「ダメよ、ティリー……こんな場所で。それに、カシニアさんが近くにいるのよ」  
ベルダイン市街から徒歩で数時間ほどの距離にある、小さな丘の上。  
ウェルター薬品店の次女――シャリンは、若草の香りに包まれた真昼の風景には不似合いな、甘く切  
ない吐息を漏らした。  
 
魔術師ボー・クラモンに薬草採集を任されたカシニア・ローウィップが、シャリンにも同行を求めた  
のは、昨日のことだ。元雇い主だったクラモンからの依頼という形でティリーに護衛を引き受けても  
らったカシニアは「妙な誤解されたくないので」と、シャリンも一緒に誘ったのだ。  
シャリンも、そしてティリー本人でさえも気付いていないけれど、カシニアはティリーへの好意を胸  
に忍ばせている。実を言えばこの薬草採集だって、そんな“忍ぶ恋”に同情したチャ・ザ神官リンジ  
ーが黒幕となってお膳立てしたものだ。  
けれどそんなお節介は、カシニアにとって有難迷惑な話であった。  
自分たちも薬草探しを手伝う、というティリーの申し出を、これは私の仕事だからと断ったカシニア  
は、この場所で待っているように言い残すと、藪の中に分け入ってしまった。  
生まれついて視力が弱いカシニアだったが、天性の精霊使いであり、レンジャーの訓練も積んでいる  
彼女にとっては、野外の方が街中よりよほど歩きやすいのだ。  
 
「シャリンがいけないんだよ。シャリンがこんなに可愛いから。シャリンがこんなに色っぽいから…  
僕はもう、我慢できないよ」  
「そ、そんな……だって、夕べも、したのに…っん……」  
恋人の抗弁を封じてしまおうと、ティリーは桜色をした唇をむさぼった。  
普段とは人が違ったような荒々しい仕草で、シャリンの華奢な躯を組み敷く。唇を重ねたまま、手探  
りで服をはだけさせ、肝心な部分はすっかり露出した半裸にしてしまう。  
剥き出しになった小振りな乳房を両手で揉み回しながら、ティリーはわざと大きな音を立てて、シャ  
リンのほっそりとした首筋をついばんだ。  
 
「あ! だめぇ…そんなトコに、キスマークなんて……みんなに…見られちゃう……」  
「みんなに見せつけたいんだ。シャリンが、僕のモノだっていう証拠を」  
シャリンの不安をかき立てるように、ティリーはささやく。実行する度胸など持ち合わせていない癖  
に、そんなワガママを口にしてしまうのは、恋人の気持ちを言葉として確認したいからだ。  
そして、彼の愛しい少女は、彼が望んだとおりの反応を返してくれる。  
「証拠なんて、なくたって……みんな、知ってる…もの。わ、私は、とっくに……ティリーのもの、  
だって…あ、はぁぁ……」  
いつも通りのシャリンの言葉は、いつも通りに切ない喘ぎ声へと変わってゆく。  
お互いの肌しか知らない自分たちの経験不足を補うものが“愛している・愛されている”という確信  
であることは、ティリーにとって、この上もない幸福だった。  
「じゃあ、シャリンが僕の所有物だって証拠は、他の人には見えない場所に付けようね。僕だけしか  
見ちゃいけない、しるし、だ」  
つつましやかな双丘の麓に唇を移動させたティリーは、今度こそ本気で吸い上げる。これまでの逢瀬  
で、そうやって刻みつけてきた痕跡が、白い肌のそこここに残されていた。  
陶然とした表情で、シャリンはこくりとうなずく。  
「うん……ティリーと、私だけの、秘密の印……だよね」  
ようやく開発が始まったばかりの女の肌は、まだ不慣れな男の愛撫から、痛みしか受け取れない。け  
れどそんな痛みすらも、たまらなく愛しく思えるのが現在のシャリンである。  
似合いの一対、というべき二人だった。  
「ティリー……私、もう、大丈夫だから……来て、くれる?」  
「うん。行くよ、シャリン」  
ためらいがちな求めは、今や遅しと待ちわびていた突撃の号令に等しかった。  
ティリーは、腰の動きだけで入り口にあてがった“それ”に、ぐっと力を込めて、押し込む!  
「あ、ああっ!」  
真っ白い喉をのけぞらせて、シャリンは喜悦の歌声を響かせた。  
 
自分のためだけに歌を聴かせてくれる黒髪の歌姫の首に腕を回して引き寄せ、頬をこすりつけ合うよ  
うにしながら、ティリーは耳打ちした。  
「……あんまり大きな声を出すと、カシニアに聞こえちゃうよ」  
ちょっとした悪戯心からささやいた脅かしの言葉は、予想を遙かに越えた効果を上げた。ティリーの  
背筋をゾクリとするような衝撃が駈け上り、頭の中で弾ける。  
「う、うわっ」  
初めて結ばれて以来、最高クラスの快感を与えられて、ティリーは総毛立った。  
これまで、恋人を受け入れるだけで精一杯だったシャリンの秘肉は、今、うねうねと蠢き、根本まで  
しっかりとくわえ込んだ“彼”をさらなる深淵へと導こうとする。  
「うそ……私、こんなの……」  
自分では制御できない我が身の反応に、シャリンは、両手で顔を覆い隠し、幼い子供がイヤイヤをす  
るように首を振る。その小さな手では隠しきれないおでこまで、真っ赤に染まっていた。  
彼女の肉体が与えてくれる素晴らしい刺激に応えようと、ティリーは激しく腰を突き込んでゆく。  
「ひ……ひぃ」  
ティリーの脅しの言葉――カシニアの耳を意識して、シャリンは叫声を必死で飲み込む。  
「ひゃっ。うぅ……テぃリぃぃ……」  
手加減無用で暴れ回る恋人を押しのけようとするシャリンだったけれど、そんな見せかけばかりの抵  
抗など、雄の本能をいっそう奮い立たせるだけだ。  
ティリーは腰の回転を少しも緩めることなく、シャリンの耳たぶに舌を這わせる。  
「ひゃん! 私、そこは……そこ、弱いの。か、堪忍して……っ!」  
「そんなこと言われたら、我慢なんてできないよ。もっと、もっと攻めたくなっちゃうじゃないか」  
冷静を装った口調とは裏腹に、彼女の耳に吹きかけられる息は火傷しそうに熱い。  
「あ、ン! 意地っ! 悪っ! ティ、リィ、の、いじ、わるぅ……う!!」  
ますます加速してゆく往復運動に合わせて、シャリンの声がスタッカートする。互いの腰骨が打ち合  
わされる音が、まるでリズムを刻むかのように鳴り響いていた。  
 
