「ふぅ……」
波乱の一日が終わり、ようやく家に帰ってきたベルカナは、ベッドに突っ伏した。
(まったく……泥棒扱いされたうえに、犯人捜しまで……散々な一日でしたわ)
ぐったり……とても疲れた気分。
(指輪も貰えませんでしたし……まったく、ケチな方々)
大好きなふかふかの布団に寝転がってみても、なんだか腹の虫が治まらない。
(もう……。こんな時は、仕方ありませんね……)
ゆっくりと身を起こし、ベッドの上に膝立ちになる。姿見に映る自分の姿を眺めながら、スカートの
裾に手をかけると、そろそろとたくし上げる。
少しずつ、少しずつ……焦らすように持ち上がっていったスカートが、白磁のような太腿の付け根を
露わにすると、ベルカナは小さく淫らな笑みを浮かべた。
(クレスポ……と言ったかしら。あの好色そうな盗賊、私がスカートの下に何も穿いてないことを
知ったら、どんな顔をしたでしょうね)
そう、彼女は下着を身に付けていなかった。鏡に映し出されたのは、清楚な服を着た娘がスカートを
まくり上げる、あられもない姿。そして、さらけだした股間の、まだ薄い栗色の茂みと……秘やかに
息づく割れ目。人に見せてはいけない大事な場所は、一片の布地にも覆われていなかった。
ベルカナはうっとりと、自分自身の恥ずかしい姿に見入る。鏡の中の少女が、己の性器に熱い視線を
注ぐのを感じ、陶然となった。
(いつからだったでしょうね……。こんな、いけない遊びに耽るようになったのは……)
――幼い頃から賢者の学院に通い、大人達に混じって勉強してきた。子供だからといって、負けたく
なかった。その重圧が、誇りが、歪んだ開放感を求めたのだろう。
街中で、学院で。周りに人がいるというのにショーツも穿かず、スカートの下では割れ目を晒して。
澄ました顔で、何も身に付けていないような羞恥に酔いしれる自分。
もし見つかったら。見られてしまったら。そう思えば思うほど、股が疼き、頭が痺れる。
(人気の無い路地で、スカートを下ろしてみた時は……足元まで濡らしてしまいましたわね)
過去の露出を思い起こし、性欲を昂ぶらせるベルカナ。次第に息が荒くなり、たまりかねたように
上気した顔を枕に埋めた。
突き出された腰の、股の間に伸びた白く優美な指が、柔らかいスカートの上から生殖器を押し包む。
「ん……ん……ふ……ぅ……く……っ」
しゅっ、しゅっ……。もどかしげに敏感な部分をさする音が響く。少女は切なげに枕へ顔を押し付け、
目の端に涙すら浮かべて身悶えする。
いつしか、性器を刺激するスカートの裏地はぬめり、布越しに愛撫する指まで濡らし始めた。
(い、いけませんわ……服、汚れて……)
荒い息をついて、ふたたび上体を起こす。姿見に目をやると、そこには頬を紅潮させ、スカートに
恥ずかしい染みを作った娘が、物欲しげな目でこちらを見ていた。
(なんて、淫らな顔……。……股に……あんなに……はしたなく、染みて……)
劣情のしるしで衣服を汚した己の姿に、ベルカナの理性は溶け去った。普段は怜悧な口元から、涎が
垂れて胸元に滴り落ちる。
淫欲に支配された少女は、スカートの裾を口にくわえると、右手を股間に差し入れた。
胸に添えられた左の掌は、柔らかいふくらみを揉みしだく。
「んっ、んっ、ん……んーっ!……ふ……く……んーっ、んっ、ん……っ!」
少女は切ない鼻声を漏らし、夢中で躰を愛撫する。股間を剥き出しにして自慰に耽る少女の姿が、
鏡の中で踊る。ベルカナは自らの惨めな痴態を、潤んだ瞳で見つめた。
(ああ、鏡の向こうで……女の子が、私を……この、あさましい姿を……見ていますの……っ)
オナニーを見られる快感に、クリトリスが疼く。細い指が、どうしようもなく勃起する陰核を心地よく
転がし、こすり、そして強く捻り上げた。
「ひ……っ!……あ……あ……いいっ!い……っ!」
頭を貫くような強い刺激に、ベルカナは嬌声を上げる。唾液にまみれたスカートが口から離れ、はらり
と落ちた。たまらず仰向けに倒れ込んだ少女は、大きく開いた股をまさぐり続ける。
「あっ、あっ、あっ、あ……ひッ!……く……あんっ、あんっ、あ……んっ!」
人前での冷静な物言いからは考えられないような、発情するベルカナの甘い声。
ブラウスの布地を突き上げる程に、固く尖る乳首。愛液を滴らせる秘唇は、ひくひくと震える。官能を
欲しがる肢体を少しでも慰めようと、乳房を、股間を、少女は狂おしく揉みたてた。
(だめ……!もう……っ)
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ……速く、激しく、秘芯に指が突き立てられる。卑猥な水音と、
切迫した喘ぎ声が混じり合っていく。汗に濡れた額に、ほつれ毛が張りつく。そして。
(い、く……っ!)
びくん!と頭を仰け反らせたベルカナは、ひときわ長い嬌声を発して、何度も躰をわななかせた。
「はっ、はっ、はっ……はーっ、はーっ、はーっ……」
満足げな吐息をついて、恍惚とした顔で快楽の余韻に浸る。弛緩した手足をベッドに投げ出して、
少女は脱力した。
……火照った性器を、夜風が冷ましていく。寝室にこもった女の匂いが薄れる。それにつれて、
ガーネットのような美しい瞳に、理性の光が戻ってきた。その眼差しに、どこか悲しげな色を
たたえた娘は、のろのろと体を起こす。
(……私、また……)
――また、してしまった。股間をハンカチで丁寧に拭いつつ、空しさとともに後悔する。ひとときの
興奮が去ると、いつも思う。もうやめよう、と。
でも、きっと、駄目。乱れた衣服を整え、ショーツを身に付けながら、諦めにも似た確信を覚える。
また、私は股間の疼きに従ってしまう。あの熱い欲望に、抗えるはずがない。
ベルカナは溜息をつきながら、可愛らしいリボンを結びなおした。まだ幼さの残る、清楚で凛とした姿。
知性を感じさせる涼しげな面差しからは、露出に溺れる痴態など想像もできない。
(……でも)
それが仮初めのものでしかないと知る少女は、自分が求めるであろう、更に淫らな行為を思い、
女の部分がふたたび熱く、湿っていくのを抑えられなかった。
そして……また、密やかな衣擦れの音。