とある邸宅の一室、そこで一人の少女が窓辺に頬杖をついて外を眺めていた。
「はぁ………」
ため息がこぼれる、これで今日何度目だろうか。
窓の外を見れば活気づいたいつもの街の姿が見える。
(つまらないなぁ……)
少女――ルーは退屈していた。
監禁でもなくこの街で過ごすようになって一月程経つ。
最初の頃は見るもの全てが珍しくてはしゃいでいたがそれにももう慣れ、あまり変わり映えしない景色に飽きていた。
「みんな早く帰ってこないかな………」
思い浮かべるの小神の半身たる自分を助けてくれた5人の冒険者達。
思えば、この街で暮らし始めてから楽しかったのは彼らがいたからなのだろう。
エルフの神官エア、リルドラケンの戦士(商人?)ムーテス、ルーンフォークの従者メッシュ、ナイトメアでエアの妹のソラ、そして――
「ジーク……」
手元の宝石に目を落とす。
メッシュの主で、魔法剣士で、やさしくて、今の自分の宝物であるこの宝石をくれた少年。
そして、自分の好きな人。
乗り合い馬車で出会った眠ってばかりの自分に優しくしてくれた、背負ってくれていた時のお爺さんとは違う、頼りがいのある背中。
持っていた宝石までくれた。
ちゃんと起きれるようになったあとで知ったけど、ジークは妖精使いだからあの宝石も妖精を使役するために必要な物だったのだろう。
そんな大事な物を自分にくれたと知って、とても嬉しかった。
その後、蛮族に攫われた自分の元まで駆けつけてくれた。
その時はそのまま連れ去られてしまったけど、心細いのと怖い気持ちをジークのくれた宝石が和らげてくれた。
それから神殿に連れてこられてダークトロールのいいなりになって怖い思いをしていた自分を助けにきてくれた。
凄く、胸が高鳴った。
彼の姿を見た瞬間、とても安心できた。
もうその時点で彼に好意を抱いてたのかもしれない。
やさしくしてくれて、辛い時や怖い時に駆けつけてくれる私の英雄(ヒーロー)。
だからその直後の嫁宣言に動揺して戦いが終わるまでドキドキしてたのも仕方がないのだ、きっと。
困ってる時や辛い時、怖い思いをしている時は必ず助けにきてくれる。
自分は小神の半身、されどその自覚のなかった少女。
例え神であろうと、神である前に一人の少女なのだ。
人を好きになる事だって、当然ある。
冒険者の彼はこの街を出ることがたびたびあるけど、やはり会えない時間は寂しい。
一緒にいたい、もっと触れ合っていたい・・・そう思ってしまう。
それに――
「ジークのお嫁さんかぁ」
興味ある、無いはずなどない。
想いを寄せる人から「俺の嫁から離れろ!」などどいう台詞を聞いてしまえば気にならないはずがない。
メッシュもその気でいろいろと自分に言ってくることがある。
冒険に行くときに「お嫁さん」らしくお弁当を作ってみたけど、食べてくれだろうか
考えていればきりがない程浮かんでくる彼のこと。
帰ってきたらどこかに連れて行ってもらおう、それがいい。
それであわよくば指輪を買ってもらって――――――左手の薬指につけていよう。
そう考えて幾分元気になって外をみると5人の人影が門向かってくるのが見えた。
玄関へと走る。
先頭を歩いている彼におかえりなさいを言うために。
そして我侭を聞いてもらうために。