「はふぅ……」  
 皇帝手ずからバスローブを羽織らされたリノンは、性的快楽に湯あたりが加わって、全  
身を火照らせて、ぐったりとベッドに横たえさせられた。  
「う……あ……」  
 朦朧としていた意識が、少し回復してきたのか、リノンは半ばぼんやりとしつつもイリ  
ーナを見て、か細く声を出す。  
「す、すみません、イリーナ……さん」  
 リノンは呆けたような表情のまま、どうにかそう言った。  
「気にしなくていいよ」  
 イリーナはそう言うと、リノンの隣、1人が横になるには余りに広すぎるベッドの上に、  
自らも身体を投げ出すようにして横たわった。  
「リノンを見ていると、ファンの街で暮らしていた頃を思い出しますね……」  
 イリーナは身体を横に向け、リノンの方を向いて、微笑みながらそう言った。  
 いくらか熱の収まってきたリノンは、目の焦点をイリーナの顔に合わせた。  
「イリーナ、さん……?」  
「ああ、単純に、懐かしいなって思っただけです。別に、現状が不満……ないわけじゃな  
いけれど、別に不満がない生活なんて、ありはしないでしょう?」  
 どこか心配したようなリノンの表情と言葉に、イリーナはどこか慌てたように訂正する。  
「バラバラになっちゃいましたけど、うん、敵同士になったわけじゃないですし」  
 戦争中、ガルガドとだけは直接刃を交えたが、それすらマイリーの神官戦士である彼と  
の、一種の儀式のようなものでしかなかった。  
「当たり前、ですよ……みんな、イリーナさんのこと、心配してたんですから、えっと…  
…アネット、だって……」  
 リノンはどこか深刻そうな表情をして、そう言った。  
 すると、イリーナはくすくすと苦笑した。  
「ファンドリア貴族のある方に、言われました。『あなたは裏切られるのが怖いように言  
っているけれど、本当はそうじゃない。あなたは裏切ってしまう事を恐れてるのね』って」  
「そう、だったんですか」  
 リノンは、イリーナの言葉を聞いて、目を円くする。旧ファンドリアの貴族社会は腐敗  
しきっていたと聞いている(それは、貴族社会に限った事ではないのだが)。それでも、新  
生ファラリス教団による粛清、オーファン統合後も、有力者として残ったファンドリア貴  
族は存在する。  
 リノンは当然、現在はファンドリア神聖黒騎士団の一員として、その大半と会ったこと  
がある。だが、記憶を探ってみても、誰もがそう言いそうだったし、言わなさそうでもあ  
った。  
 ────まぁ、誰でもいい、事か……  
 
 イリーナに助言を与えてくれた人なら、きっと悪い人じゃないに違いない。リノンはそ  
う考えて、その考えを一旦停止させた。  
「イリーナさん……」  
 ようやく、湯あたりの気だるさの取れてきた身体を動かし、腕を伸ばして、リノンはイ  
リーナに触れる。  
「私、寂しかった、ですよ……私、は……もちろん、皆さんにとっても、多分、そうだと  
思うんですけど……私は、特に……イリーナさん、自身の、そばに、いたかったから……」  
 リノンはイリーナの両頬の辺りを触れつつ、相対的に俯いたような姿勢で途切れ途切れ  
に言う。  
「リノン……ごめんなさい……わたし」  
「だから……」  
 イリーナが謝るように言いかけた途端、リノンはすっ、と、イリーナに身体を寄せ始め  
た。  
「リノン……!」  
「もう、離れません、離しません! あんな思いは、もう、嫌だから! 絶対に!!」  
 リノンはイリーナにぎゅうと抱きつく。  
 イリーナのそれには到底及ばないものの、それでも常人と比較すれば明らかに強い腕力  
で、ぎゅうと身体を密着させる。  
「リノン……あ」  
 勢い、今度はリノンがイリーナに覆いかぶさる形になった。  
 そのまま、リノンはイリーナの唇を奪う。  
「ちゅぅっ……」  
「んちゅ……っ」  
 強く吸い合うキス。  
 唇が一度離れてから、リノンは再びイリーナの唇に自分のそれを重ねる。  
「ちろ、ちろ」  
 リノンは薄く唇を開き、舌を差し出してイリーナの唇をなぞる。イリーナもまた唇を開  
き、自ら吸い付くようにリノンの舌を受け入れた。  
「ちろ……ちゅ……れろ……れろ……っ」  
 リノンは、積極的だが不慣れで荒削りな舌使いで、イリーナの口腔を蹂躙していく。  
「んっ、ふ……んっ……」  
 リノンの舌の動きを阻害しないように、添えるように自分の舌をリノンのそれに絡ませ  
つつ、イリーナはうっとりと目を細めながら、顔をほんのりと上気させていく。  
「んんっ……」  
 ぴくぴくっ、口に意識をとられていたイリーナは、別の所にもたらされた感触に、一瞬  
身体を震わせた。  
 
