目の前の光景に息が荒くなっていくのを自覚した。次は自分の番だと思うと、下腹部が期待にうずく。
見回せば周囲では、男二人に前後から挟まれて嬌声を上げていたり、四つん這いになって上から下から。
「ミケぇ〜♥ はやくぅ〜♥」
タマの切ない声に、ルドルフにまたがって上下に揺れているミケが揺れながら答えた。
「まっ……もうちょっ……あはぁ〜♥」
ミケはひときわ大きな嬌声と共にルドルフにしがみつき、ぶるぶると震えた。《成人》したのだ。
「タマのばん〜♥ つぎはタマのばんなのよぉ〜♥」
つながったまま満足気に喘ぐミケの肩を掴んで懇願するタマ。その内股は《式場》の床に置かれたいくつものランプの光に照らされ、ぬらぬらと光っている。
「まっ、て、あはん♥」
立ち上がる時に自然と引き抜かれたルドルフのモノが、不意に最後の快感を与えた。それは同時に、身体の中から何かが奪われたような喪失感……
ミケはぐったりとルドルフの横に転がった。ミケの愛液とルドルフ自身の精液で汚れたモノを、タマが物欲し気に舐めるのを眺めながら。たった今まで自分の中を往復し、快楽をくれたモノを。
(どんなあじなのかなー)
未知への好奇心と式場一杯に焚かれた香の所為で、ミケはすぐにつながり成人してしまった。だから舐めていない。しかしタマの陶酔した表情を見ると、とても美味しそうだ。むくむくと好奇心が湧き上がる。
一緒に舐めようと起き上がったが、一瞬早くタマも起き上がりルドルフにまたがってしまった。嬌声が上がる。
(おそかったかー)
きっと頭が快感に痺れていた所為で判断が遅れてしまったに違いない。もったいないことをしてしまった。次の機会には逃さないように、急いで行動するようにしなければ。
他に舐められるモノは無いものかと見回すと、あちこちで言い争いが起きていた。上のお口や後ろのお口で《成人》した男は本当に《成人》したのかどうか。
やがて交代してもう一度ヤることを誰かが提案すると、議論は急速に終息し男達は散らばっていった。
(いそがないとー!)
何のために、とかどうなるのか、などとは考えずに立ち上がり、ミケは手を挙げて叫んだ。
「はいはーい! 《成人》したけど《成人》してないかもしれないひとー! ミケでちゃんと《成人》しよー!」
叫んでから、《成人》するんだと味がわからないことに気付いた。が、誰かに後ろから押し倒されて快楽を差し込まれれば、そんなことはどうでもよくなった。
「きゃうーん♥」
中で不遠慮に往復する快楽。肉壁を押し分けながら奥へ入り込む快楽。肉壁を引っかきながら出て行く快楽。だが入り口で止まり、再び奥へと押し分ける快楽。
「きゃうん♥ きゃぅん♥ きゃふ♥ きゃあーん♥」
と、唐突に往復が止まり片足を高く持ち上げられた。何かと思って首を巡らそうと姿勢を変えると、新たな快楽が尻に差し込まれた。
「ひぎぃ!?」
あまりの痛みに思わず仰け反るミケ。しかし、すぐさま再開された二重の往復に、痛みを上回る快楽がねじり込まれた。
「きゃふ♥ きゃふ♥ きゃふ♥ きゃふ♥」
痛い。なのに気持ちイイ。
腕を捕まれて上半身を仰向けにされ、グラスランナーの中では大きい方である胸を揉まれたり吸われたり。さらなる快感がさらなる混乱を呼ぶ。目の前で大きな乳房に喜びはしゃぐ男達の様子は、褒められているようで嬉しかった。
