「え? なんだ、何をする!?」  
着ていたものをみんな脱ぎ捨てたところを不意打ちされて、レイハさんは狼狽しました。どこかから  
取り出された布帯が、いきなり両目の上に巻き付けられたのです。  
「こら、やめないか! どういうつもり……あ? うわっ!」  
闇に包まれて戸惑う彼女の腕を引っぱって、リュクティさんは窓辺に位置を移しました。  
ここ〈牢獄亭〉は、客室全部の窓に鉄格子が嵌められています。その鉄格子を握らされて、レイハさ  
んはお尻を突き出すポーズになりました。  
彼女の肌に刻まれた魔法の刺青――“戦乙女の紋”を、リュクティさんが指先でなぞり回します。  
「こ、こんな……こんなのって……」  
はたして、目隠しされているせいでしょうか? いつものレイハさんからは想像もできない、不安げ  
な声が漏れてきます。  
やがてリュクティさんは、恋人のお尻を自分の方に向けさせて、ピタリと狙いを定めました。  
「よし、行くぞ!」  
気合いと同時に、それは的をめがけて突き込まれ――  
ぐちゅっ! という、熟した果物が潰れるみたいな音を、部屋じゅう聞こえるほどに響かせました。  
「あっ、はぁぁっ!」  
獣じみた格好で貫かれて、レイハさんが悩ましい嬌声をあげます。激しく腰を揺すりながら、リュク  
ティさんがふっと呟きました。  
「おや? 窓の下を誰か通ってくぞ。あれは、サティアさんじゃないか」  
「な、なんだと? あ、あぁっ! あぁぁっっ!!」  
思いも寄らない言葉に、レイハさんは全身を震わせ、身悶えます。そんな反応が、リュクティさんを  
ますます調子づかせるのでした。  
「ダメじゃないか、そんな大声を出しちゃ……参ったな。サティアさん、こっち向いたぞ。真っ裸で  
喘いでるレイハに気付いて、びっくりしてるぜ」  
「や! やめ……ぁっ!」  
 
耳に吹き込まれた嘘を真に受けて、レイハさんは今にも泣き出しそうです。窓の下から“サティア”  
に見られているだなんて、絶対あり得ないのに。  
だってサティア・アディは――私は今、二人と同じ部屋の中にいるんですもの。ベッドの下で這いつ  
くばって、息を押し殺しながら。  
 
災難のきっかけは、リュクティさんの部屋をお掃除しに入ったことでした。  
部屋は、恋人ができる前とは見違えるほど片づいていました。息子に出来のいいお嫁さんが来てくれ  
たような感慨に浸った私は、ベッドを整えようとして一本の黒髪を見つけたのです。  
「これって、レイハさんの……」  
若い恋人たちにとって当たり前のことだっていうのに、妙にドギマギしてしまったのは、私の立ち位  
置が“母親”だからなのしょう。  
早鐘を打つ心臓をなだめようと深呼吸しかけた時――私の後ろで、鍵が回る音がしました。  
びっくりした私は、咄嗟にベッドの下に身を隠したのです。  
行方知れずだった夫を探すためにと習い覚えた盗賊の技能が、こんなところで役に立つだなんて、こ  
の瞬間まで思ってもみないことでした。  
“出来のいいお嫁さん”を連れ込んだリュクティさんは、彼女の腰に手を回して抱き寄せました。  
「まだ陽も沈みきっていない時刻だというのに……」  
あきれた風に言いながらも、レイハさんはちっとも抵抗しませんでした。リュクティさんが物足りな  
そうな顔に見えたのは、気のせいだったでしょうか?  
ねっとりと濃厚な口づけを交わした二人は、お互いの身体をまさぐりながら、着ているものを脱ぎ捨  
て始めたのです。  
 
「こ、こら、やめないか! ああっ!」  
窓辺から離れようとするレイハさんでしたけれど、リュクティさんはそれを許しません。彼女の裸身  
を鉄格子に押しつけ、ぐいぐいと腰を揺さぶるのでした。  
 
