フェイダン地方一帯を襲う記録的猛暑は、今だ収まる気配を見せない。  
それでもまだ、森と湖に抱かれたルーフェリアは他国と比べて大分過ごし易いそうだ。  
事実、そうなのだろう。  
風の噂では、カインガラやアイヤールでは、暑さに中てられて命を落とす者が出ない日はないほどで、  
その噂を聞いたジークが、身体の弱い姉の身を案じる言葉を漏らしたことを、ニゲラはきっちりと覚えている。  
……チクリと胸を刺す痛みと共に。  
それが、羨望だったのか、それとも嫉妬だったのかは、ニゲラ自身にもよく分からない。  
 
急の雨を避けて逃げ込んだ酒場の中は、息苦しいほどの熱気が籠っていた。  
恐らくは、皆、涼を求めて家から酒場へと繰り出してきたのだろう。  
部屋を広く取ってあり、天井が高く、その上、窓が大きい酒場は、常ならば涼やかな風の通り過ぎる憩いの場であるはずだ。  
だが、テーブルとカウンターが全て埋まり、肩と肩、肘と肘が触れ合うほどに込み合っていては話は別で、  
求める涼は得られず、かといって灼熱の太陽の下、家に帰る気にもなれず、だらだらと杯を重ねた酔っ払いの放つ体温は、  
総身の汗を絞り出すような太陽の熱の責め苦とはまた違う、粘つくような厭らしさがあった。  
酒場の外では、ざあざあと雨が降っている。  
酔っ払いたちは、ぼんやりと雨に霞む街並みを眺めている。  
きっと、思うところは誰もが同じなはずだ。  
 
“これで少しは、涼しくなるかな”  
 
そして、ジークと連れだって酒場に逃げ込んだニゲラは、途方に暮れていた。  
元はと言えば、戦闘訓練を口実に、昨日からやけに険悪な雰囲気漂う水晶の欠片亭から二人して逃げ出してきたのが発端で、  
朝だというのに張りきる太陽の下をだらだらと歩き、修練場代わりに使っている郊外の原っぱでは、  
結局何をする気にもなれず、ぐだぐだした挙句、ジークの腹が減ったという一言で、来た道をとろけそうな足取りで帰る途中だった。  
急激に晴天を覆いつくした黒雲から、ポツポツと雨が落ちてきた時は、むしろ、熱を帯びた身体を冷やしてくれると喜んだくらいだった。  
だが、ぽつぽつという途切れがちな雨音が、さぁぁぁという連続した音楽に代わり、やがて雨粒が大地を叩く音が耳を聾するほどとなると、  
悠長に喜んでなどいられない。  
天水の向こうに見え隠れする建物が酒場兼宿屋である事に気づいたジークが、ニゲラの腕を掴んで駆け込み、そして、今に至っている。  
 
緩やかに波打つ毛先から、ポタポタと水が滴り落ちる。  
濡れたクロースが、背中にべったりと張りつく感触が気持ち悪い。  
戦闘訓練だからと横着せずに、ドラゴンスケイルを上に着てくれば良かったと、ニゲラは思う。  
 
「ジークさん、どうしますかぁ……?」  
 
その声には、不安と葛藤がないまぜになっている。  
雨宿りはしたい。切実にしたい。  
今ならばまだ下着は無事だし。  
けれども、ここで雨宿りをするのは、絶対に嫌だ。  
 
ジークの決断は早かった。  
突然、ニゲラの手を取る。  
ニゲラの鼓動が跳ねあがる。繋いだ掌が濡れているのは、ついさっきまで雨に打たれていた所為だけではない。  
ジークは、一瞬、戸惑ったよう掌を見つめるが、  
次の瞬間には、何事もなかったようにそのままスルスルと酔っ払いの間を通り抜け、カウンターでジョッキを洗う親父に声をかける。  
 
「おっさん、雨宿りするから、雨止むまで部屋貸してくれ。  
 一晩分の宿代は払うからさ。ああ、あと、昼飯」  
 
ジークは、空いた手で懐を探って財布を取り出すと、数枚のコインをカウンターに置く。  
宿の親父は、黙って背を向けると、壁にかかった鍵を取り、ジークに放り投げる。  
 
「二階の角部屋が空いてる。窓は開けとけよ。死ぬぞ」  
 
最後の言葉は、冗談でも脅しでもなく、単なる事実だ。  
ジークは鍵を受け取ると、ニゲラの手を握ったまま、階段を昇る。  
 
「えっ? えっ? ちょ、ちょっとジークさん、ニゲラはまずいと思いますよぅ……」  
 
ようやく事態を把握したニゲラが、弱々しい声で抗議の声をあげるが、ジークは取り合わない。  
いつものジークなら、何が? と問い返すところなのに。  
繋いだ掌で、二人の体温が混ざり合う。  
それは、酒場の纏わりつくような熱気とも、照りつける太陽の日差しとも違う。  
よく分からないその熱のせいで、ニゲラはそれ以上、何も言えなくなる。  
ジークも何も言わずに歩き、ただずっとニゲラの手を離さなかった。  
俯いたニゲラの後ろで、ドアが閉まる。  
 
