<封印17日目>
「うっ、ふうっ……」
「はぁっ、はぁっ……」
拠点から離れた、とある部屋の片隅。
暗がりの中で、クロノアが手袋を脱ぎ、柔らかな掌でジークのペニスを扱いていた。
「なん、で、いきなり……っ」
「だ、だって、ジークくん、勃起してたじゃない……っ」
確かに、ジークのペニスはそそり立っていた。
だが、それは日常的に起こることであり、性的興奮を覚えたからではない。
しかしクロノアはここぞとばかりにジークを連れ込み、『犯されるかもしれないから性欲処理をする』という名の下に、
ジークのペニスを弄繰り回す。
「……そう、これは仕方のないことなのよ……」
「あ、ああ……仕方ない、よな……」
欺瞞。
それが分かっていながら、二人とも、一線は越えられずともギリギリの地点をたゆたっている。
「うっ、イクッ……!」
「あ……っ、凄い出てる……!」
びくびくと震えるジークのペニスから、大量の精液が射精される。
それが床にびちゃびちゃと飛び散る様を見て、クロノアはごくんと唾を飲み込んだ。
「お、終わったわね……じゃあ、これで……」
「ま、待ってくれクロノアさん、まだ……」
「え……あっ……」
一度射精したにも関わらず、ジークのペニスは未だギンギンに勃起したままだった。
その溢れんばかりの活力に、クロノアは息を呑む。
「ん……し、しょうがないわね。じゃあ、もう一回……」
「あ、ちょ、ちょっと待ってくれ」
「?」
「その……胸でしてくれないか?」
何を言い出すかと思えば。
クロノアは呆れた視線をジークに送る。
「な、なんだよー。いいじゃないか、男の夢なんだ」
「私は別に、あんたを悦ばせるためにやってるわけじゃないわよ」
「……そうか。じゃあ、仕方ないか」
ジークはあっさりと引き下がる。
無理をして、この関係を壊すことを良しとしないから。
その思いを感じ取ったクロノアは微かに視線を彷徨わせると、
「……いいわよ」
「え?」
「その……胸でするくらいだったら、いいって言ったのよ」
恥ずかしげに頬を染めながら、ぼそりと呟いた。
それを聞いて、ジークの顔が歓喜に染まる。
「や、やった!」
「まったく……モノは立派なのに、まだまだ子供だねえ」
クロノアは苦笑して、首部分のフックを外してローブの胸部をずらした。
ぷるん、という音が聞こえそうなほどに豊かで柔らかな二つの膨らみが転がり落ち、ジークはペニスを奮わせる。
「へへっ……じゃあ、お願いします」
「調子いいんだから……大きな胸は嫌いじゃなかったの?」
「それとこれとは話が別で」
「まったく……んっ」
しゃがみこんだクロノアが、ジークの巨大な陰茎を胸で挟み込む。
「うぉっ……壮観……」
「凄い……全然収まらない……」
鼻の下を伸ばすジークと、驚きに目を見開くクロノア。
一度カームにもパイズリをしてあげたことがあったが、あの時はクロノアの豊満な胸ですっぽりと収まってしまい、
何処にペニスがあるのかいまいち分かりにくくて、それ以来行うことはなかった。
だが、ジークのそれは違う。クロノアの双丘を以ってしても埋まることなく、亀頭全体を顕現させてその存在を見せ付けている。
挟み込んだ影響でペニスの持つ火傷しそうなほどの熱量も深くまで感じ取り、クロノア自身をも否応無く淫らな気持ちにさせるのだった。
「じゃあ、いくわよ……」
ゆっくりと、胸を使ってペニスを扱き上げるクロノア。
動かす度に柔らかな感触が伝わり、ジークが快感に呻き声を漏らす。
「うあっ、気持ちいい……」
恍惚の表情を浮かべるジークに、クロノアも俄然やる気を出して速度を上げる。
パイズリはいわば男性への奉仕であり、はっきり言って女性は疲れるだけであまり気持ち良くならない。
それでも行為に集中出来るのは、一重に『気持ち良くなってほしい』という、独り善がりではない愛情があってのことだ。
……そのことを、クロノアが理解しているのは不明だが。
「はぁっ、はぁっ……」
鼻息粗く、快感に身悶えるジーク。
ペニスを扱かれているのは手コキと同じだが、目に入る情報から受け取る意味が違う。
手で扱かれるのは、『してもらっている』という、いわば受身の姿勢。
だがパイズリは、『させている』という、一種の征服感があった。
本来、こういう関係になどなろうはずがないクロノアがまるで自分のものになったようで、それが自然とジークを高める結果となる。
「くっ、そろそろ……」
「いいわよ、好きなときに出しなさい……!」
「あっ、ぐっ……射精(で)るっ!!!」
びゅくっ、びゅくくっ!!!
