オランからエレミアへと向かう旅客船の上、バートは船べりに寄りかかって、陽が没しようとする水  
平線を眺めていた。グラスランナーのプラムは「探検」と称して船内をうろつき回り、エルフのシラ  
ルムはナンパにいそしんでいるので、彼だけが取り残された格好だ。  
シラルムの「たまには贅沢しましょう」という提案に従って乗船した豪華客船だけれど、自分のよう  
なガサツな冒険者には、やはり場違いだったと思う。  
それに、一人で海を眺めていると、複雑な気分が顔を出すのだ。水死者の神――海の暗黒神に魅入ら  
れて、大罪を犯した義弟のことを思い出してしまうから……  
そんなバートの頬の辺りに、背後から、温かい飲み物を満たしたカップが差し出された。  
振り向くとそこには、夕焼け空とそっくりな色の髪をした、気の強そうな娘がいた。丈の短い普段着  
が、身体のラインを浮かび上がらせている。  
「きみは、アネリー……?」  
バートの口をついて出た名前は、初めて出会った時に、その娘が名乗ったものだった。苦笑混じりに  
訂正する。  
「いや。ナイトシェード、だったっけな」  
「光栄だね。覚えていてくれたんだ」  
若き女盗賊は、強い薬草の香りが立ちのぼるカップをバートに押しつけながら、不敵に笑う。  
「もっとも、こんないい女のことを、忘れられっこないけどね」  
「なんで、ここに? 今の俺には、酔止めなんて必要ないぜ」  
受け取らされた無用の長物を、それでも口元へと運びつつ、バートは尋ねた。思い出深い酸味が舌の  
上に広がる――と思いきや。  
「ぐっ……ごっ、ごほっ!」  
異様な苦味に不意打ちされて激しくむせるバートの様子に、ナイトシェードは呆気にとられる。  
「ありゃあ? そんなに変な味だったかい?」  
「ごいづはニギャいなんでぼんじゃ……うっ!」  
抗議しようとしたバートの口を、柔らかい感触がふさいだ。  
 
押し当てられた唇の間から無理矢理に押し入ってきた舌が、バートの口腔の内を荒らし回る。  
「……うへぇ。本当だ。こいつぁ、ひどいや」  
眉間にしわを寄せながら唇を離したナイトシェードは、ぺっと唾を吐き捨て、照れ笑いした。  
「悪かったねえ。マーディに教わった通りに作ったつもりだったんだけどさ」  
「そ、それで。お、俺に、いったい何の用なんだ?」  
突然のキスに困惑しながら、再びバートが問う。  
「おぉや? しょってるねえ。あたしが、あんたに会いに来ただだなんて、限らないだろうに」  
愛想のない台詞とは裏腹に、ナイトシェードは、バートの胸に身体をすり寄せ、上目遣いに瞳を合わ  
せてきた。緑色をした大きな瞳は、相変わらず印象的だ。鼻腔をくすぐる甘い香りにクラクラしそう  
になりながら、バートは女盗賊を睨む。  
「なら、何の目的でここにいるんだ? まさか、この船の乗客を狙ってるのか?」  
「そんなこと、決まってるじゃないか」と、女盗賊は蠱惑的に笑った。  
「あんたを慰めに来たのさ」  
 
 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
 
きぃぃぃ、ぎぎぃぃぃぃ……  
舟板がきしむ耳障りな音が響く。  
「こんな立派な船にも、ゴブリンの巣みたいな部屋があるんだねえ」  
ランプを灯しながら、ナイトシェードは鼻歌でも歌うような口調でぼやいてみせる。バートが彼女に  
連れ込まれた先は、粗末なベッド一つが置かれただけの小部屋だった。  
「暗くて臭くて湿っぽい――こんなトコロで男に抱かれようだなんて、あたしも物好きだよねぇ」  
妙に浮かれた様子の女盗賊に対して、バートは戸惑いを隠せぬまま、船室の入口に突っ立っていた。  
「なあ、アネリー…じゃなくって、ナイトシェード……」  
「アネリーでいいよ。そっちの方がムードが出るしね」  
もしかして、そっちが本名なのかな、と、バートは思ったが、尋ねることは遠慮する。  
「じゃ、アネリー……俺って、慰めて貰わなきゃならないほど落ち込んでるように見えるのか?」  
 