部屋は、意外に良い部屋だった。  
黙ったまま、二人はタオルで濡れた身体を拭い、言葉少なに部屋に運ばれた昼食を平らげる。  
雨は、まだ止まない。  
 
天の底が抜けたような雨も、時間をかけてじりじりと焼かれ続けた大地の熱を冷ます事は叶わず、  
部屋はいつまで経っても一向に涼しくならない。  
ベッドに座って、何をするでもなくぼんやりとニゲラは窓の外の雨を眺めている。  
ジークは、そんなニゲラを眺めている。  
ニゲラの頬を汗がつたい、顎から胸元に落ちて、いつもならば飾り布が隠している豊かな谷間に滑り込んでいく。  
濡れたままのクロースが身体に張りついて、普段、あまり意識する事のないボディラインがくっきりと浮かび上がっている。  
ミニスカートから伸びる肉付きの良い脚――あまりにも暑いので、タイツを履いていない――も、  
うっすらと汗ばんでいるようだ。  
 
勿論、ニゲラは、そんなジークの視線に気づいている。  
気づいているが、気がついていないふりをしている。  
その視線を見つめ返してしまったら、何かが永遠に変わってしまいそうだから。  
だから、意識してジークの眼差しを無視した。  
だから、意識してジークのいる方に注意を向けなかった。  
だから、ジークがいつの間にか自分の隣に座っている事にも、気づかなかった。  
 
だけど、ジークの掌がニゲラの掌に重なった時、ニゲラは決して驚かなかった。  
あるいは、こうなる事を心のどこかで予想し、期待していたのかもしれない。  
最初、店に飛び込んだ時、確かに雨宿りをするだけのつもりだった。  
ジークが部屋を借りようと思いついた時も、そうだったはずだ。  
だから、二人の間に流れる空気が変わってしまったのは、掌を重ねてから、ドアを閉めるまでのどこか途中で、  
ニゲラのあの言葉は、止めようとしたのではなく、ジークの背を押すためのものであったのだろう。  
 
「……ダメ」  
 
言葉だけの制止が、ジークの唇で塞がれる。  
舌が唇を割り入り、貪るようにニゲラの内側を味わう。  
部屋の外を降る雨の音に、湿った水音が混じり合う。  
ジークの掌が、クロースの内側に潜り込み、濡れて滑らかな背を撫で上げ、下着の結び目を解いていく。  
体重が掛けられ、抱きしめられたまま、ニゲラはベッドに押し倒される。  
今や、ニゲラも夢中で舌を絡めあい、互いの唾液を味わう。  
湿った水音の合間に、隠しきれない喘ぎ声が混じる。  
いつまでそうしていただろうか。ゆっくりと、重なり合った影が離れる。  
 
「まだ、ダメか?」  
 
ジークの眼差しに、ニゲラは射すくめられる。  
きっと、首を横に振れば、ジークはこれ以上何もしないだろう。  
ぞんざいな彼の事だから、例え拒んでも、きっと明日には何事もなかったように接してくるはずだ。  
けれど、けれども……。  
 
ニゲラは、答える代りに、横を向いて瞳を閉じる。  
どちらとも取れる回答は、ジークに責任を押し付けるための、ある種の逃避だったのかもしれない。  
再び二人の影が重なり合う。  
横を向いたまま、ニゲラがぽつりと呟く。  
 
「……優しくしてください」  
 
 
濡れたクロースが下着ごと捲りあげられると、引き締まったウェストと、ツンと突き出た乳房が露わになる。  
浅い呼吸に震える豊かな乳房の桃色の頂点を、ジークは焦らすようにゆっくりと周りから舐め上げる。  
肌色の濃い乳輪を舌先でなぞりつつ、張りのある乳房を十分に味わった後、堅く勃ちあがった可愛らしい先端を口に含んだ。  
舌でなぶり、甘く噛む。  
 
