にちゃり。
暗い部屋の中に濡れた音が響いた。
くちゅ。
湿った音と共に、妙にくぐもった荒い息が吐き出される。
そう、くぐもった息。
その吐息の主は猿轡を噛まされているのだ――いや、猿轡だけではない。
猿轡をつけられた短髪の少年は、更に目隠しを施され、柱にきつく縛り付けられている。
それも、下半身から一切の衣服が剥ぎ取られた状態で。
僅かな蝋燭の光を浴びて、やや黒味がかった少年の亀頭は今にも破れんばかりに張り詰め、てらてらと淫猥な光を放っている。
「ラファル――変態」
そんな彼の目の前で椅子に座り、少女が冷めた目でラファルと呼ばれた少年を――いや、少年の分身を見下ろしている。
「ん、むーっ!むーっ!」
ラファルが猿轡越しに抗議の声を上げる。
だが少女は軽く聞き流し、降ろした足を近づける。
普段彼女がはいているブーツを脱いだ、素足だ。
良く形の整った足の親指と人差し指の間に陰茎の根元を挟み、強く締め付け、ゆっくりと雁首までしごき上げる。
「ふっ!うっ!!」
再びラファルが息を漏らした。
それに呼応するように、鈴口が涙を溜める。
「――何を言っても、説得力がない」
冷たく呟き、一度足を少年のものから離す。
これまでに散々弄ばれた証か、少年と少女の間に液体の糸が生まれ、一瞬光を反射する。
ラファルが息をついた――その瞬間をつき、少女が親指の腹で少年の尿道口に押し付ける。
意表をつかれてびくりとするラファルを無視し、くちゅくちゅと音を立ててそのまま亀頭全体を足指で撫で回す。
だが、亀頭全体を蹂躙しても泉は尽きず、次から次へと湧き出続ける。
「呆れた」
少女がため息をつき、その攻撃目標を肉棒に切り替える。
再び指で挟み、軽く振ってやる――と、とろりと我慢汁が垂れ落ちる。
少女の魔性の足はそれを逃さず、足の裏全体で少年の陰茎に擦り付けていく。
「っ、くっ、んっ!あ――」
少女の足の動きに合わせ、哀れな少年は悩ましく声を漏らす。
何か出来の良いオモチャのようで、少女は少し意地悪をしたくなった。
踵まで少年に届くように、更に少し身を乗り出す。
これで踵が届いた――少年の陰嚢に。
「ラファル?わかる――?少し体重をかければ……」
言葉と共に、更に足を伸ばし僅かに力を込める。
「男の子じゃ、なくなる」
「んーっ!ふー!!」
ラファルが必死に首を振る。
「嫌そうだけど――下半身は素直」
少女にはわかる。
半ば踏みつけるようにしている少年のそれは、恐怖で縮まる所か早鐘のように血液がその中を流れ続け、僅かに大きくなったようにも思え、明らかに興奮している。
くすり、と笑って。
「大丈夫、冗談」
少年は少女がそのような事をするとは思っていないだろうし、少女もそのような事をするつもりは最初からない。
それでも万が一の恐怖を感じさせる事は、少女の嗜虐心を満足させるものであるし少年の被虐も満足させるものであったのだろう。
「こんなに面白くて――お金のかからないもの……」
呟きながら、足を上下に動かし始める。
僅かに斜めにし、ラファル自身の体と少女の足で挟み込むような形を作り、体重をかけて擦り上げる。
「壊しちゃうわけ、ない」
顔を上気させた少女が、指の股で、土踏まずで、踵で、あらゆる場所を責め立てる。
「ん、んー!っ、はっ、っく、っ……」
散々弄ばれた肉棒は突然の激しい攻めに過敏に反応し、ラファルの口から声にならない声が漏れ出す。
足越しでも分かるくらいにびくりびくりと痙攣し出したそれは、明らかに射精の前兆である。
少年の声も我慢の限界を訴える切なさがあふれ出す――が、少女は冷酷に告げる。
「良いって言うまでイッちゃダメ」
その指示に忠実に従い、腰を少しでも離そうとしたのか、それとも、その指示も聞けないほど興奮が高まり、腰を少女の小さな足に押し付けようとしたのか――縛られ殆ど全身の自由を奪われていた状態では区別がつかなかった。
ただ、いずれにせよ僅かな腰の動きが少年の致命傷になってしまった。
「っ、ーーーーーーーーッ!!!」
少女の足に、どろりと熱い感覚。
びくんびくんと痙攣しながら、ラファルの下半身が大量の白濁液をぶちまける。
「言いつけ……守れなかった」
失望したように少女が呟き、少年の猿轡をほどく。
「罰ゲームその一。ちゃんと綺麗にして」
少年自身の精液に塗れた素足を、少年の口の前にかざす。
ラファルは一瞬逡巡したが――おずおずとその親指を口に含む。
主人と化した奉仕種族と、奉仕者と化した少年の夜は、まだ始まったばかりなのだ。
(了)