか〜!」
ヒースは帯を力強く握ると、ぐいっとそれを引っ張る。
「!? あ〜〜れ〜〜!」
すると超漫画的な現象とでもいうか、帯が引っ張られ、イリーナの身体がくるくると回る。
やがて帯が綺麗にイリーナの身体から離れると、イリーナはぺたんと尻餅をついた。
「な、なにを……」
帯がなくなったことで、晴れ着の胸元が大きく開いてズレたさらしと堅くしこった乳首が顔を出している。
「これぞイーストエンドの作法。その名も「よいではないか」というらしいぞ」
したり顔でえへんと胸を張るヒース。
もちろん、嘘くさいとは内心思っているのだが、利用できるものは何でも利用してえちぃするのがヒース流である。
「お前だってちゃんと応えたじゃないか、「あーれー」って。10点満点だぞ」
「あ、あれは口が勝手に!」
ぺたんと尻餅ついた体制のまま言い返すイリーナ。耳まで真っ赤だ。
「まぁまぁ、よいではないかよいではないか」
ヒースはニヤニヤと笑いながらイリーナににじり寄る。
「う……ヒース兄さん、笑い方が邪悪です……」
「よいではないかよいではないか」
どうやらヒース的にこの言葉が気に入ったらしい。
「それにしてもイリーナ……ノーパンとは大人になったなぁ」
「あっ……!?」
いわれて思い出した。
アウザール商会のメイドに着付けをしてもらったのだが、この晴れ着とやらはノーパンで着るだと言われ、それを律儀に実行していたのだ。
はだけた晴れ着から、薄めの陰毛が見え隠れしている。
「こ、これも作法なんですっ!」
「よいではないかよいではないか」
「もう聞いてませんね……きゃっ!」
頬を染めて反論するイリーナだったが、問答無用にヒースに抱き上げられ、ベッドにお持ち帰りされる。
「あふっ……んっ、やっ!!」
晴れ着に袖を通したまま、前を大きくはだけさせた格好でイリーナは股間を執拗に舐められていた。
ヒースの唾液とイリーナの愛液が混じりあい、卑猥な音を立てる。
じゅるじゅるとわざと大きな音を立てるたび、イリーナが過剰に反応する。
「イリーナ、すごい濡れてるぞ」
「やぁ……言わないでくださ……はぁん」
舌で膣口を、クリトリスを舐られるたびに愛液がしたたり、ベッドにシミを作っていく。
「よし、そろそろいいだろ」
「はぁ、はぁ……はい、きてください……」
息も絶え絶えに、イリーナが両手を広げる。
ヒースは聳え立つヒース先生ジュニアをイリーナの割目にセットオン。
勢いをつけて挿入する。
「うぁぁぁっ!!」
イリーナの身体がびくんと大きく震える。
「お? 入れただけでイったか?」
ヒースがニヤニヤと笑いながらびくびくと震えるイリーナのお腹を撫でる。
「ふぁぁぁい……い、いっひゃてまふぅ……」
散々舌で舐められ、絶頂寸前まで追い詰められていたイリーナは、快楽に打ち震えながら呂律の回らない舌で答える。
イリーナの膣内のヒースジュニアが等間隔で締め付けられる。
「はっはっは……愛いやつめ。うりうり」
「あっ、ああっ、くふぅ……!」
お腹を撫でていた手を胸へとやり、乳首をくにくにと弄る。
更に開いた手でイリーナの陰毛をまさぐり、クリトリスの包皮を剥いて優しく擦る。
そのたびに更に膣内がきゅきゅと締まる。
「ひ、ヒース兄さん……なんかそれ、切ないです……」
「お、そうか? なら……」
「あひゃあん……!!」
ヒースはイリーナを弄る手を腰へと持っていき、しっかりとホールドすると前後運動を始めた。
イったばかりの敏感な体内をかき回され、イリーナは矯正をあげる。
「あんっ、うっ、ふぁっ、あっ、んんっ!!」
イリーナの矯正に、じゅぶじゅぶと生殖器同士が立てる水音が加わる。
ギシギシとベッドがきしみ、イリーナの肢体がその上で踊る。
「ひっ、ヒース兄さんっ……!」
「ん、なんだ……」