激しい脈動と共に、ジークの亀頭の先から白く濁った液体が飛び出る。
クロノアの顎や胸に付着したそれは、どろりとした粘りを見せながらでゆっくりと流れ落ちた。
「す、凄い……さっき一度出したばかりなのに……」
二度目と思えぬほどの量に、精液の熱さを肌で直接感じながら、クロノアはジークの精力に畏怖を覚える。
カームならば、もう一週間分は使い切ってしまったのではないかと疑うほどの濃厚さだ。
「ふぅ、はぁっ……」
腰砕けになってジークが荒い息を吐く。
流石に二度目になるとそのペニスは勢いを失い、収縮して垂れ下がっていた。
「……気持ち良かった」
「そう……」
性欲処理という名目上、まさか「それなら良かった」と答えるわけにもいかない。
そっけなく答え、近くの果実の群生地から葉っぱを毟り、精液を拭い去る。
そしてローブを着直すと、若干頬が紅潮してはいるものの、いつものクロノアだった。
「じゃあ……探索を続けましょうか」
調べた部屋の数はもうすぐ七百。
ここまで来ると、もはやこの迷宮にはこちら側から脱出するための手段など存在しないことが明らかだった。
とはいえ、希望が捨てられないというのが、人情というものだが。
「そうだな……」
ジークが頷く。
その瞳は、クロノアの発情を隠し切れない濡れた瞳に向けられていた。
心の内に、何かを秘めているかのように。
<封印18日目>
「っ……な、なかなか射精しないわね……」
ローブを脱ぎ、上下に黒い下着だけの姿となったクロノア。
そんな彼女がブラジャー上にをずらし、二つのたわわな胸でジークの逞しいペニスを扱き上げながら、微かに眉根を寄せてそう呟いた。
確かにジークのイチモツは子種を放出しようという素振りを見せず、
ジーク本人も今までのような快楽に翻弄されて思考能力を失っただらしない顔を見せてはいない。
「ん……正直、慣れたのかもしれないな」
「順応早いわねえ」
呆れた風にクロノアが呟く。
早朝、目覚めたジークの朝勃ちをパイズリで鎮めてあげて、昼間に後ろから手で擦って出してあげた。
そして夜、寝る前の戯れとばかりに目ざとくジークの勃起を見つけたクロノアが、こうして胸でしてあげている。
だが、ジークは今までのようにすぐイってしまうようなことは無かった。
無論、今日は既に二回も射精しているということもあるだろう。
しかし、若いジークにとってそんなものは些細な問題である。
原因は他にあった。
つまりジークが言った通り、既に三回の手コキと二回のパイズリによる射精を五回も経験し、快楽を受け取る行為に慣れてしまったのだ。
「昨日の今日ではあるんだけど、そろそろ新しい経験をしてみたい、と思う次第なわけだが」
「新しい経験?」
「えっと……」
僅かに言い淀み、ジークは視線を逸らして小さく呟く。
「…………口でしてもらいたいな、って」
「っ」
ほんの少し予想していたとはいえ、クロノアはジークの言葉に喉を詰まらせる。
口で……ということは、つまりフェラチオだ。
手で扱いたり、胸で擦ってあげたりするのとはワケが違う。
直接的に口内にペニスを入れるその行いは、唇という女性の膣に次ぐ神聖な部位を汚す行為に他ならない。
「口、ね」
流石にすぐ了承というわけにもいかず、クロノアは悩む素振りを見せた。
ジークはそんな彼女の様子を眺め、ごくりと唾を飲み込む。
一瞬の躊躇と、罪悪感。
だが、どうしても好奇心を抑えることが出来ず、相変わらず視線を逸らしたまま言葉を紡ぐ。
「勿論、クロノアさんが嫌っていうなら、強制はしない。でも……」
「でも?」
「……これは、性欲処理だからさ。してくれないと、どうなるかは、分からない……な」
それは、脅しの言葉だった。
いや……二人にとって、それは脅しではなく、別の意味を持つ。
何故なら、性欲処理というのは、二人にとって都合の良い屁理屈だから。
無論、口でしてくれなかったからといって、ジークがクロノアを襲うなんてことはありえない。