「んんっ……やぁ…ああっ……ふぁっ」  
 
ニゲラは、初めて味わう感覚に身もだえする。  
洩れた声の甘さと大きさに、驚いて口を噤んだ。  
思い出すのは、雨の風景。まだ、窓が開いている。  
 
「ダメですよぅ、ジークさん、窓……」  
 
ジークの掌は、ニゲラの平らな腹をゆっくりと楽しむように滑り落ちていく。  
触られた部分が、線を引くように熱を帯びる。  
 
「大丈夫だって。誰も聞いてねーよ」  
 
力強い断言。  
だが、同時に根拠が全くない事を、ニゲラは知っている。  
ニゲラの知っているジークは、そういう男だ。  
そして、そういう時は何を言っても無駄だ、とも。  
 
「んっ……」  
 
臍の周りを撫でまわす掌の感覚に耐えるように、腹筋に力を入れる。  
皮膚の下の筋肉の陰影が浮かび上がる。  
ふと、身体を起こしたジークが、ニゲラの肢体をマジマジと見つめる。  
用いるために鍛え上げられた筋肉は、不格好に盛り上がるのではなく、皮膚の下で水が波打つように、滑らかな繋がりを感じさせる。  
その視線に気づいたニゲラが、恥ずかしそうに身じろぎする。  
実際、こんな風に裸体を見られるのは、初めての経験だった。  
捲りあげられたクロースが両腕に引っ掛かってなければ、胸を隠していただろう。  
 
「な、なんですかぁ、ジークさん! 恥ずかしいですよぅ」  
 
恥ずかしがるニゲラに、臆面もなくジークは告げる。  
 
「いや、綺麗な身体だなって思って」  
 
「なぁっ!?」  
 
今度こそ羞恥でニゲラの身体が真っ赤に染まった。  
 
「いやほら、この辺とか……」  
 
つぅっと、浮かび上がる陰影をジークの人差し指がなぞる。  
反応は劇的だった。  
 
「やぁっ! だめぇっ、それ、だめっ!」  
 
自分の声の大きさに、ニゲラ自身がびっくりする。  
掌の大きさに拡がっていた熱が、指先の一点に集中したようだった。  
ニゲラの身体が、本人の意志とは関係なく、大きく震える。  
皮膚の下に刻みつけられた熱が、身体の真ん中を通して、腰骨に貯めこまれていくのを、ニゲラは敏感に感じる。  
 
“結局、下着、ダメになっちゃったぁ……”  
 
ジークの視線に媚態を晒していることを自覚しながら、ニゲラの冷静な部分がそんな事を考える。  
 
「もしかして、さ」  
 
ジークの底意地の悪い声。  
 
「ニゲラって、見られながら触られると、感じる?」  
 
「そ、そんなことはぁ……ないですよぅ」  
 
否定の声は、弱々しい。  
 
「じゃあ、確かめてみるか」  
 
「えっ?」  
 
ジークは捲りあげられたクロースで、手早くニゲラの両腕を拘束する。  
濡れた布地が、ニゲラの手首に食い込んだ。  
 
「ジークさん……これ、ヤだぁ……」  
 
「大丈夫。痛い事はしないから」  
 
ニゲラの腰骨のあたりに、すとんと腰を下ろす。  
重みで痛みを感じないようにしつつ、しかし、それでいてニゲラの動きを完全に制している。  
ジークの指が頬を撫でる。  
 
「ひゃっ!」  
 
「おー、ニゲラのほっぺた柔らかいなー」  
 
指が首筋を伝い、鎖骨に触れ、ニゲラが嬌声を上げる度に震える柔らかな双丘の谷間を辿り、艶めかしい曲線を描くわき腹を這い上がり、  
滑らかな腋を経由して、二の腕へと、その先へと進む。  
視線に晒され、ジークの指が動くたびに、ニゲラは面白いように反応する。  
腰をはね上げようとし、乳首は堅く尖り、汗が玉になって滲む。  
両腕でジークの指先を導けないもどかしさが、ニゲラの官能を加速させる。  
幾度も幾度も達し、ニゲラの浅ましい欲望の中心は、とっくの昔にジークを迎え入れることを望んでいるのに、  
ジークはそこに触れようともしない。  
窓が開け放たれている事など忘れ、甘い声で喘ぐ、許しを懇願する。  
ぐっしょりと濡れた下着から蜜が滴り、ミニスカートから投げ出された太ももを濡らし、シーツを汚した。  
 
今、ジークの身体の下で、さんざん弄ばれたニゲラは、体液にまみれてぐったりと脱力している。  
視線は虚ろで、目尻からこめかみにかけて涙の伝い落ちた跡が残り、唇の端からは唾液が零れる。  
 