「さぁ、俺たちのお袋さんに、もっとよく見てもらおうぜ。君のいやらしい姿を……」  
「あ、あぅん! やっ、や、やぁぁっ!」  
激しく首を振ってイヤイヤをしていても、レイハさんは快感に抗えないようでした。むしろ自分から  
腰を動かして、奥まで迎え入れようとしてるみたいに思えます。  
髪の毛一本見つけただけでオロオロしていたクセに、絡み合う二人を間近から眺める分には、やけに  
冷静でいられる自分が不思議です。  
「――あれ? や、やばい!」  
その時、リュクティさんがぎょっとした声をあげました。そして彼は、レイハさんを振り回すように  
して身体の向きを変えたのです。  
勢い余ってすっぽ抜けたレイハさんが、ぺたりと床に座り込みます。  
あ……。恋人と繋がっていた場所が、ちょうど私の目の前でヒクヒクしてる……。  
「どうした? 何があったのだ?」  
中途半端なところで放り出されたレイハさんが不満そうに尋ねると、まだ落ち着かない様子のリュク  
ティさんが答えます。  
「下の通りに、本当に人影が見えたんだ……あ! いや、本当にって言うか……」  
「……なんだと?」  
嘘がばれて――実は嘘ではないんですけど――レイハさんの声が怒気を帯びます。陰から覗いている  
だけの私でさえ、肌がピリピリするくらいの怒気を。  
「あわわわ! す、すまん! ごめんなさい! 生命だけはお助けを!」  
ペコペコと頭を下げるリュクティさんに、レイハさんが目隠しを外しながら詰め寄ります。  
けれど彼女の口から出た言葉は、予想していたのとは違いました。  
「――その件は後回しだ」  
「へ?」  
気が抜けた声を出すリュクティさんにくるっと背中を向けて、レイハさんはベッドの縁に両手を突き  
ました。高く持ち上げられたお尻が、ゆらゆらと恋人を誘います。  
 
「こんな風に燃えてしまって……途中でやめられる訳がないだろう! 早く、続きを――!」  
「お……おう!」  
たちまち元気を取り戻したリュクティさんは、再び背後からレイハさんを攻め立てました。二人はま  
るで獣みたいにお互いを求め、あふれ出す官能を激しくぶつけ合います。  
「ああっ! もっと! もっと強くっ! あぁ、イく! イく! イくぅぅ!」  
「くっ! 俺も、もうダメだぁ!」  
二人そろって絶頂に達する寸前、リュクティさんは恋人の中から抜け出しました。  
「背中に、かけるからな! おおおぉぉっ!!」  
「あっ! 熱ぅ……あ、あぁ、あふ……」  
肌に刻まれた紋様を塗り潰すように、たくさんの白濁液が降り注ぎます。熱い飛沫を浴びながら、レ  
イハさんはベッドにもたれかかるように崩れ落ち、ぐったりとなって床に突っ伏しました。  
そして彼女は――  
「――!!」  
驚愕の余り、声にならない叫びをあげたのです。ベッドの下に隠れていた半妖精と目が合って。  
「さ、さ、さ、さてぃ……」  
思わす私の名前を呼びそうになって、レイハさんは咄嗟に自分の手で口をふさぎます。  
「どうしたんだ? 頭でも打ったのか?」  
「だ……大丈夫! 大丈夫だから、心配するな!」  
顔を覗き込もうと跪いたリュクティさんの視線を逸らすように、レイハさんは立ち上がりました。  
「あ……ああ、そうだ! 今度は、お前が目隠ししてくれ」  
そう言って彼女は、さっき投げ捨てた布帯を拾ってリュクティさんに押し当てます。そして彼女は、  
裏返りそうな声で命令したのです。  
「目隠ししたら、ベッドに横になれ。今度は私が上になろう」  
状況を飲み込めないままにレイハさんは、リュクティさんに気付かれないうちに私が部屋を出てい  
けるよう配慮してくれるのでした。感謝で胸がいっぱいです。  
 
「いくぞ、リュクティ」  
レイハさんが宣言するのと一緒に、ギシギシとベッドが軋み出しました。その下からこっそり這いだ  
した私は、音を立てないよう慎重に足を運びます。  
「あぁ……サティアさん……私たちが愛し合う姿が、サティアさんに見られて……」  
いきなり口走ったレイハさんに、私は危うく忍び足を失敗しそうになりました。  
「なんだよ、レイハ? うわっ!? し、締まる! おぁっっ!!」  
「男のクセをして、情けない声を出すんじゃない。……ほら、サティアさんが、またこっちを向いて  
しまった。お袋さんは、女にまたがられて悶えるお前に、あきれているぞ」  
恋人の注意を引きつけようとする――ですよね?――レイハさんの呟きを、さっきの嘘八百への仕返  
しとでも思ったのか、リュクティさんも調子を合わせ始めます。  
「サティアさんに見られてこんなに昂奮するなんて、なんていやらしい女なんだ、君は」  
「違う……違うぞ! 私をこんな風にするのは、リュクティ――お前だけだ! お前と愛し合ってい  
る姿だから……誰かに見られていると思うと……あぁっ!」  
叫びながら腰をくねらせるレイハさんの姿は、とてもいやらしくて。とても綺麗で。そして世界中の  
誰よりも幸せそうでした。  
この幸せがいつまでも続きますようにとヴェーナー様にお祈りすると、私はそっと扉を開いて、リュ  
クティさんの部屋を脱けだしたのです。  
ようやく緊張から解放されて、ほっと息をついた私の後ろで――  
バタン! と、大きな音を立てて扉が閉まりました。  
「な、なんだ? なんなんだ、今の音は?」  
「気にするな。私と愛し合っている時には、私のことだけ考えていろ」  
扉の向こうから、そんな会話が聞こえたような気がします。  
二人の幸せは、まだまだ続きそうです。  
 
      おしまい  
 

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