テムズ達を捕まえ、詐欺事件を片づけた夜。  
クレスポの定宿で仲間達と祝杯を挙げた後、一足先に失礼したベルカナは、  
酔い覚ましにロマールの街を歩いていた。  
(あの、支離滅裂な宴会には付き合っていられませんからね)  
今頃はどんな事になっているだろうかと思いながら、歩を進める。  
 
ふと気が付くと、昼間に捕り物をした一画だった。  
あれ以来頭を捉えて離れない光景が、まざまざと蘇る。  
(……犬になって、街を歩いて……。こんな道の真ん中で、裸に……)  
酒によるものだけではない、かすかな火照りを躰の奥に感じる。  
(もし、私があんな姿に……)  
酒気が妄想を掻き立て、夜闇の暗さが背徳を誘う。  
(誰も……いません、わね)  
酔いで大胆になった少女は、次の瞬間、ショーツを膝まで引き下ろしていた。  
そのままスカートの裾を持ち上げると、淫靡な香りが、夜気に紛れてかすかに漂った。  
嗅ぎ慣れた自分の匂いが鼻をくすぐり、秘所が晒されていることを実感する。  
たまらずに躰が震えた、その時。  
「そこで何してるの?」  
背後で女の声がした。慌ててスカートから手を離し、振り返る。  
そこには、さっき宴会の給仕をしてくれた娘――アイリが立っていた。  
 
(……!)  
知っている人に見られた――さっと血の気が引き、喉がカラカラになる。  
その様子を見たアイリは、目を細めて悪戯っぽく笑った。  
「ふうん、あなたのような人でもそんなことするんだ」  
慌てて表情を取り繕うが、下着を脚に絡みつかせた姿では、返す言葉もない。  
「ねえ、女同士なんだし、そんなに恥ずかしがらなくてもいいから……」  
少しだけ、目に安堵の色を浮かべたベルカナを、獲物を前にした猫のように眺める。  
「私が、もっと素敵なコトさせてあげる」  
少女は消え入りそうな声で、それでも気丈に聞き返した。  
「な、何をさせる……つもりですの?」  
「ん?すぐ分かるわよ。とりあえず邪魔な下着を脱いで、一緒にお散歩しましょ」  
どのみち、こんな姿を見られてしまっては否と言える筈も無い。  
不安と心細さを覚えつつも、薄布を足首から抜き去り、アイリに従った。  
 
スカートの下に何も履かず、しかも、隣を歩く娘にそれを知られている。  
その倒錯した状況は、彼女の理性を蝕み、胸を高鳴らせていった。  
そんな自分を戒めようと唇を噛んだ刹那、アイリの足が止まる。  
そこは、さっき後にしたばかりの安宿の前だった。  
 
「ここは……」  
「そ、私の店。まだ、みんな中で飲んでるわよ。  
エルフのお姉さんに変わったお酒を頼まれたんで、買い出しに出たんだけどね。  
もっといいお土産、見つけちゃったから」  
含み笑いをする娘に、ベルカナは真っ青になって叫ぶ。  
「み……皆さんに言うつもりですかっ」  
「大きな声出さないで……あ、ひょっとして酒の肴になりたかった?」  
「ば、莫迦なこと……言わないでください」  
 
そう言ってうつむいた少女に、アイリは有無を言わさぬ調子で命令する。  
「じゃ、この入口の前で、さっきみたいにスカートをまくって」  
とくん、と胸が鳴った。  
すぐそこに、仲間達がいるのに。  
いつ、出てくるかもしれないのに。  
(そんなこと……)  
できる筈がない。夜も更け、人通りも絶えたとはいえ、こんな道端で。  
それなのに、この期待感は何なのだろう。  
どうしようもなく鼓動が速くなり、熱い吐息が漏れる。  
 
「仕方ありませんわね……」  
――強制されているのだから。  
半ば自分に対する言い訳のように呟くと、ゆっくりとスカートをたくし上げた。  
店から漏れる光が、白い太腿とその付け根の翳りを照らす。  
 
「いい子、いい子。そのまま、私がいいって言うまで下ろしちゃダメよ」  
夜風が剥き出しの股間を撫で、飾り毛をそよがせる。  
ベルカナはその感触に震えながら、小さく、こくりと頷いた。  
躰の奥から、得体の知れない官能が込み上げてくる。  
それが屈従の快感だということに、少女はまだ気付いていなかった。  
(こんな、はしたない格好をさせられて、どうして……)  
当惑する彼女に、入口近くから物音が聞こえてくる。  
(ひ、人が……、みんなが、出て……っ!?)  
全身が総毛立ち、膝から力が抜けそうになる。  
(見られる……見られてしまいますわ……!)  
咄嗟にスカートの裾から手を離したのと、殆ど同時に扉が開く。  
中から出てきたのは、見知らぬ冒険者の一団だった。  
 