潤んだ瞳でヒースを見上げるイリーナ。
「き、キス、してくださ……んっ!!」
「……ん、わかった」
ヒースは巧みに腰を使いながら、イリーナに顔を近づけてその唇をむさぼる。
「んちゅ……ちゅぷ……くちゅ……」
2人の唇が重なり、舌を絡めて唾液を塗せ合う。
「あふっ、ヒース兄さん、大スキっ、ですっ……あんっ!!」
「イリーナ……俺も……だぞ」
やはりヤることやってても、こういうところにはテレが入るヒース。
「や……ちゃんといってくれなきゃ、やーです……」
イリーナは足をヒースの腰に絡ませ、ぎゅううっと万力のような力でがっしりとホールドする。
たったそれだけで、イリーナの人外の筋力はヒースの身動きを封じてしまった。
しかも、足腰に力を入れているせいか、膣内のヒースジュニアにも強い圧力がかかり、相当気持ち良い。
このままでは満足に動かないうちに果ててしまいそうだ。
「う……」
「………」
イリーナの熱い視線がヒースに注がれる。
「……くそ。その視線は反則だろ」
ヒースが視線を逸らしてつぶやくが、
「俺も好きだぞ、イリーナ」
「……はい」
その呟きに、イリーナは満面の笑みを浮かべて足の力を緩めた。
「くそ、なんか負けた気分だ」
ヒースは反撃とばかりに、イリーナの腰を掴んで激しく動き始める。
「ふああっ、んあっ、ふっ、あくっ、やぁぁ!!」
「はぁ、はぁ……くっ、イリーナ、そろそろ出すぞ」
さきほどのホールドが効いたのだろうか。ヒースジュニアはそろそろ限界を告げていた。
「はいっ、ヒース兄さんの、なかにたっぷりくださいっ!!」
ヒースの動きが激しくなる。
イリーナも同時に腰を動かし始める。
じゅずっ、じゅぶっ、ぷちゅっ、じゅっ、ぐちゅっ、じゅぶぶっ!!
「うあっ、ひゃぁ、んはぁぁぁぁっ!!」
「うくっ……!!」
イリーナの絶叫。全身が一瞬こわばったあと、その足が再びヒースの腰に回され、ぎゅうううとホールドをかます。
これで外へ出すことは出来なくなったが、もとよりそんなことを気にするヒーイリではない。
ヒースは遠慮なくイリーナの一番深いところで精を放った。
「ぁぁぁ……ヒース兄さんのが、熱いです……」
「う……イリーナ」
ヒースがイリーナに覆いかぶさるように倒れこみ、イリーナはその身体を抱きしめる。
「今年も、よろしくです。ヒース兄さん」
イリーナは心地よさそうに呟き、ヒースの頬に唇を寄せた。
「参ったぞ」
「……困りました」
ベッドの上で呆然とする2人。
問題はもちろん、晴れ着である。
中途半端にきたままえちぃしてしまったので、袖を通して1日もたたないうちにしわくちゃである。
しかも、イリーナもヒースも着付けの仕方などわかるわけもない。
ヒースの私室なのだから服を借りる、という手もあるが、サイズが合わなすぎる上にもし両親に目撃でもされたらと思うと――
無論、ヒースとの交際を知らないわけではないが、まだまだプラトニックな関係だと思い込んでいる両親。
特に父キリングに知られれば、ズンバラリンされるか、さもなくばショックで寝込むかのどちからだろう。
「……仕方ない。ここは恥を忍んで、マウナに頼むか」
「……それが一番妥当だと思います」
マウナは、イリーナの一緒に着付けをしてもらったのだが、熱心に着付けの方法を教わっていた。
小器用で要領のいいマウナなら、マスターしていてもおかしくはなさそうだ。
「よし、ひとっ走り言ってくる。イリーナ、風邪引かないように毛布でもかぶってろ」
「はい……」
ちなみにそのあとマウナをつれてきて何とか着付けしなおしてもらうことは出来た。
しかし、ヒースが頬に熱烈なキスマーク付で駆けつけたことを含め、どうして晴れ着を脱いだのー?などとワザとらしくマウナにニヤニヤといじられ続けるの2人あった。