性欲処理とは二人にとって暗黙の了解――禁忌の行為を誤魔化すためにある名目だ。
しかし、その名目がある以上、ジークはクロノアに愛情を口にして訴えることは出来ない。
だから、ジークは言外に伝えているのだ。
してほしい、と。
口でするという、愛情が絡む行為を、してほしいと。
「……」
「……」
見詰め合う。
情欲に塗れた瞳を交差し、お互いの本心を問う。
そして、長い長い沈黙の末、
「…………………………いい、わ」
折れた。
うら若き乙女のように、クロノアは恥ずかしげにそっと瞼を伏せる。
それは、既にここまで来たのだからという諦観の念からか、膣という最後の砦にさえ入れなければという妥協からなのか。
兎にも角にも、彼女は認めてしまった。
誰も彼女を責める人間はいない。
誰も彼女を非難する人間はいない。
ここには二人だけしかいない。
そんな有り得ない異常さが、クロノアの本来不貞を働くはずのない高潔な魂の隙間、
既に度重なる偶然と不運によってボロボロだったそこに入り込んだ結果だった。
「じゃあ…………する、わよ」
「お、おう」
胸に挟んであったジークのペニスを離し、クロノアは真剣な表情で顔を寄せた。
視界いっぱいに広がる、獣性を剥き出しにした凶器。
否応無く、女性の『牝』の部分を曝け出させる『牡』の象徴に、吸い寄せられるように舌を伸ばす。
「っ!!!」
裏筋を舐められ、ジークは喉元までせり上がって来た悲鳴を噛み殺した。
そんなジークの様子に相好を崩し、クロノアは一つ深呼吸をすると、
「……ん、ちゅっ」
亀頭の先を、柔らかな唇で銜えた。
「うっ、あぁっ!?」
その包み込まれるような感触に、ジークは溜まらず声を上げる。
視界には、クロノアが――あのクロノアが顔を真っ赤にして、自分のイチモツを口内に納めている姿。
歓喜と興奮がない交ぜになった影響で、ペニスが一層たくましく震え上がった。
「んぐっ、んっ、んうっ……!」
顎が外れそうなほどに大きなペニスに苦心しながら、クロノアは亀頭を舐め上げ、吸引する。
サイズこそ違えど、そこは人妻、フェラチオの経験者だ。
男がどの部分を刺激されると気持ち良いのか、長年の経験で培っている。
「ずずっ、んっ、ちゅっ、んふっ、ずずずずずっ!」
「うくっ、凄ぇ……っく!」
唾液を潤滑油代わりに、少しずつ、亀頭の先からどんどん奥深くまで銜え込んで行く。
だがあまりに巨大すぎるため全部を含むことなど到底無理であり、クロノアはある地点まで到達すると苦しげに眉根を寄せた。
そこを限界と悟ったクロノアは一旦顔を戻す。
ぬらり、と唾液で塗れたペニスが再び姿を現し、ジークはその光景になお一層欲望を燃え上がらせる。
「あむっ、ん、れるっ、んちゅぅ、っ」
じゅぶじゅぶとイヤらしい粘着質な水音を立てながら、クロノアは口を窄めて、顔を上下に振る。
舌が蠢き、亀頭の先や裏筋、カリの部分に絡みつく生暖かな肉の感触が、更にジークを欲情させた。
蕩けてしまったかのように足がガクガク震え、それに反比例するかのようにペニスはより硬度を増す。
「おぁ……っ……」
「ちゅっ、ん、ふぁ、くちゅっ、ずずずっ、んぁっ」
一度唇から離し、見せ付けるように棒を舐め上げ、また先っぽだけを啄ばむように唇だけで含み、吸い上げる。
一連の刺激と、目に映るエロティックな光景に、ジークの射精感が高まっていく。
クロノアはそれに気付くと、再び奥深くまで陰茎を銜え込み、倍以上の速度で上下させた。
「うぅ……そ、そろそろ……」
奥歯を噛み締め、限界ギリギリまで耐えるジーク。
クロノアは了承したように微かに頷き、ラストスパートをかける。
「あ、ぐぅぅ……くっ……だ、駄目だ、射精(で)る!!!」
「んぅ、んんんぅぅ〜〜〜!!!」
叫びと共に、ジークの亀頭がぐぐっと膨らみ、そのまま爆ぜた。
猛烈な勢いで吐き出される欲望の塊が、クロノアの口内に飛び散り、蹂躙する。
顔を顰めたクロノアの、苦しげな呻き。
そして、
「こくっ……んっ、ごくっ……」
(の……飲んでる……!)
