「お願いです。私を解放してください」  
潤んだ瞳で懇願されてそれを黙殺できるほど、ウィンドの神経は図太くなかった。  
――痛そうだから、ほどいてあげるだけだ。……うん。二人で一緒に“やつら”に帰ろうとか誘われ  
たって、断わったらいいよな。  
自分自身に言い聞かせると、意を決してポロンを戒めている縄に手を伸ばす。  
――大丈夫です、ユーリリア先輩! モニカ! トリム! ズンさん! 俺はもう二度と“やつら”  
の支配に屈しません!  
固い結び目に悪戦苦闘しながら、仲間たちの面影に誓う。そして……  
――今度敵に回ったら、きっと見捨てられるから、ではなしに!  
つい付け加えてしまった注釈の情けなさに、近くで眠っているユーリリアの不興を買ってはいないか  
と不安を覚える。心の中で立てた誓いが、聞かれている筈がないのに。  
茹でた卵が黄身まで固まるほどの時間をかけて、縄は床に落ちた。ウィンドにとって予想外の事態が  
起きたのは、それと同時だった。  
緊縛から解放された娘が、自分の腰に手を伸ばして来るなんて、どうして予想できようか。  
不意打ちで足をすくわれて、ウィンドはベッドに――ユーリリアが寝息を立てているのと隣り合うベ  
ッドに――尻餅をつく格好になる。  
「な、なな、なにをするんだ? いきなり!」  
はき直したばかりのズボンを再びはぎ取られ、慌てふためくウィンドに、酩酊にも似た表情をしたポ  
ロンがささやきかける。  
「あの女に汚されたハイロードを……私が清めてさしあげます」  
それ自身が吐き出した白濁液でベトベトになった肉棒を、細い指が握りしめる。不快な感触に躊躇し  
たポロンだけれど、ユーリリアへの対抗心が彼女の背中を押した。  
「おとなしく座っていてください、ハイロード」  
果たして“ハイロード”と呼ばれたせいなのか、抵抗の意志を霧散させたウィンドの正面に、ポロン  
が這いつくばる。  
 
――違う! こいつは男のサガで……“やつら”の言いなりになってるワケじゃない!  
自分でも誰だか判らない相手に向かって弁解しながら、ウィンドは奉仕に身をゆだねる。そんな彼の  
股間を、ポロンが子犬のように舐め回した。  
「ん……ぺろ……こんなことなら……さっき、もっとよく観察しておけばよかった……」  
初めて経験する味に眉をしかめながら、見よう見まねで舌を動かすポロンだったけれど、技巧におい  
てはユーリリアと比べるべくもない。  
高まりそうで高まりきらない快感がもどかしい。  
「くぅっ!」  
一声呻いたウィンドは、ついに『おとなしく座っていろ』という指示に逆らった。ポロンの頭を両手  
でつかみ、半勃ち状態の肉棒を無理矢理に咥えさせる。  
「ん、んん……くっ……けほっ……けほっ……」  
口の中に強引に押し込まれた肉塊は、ポロン本人の決心などお構いなしに、身体の反射によって吐き  
出されてしまう。  
「も……申し訳、ありません……」  
咳き込みながら許しを請われて、ウィンドの――あるいはハイロードの――支配欲に火がついた。  
「出来の悪い部下には、お仕置きをしなくてはな」  
にやりと笑って宣言するや、ウィンドは“出来の悪い部下”をベッドに組み敷いた。服を引き裂くよ  
うにして胸をはだけさせ、豊かな乳房を両手で揉み回す。  
「……痛い! でも、気持ちいい……かも……」  
どうやらポロンは、乱暴に扱われることで快感を刺激されるようだった。指が五本とも沈み込むほど  
に柔らかな乳房を堪能しつつ、ウィンドは命ずる。  
「スカートは自分で持ち上げるんだ」  
「承知しました……」  
命令されるままに、ポロンはスカートをめくり上げた。そこにある下着は恥ずかしい染みを作り、内  
側に包んだ花弁に張り付いていた。  
 
