−囚われの女貴族−  
 
1.目覚め  
 
 …起きなさい。  
「う…」  
 女性は誰かの呼び声に反応した。  
 起きなさい。  
「う…うぅん…」  
 再び呼びかけられ、今度ははっきりと目を覚ました。  
「ここは…」  
 彼女は首を振って意識をはっきりとさせ、周りを見渡した。  
 そこは狭い個室だった。  
 彼女はベッドの上で後ろ手に縛られ、横になっている。  
 そうしていると気を失う前の事を思い出してきた。  
 フィルゲン様からのプレゼントと言われたドレスを姉妹で取り合った。  
 それが罠だと知り、フィルゲン様の新しい奴隷を殺そうとした。  
 しかしオルガが倒れ、キャロンも倒れ、自分も…  
「ようやく目が覚めましたか。ジーク様よりお寝坊さんですね」  
 目の前のルーンフォークを睨みつける。  
 確かあの時の奴隷の一人だ。  
「ああ、そうそう、まだ名乗っていませんでしたね。私はメッシュ、ジーク様の執事です」  
 訊いてもいないのに名乗る。  
「…何が目的だ?」  
 声のトーンを下げ、ドスを効かせて問う。  
「そう警戒しなくても良いですよ。我々は慈悲深いですから」  
 女性−ミカファ−は眉を顰めた。  
 蛮族にとって慈悲なんて言葉は気まぐれに近い。  
 蛮族から見れば人族は全て慈悲の塊の甘ちゃんだ。  
「何、簡単なことですよ。仲間になってくれれば良いだけです」  
 メッシュの言葉にかちんと来た。  
「嘗められたものね。わたしがフィルゲン様を裏切るとでも?」  
「いえいえ、滅相も無い」  
 メッシュは大袈裟に首を振って否定した。  
「かのフィルゲンも、我々を殺さず機会を与えて下さった。同じことです」  
「…つまり、裏切られても文句は言わないってことね」  
 ミカファは鋭い視線を送ったが気にもされなかった。  
 
「勿論です。その為のその首輪ですから」  
 ミカファはそう言われてはっとし、首輪の存在に気付く。  
 縛られて横にされていた為、気付かなかったのだ。  
「大丈夫、時限式の方ですよ」  
 少しほっとする。  
 自分が囚われている以上、ここは人族の領土だろう。  
 範囲式の有効範囲は動かされているとしても殆どが蛮族領。  
 もし万が一範囲式だったら、動いた途端に範囲から外れる可能性も考えられた。  
 逆に、首輪をされていることで安心をした。  
 首輪をしたという事は、少なくとも直ぐに殺すつもりは無い。  
 できれば利用しようと考えているはずだ。  
 それなら付け入る隙もあるだろう。  
「…それで、わたしに何をさせるおつもり?」  
「話が早くて助かります」  
 褒められても嬉しくなかったが、機嫌を損ねるのは危険なので口には出さなかった。  
「貴女にはジーク様の相手をしてもらいます」  
「なっ?! わたしに娼婦のような真似を、しかも人族相手にしろと言うんですの!?」  
 激昂した彼女に対し、メッシュは腹立たしげに答えた。  
「いいえ違います。誰がジーク様の初めてを蛮族如きに奪わせるものですか」  
 言い返そうとした彼女を無視して続けた。  
「ジーク様は年上の女性が苦手なので、それを慣れ、克服させるだけで良いのです」  
 メッシュの悲しそうな言葉で彼女は落ち着きを取り戻した。  
 このルーンフォークはただ主人思いなだけなのだろうと思った。  
 …明らかに勘違いだが。  
「…分かったわ」  
 自分の貞操を投げ出さなくて良くなったことで、彼女の中で妥協が生まれた。  
 取り合えずは従順な振りをして、隙を見て…  
「助かります。あ、そうそう言い忘れていました」  
 ?  
「首輪の期限は後8時間です。鍵はジーク様に直接関係無い方が半分持っているのでお忘れなく」  
 が〜ん!  
 つまりそれは、ジークと言う人族を人質に取っても首輪は外せないと言う意味だった…  
 