青い顔をして店の前に立ちつくす娘に、視線が集まる。  
全て見透かされているような気がして、いたたまれない。  
(そんなに、見ないで……)  
しかし、その思いを嘲笑うように、つ……と一筋の愛液が脚を流れる。  
男達は訝しげにベルカナを見ていたが、後ろでアイリがにっこり笑って手を振ると、  
千鳥足で夜の街に消えていった。  
 
安堵しながらも、どこか残念な様子の少女を、揶揄するように言葉がかけられる。  
「興奮しすぎちゃったの?でも、約束も守れないなんて、ほんとに困った子ねえ」  
「で、でも」  
「まあいいわ、それならスカートも脱いじゃいなさい」  
「そんな……こと」  
弱々しく反駁しながらも、逆らえずに股間を隠してくれる衣を脱ぎ捨てる。  
「そしたら、そっちを向いて、膝に両手をついて」  
ベルカナは言われるままに、裸の腰が突き出されるような姿勢になった。  
形よく丸みを帯びた白い尻が、月光に浮かび上がる。  
(こんな、格好……。見えてしまいますの……後ろ、まで……)  
「まるで娼婦みたいね、お尻の穴までよく見えるわよ」  
(い、言わないで……っ!)  
他人が目にする筈もない、自分ですら見たこともないところを、  
まるで男を誘うような姿で、さらけ出している。  
躰の奥まで覗き込まれているような、舐め回されているような感覚。  
死んでしまいたいほど恥ずかしいのに……たまらなく、嬉しい。  
それに応えるように、もっと見て欲しいと、尻穴がひくひくと震えた。  
 
無防備な恥孔が熱を帯びていくにつれて、痛い程にクリトリスが固く尖る。  
どうにかして慰めないと、頭がおかしくなりそうな程、ずきずきと疼いて。  
ついに我慢しきれなくなった手が、下腹へと伸びていく。  
(か、隠さなくては、いけませんから……。手で、あそこを……)  
そんな、はしたないことをするのではないと、弁解しながら。  
期待に震える肉芽に、指先が触れようとした直前、手が押さえられた。  
 
「……!」  
「駄目じゃない、こんなところで」  
お預けを食った犬のような目で、ベルカナが見上げる。  
「そんな顔しないで。もっと、思いっきり出来るところに連れてってあげるわ」  
悩ましく動いてしまう腰を持て余しながら、少女は頷いた。  
「少し、歩かなきゃならないから……これを穿いてもいいけど、どうする?」  
目の前に、先程脱ぎ捨てたスカートが差し出された。  
受け取ろうとした手が、何かに捉えられたように止まる。  
そして――しばらく逡巡した挙げ句、何も掴むことなく下ろされた。  
「このまま……歩きますわ」  
アイリは、満足そうに笑って少女の手を取った。  
「そうね、じゃあ行きましょうか」  
 
月の光に照らされるロマールの街路を、アイリに手を引かれて歩く。  
昼間、雑踏を掻き分けて進んだこともある道を、下半身を丸出しにして。  
その、余りにも惨めで情けない姿は、少女の中でえもいわれぬ悦楽へと変質していった。  
 
すぐそこの路地から聞こえる足音に、後ろの穴が疼く。  
通りの向こうでゆらめいた人影に、女の部分が火照る。  
誰かの気配を感じるたびに、全身が恥ずべき喜悦に震える。  
間断なく痙攣する秘割れからは、淫液がとめどもなく滴り落ち、靴下までも濡らした。  
一歩進むたびに、ぬめる靴の中から、にちゃにちゃと湿った音が響く。  
それはベルカナに、自分が心の底まで露出の快楽に汚されてしまったことを思い知らせた。  
 
「さ、着いたわよ」  
小綺麗な酒場の前で、アイリが立ち止まった。  
「悪いけど、スカートを穿いてから入ってね。ちゃんとした店なんだから」  
(こんなところで、何を……)  
そう思いながらも、素直に従って衣服を身に着ける。  
促されて薄暗い店内に入ると、上品な調度に囲まれて幾つかのテーブルが並び、客が談笑していた。  
ただ一つ空いている、中央の席に二人で腰掛ける。  
 
アイリは飲み物を注文すると、少女に言った。  
「さあ、さっきの続きをしていいわよ」  
「え……。周りに、人がいますわ……」  
「あら、気付かれないようにすればいいのよ。それに……したいんでしょ?オナニー」  
(オナニー……)  
ずくん、と胸に楔が打ち込まれた。  
なんて、甘く卑猥な言葉だろう。  
敏感になった躰はそれを聞いただけで反応し、涎が垂れ落ちそうになった。  
 