自分の腰をガッチリとつかんで放さないティリーにされるがままに、それ以上に、一突きされるたび  
に生じる快感への反射で、シャリンの腰も踊りくるう。  
声を漏らすまいと口を手で押さえようとしても、ティリーはそれを許さない。彼女の手首を素早くつ  
かみ取り、指をからめて両腕とも動きを封じ込む。  
「ああ……聞かれ、ちゃう…カシニア、さん、に……聞かれちゃう、よぉ……」  
譫言のように呟きながら悶えるシャリンだったけれど、今受けている仕打ちそのものをやめてくれと  
は、決して口にしなかった。もっとも、仮にやめろと言われたところで、今や快楽の虜となっている  
ティリーは、聞く耳など持たなかっただろうけれど。  
吸盤どうしを貼り付けるように肌を密着させ、柔らかな双丘を胸板で押しつぶす。  
子宮を突き抜かんばかりの勢いで、濡れそぼった蜜壷を内側からかき回す。  
「テぃ、リ、い……わ、たし、もう……耐え、られ、ない……」  
息も絶え絶えに、シャリンは許しを請うた。もう終わらせてください、と。  
「いいよ! イっていいよ、シャリン! さあ! イくんだ!!」  
「あっ、あーっ! 落ちる! 落ちちゃう! あぁっ、落 ち る ぅ ー ー ー っ!!」  
背中を弓なりに反らせたシャリンの哀切な悲鳴が、長く、長く尾を引いた。  
愛する少女の絶頂は、触れ合う肌を通してティリーに伝わり、彼の全身を駆けめぐる。そしてその愉  
悦は、解放を求めて一点へと集中する。  
次の瞬間、爆発寸前で引き抜かれた肉棒から噴出した大量の白濁液が、悦楽の余波に震えるシャリン  
の胸に――つい先ほど印された『所有者の印』へと、あびせかけられた。  
恋人の肌を欲望の粘液で汚したティリーは、腰が砕けたみたいにへたり込む。そして彼は、雲一つな  
い青空を仰いで、ほうっと息をついた。  
その時。  
『ティリー? ねえ、ティリー?』  
耳許で呼びかける少女の声を聞いて、ティリーは飛び上がるほどに驚愕した。  
「ka、か、カ、カシニア!?」  
 
それが「ウインドボイス」で伝えられた声だと気付いて、ティリーは戦慄した。大半の呪文がそうで  
あるように「ウィンドボイス」もまた、術者の視界内にしか効果を及ぼすことはできない。  
『あら、聞こえて? 呪文の目標を間違えたかと思ったわ』  
風の精霊に伝達されたカシニアの口調は、普段と変わりないように聞こえた。  
考えてみれば、カシニアは、数歩離れただけで相手がぼやけて見えるほど目が悪いのだ。この「ウィ  
ンドボイス」だって、おおよその見当でかけただけだ、と、ティリーは自分に言い聞かせる。僕たち  
のはしたない行為には、きっと気付かれてはいない、と。  
一時的な熱狂から醒めてしまえば、カシニアの存在を「言葉責め」の材料に使ってしまった自分の破  
廉恥さに、背筋が凍る思いがするティリーだった。  
『目的の薬草は見付かったわ。すぐに、そちらに戻るわね』  
その時、絶頂の余韻でとろんとしていたシャリンも、ようやく我に返った。  
「え……カシニアさん? ……っ!?」  
虚空から聞こえてくるカシニアの声に、パニックを起こしそうになるシャリンを、ティリーは必死で  
なだめなければならなかった。  
 
「ウインドボイス」の持続時間が切れた時、カシニアは、とうの昔に発見していた薬草を玩ぶように  
しながら、ふうっと息をついた。すっかり乾いてしまった唇を、自分の舌で湿らせる。  
「……まったく、あの二人と来たら」  
結果的に盗み聞きすることになってしまった睦言のせいで、彼女の頬はすっかり上気していた。  
自分の両肩をつかんで、ぎゅっと抱きしめる。まだ男を知らない肌はかっと火照り、心臓は早鐘を打  
ち鳴らしたままだ。  
こんな気持ちで、愛し合ったばかりの恋人達の前に行ったら、どうなってしまうんだろう? 畏れと  
期待とに身震いしながら、カシニアは、二人のもとに向かうために立ち上がった。  
 
          TO BE CONTINUED(かも知れない)  
 

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