ああ、今日もまた、壁越しに嬌声が聞こえる。
己のモノを自らの手で慰めながら、私はあさましく壁に耳を接しさせ、中の様子に思いを馳せる。
「エア、どうだ、気持ちいいか?」
「あんっ、あっ、すごい、ジークのが中で暴れてる……っ」
聞こえるのは、手塩にかけて育てた娘と、同じ冒険者の少年の声だ。
余程彼の性技が凄いのか、娘は私の前で出したことのないあられも無い喘ぎ声を上げる。
「ふふっ、お姉ちゃん、気持ち良さそう。お兄さんも、まだまだ凄い元気なの」
部屋の片隅から、もう一人の娘の声が聞こえた。
確かに、少年は最初に口内奉仕を受けて射精し、先程も次女のほうと一線交えて遠慮なく膣内射精を決めていたというのに、
依然として疲労した様子は無い。
少年の肉竿が、私の一度出したら半日はインターバルが必要なモノと違って萎える素振りが無いであろうことは、
今、少年に組み敷かれているらしい長女の出す甘い声を聞けば、簡単に理解出来ることだ。
「そろそろ、射精る……っ」
「やっ、膣内に熱いのが……あっ、んっ、ああ〜っ」
一際大きな声と共に、急に静かになってしまった。
どうやら、双方果てたようだ。
娘の少年にしか見せないだろう淫蕩な顔を想像し、私は息を荒くする。
「あ……垂れてきちゃう…………」
「凄い量……確実に妊娠しちゃいそうなの」
娘たちのうっとりとした声。
妊娠し、子供を産み育てるということを、ちゃんと分かっているのだろうか。
一時の快楽で流されて済ませられる出来事ではない。
それを分かっていながら――私は、娘たちを注意することが出来ない。
「ほら、次の私の番よ」
来た。
三人目の女の声に、私はごくりと唾を飲み込んだ。
「ち、ちょっと待ってくれ。流石に四回目ともなると回復が遅くて……」
「こんないい女の裸を前にして、ツレないわねえ」
「そう言われても」
「仕方ないわね、それっ」
「うわ、胸で……!」
言葉のやり取りだけで、情景が浮かび上がってくる。
今、少年の陰茎を胸で奉仕しているのは――私の妻だ。
愛し合い、結婚し、子供を二人も作った妻が、あろうことか娘と共に、夫である私ではない男と淫らな行為をしている。
「ほら、大きくなった」
「お母さん、凄いの」
「ふん……それくらい、私だって」
ルーフェリア神殿に届けられた、壺の形状をしたマジックアイテム。
それに妻と娘たち、そして少年が閉じ込められてから、全てがおかしくなった。
救助そのものは三時間ほどで解決した。
しかし、それからというものの、四人の態度は以前と何処か変化しており、そして――
「あんっ、入って、き、たぁ……っ」
気付いたのは数日前。夜半、ふと目が覚めたら、隣のベッドから妻が姿を消していた。
そして、隣のエアの部屋から、声が――
「くっ、どうだ、クロノア?」
「気持ちいい、気持ちいいの、ひっ、んあっ、やっ」
それから連日、妻は娘たちを交え、夫でない男と身体を重ねていた。
このような嬌声、私との行為を妻が発したことは一度もない。
静かな、ゆったりとした愛の営みではない、荒々しい、燃え上がる炎のような情熱的な性交。
妻が完全に満足してないことは、顔を見れば分かっていた。
だが――こうして現実として知らされると、自分が無力だということをまざまざと思い知らされる。
「おっきいのぉ……激しくて、壊れちゃう、壊れ――ひぁぁっ」
今、妻はどんな顔をしているのだろう。
私の見たことない妻の顔が、きっとそこにある。
「クロノア、そろそろ限界……っ」
「きて、膣内に射精してぇっ」
妻のねだる声が聞こえる。
私のものではない種を欲しがる声が。
「イクッ、イッちゃうぅ……あっ、んあぁぁーっ!!!」
「くっ……!」
妻の絶頂と共に、私も果てた。
「あー、あっ……すごい……お腹の中が火傷しそう……」
少年の子種は、私の妻の胎内へ。
そして私の子種は、床を汚した。
……私は何をやっているのだろう。
己の負け犬ぶりに、惨めな気分になる。
屈辱と、憎悪と、敗北感と、痛憤と、絶望と、悲哀と、
……そして何より、このように興奮して快楽を覚えている自分が、とても嫌だった。