2.再会  
 
 こんこん。  
「ん、誰だ?」  
 夕食の後、部屋でベッドに転がってくつろいでいたジークは扉の外に訊ねた。  
「私です」  
「ああ、入れ」  
 メッシュの声にぞんざいに応えると、扉が開き人が入ってくる気配がした。  
 二つ。  
 足音はベッドの横まで来た。  
「彼女が我々の仲間になりたいそうです」  
「ん?」  
 ジークが起き上がってベッドの上で腰掛けて声の方を向くと、そこにはメッシュと、ドレイクバロンのミカファがいた。  
 気絶した彼女を捕らえた後、殺さずに協力を頼む事にしようと言ったのはジークだった。  
 彼女の首に例の首輪がしてあることを確認する。  
 この首輪は無理に取ることはできない。  
 つまり、副次的な効果だが、この首輪をしている限りドラゴンの姿になることもできないのだ。  
 勿論、彼女の力の剣は奪って隠してあるのだが…  
 ジークなら、人の姿の彼女に襲われたところで、助けを呼ぶ前に殺されることはまずないだろう。  
 それに数時間しか延長しないようにしているので、その短時間で蛮族領の鍵を持つ相手の所まで逃げて首輪を外すのは困難。  
 彼女はそれを十分理解しているはずだった。  
「二人でゆっくり話して下さい」  
「ちょ、メッ…!」  
 ジークが二人でと言う言葉に反応するが、メッシュは言い終えるとさっさと部屋を出て行ってしまった。  
 
3.誘惑  
 
 部屋には沈黙が流れた。  
 確かにジークに身の危険は無いだろう。  
 だが、別の意味でジークは怯えていた。  
 メッシュが言っていたように、彼は年上の女性が苦手なのだ。  
 ソラのアプローチをわざと邪険にしているのもその為だ。  
 それが良く知りもしない年上の女性と二人っきり。  
 
 それはミカファにとっても同様だった。  
 自分より格下の配下の男が側にいることは珍しくない。  
 しかしそれは仕事場での話だ。  
 狭い−ドレイクにとっては−部屋の、存分に力を振るえない状況で敵である人族の雄と二人っきり。  
 彼女には緊張して彼の前で立ち尽くすことしかできなかった。  
 
 何時までも続くかと思われた沈黙を破ったのは、やはりジークだった。  
「…なあ、座ったらどうだ?」  
 若い彼の方が、先に沈黙に耐えられなくなったのだ。  
「え、ええ、そうさせて貰うわ…」  
 緊張していたミカファは頷くと、ジークの横に座った。  
「ひっ!」  
 隣に座ったミカファに、ジークは思わず声を上げた。  
 そんなジークの態度にミカファは嫌悪の感情を抱きかけたが、あることを思い出し、思い直した。  
『ジーク様は年上の女性が苦手なので…』  
 くすっ。  
 逆にからかってやろうと言う感情が湧いてきた。  
「そんなに怖がらなくても良いんじゃないのかしら」  
 座ったまま、すすっとジークににじり寄る。  
 対してジークは上半身だけで距離を取ろうとする。  
「貴方が助けてくれたのですってね?」  
 ジークが答えようと口を開けたところを…  
「んんっ?!」  
 ミカファは自分の唇で塞いだ。  
 そのままジークをベッドの上に押し倒す。  
 彼女にとってキスは初めてでは無かった。  
 勿論、相手はフィルゲンだ。  
「ねぇ…、お礼をさせて?」  
 唇を離してそう言いながら、彼女はジークの手を自分の胸に重ねさせる。  
「わっ…」  
 ジークが驚くが、彼女は意に介せずその手を胸に当てて促す。  
「ほら、触ってみて」  
 ジークは慌て手を振り解こうとしたが、純粋な腕力では敵わない。  
 諦めて彼女の胸を撫でるようにさすってみた。  
 