クロノアが自分の精液を嚥下する音を聞いて、ジークは驚くのと同時に、言いようの無い喜びを感じた。
このエルフの女性が、自分を受け入れてくる度合い――それがとても大きいものなのだと感じられて。
「んぐっ……げほっ、げほっ……やだ、凄い濃い……」
全部飲み干すと、クロノアはややってペニスから口を離した。
喉に絡み付くのか、目の端に少しだけ涙を浮かべて、苦しそうに咳き込む。
「…………」
今しかない。
ジークは頭を垂れ、無防備に呼吸を整えているクロノアの背後に接近する。
そして頃合を見計らい、クロノアが落ち着いた吐息を漏らすのと同時に両腕を伸ばし、その胸を鷲掴みにした。
「きゃあ!?」
(うおっ、やっぱりデカい……!)
最初のパイズリのときにブラをずらしたままだったため、生の柔らかな感触がジークの掌に伝わる。
「な、何をっ」
「仕方無いことなんだ!」
「くっ、ぅん!?」
両の胸を揉み上げる。
ここ三週間ほど忘れていた、甘く痺れるような感覚に、クロノアは発しようとしていた言葉を途切れさせてしまう。
「同じだよ、クロノアさんと」
「お、同じ、って……あんっ!」
「このままだと、性欲が暴走したクロノアさんに、俺が襲われるかもしれないじゃないか!」
「はぁ!?」
「だ、だから! こうやって……クロノアさんをイかせれば、襲われることもなくなるだろ!」
中指で、ぷっくり膨らんだ乳首をぐりぐりと転がす。
断続的な快感に脳髄を蕩かせながら、クロノアはジークの言葉を反芻する。
「あぁんっ……ひ、ひょっとして、自分だけ気持ち良くなるのが悪いと思って……?」
「……ただの性欲処理だよ」
些か乱暴な手付きで、変幻自在に形を変える豊満な双丘をこねくり回す。
カームの優しい、裏を返せば相手の反応をいちいち気にする臆病な触り方とは真逆の荒々しさ。
だが、それこそクロノアの求めていたものだった。
「ふっ、くぅん、……っん!」
目をとろんとさせ、クロノアは与えられる刺激に呼吸を乱す。
しばらくそうやっていた胸を揉み解す感触を楽しんでいたジークは、やがて右腕を胸から離した。
「あっ、駄目……そっちは」
気付いたクロノアが弱々しく言うが、もう遅い。
伸ばされたジークの右腕は下半身――黒いパンティー越しに、秘所へと触れた。
「濡れてる……」
「っ!!!」
秘裂から漏れ出る愛液でぐっしょり湿ったパンティーの感触が指先に伝わり、ジークがぽそりと呟いた。
隠していた事実を知られてしまい、クロノアの顔が耳まで真っ赤になる。
(気持ち良かったんだ)
だが、それはジークのしてきた行為が間違いではなかったのだと、勇気付ける結果となった。
はっきり言って、童貞のジークは性技など本で得た知識しか持っていない。
しかし、こうしてクロノアが快感を得ている様子を見ると、自信が湧いてくるようだった。
ジークの手がパンティーの内側に滑り込み、指先がぬるぬるとした媚肉に触れる。
瞬間、クロノアがしゃっくりのような、短く甲高い声を上げ、身体をびくりと奮わせた。
(こ、ここが、女性の大事な部分か……)
ごくりと唾を飲み込む。
興奮はしているが、先程口でしてもらったときよりは落ち着いていた。