嬉しいからもっとして欲しい。痛いからやめてほしい。気持ちイイからもっとして欲しい。中ではじけた快楽が抜かれる。淋しい。入れ替わりに別の快楽が奥へと押し分けて来る。嬉しい。
異なる周期で前後する二本の快楽が身体を不規則に揺すり、息をつく暇も無く送り込まれてくる快感。何人もの男達が無遠慮に触れば身体中から沁み込んで来る快感。快感に酔い痴れれば酔い痴れるほど喜ばれ、褒められているような悦楽。
と、頭を掴まれて顔を上げさせられた。その目の前に差し出された、モノ。今自分の中を往復し、前と後ろから快感を送り込んでくれているモノ。
(あじ……)
手に取ろうとしたが腕を押さえられているので出来なかった。ミケはやむことない嬌声を上げながら首を伸ばし、ソレを舐めてみた。
(へんなあじだー)
愉悦に陶酔しきった表情のままミケは思う。コレはきれいに拭かれたモノだ。タマが舐めていたモノは、ミケとルドルフの汁に汚れていた。
(しるがおいしいんだー)
汁に汚れたモノは今、ミケの下半身で絶賛大量生産中だ。それをどれか舐めさせてもらおう。そう思って首を巡らせようとするが、その頭が押さえつけられる。その半開きになった口に、太いモノが入ってきた。
「もごぉ!?」
驚いて思わず噛み切りそうになる。
(かみきっちゃだめー!)
快感をくれる大切なモノだ。噛み切っては駄目だ。愉悦に痺れる頭で必死に耐えた。だが、息が出来ない。
「ぃやっぷ♥ びゃっ♥ ぶひゃっ♥ ぶぶふっ♥」
それでも嬌声は止まらない。嬌声と共に息は遠慮無く吐き出されるのに、吸い込むことが出来ない。
必死で口の中のモノを舌で押し出そうとする。だがどこをどう舌で押しても、頭を押さえる腕の力には敵わない。半狂乱になって舌を動かすのだが、不規則に揺れる身体に合わせてわずかに前後するばかりだ。
突然、不意に口の奥まで押し込まれた。苦しさに身体が跳ね上がる。そしてすぐに引かれた。わずかな隙間から必死で息を吸い込む。だが抜かれることなく、また口の奥まで押し込まれた。今度は身体は跳ね上がらなかった。
何度も頭を揺すられ往復されるうちに息のつき方もわかってきた。息が出来るようになれば、余裕も出てくる。
(しるがでてるー)
それを味わおうと、出入りする先端を舌で追いかける。ふと思い付いて、口の中で舌を広げた。思った通り、広げた舌の上を先端が前後する。先端からしたたる汁が舌全体にまんべんなく撒かれ、前後するそれ自身によって塗り込められた。
(ふしぎなあじー)
快感に酔い痴れ唾液を垂らしながら味わうミケ。味わう間にも二本の快楽が異なる周期で不規則に送り込まれ続け、何本もの手から快感が身体中に沁み込ませられ続け、舌には不思議な味の汁が塗り込められ続けていた。
いつの間にか両手にも何か握らされて上下に動かされていたが、ミケは気付かなかった。気持ちよくなかったからだ。
突然、舌に不思議な味の汁を塗り込める速度が上がった。味が変わった、と思う間もなくはじけた。
「ぶぼぉ!?」
咽喉の奥まで飛び込まれて咳き込み、隙間から口内に溜まった唾液が噴き出す。そして動きが遅くなり、やがて引き抜かれた。
「ゲホッゲボォッ!」
四肢はもちろん胸から腹から背中から頭まで押さえつけられた状態では満足に咳き込むことも出来ない。それでも咳き込もうとミケの全身が何度も何度も大きく跳ね震える。それは男達は喜ばせた。
咳も落ち着くと、荒い息と嬌声を上げながらミケは気付いた。
(はきだしちゃったー!)