「あぁんっ……もっと強く…揉んでも良いのよ?」  
 ジークは頭が熱くなり、言葉のままに胸を揉み始めた。  
 柔らかくて大きく、吸い付くようなそれは、彼の手の形に合わせて形を変えていった。  
「ふぁ、あ、あ、ぁぁ…」  
 彼女もその感触に感じてきて、表情が緩んでくる。  
 ぐにゅっ、ぐにゅっ。  
「んっ……んん……はっ…はっ…あっ…」  
 胸を愛撫され続けた彼女は喘ぎ声が止まらなくなってきた。  
「可愛い…」  
 そんな彼女の姿に、ジークは思いがけない言葉を溢していた。  
 言ってしまってから自分でも驚いていた。  
 自分はでかい乳や年上は苦手ななずなのに…  
「…はぁ…はぁ……え?」  
 驚いたのはミカファの方も同じだった。  
 彼女は双子の可愛い妹と常に比較されてきた為、よく綺麗だと言われるが、大きくなってから可愛いと言われたのは初めてだった。  
 だから彼女の顔は照れて赤くなり、余計にジークの目に可愛く映った。  
「んんっ?!」  
 ジークが自分から唇を重ねた。  
 苦手なはずの年上の女性の本当に可愛い姿に、ジークは堪らなくなったのだ。  
「ん、んん…ぴちゃ……れろ…れろ……」  
 そんなジークの口に、ミカファは知らず知らずの内に舌を差し入れ、彼の舌に絡めていった。  
 するとジークも、舌を絡め返した。  
「…りろ…にちゃ……れろ……んんっ…………んん!」  
 やがて長い口付けで息が出来なくなり、二人の口は唾液の糸を引きながら離れた。  
 しかし、直ぐに再び唇を重ね、舌を絡め、今度はお互いの身体を弄り合った。  
 −騙そうと思っていたのに−  
 ミカファは自分の身体の芯が燃えるように熱くなっていくのを感じた。  
 フィルゲンは気を持たせるようなことはしても直接手を出して来れなかった。  
 だから彼女はいつも、自分で自分を慰めていたのだ。  
 そんな彼女の身体は今、男を求めていた。  
 蛮族だとか人族だとか関係なく、身体の深い部分が男を求めていた。  
 いや、それは言い訳だ。  
 何の奇異もてらいも無く自分を可愛いと言い、求めてくれる純真な瞳に恋焦がれてしまったのだ。  
「来て…」  
 彼女は最後の一線を越えるべく、恐る恐る足を開き、自らの秘所を示して彼を促した。  
 ジークは一瞬躊躇った。  
 それが何を意味するか、どうすれば良いかくらいは知っていた。  
 が、  
「初めてだから、多分上手くできないぞ」  
 言わなくても良い事を言った。  
 それは最後の砦。  
「…偶然ね。わたしもよ」  
 それが引き金だった。  
 
4.繋がり  
 
 ずぬっ。  
「…んああ゛あ゛っ!!」  
 挿入によって引き裂かれる感触に、ミカファは悲鳴を上げた。  
 ドレイクである彼女は、怪我を一々痛がりはしない。  
 しかし、身体の内側を引き裂かれる初めての痛みに、耐える意思が働かなかった。  
「だ、大丈夫か?」  
 ジークは心配になって声をかける。  
 自分もきつさに戸惑っていたが、それより先に心配が口に出た。  
 だからミカファは応えた。  
「だ…大丈夫よ……続けて…」  
「…分かった。ゆっくりするから、辛かったら言ってくれ」  
 ジークは言葉通り、半分も入っていなかったモノをゆっくりと膣奥へ侵入させる。  
「んん……はっ…はっ……はぁはぁ……んん…」  
 ミカファは耐えながら息を細かく吐く。  
 少しでも彼女が痛そうにすると、彼は腰の動きを止めて待つ。  
 愛されているのが分かる。  
 心のどこかがきゅん、と締まる。  
「んんっ」  
 やがて侵入が止まる。  
 奥に辿り着いたのだ。  
「奥まで入った………大丈夫か?」  
 心遣いが嬉しい。  
「う…ん。大丈夫だから…、動いて」  
「分かった」  
 そう言うとジークは腰をゆっくり引き、  
「はぁぁ……」  
 同じようにゆっくり差し込んだ。  
「あぁ…!」  
 ずんっ、ずんっ。  
 時に速く、時にゆっくりと膣内を往復する。  
「はぁあんっ! あっ…は、激しっ…いぃ!」  
「ミカファの中、暖かくて……柔らかくて……気持ちいいよ……!」  
「わ、わたしも……! …あくっ…初め……ってなのに……んんっ……気持ち良い………くぅんっ!!」  
 二人はお互いを貪るように求め合い、  
「んあぁーっ、だめっ……な、何か…あっ…来るっ! …わたっ……しぃっ…!」  
「俺も……はっ…はっ…もう……もう……!」  
 身体が熱くなり、何も考えられなくなっていく。  
「…来てっ! ……来て、ジークっ!」  
「――ミカファっ!!」  
「はああ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっっっ!!!!」  
 びゅっ、びゅくっ。  
 ミカファは長い嬌声を上げ、自分の中に放たれたジークを感じながら意識を失っていった…  
 