むしろ、今まで何度も射精させてもらった恩返しをしないとという使命感のほうが大きい。
「指、入れるぞ」
「あんっ! だ、だめ……ひんっ」
人差し指と中指の二本を膣の内側へ突っ込み、爪で傷付けないように注意しながらかき回す。
溢れ出る愛液と、押さえ込もうとしながらも漏れ出てしまうクロノアの嬌声。
内側の柔らかな感触に驚くと同時に、今まで聞いたことのなかったクロノアの喘ぎ声に、ジークも興奮を覚えた。
(クロノアさん、こんな声で乱れるのか……)
もっと、この声を聞きたい。
クロノアさんを気持ち良くさせてあげたい。
それだけに集中して、どろどろの粘液のような膣壁を擦り、空いた左手で胸を揉むことも再開する。
「あんっ、ぁんっ、んっ、ふっ、あっ、あぁっ!」
徐々に早口になりながら、途切れ途切れに溢れ出る快楽の声。
まるで食いちぎろうとしているかのように、差し込んだ二本の指をぐいぐい締め付けるヴァギナ。
洪水のように愛液が滴り落ち、床に水溜りを作り上げる。
「だめ、だめぇ、イっちゃう、私イっちゃうぅ!」
「くぅっ、イけ、イっちまえ!」
「ひぅうん!? ひぁ、あ、あああ、ああああああああああああっ〜〜!!!」
最後の一撃とばかりに、ジークが脳内の知識を頼りに親指でクリトリスを弾いた。
瞬間、一際大きな声を上げ、クロノアは絶頂する。
びくびくと身体を痙攣させ、虚ろな瞳で背後のジークに脱力して寄りかかった。
「イ……ちゃったぁ……」
荒い吐息で、クロノアは呆然と呟く。
その幼い子供のような口調と、胸に抱いた絶頂したばかりの淫靡な肉体のギャップに、ジークは異様な興奮を覚えた。
朝から三回も射精しているペニスが、再び元気を取り戻してクロノアの背に触れる。
無意識にそれを擦り付けながら、ジークはむんむんと色気の漂うクロノアの身体を見下ろし、唾を飲み込む。
ここ二日ばかりの「気持ち良ければいいや」という中途半端な気持ちがすっかり霧散していた。
挿入したい。
以前のように、押し倒して欲望のまま腰を振り、射精をしたいという暗い情欲ではない。
挿入し、お互い抱き合い、共に達したいという願いだった。
「……くっ!」
だが、それは叶えられない。
クロノアが、妻である限り。
彼女が夫を愛していて、裏切るような人間でないことを、知っているから。
放心したままのクロノアを、優しく床に抱き下ろす。
下着だけの姿――しかもブラは完全にずらしてあり、パンティーもぐっしょりと濡れている。
乱れた呼吸と流れ落ちる汗がたまらなく淫らで、男を誘っているとしか思えなかった。
挿入したい。
挿入したい。
挿入したい。
ペニスはギチギチと張り詰め、今か今かと出番を待っている。
気を緩むと、すぐに圧し掛かってしまいそうだ。
「………………くそぉ!」
だけど、出来なかった。
ジークは着ていた服を全て脱ぐと、躊躇無く池に飛び込んだ。
気持ちを落ち着かせるために。
――『気持ちを落ち着かせるために泳ごう』という冷静な思考をする自分が。
この期に及んで、未だに世間体その他諸々を気にする『いい子』なままの自分が、こんなに嫌いになった日は無かった。
探索を終えた部屋の数は七百二十。
この迷宮生活は、いつまで続くのだろう――