 リノンの手のひらが、バスローブの懐に侵入し、慎ましやかなイリーナのバストを覆う  
ように触れ、撫で擽る。  
「んちゅ……んんっ……」  
「んちゅ……」  
 一瞬身体を戦慄かせたイリーナだったが、やがてディープキスと身体への愛撫とを同時  
に感じ、甘い声を鼻から抜くように漏らす。  
「ちゅる……ちゅる……」  
 やがて、お互いの唾液を交換するようにしながら、リノンの舌がイリーナの口腔から引  
き抜かれていった。  
「い、イリーナ、さんっ……」  
 リノンは顔を少し離し、イリーナとまっすぐ向き合った。  
 攻めているリノンの方こそ、顔を真っ赤にして、表情が緊張している。だが、それでも  
我慢しきれないというように、イリーナのバストを覆う手にじっとりと力をかけ、揉みし  
だいていく。  
 広くはないが発達したイリーナの胸筋。だが、熱いその上には、豊かでこそないものの  
確実に、柔らかな乳房がそこに覆いかぶさり、女性らしいラインを描いていた。  
「んっ……はぁ……」  
 リノンの愛撫は些か力が入りすぎていたが、それでも、イリーナは悩ましげな声と共に  
息を吐き出す。  
「イリーナさん……好きです」  
 リノンはそう言って、もう一度イリーナに軽くキスをする。  
 キスをしながら、リノンの右手が指先でつつつ、とイリーナの腹部をくすぐりつつ、そ  
の下腹部に至る。  
「んっ、んんっ……」  
 リノンの指が、イリーナの秘所に浅く侵入してくる。くちゅり、と水音がした。  
 イリーナのソコは、粘膜は色の鮮やかさを失い褪色していたが、形そのものは、若干ラ  
ヴィアの型崩れは認められるものの目立つほどでもなく、整った姿をしていた。  
 年齢にしては幼い容姿に合った、厚ぼったい恥丘が、興奮で身体に帯びた熱の為に、僅  
かに緩んでいる。  
「イリーナさん……気持ち、いいんですよね」  
 リノンは指を上下に滑らせるようにしてイリーナの粘膜を愛撫しつつ、自分の方が切な  
げな表情をして、イリーナの問いかける。  
「うん……気持ちいいよ……リノンの指、熱い……」  
 平熱が違うのか、それとも浴室での行為が原因か、イリーナにはリノンの指が自分のそ  
れより高温に感じられた。  
「ん、んん……っ」  
 