味が変わった瞬間に何かが飛び出して来たのだ。あれこそがタマが舐めてた美味しい汁に違いない。慌てて床を見回したが、床は無かった。
不思議に思う前に、これまで何度もやってきた何かが湧き上がってきた。それを逃さず捕まえ、頭の中を真っ白にする。空を飛ぶような絶頂をたっぷりと味わった。
「ひゃふ♥ ひゃふ♥ ひゃふ♥ ひゃふ♥」
頭の中が奥まで痺れ、満足する。そして余韻を楽しむと同時に次の絶頂を得る為に、全身から休み無く与えられ続ける快感をむさぼった。
目の前の喧嘩が終わると、一人がミケの前に立った。ミケの顔の前に差し出される、モノ。
(おかわりだー!)
舌と首を伸ばして咥えようとするが、わずかに届かない。一本だけ床についている脚を伸ばして近づこうとするが、後ろから引き戻される。その様子を見て喜ぶ男達の下卑た声が、もっと焦らせと囃し立てた。
近づければ期待に輝き、遠ざければ悲痛に染まる。右にやれば右を向き、左にやれば左を向く。近づけて舌先に触れさせればちろちろと舐め、また離すと切なく悲鳴をあげる。玩具をたっぷりもてあそんでから、ご褒美をくれてやった。
ミケは口に入ってきたモノに喜んでむしゃぶりつき、嘗め回した。前後に動き始めたら舌を広げ、汁を塗り込んでもらう。唾液と汁の混合液が、味蕾の隙間まで念入りにすり込まれていった。
やがて頭を激しく揺すられ前後運動が速くなる。
(くるー!)
味が変わった瞬間に頭を引き、舌を引いて咽喉の奥を守りながら吸い付いた。次の瞬間にはじけて、舌の上に何かが噴射された。
(おいしいお汁だー!)
まだゆっくりと前後するモノが邪魔だ。首を振って強引に振りほどくと、慎重に唾液をこぼす。そして舌の上に乗った何かを口内に塗りたくり、味わった。
(おいしい……の?)
苦い。それに、鼻に抜ける臭いが気になる。そこへまた湧き上がってきたものを捕まえて頭の中を真っ白にした。空を飛ぶような絶頂と精液をたっぷりと味わった。
奥まで痺れた頭で味わいながらミケはピーマンを思い出していた。あの苦い野菜を美味しいといって食べる人が居る。これもそうだ、苦い。なのに、気持ちいい。
ミケは精液を飲み込まずに、口をあけて次のご褒美を待った。焦らされたくないので目を瞑って。そして美味しいお汁を味蕾の隙間まで念入りにすり込んでもらう。そして新たに噴出したそれを味わった。次も、その次も。
(にがい……なのにきもちいい……)
「ミケ? 大丈夫? 気分が悪いのか?」
ウィストに呼ばれてミケは我に返った。
「気分が悪いなら、クーロの村に行くのは明日にした方がいいだろうか」
エリヤがそっけない口調で、だが過保護なぐらい気遣ったことを言う。
「ううん、だいじょうぶー」
「そう言えばミケはピーマンが嫌いだと言っていたが、その所為か? 好き嫌いは良くないぞ?」
「わかってるよー!」
「ウィストもだぞ」
「ボクはちょっとよけてるだけで、後でちゃんと食べるよ。腹に入れば一緒なんだからいいだろ、別に」
そう嘯くウィストの皿の隅には、ピラフから器用に取り除かれたニンジンの山があった。
目の前にあるピラフに混ざっている、細かいピーマンの欠片を見ながらミケは思った。子供の頃からピーマンは苦くて嫌いだった。何故今、ピーマンを食べて《成人式》の時のことを思い出したのだろうか。
(なんでー?)
もう一口、ピラフをスプーンにすくって食べてみる。慎重に、ゆっくりと咀嚼。そしてピーマンの苦味を感じた瞬間、再び脳裏に鮮やかに蘇るあの日の光景。感触。快感。愉悦。絶頂。悦び。味。臭い。
(あじだー!)
もう一口。鮮やかに蘇る快感を愉しんだ。
(ちがうのー!)