(そ、そうですわね……。分からないように、すれば……)  
抑えようもなく、テーブルの下に手が潜り込んでいく。  
焦らされ続けた陰核に指が触れた途端、ベルカナは小さく仰け反った。  
「……っ!」  
テーブルに顔を伏せ、必死に出掛かった声を飲み込む。  
前屈みになった少女は、ブラウスにも手を差し入れ、乳房を揉みしだき始めた。  
「……!……っ!……ん……、ふ……っ!」  
衣擦れに混じる切ない吐息と、股間の卑猥な水音が、少しずつ高くなって――  
「……あ……ッ!」  
思わず漏らした喘ぎ声に、慌てて周囲を見回す。  
すると。  
いつのまにか静まりかえっていた酒場の中で、全ての目がベルカナを凝視していた。  
 
(……!)  
動揺する少女を支えるテーブルが、アイリの手ですっと引かれる。  
ベルカナは、そのまま這いつくばるように床へ倒れ込んだ。  
「いいの、そのまま続けて。皆さんも、見ていたいそうよ」  
すがるような目を向ける少女に、アイリは優しく指図する。  
その言葉は理性の声よりも重く、心に刺さった。  
狂おしく昂ぶる劣情が、それを後押しする。  
人前でも慰めずにはいられない程に、股間で性欲が燃えさかる。  
視線を感じながら浅ましく指を動かし、腰をくねらせて感じたい。  
 
ベルカナは羞恥心に悶えながらも、高く掲げられた腰の狭間に指を這わせた。  
極限まで勃起したクリトリスを、捻りあげ、こすり立てる。  
(後ろにも、指を……っ)  
見られているのに、自分の一番汚い場所を触るなんて。でも。  
晒されて、火が点いたように疼く穴に、おずおずと人差し指が突き入れられる。  
「く……、う……んッ!」  
(なんで……なんで、こんなところが気持ちいいんですの……っ?)  
ためらいがちな動きは、次第に大胆なものへと変わっていく。  
(ここを、ぐりぐりすると……まるで、躰の芯を触ってるみたいで……痺れて……!)  
人に見られながら、排泄器官を掻き回して快楽を貪る少女。  
2つの穴を激しく抽送する粘った音と、よがり声が淫らな和音を奏でていく。  
(こんな姿、見ないで……。私のいやらしい声、聞かないで……ください……っ)  
恥ずかしげに身をよじりながらも、指の動きは止まらない。  
それどころか、まだ物足りない尻の肉孔は、中指までも飲み込んでいく。  
凄まじい圧迫感が背筋を走り、ベルカナは声にならない叫びをあげて絶頂に達した。  
何度も突き上げる快感に、すすり泣いて頭を振り立てる。  
乱れた髪から解けたリボンが、足元にできた水たまりへと落ちていった。  
 
 
「とても、綺麗だったわ」  
自慰の余韻に、まだ小刻みに躰を震わせるベルカナに、アイリが唇を重ねた。  
生まれて初めての、しかも女同士のキス。  
淫蕩な口技に溶かされた少女は、人目も気にせずに甘い口を吸い、夢中で舌を絡める。  
やがて、名残惜しげに唾液の糸を引いて、唇が離れていった。  
「もっと欲しいって顔ね。いいわ、これを嵌めれば望みが叶うわよ」  
「く、首輪……?」  
「そう。雌犬になって、優しいご主人様に飼ってもらうの」  
(そんな……私、動物ではありませんわ……)  
しかし、人が着ける筈のない装身具は、服従する悦びを少女の心に訴えかける。  
 
「それさえ着ければ、あなたがいつ発情しても、たくましい雄が組み敷いてくれるわ。  
太くて固いので責められて、よがり狂って泣き叫ぶの」  
自分が今まで築き上げてきた誇りが、堕天使の誘惑に犯されていく。  
「それとも、私が隅々まで愛してあげてもいいわよ。もちろん、大好きなお尻の穴もね。  
処女のまま、誰にでも喜んで股を開く雌にしてあげる」  
淫らな言葉を紡ぐアイリの艶やかな唇から、物欲しげな目を離すことができない。  
「どう?後はあなた次第よ」  
ベルカナの望みは、既に決まっていた。  
ためらわず、隷属の証を手に取る。  
今夜、最初に命令に服従した時から、こうなることを望んでいたような気がする。  
丁寧に首輪を嵌めて、自分から性奴隷に堕ちた少女は、飼い主の前にひざまずいた。  
「お願いします、私を……」  
 
 
 
――数日後。  
冒険者の店を通して仕事が持ち込まれ、クレスポの宿に一同が集まっていた。  
 
「そういえば最近、夜になると裸女が出るんだってさ!くーっ、見てみたいッス!」  
クレスポの下品な声に、シャイアラが呆れたように言い返す。  
「裸男の次は裸女?……馬鹿みたい、あんた一人で探しに行ってきたらぁ?」  
「まさか、サキュバスではないでしょうねえ……ん?どうしたんですか、ベルカナ」  
意味ありげにアイリと笑うベルカナに、ブックが問い掛ける。  
「いえ、なんでもありませんわ。こちらの話ですから」  
後ろの穴に挿入された淫具の刺激に秘部を潤ませながら、少女は澄ました顔で答えた。  
 
〜Fin  

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