 イリーナは、リノンの愛撫にうっとりとした表情で顔を上気させつつ、時折切なげに身  
を捩っていたが、  
「ひゃっ!?」  
 と、短い悲鳴を上げて、びくん、と身体を跳ねさせる。  
 リノンの指が、イリーナのクリトリスを探り上げ、指先でくにくにと転がし始めた。  
「リノ……ン……っ」  
「痛かった、ですか?」  
 イリーナの極端な反応に、リノンは少し驚いたような表情になって、一旦指を引いてし  
まう。  
「あ……大丈夫、ですよ」  
 リノンの反応に、イリーナは潤んだ瞳で息を若干荒くしつつ、微笑んでそう答える。そ  
の瞳は依然、濁った色のままだったが。  
「もっと……していいです」  
「はい……」  
 リノンはイリーナの答えを聞くと、もう一度キスをしつつ、イリーナの秘所に指を這わ  
せる。  
 リノンの指は、今度は、イリーナの秘裂の方へと侵入していった。膣の浅いところまで  
指は達し、そこで円を描くようにイリーナの粘膜を擦り上げ、刺激する。  
「あ、ふぅ……リノン……気持ち、いい……です……」  
 リノンのそれは先ほどのイリーナに比べると指先にたどたどしさはあるが、それでもイ  
リーナの外性器はリノンの指からの刺激に快楽を感じ、ひくっ、ひくっ、と締め付けるよ  
うにひくつきしながら、ダラダラと愛液を溢れさせてくる。  
 いつしか、リノンの手はその甲の方に至るまで、イリーナの愛液でテラテラと輝いてい  
た。  
「はぁ……はぁ……ぁ……はぁっ……はぁ……」  
 イリーナは時折身体を硬直させるようにぴんと伸ばしながら、リノンの愛撫に悶えてい  
く。  
「イリーナさん……イリーナさん……っ!」  
 リノンはその名前を繰り返し呼びながら、半ば無意識に指の動きを激しくしていく。  
 指を動かしつつ、リノン自身も、腰元をもじもじと動かしていく。  
「…………」  
 不意に、イリーナを攻めていたリノンの指が止まる。ぐちゅり、と水音を立てて、イリ  
ーナの股間から、リノンの指が離れた。  
「リノン……?」  
 熱に浮かされたかのように、イリーナは紅い顔でぼんやりとしつつも、怪訝そうな視線  
を、リノンに向ける。  
 
「こう、して……」  
 リノンはごくり、と喉を鳴らしたかと思うと、突然、イリーナの左脚を持ち上げるよう  
にして、股を大きく開かせる。  
「リノン……?」  
 イリーナが再度問いかけるが、リノンは、それには答えず、もう我慢が出来ない、と言  
ったように、イリーナの細くも締まった脚に、自分のそれを絡ませていく。  
 ぐちゅっ  
「あっ……」  
「ふ、ふぁぁっ」  
 交錯した2人の脚の中央で、粘膜が淫靡なキスを交わした。  
「り、リノン、リノン……」  
「あ、イリーナさん、イリーナさん……っ!」  
 甘く悶えつつも、同時に困惑した声を出すイリーナに対して、リノンは恍惚とした様子  
で、腰を突き出し、イリーナの秘所の粘膜に、自分のそれを押し付けていく。  
 充血した花弁同士が絡み合い、ぐちゅぐちゅと淫らな水音を立てる。  
「イリーナさん、わ、たし、あっ、ふぁぁっ……」  
 リノンは腰を揺すって、自分の粘膜でイリーナのそれを擦り上げる行為をしつつ、自分  
の薄いバストを左手で乱暴に揉みしだき始めた。  
「リノンっ、私、もう、ダメっ……ですっ……」  
 イリーナは、リノンの秘所の粘膜が自分のそれに吸い付いてくる快感に身を捩って悶え  
ながらも、それによってこみ上げて繰る熱の固まりを感じて、堪りかねたように声を上げ  
る。  
「イリーナさん、私、私っ、もっ……」  
 直接刺激してなかったとは言え、自らの手で悶えるイリーナの痴態を目にしていたリノ  
ンもまた、身体は充分過ぎる程の昂ぶりを覚えていた。  
「ふぁっ!」  
「あ、ひゃぁぅぅっ!」  
 リノンがぎゅう、と、イリーナの脚に抱きつく。お互いの身体が、背を弓なりに仰け反  
らせるようにしつつ、激しく跳ねる。  
 お互いの秘所からひときわ強く淫液が吹きだし、2人の結合部をぐちょぐちょにした。  
「はぁ……はぁ……はぁぁ……」  
 リノンは荒い息をしながら、脱力したようにイリーナの脚を離し、その上にのしかから  
ないよう横に体をひねりながら、ベッドの上に倒れこんだ。  
「はぁ……はぁ……」  
 対するイリーナは、性的快楽による熱を体外に吐き出すように息をしつつも、リノンに  
比べるとまだ余裕を残していように見える。  
 
「んっ」  
 ぐったりと倒れたリノンを、今度はイリーナの方からその両肩を掴んで抱き寄せ、軽く  
キスをした。  
「まだ……楽しませてもらいますよ、リノン……」  
 この時だけは、以前には見られなかった妖艶な薄い微笑で、リノンの耳元に囁いた。  
「あ……はい……」  
 リノンは、身体の限界を感じつつも、逆らう意図すら芽生えずに、そう答えた。  
 

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