「あんた、自分が落ち込んでないつもりでいるのなら、それこそ重傷だよ」  
ナイトシェード――アネリーは、あきれ顔で肩をすくめる。そして彼女は上着を脱ぎ捨て、バートに  
投げ渡すように放った。  
「ほら、あんたもさっさと脱いでよ」  
「あ…ああ」  
気圧されるようにうなずいたバートは、アネリーに背中を向けるようにして、服を脱ぎだす。上半身  
があらわになった時、背後から、ほっそりとした女の腕が巻き付いた。  
「少し背が伸びたかい? そんなこともないね。ちょっとだけ男らしくなったみたいだけど」  
「そ…そうかな?」  
むき出しの乳房が背中に押し当てられる感触に、バートは息を呑む。  
緊張で強ばった肌の上を、アネリーの指先が滑る。胸、腹、腕周り……そしてバートの股間に狙いを  
定め、ぎゅっと握った。  
「あは! ここも、こんなに逞しくって。楽しませてもらえそうだねえ」  
爪の下に獲物を捕えた猫みたいな表情をしたアネリーは、バートの背中を軽く押した。そして、たた  
らを踏み、ベッドに腰掛ける格好になったバートの両足の間に、自分から進んでひざまづき、素早く  
ズボンの紐をほどく。  
既に大きく、固くなっていた肉塊は、戒めを解かれると、まるでバネ仕掛けのように跳ね上がり、自  
分の腹を叩いた。バチン、という音が聞こえてきそうな勢いだった。  
隆々とそびえ立つバートの分身に、アネリーはいきなり舌を這わせる。  
温かく、柔らかく、優しく。  
時に吸い上げ、時に舐め回し、時には軽く歯を立てて。  
巧みな刺激の連続に、バートは、またたくうちに上りつめる。  
そして、アネリーの口の中に、パックリとくわえ込まれた時――  
「うっく……うあああっ」  
絶望的な悲鳴とともに、彼の分身は破裂した。  
 
口いっぱいに放たれた粘液を一滴残らず飲みほして、アネリーはほっと息をつく。  
「すっごく濃いね。あたしが作った薬よりも、もっとニガいんだもの」  
「あ……ごめん」  
反射的に謝罪してしまったバートに、アネリーはくくっと笑いをかみ殺した。  
「なんだい? あんた、こいつの味を自分で調節できるってのかい?」  
マヌケなことを言ってしまった、と顔を赤らめる青年に、アネリーは、さっと自分の唇を重ねる。  
そのキスが意味するところを理解して、バートは顔をしかめた。自分が出したモノだと思えば我慢も  
できるけれど、やはり、あまり気分がいいものではない。それとも、飲んでくれた相手にそんなこと  
を言ったら、ワガママなのだろうか?  
懊悩するバートを尻目に、アネリーは悪戯っぽい笑みを浮かべる。  
「もう少し、抜いておいた方がいいかな? こんなに濃いのを中に注ぎ込まれたら、あたし、たちま  
ち妊娠しちゃう」  
今度は、女盗賊のしなやかな指が、肉棒の上を這い回る。  
迅速かつ正確に弱点を狙った攻撃を受けながら、バートは必死で耐えた。主導権を握られっぱなしの  
ままでは、男としてプライドが許さない。  
攻撃箇所を切り替えようとする隙を突いて、バートは、女の両脇に腕を差し込み、引っこ抜くように  
して抱え上げると、そのまま身体を反転させ、自分の下に押さえ込んだ。テクニックで勝ち目がない  
以上、力押しで乗り切るしかない。  
女の両脚をむんずとつかんで大きく広げさせ、その中央にある茂みの奥、こんこんと湧き出す泉を暴  
き出す。  
「ああン。あたし、犯されちゃう……犯されちゃうぅぅ」  
組み伏せられたアネリーの甘えるような声に、バートは頭の中が痺れるようだった。  
犯す、犯す、犯す!  
勢い任せに突進したバートは、ただひたすらに“女”をむさぼった。  
 
 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *   
 
「うふふ……良かったわぁ。素敵、だったよ……」  
バートの胸に頬を寄せ、うっとりとした表情で、アネリーはささやいた。  
「なあ、アネリー。俺たちには、今、仲間に魔術師がいないんだ。それで、もし良かったら……」  
「あたしに冒険者になれってのかい? 血生臭い稼業はお断りだって、前に言ったろ」  
それなりに覚悟を決めた上での申し込みを即座に拒絶されて、バートはがっくりと落ち込む。  
「……盗賊より、冒険者の方がマシだと思うがなあ」  
「そりゃあ、価値観の違いってやつさ。そうだね、いっそ、冒険者をやめて田舎で畑を耕すから一緒  
に来てくれって言われたら、きっとOKするよ。そういう暮らしって、けっこう憧れてるから」  
ぐっと返答に詰まったバートは、冗談だと思うことにした。平穏無事な生活を望むには、自分も彼女  
も、まだ若すぎるはずだ……多分。  
ともあれ、こんな安らいだ気分になれたのは久しぶりだ。心地よい疲労感が、睡魔を誘う。  
「いい夢を見なよ」耳許で優しく囁く女の声を聞きながら、彼はまどろむ。「あたしは、あんたに会  
いたくなったら、いつだって会いに来るからね」  
俺から会いたい時は、どうすりゃいい? そんな疑問を抱きながら、バートは眠りに落ちた。  
 
 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 
 
――翌朝。  
バートが目を覚ました時、そこには既にアネリーの姿はなかった。いったい、どうやって船上から姿  
を消したものやら、女怪盗ナイトシェードの名に恥じぬ神出鬼没ぶりだ。  
バートは船べりに立ち、海を眺めた。彼女がどっちに向かったにせよ、きっとまだ陸には着いていな  
いだろう。彼女も、俺と同じ海の上にいる――そう思うと、自然と口許がほころんでくる。  
と、その時……  
「ああ! こんなトコにいた! もう! 夕べはどこに行ってたのよ!」  
背後から聞こえてきた、非難と安堵とが半々にこもった妖精の声に、バートは振り返る。屈託のない  
笑顔を受かべて。  
    
                                          完  
 

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