「じーくさんの、いひわるぅ……」  
 
ろれつも回っていない。  
 
「悪い悪い」  
 
全く悪びれない口調で謝るジークは、身体をかがめて、涙を、唾液を舐めとっていく。  
身体に浮いた汗の玉を、一つ一つ吸い取る。  
 
「あっ、ふあ……ああ…や、きたらいからぁ……」  
 
「汚くなんかないって」  
 
撫でるような舌の動きに、ニゲラの肢体は敏感に反応してしまう。快楽を掻き立てられてしまう。  
ジークが身体を起こす。  
その動きに、ニゲラは胡乱な頭でようやく覚悟していた瞬間が来る事を悟った。  
両腕を拘束していたクロースを解く、腰を浮かして、身体の位置を変える。  
ジークの指が、ニゲラを翻弄した指先が、下穿きの中に滑り込む。  
慎ましやかな翳りをかき分け、くちゅりという淫らに湿った音と共に、硬く尖った淫芯を撫で上げる。  
痛いほどに敏感な中心を刺激されたニゲラの身体が跳ねる。  
今だ誰にも晒した事のない秘裂は、湧き出る愛液に塗れ、膣口は何かを待ち構えるように、静かに収縮を繰り返している。  
 
「パンツ、結局濡らしちゃったな。  
 悪い、先脱がしておけばよかった」  
 
片手の指先でニゲラの小陰唇をなぞりながら、器用にジークはズボンと下着を脱ぎすてる。  
露わになった肉棒が猛々しくそり返るのを見て、ニゲラは息をのんだ。  
するりと下穿きがずり下ろされる。ニゲラはその瞬間に備えて、眼をかたく瞑り、息を止める。  
ジークの両の掌が、ニゲラの頬に添えられる。  
驚いて、思わず目を開ける。  
 
「あんま、我慢しない方が良いぞ。  
 力が入っちゃって、辛いから」  
 
随分、手慣れてるんだな、というのが、正直な印象だった。  
そんな考えが脳裏に刻まれるよりも早く、先端がニゲラの秘裂に擦りつけられる。  
クリトリスが突かれて、ニゲラの口から甘い喘ぎが漏れる。  
ゆっくりと肉棒が膣口を分け入り、柔らかく濡れたそこへと進入していく。  
それまで散々ほぐされていた所為か、挿入は覚悟していたほどの痛みをもたらさなかった。  
 
「んんっ……あっ、ああぁっ…はぁ……」  
 
「痛いか、ニゲラ?」  
 
思わず声を漏らしたニゲラを気遣ってか、ジークが腰の動きを止める。  
ニゲラは、首を横に振って否定する。  
 
「だ、大丈夫ですぅ……あっ」  
 
挿入が再開される。  
ぷつっという感覚と共に、刺すような痛みが股の間に弾けた。  
ニゲラは、ジークにぎゅうとしがみつく。  
ゆっくりと、しかし、確実に肉棒はニゲラの中を進んでいく。  
その間にも、ジークはニゲラの首筋にキスをし、乳房を持ち上げるように揉み解す。  
挿入の微かな痛みは、快楽の波に押し流されていく。  
そして、ジークはニゲラの最奥へとたどり着いた。  
 
「はぁ、あんっ……ジークさんで、一杯……」  
 
ニゲラはどこか幸せそうに、下腹部に手を置く。  
その奥では、暖かく柔らかな膣肉が、きゅうきゅうとジークの肉棒を締め付けている。  
ニゲラに包まれて、肉棒がゆっくりと前後運動をはじめる。  
暖かく柔らかな肉壺が、徐々に湿り気を帯び、注挿の速度が速く、滑らかになる。  
気が付けばジークも全裸になり、二人は互いの身体を擦りつけるように絡み合い、互いの汗にまみれて、獣のように睦みあう。  
やがて二人の掌が重なり、一つの頂点に達する。  
一瞬の緊張の後、脱力したジークの身体がニゲラから離れる。  
ジークの欲望の形を覚えこんだ膣口は濡れて開いたままで、まだ物欲しげに収縮するそこから、ドロリと白濁した液体が溢れた。  
 
部屋の中には、荒い呼吸の音と、雨の音だけが響いている。  
掌は、まだ離れない。  
雨は、まだ止まない。  
どちらともなく、二つの影が再び重なる。  
 
雨は、まだ止まない。  
きっと明日の朝まで。  
その方が、今の二人には都合が良かった。  
 
 

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