もう一口。蘇る苦味、そして臭い。
(ぴーまんのあじじゃないのに……へんなの)
ミケは一口ごとに、蘇る愉悦に陶酔した。食べ終わる頃にはもう、日はすっかり高くなっていた。
予定より遅れた出発。もう昼までにクーロの村に着くのは無理なので、店主のダルガーに道中で食べるサンドウィッチと、ついでに帰り用の特製チーズをもらった。
特製チーズは食べられなかったが、代わりに二人の新しい仲間を餌付けすることが出来た。大きな角を持ったドレイクのアンセルムと、変態で残念なクリフだ。
朝のピラフの余韻が残っていたミケはアンセルムの角を見た時に思わず変な言い方をしてしまったが、誰も気付かなかったようなので安心した。
そして女三人男二人のパーティーになって数日後、また朝食にピラフが出た。細かいピーマンがたっぷり入った……
「ぴーまんきらーい」
「残さず食べるんだぞミケ」
早速飛んでくるエリヤのお小言。ミケはそれを無視して、自分の皿を持ってアンセルムのところに行く。皿をテーブルに置くと、許可もなくアンセルムの膝によじ登った。
「どうしたんだミケ」
アンセルムは優しく聞いてきた。
「ミケはねー、ぴーまんきらいなのー」
「でも残しちゃ駄目だってエリヤが言ってただろ?」
優しく言うアンセルムを上目遣いに見ながら、ミケは口を大きく開けた。
「あーん」
それを見てからかいの声を上げる仲間達。
「甘えてる?」
「甘えん坊さんだね」
「ふっ、お似合いですよアンセルム。君は子守でもしていないさい。その間に私はエリヤさんと……はい、あーん」
「そういうことはよせって言ってるだろうが!」
いつもの騒ぎは無視してアンセルムは訊いた。
「食べさせて欲しいのか?」
「ミケはねー、ぴーまんきらいなんだよー」
「仕方ねえな。はい、あーん」
「あーん」
口の中にスプーンが入れられる。口を閉じるとスプーンだけが出て行き、咀嚼。蘇る苦味。蘇る臭い。蘇る愉悦。ミケが飲み込んだのを見て、アンセルムは続けた。
「はい、あーん」
しかしミケは口を開かない。
「ほらミケ、あーん」
アンセルムは、なかなかミケが望むようには言ってくれない。もっと強く言って欲しい、あの日の男達のように。
「ミケ、口を開けなさい」
イラついてきたアンセルムが強い口調で命令した。そうそう、これこれ。
ミケは口を開けた、目を瞑って。舌を伸ばし、口に入って来るモノを待つ。待っている間、期待感が胸を膨らませる。まだかな、はやく来て、はやく入れて、はやく、はやくあの気持ちいい味を……
舌の上に感触があった。咬まないようにそっと唇だけで口を閉じる。その唇を割ってスプーンが出て行く。口の中に残ったものを、咬まないで舌で混ぜる。何も無いのが物足りない。
いつまで混ぜても肝心な味がしないので、しかたがなくゆっくりと咀嚼を始めた。噛み潰されたピーマンの味が広がる。気持ちいい苦味……
ゆっくりと咀嚼しながら快楽に浸り、愉しんだあとで飲み込む。ミケはもう我慢出来ずに、口を広げて舌を出した。まだかな、はやく来て、はやく入れて、はやく、はやくあの気持ちいい味を……
アンセルムは何度も何度も、皿の上のピラフが無くなるまで、ミケに快楽を与え続けた。何度も何度も快楽を。何度も何度も。
「ねーねーダルガーさーん」
「ミケちゃんか、どうしたね」
「ミケはねー、ぴーまんきらいなんだー」
「好き嫌いしとるとおっきゅうなれんぞい」
「だからねー、もっとぴーまんのおりょうり欲しいのー。でもねー、ちっちゃくねー?」
「いいじゃろう。覚悟しとくんじゃな」
「わーい! ありがとー! うふふふふー♥」