「それだけ濡れてれば大丈夫だろう。キミが上になるんだ」  
ウィンドはベッドの上に横になり、今や極限まで膨張した肉棒へとポロンを誘った。  
「はい……」  
躊躇なくうなずいたポロンは、びしょ濡れになった下着を脱ぎ捨て、先ほどのユーリリアを真似た位  
置に膝立ちになる。  
「あっ?」  
入り口に肉棒をあてがった瞬間、ポロンは驚きの声をあげた。  
目一杯に開いた足が自分の体重を支えきれず、すとん、と腰が落ちてしまう。彼女は、全体重を使っ  
て招き入れることになった異物によって、あっという間に最奥まで貫かれていた。  
「い、痛ぁぁぁ!!」  
破瓜の衝撃に絶叫するポロンを下から見上げて、ウィンドはほくそ笑む。  
「うむぅ……気持ちいいぞ」  
「あぁっ!? そんなっ! まだ、痛い……いったぁぁっ!!」  
「そら! そら! そりゃあ!!」  
苦痛に呻くポロンへの労りなど一切なく、突き上げられる腰はどんどん勢いを増してゆく。  
「うぅ……ん……はぁ……」  
ポロンは涙をにじませながら声を押し殺し、されるがままに身体を揺らす。  
「出すぞ! 中に出すぞ!!」  
宣言するウィンドの上で、ポロンが顎を上下させる。それはうなずきではなく、猛烈な往復運動の余  
波であることは明らかだったが、もとより承諾など求めていない。  
「おおぉぉ!!」  
雄叫びと共にウィンドは腰に力を込め、ポロンの奥深くで炸裂させる。  
「あっ、来る! お腹に、熱いのが来てる! あっ、あはぁぁ!!」  
吹き上がる灼熱を子宮へと浴びせられながら、ポロンの意識が遠のいてゆく。内股を伝う血の跡を塗  
りつぶすように、白濁液が流れ落ちた。  
 
ポロンの柔らかな乳房が、ウィンドの胸の上で押しつぶれた時――  
「なぁんだ。ハイロードなんて全然『おもしろく』ないじゃない」  
両手を腰に当てた姿勢で仁王立ちしたユーリリアが、つまらなそうに鼻を鳴らした。  
ぐったりとなったポロンと一つに繋がったまま、ウィンドは狼狽する。  
「――先輩? いつの間に、目を覚まして?」  
「ええと『私が清めてさしあげます』って辺り。なんだか『おもしろい』ウィンドが見られそうだと  
思って寝たふりしてたのに、がっかりだよ」  
不機嫌そうに肩をすくめながら、ユーリリアが答える。ハイロードになりかけたウィンドの言動は、  
どうやら彼女のお気に召さなかったようだ。  
「こんなのだったら、普段のウィンドの方がずっとまし。ランパートったら、センスなさすぎだよ」  
「……は?」  
――この人、今、ドクター・モリブを自分の手下みたいに言わなかったか?  
なんだか穏やかでない発言を耳にした気分のウィンドだったが、その点について深く追求する勇気は  
持ち合わせていない。  
「ま、ウィンドはウィンドのままの方が『おもしろい』ってわかった訳だし」  
そう言ってにんまりと笑ったユーリリアが、意識を失っているポロンの身体を横にどける。  
「この娘に清められたハイロードを、わたしが汚してあ・げ・る」  
「え、いや、あの、その……」  
いつの間にやら従僕気質に戻ってしまったウィンドに、ユーリリアがのしかかった。ポロンに“清め  
られた”部分に、ハーフエルフの唇が近づく。  
襲い来る強烈な快感を予感しながら、ウィンドは隣で横たわっているポロンを見やり――既に意識を  
取り戻している彼女が、薄目を開けてユーリリアの技巧を観察しているのに気付く。  
自分が“やつら”より遙かに恐ろしい運命の輪に囚われたことを、ウィンドは理解した。  
 
   END  
 

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