記録的な猛暑は留まることを知らなかった。  
突然にわか雨が降り、余計に蒸し暑さを増したからだ。  
近隣住人が天の恵みであるべき雨を恨み、雨雲を蹴散らした太陽に向かって罵声を上げているがそれも束の間。  
更なる熱気に誰もが家に引き篭もる中、湖の中で立ち尽くす男女がいた。  
 
何気ないお遊びから身体を重ねたジークとエア。  
ことを終えてから、一部始終をルーに見られていたと気付いた時には遅く。  
湖の水が一瞬で上空に吹き上がり、周囲に霧雨のように振りそそいだ。  
湖の水が半減し、周囲が湿度と温度の増す中、二人は今までに感じたことが無いほどの寒気に凍り付いていた。  
 
ジークが嫁と言って憚らないルー。  
彼女がジークのことで嫉妬するのは珍しいことではない。  
だが今回は状況が違った。  
ジークは普段、ルー以外に一切手を出さないよう自制している。  
それゆえ、ルーはジークが他の女に手を出すことなどないと信じきっていた。  
にも関わらず、彼女が木陰で涼んでいる湖畔へ来てエアと交わったのだ。  
 
ジークとエアが硬直してどう反応してよいか困っていると、ルーはその大きな瞳に涙を溜めて…泣き出した。  
声も出さず、顔もそらさず、ただ涙だけがボロボロとこぼれ続けた。  
それを見た瞬間、ジークは駆け出していた。  
水嵩の減った湖を全力で掻き分けながら。  
そして湖を出てルーの前まで来ると彼女を抱きしめた。  
ごめん、ルー。  
言葉はそれだけだった。  
彼には言い訳をするような甲斐性は無く、ただただ強く彼女を抱きしめた。  
それに対し彼女は漸く声を出してわんわんと泣き出した。  
彼は泣き続ける彼女の唇を自らの口で塞ぐ。  
すると彼女も彼の唇を啄ばみ始める。  
雛鳥が親から餌を貰う時のように、不器用に、けれど積極的に。  
ジークがその唇を舐めると、ルーはその舌を口に含む。  
更に二人の口の中で二人の舌が絡み合い、行ったり来たりを繰り返す。  
何度目かの往復の最中、ジークの手はルーの身体を弄りだした。  
恍惚としていたルーは一瞬身体を固くするが、直ぐにその身を委ねる。  
抱きしめていた手は肩から背中、脇、腰へとなだらかな曲線を包み込むように愛撫する。  
小柄な骨格を包む豊満ではないけれど柔らかな肉付きがしなやかに形を歪める。  
その手は遂に、小さな割れ目に届く。  
まだ茂みも無く、両の太腿もぴったり重なるほどの厚みもない、未成熟な秘境。  
そこに剣を持つことに慣れた硬い指先が触れる。  
 
――っ!  
その刺激にルーは一際大きな反応を返す。  
けれどジークは手を止めず、彼女の口を塞いだままゆっくりと撫でる。  
愛しい人の行為を見てか、それまでの愛撫か。  
既に十分に濡れていた。  
ルー。  
ジークは唇を重ねたまま小さな声で呼びかけた。  
ルーもその意図を理解し、僅かに首を縦に振った。  
それを見て、ジークは自分のモノを彼女の入り口に宛がう。  
彼女の緊張が伝わってくる。  
ジークはルーの舌を絡め、唇を貪り、背中を抱き、入れた。  
―――っ!!  
少し入れただけで彼女の目は固く閉じられて大粒の涙が溢れた。  
先ほどのものとは違う涙が。  
ジークが唇を離して声をかけようとすると、ルーは目を開いて見つめ返してきた。  
大丈夫。  
その目はそう告げていた。  
彼女の気持ちを無碍にすることも、このまま我慢して止めることもできず、ゆっくりと挿入を再開した。  
彼女の目はまた固く閉じられる。  
少しずつ、少しずつ。  
全部が入り挿入が止まると、ルーは涙を溜めた目を開き、微笑んだ。  
続けて。  
ジークはルーを気遣いながらゆっくりと腰を動かし始める。  
息を吐き出すだけの言葉にならない空気が漏れる。  
その唇に再び唇を重ねると、ルーの方から積極的に舌を入れ、絡めてきた。  
激しく絡み合う舌と緩やかに律動する腰の動きが自然に同調する。  
やがてルーの頬が紅潮し、舌を絡める余裕もなくなってきた。  
代わりにその両手がジークの背中に、その両足が腰に力なく絡まっている。  
大切な人との行為が狭いだけの、愛しい人との行為が痛いだけの初めてを絶頂に導いていく。  
限界を感じたジークが強く、深い一突きをして一番奥にその熱い気持ちを注ぎ込んだ。  
今までに無い量、今までに無い達成感。  
それはルーにとっても同じことであり、膣内に受け止めた愛が全身を駆け巡るような錯覚を覚えた。  
 
行為の後、眠ってしまったルーに腕枕をしながら、もう片手でそっとその頬を撫でる。  
やっぱり自分はルーが好きなんだ。  
誰よりも何よりも。  
もう悲しませるようなことはしないと、ジークは心に誓った。  
 
 
湖の中で忘れ去られたエアが呆然と立ち尽くす中、岸辺の樹上で一人のルーンフォークが感動に咽んでいた。  
 
 
 

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