粘着質な水音をたてるたび、砂埃が舞う薄暗い闇に、女の白い足が宙に揺れる。  
 
「あっ!あっ!あっ!あ、ひぃッ……ひぁ!」  
 
翼のある人外の男の巨体にのしかかられ、若い女の汗ばんだ喉から嬌声が零れる。  
女の体は、男に突き上げられる度になまめかしく揺れた。  
と、同時に人間の女を突き上げる男の低い声も切なげにくぐもる。  
女の細い指が鱗のある男の体に這い、男の弱味を刺激し高ぶらせる。  
二人は二年余り寝食を共にして、シャドルニックの体を、  
ペギーは今では誰よりも良く理解している。  
おそらく、彼の心を占めて離さない女弟子デリアよりも…。  
同じようにペギーの体は、シャドルニックの人ならぬ異形の、それの形に慣れてしまった。  
薄暗い牢屋の中で、絶望的な脱出の道を探ることの他にすることが思い浮かばない男女は  
互いの最高のエクスタシーを探りあい、探りあてられる事に無聊を慰めあっていた。  
 
「――――ッ!!!」  
 
声無き絶叫をあげて、背を弓なりにそらしてペギーは達した。  
「あはッ…イイッ…シャドルニックさん…イイッ…もっとぉ――」  
 
シャドルニックの逞しい腰に脚を巻きつけ、赤みがかった茶色の長い髪を気が狂ったように振り乱した。  
 
リルドラケンの男と人間の娘の間に子供はできない。  
妊娠の心配をすることなく、ペギーは安心して快楽に没頭することができた。  
 
ドメニで幼い女の子達を浚っていたエルフの商人ガシューを追い、  
人間嫌いの亜人の街・ヴァレリアに潜入し、探っていたところでシャドルニックと出会い  
街の名士ガシューの屋敷に潜入していた。  
しかし会議の最中シャドルニックとペギー、ノノは、デリアに看破されて捕まり  
ガシューの屋敷の地下牢に、3年間も放置されてしまったのだ。  
魔神の生贄にされてしまった女の子達。  
そして大切な大切な可愛い仲間のノノ…。  
 
そうして「二人きり」になった後、シャドルニックと女魔法使いペギーは、牢屋で我を忘れてまぐわっていた。  
互いの心の傷を舐めあうため。大切なこと、余計なことを忘れてしまうために。  
 
 
何度も達してペギーの子宮に無為な精液を送りこむと、シャドルニックはペギーの横に転がった。  
まだ空気に甘くピクピクと反応する秘所をさらして、ペギーは絶頂の余韻に浸っていた。  
この時が唯一、幸せといえる時間だ。  
 
 
甘い吐息を吐き出し、寝返りをうったペギーの指先に  
ピンクがかった白い毛皮が手に触れる。  
 
牢屋には食糧の差し入れはない。  
それでも二年あまりは時折、迷い込む鼠や虫やトカゲで飢えはしのげた。  
 
しかし、次第にそれもなくなった時――――。  
 
 
 
「――ノノ……ゴメンね…」  
 
 
ペギーは小さくつぶやいた。  
 
 
 
 
終  
 

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