5.誓い  
 
 ミカファは目覚めた時、頭に違和感を感じた。  
 寝転んだまま首を巡らすと、隣でジークが顔を覗き込んでいた。  
 ぽっ。  
「あっ…」  
 照れて逆の方に転がって気付いた。  
 頭の下にジークの腕があるのだ。  
 もう一度ジークの方に向き直る。  
「おはよう」  
「…ずっと見てたの?」  
 照れ隠しをしようと口にしたが、頬が熱くなるのを感じ、照れ隠しになっていないことに気付いた。  
「ああ。寝顔が可愛かったからな」  
 ジークの率直な言葉で顔中が真っ赤になった。  
 だから仕返しをしてやった。  
「年上の女性が苦手じゃなかったの?」  
「そうだけど、ミカファは別だ」  
 小首を傾げて『何故?』と問おうとしたが、次の言葉を聞いてしまい言えなくなった。  
「凄く可愛いからな」  
 彼女は真っ赤な顔を俯かせて、ジークの胸をぽこぽこ叩いた。  
 ジークはそれを受けて笑っている。  
「…痛っ」  
 不意に痛みが走り手で抑える。  
 交わっている間は気にならなかったのに、今になって破瓜の痛みがぶり返してきたのだ。  
「大丈夫か?」  
 心配そうなジークに大丈夫だと答える。  
「心配要らないわ、ちょっと痛いだけ。もう大丈夫よ。それよりも私が別ってことは、やっぱり年上の女性は苦手なままなのかしら?」  
 ジークは質問を戻されて少し戸惑った。  
「ああ…多分な」  
「そう…」  
 ミカファは俯いて少し考え込むと、不意に顔を上げて言った。  
「なら、わたしが治してあげる」  
「え?」  
 彼女の唐突な提案に驚いた。  
 
「わたしね、キャロンと違って愛されてるって実感なかったんだ…」  
 彼女が何かを言おうとしてるのを察し、ジークは押し黙った。  
 彼女は起き上がってベッドに腰掛け、俯いて話す。  
 ジークの方は見ていない。  
「いつも可愛いキャロン。誰からも愛されるキャロン。…だから、せめて…わたしは綺麗になろう、毅然としようって頑張った…」  
 ジークも起き上がってベッドに腰掛け、彼女の方をじっと見つめる。  
 彼女は自嘲気味に語る。  
「だけど誰も振り返ってはくれなかった。ドレイクだから強くて当たり前、蛮族の支配者であることを求められた。フィルゲン様でさえ…」  
 彼女の顔は髪に隠れて見えなかったが、何故かその表情は手に取るように分かった。  
「でも…貴方は違った。年上が苦手なのに、素のわたしを可愛がり、労わり、愛してくれた…」  
 少し、声に喜びが混じる。  
「…だから!」  
 顔を上げ、髪を振り乱し、ジークの方に振り向く。  
「誰にも渡したくない! 年上ならわたしが慣れさせてみせる!! 今よりもっと、わたしを愛させてみせる!!!」  
 それは心からの叫び。  
 ……  
「…いいのか? 俺とずっと一緒にいるってことは、フィルゲンと敵対するってことなんだぞ?」  
 くすっ。  
 彼女は微笑んだ。  
 短い付き合いの中で初めて見たかもしれない、心からの笑顔。  
「言ったでしょ? わたしをもっと愛させてみせるって。わたしは愛に生きるの。例えフィルゲン様だって邪魔はさせないわ」  
 ちゅっ。  
 軽い口付けをして最後の質問をする。  
「俺にとって、ルーが一番大切なんだ。難しいと思うぞ?」  
「相手が女神でも変わらないわ……」  
 ミカファの答えは、自らの口付けの中に消えていった……  
 
 
 かつての、敬愛する上司との決別。  
 新しい、異種族との険しい恋の道。  
 彼女を待つ未来は、女神さえも巻き込んだ物語……  
 
−完−  
 
 

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